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40俺も行くからな


 それから話は早かった。

 アルナンドがみんなにプリムローズが祖母の墓参りをしたいと言っていると話をするとみんなは仕事を休むことも墓参りに行く事にも賛成してくれた。

 「プリムローズどうして今まで黙っていたのですか?あなたはもう自由になったんです。思うことをすればいいんです」

 ダイルはまるで兄のように優しい口調でプリムローズに言う。

 「そうだ。俺達がそんな狭い了見の男に見えるか?おばあちゃんの墓参り?早く行ってやれよ」

 「そうだ。なぁ俺達も一緒に行けないか?せぶりの森なんて久しぶりだよな」

 レゴマール、ブレディも後押しする。

 「みなさん、せぶりの森知ってるんです?」

 プリムローズは驚く。

 「ああ、竜人は番を求めてるからあちこちの国を飛び回るんだ。そうやって国の空を飛ぶことが加護になってゼフェリス国二は他国から加護のお礼としてたくさんの金が入って来るって仕組みなんだ。メルクーリ国はとなりだからしょっちゅう飛び回ってたしな、せぶりの森なんか庭みたいなもんだ」

 「でも、旨い事回ってるよな。俺達は番を求めて探し回っているだけなのに他の国からしたらそれが加護になるって言うんだからさぁ」

 「なぁ。ハハハ」

 ふたりが目を合わせカラカラ笑う。


 プリムローズは少し引いた。

 (そうだったんだ。知らなかった。竜人に取ったら何でもない事か。ううん。でも、番をみつけるのは竜人の究極の願いだって聞いた事があるから彼らの取ったらすごく大切な事なんだろうけども…加護がそんな簡単な事だったとは…)

 「そうなんですね…ハハハ」

 プリムローズの顔はかなり強張っていたらしくピックが慌ててレゴマールとブレディを制する。

 「ちょっとみんな。プリムローズが驚いてるじゃないか。ふたりともあまり変なこと教えないでよ。いいからここは何にも気にせずに行ってくればいいよ」

 ピックは相変わらず優しい弟みたいに言ってくれる。


 「みんなありがとう。そう言ってもらえると安心して行って来れます。じゃあ、仕事は今のところ急ぎはないでしょうから、明日にでも出発しますね。そうとなれば私カイトに知らせて来ます」

 「あっ、俺がカイトに連絡して来てやるよ。プリムローズは待ってろ」

 レゴマールがそう言って縁結び処を出て行く。

 「では、お言葉に甘えて…みなさん本当にありがとう」とは言ったものの。

 (カイトすぐに都合つくのかしら?まあ、無理なら行ける日まで待てばいいんだし) 

 プリムローズはこの際思い切ろうとした。

 そうと鳴ったら仕事を片付けておこうとした時だった。


 「プリムローズ。わかってるだろうが俺も行くからな」

 「えっ?アルナンドも一緒に来るつもり?どうしてです?」

 「おい、男とふたりきりで旅をするつもりか?そんな事を未婚の女にさせられるわけがない。俺はここの責任者だ。従業員の安全を守る義務がある」

 「そんなの…やたらと女性社員に言い寄るのって私のいた世界じゃセクハラって言うんですよ。アルナンドっていやらしいおじさんみたい」

 プリムローズは喜ぶどころか気分を悪くしてアルナンドの瞳より冷たい視線を送って来る。


 「せ・く・は・ら?」

 「職場の人を不快な気分にされる事を元の世界でそう言うんです!」

 「な。何でそうなる?俺はプリムローズの身の安全が心配なだけで…」

 そんな態度にアルナンドはたじろぐ。

 「まあまあ、プリムローズもそんなに言わずに…そうですね。カイトさんもいらっしゃるならいっそ4人で一緒に飛んでいけばいいのでは?」

 ダイルが見かねて助け舟を出して来るのでプリムローズはさらに腰に手を当ててふたりを睨む。


 「そうだな。ダイルお前いいことに気づいた。プリムローズ。お前は俺が乗せて行く。カイトは…そうだな。ブレディお前がいけ」

 「えっ?いきなり何の話だ?」

 「ブレデイ話を聞いていなかったのですか。せぶりの森まで馬車で行くのではなく竜化して飛んでいくのですよ。アルナンドはカイトを乗せてやれとおっしゃったんです」

 「俺が男を背に乗せろだって…勘弁しろよ」

 「これは竜帝としての命令だ。いいなブレデイ。カイトをのせてせぶりの森まで行くんだ」

 アルナンドの紫の瞳がキラリと光る。

 さすがのブレディもさっと顔色が悪くなる。

 「わ、わかった。もういいから、そんなに睨むな。ほら、アルナンド。プリムローズが…」

 アルナンドはそう言われてすぐにはっとしたらしく紫の瞳からダイアモンドのような輝きがすっとなくなるとプリムローズの方に向き直った。

 そしてまるで子供を諭すように優しく話しかける。

 「なっ、これで問題解決だろう。プリムローズたちは俺達が送り迎えをする。4人で一緒に行こう。な?」

 アルナンドは背をかがめて滅多に使わない表情筋を使ってにこりと微笑む。

 その仕草は他の者にはとても見てはいられるものではなかったが…


 プリムローズは口をつぐんだまま。

 (これって何にも解決してないじゃない。まあ、でも、4人なら…それに竜の背中に乗れるなんてめったにない経験かもじゃない)

 「そうですね。せっかくのお申し出ですから、お断りするのも…では、お願いします」

 突然アルナンド以外の4人から拍手が沸き起こる。

 プリムローズは一体何の拍手かと突っ込みたくなったがやめておく。

 「では、皆さん仕事の事や送り迎えの事よろしくお願いします」

 (それにしてもいいのかな…まっ、マグダのお墓参りはまんざら嘘じゃないし、宝珠の事は…まぁ話さなくてもいいわよね。それにしてもこの人達どこまでお人好しなんだろうなぁ。でも、すごくうれしい)

 プリムローズはみんなにありがとうとお辞儀をして微笑むとまた仕事を始めた。







 

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