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25みんなで花火です


 たくさんの人がお化け屋敷を楽しんでくれてお祭りは終わった。

 思った以上に会員の登録も出来てまずまずの結果になったとプリムローズは思った。

 おまけにカイトたちは片付けを手伝うと残ってくれた。

 私たちはカイトやカイトの友達、ローリーも一緒に片づけを始めた。

 カイトたちには庭にあるテーブルやいす、ごみや細々したものを片付けてもらう。

 ダイルやレゴマールたちには部屋の仕切りなどを片付けて元の状態にして行ってもらう。

 こんな時竜人だと力が強いのでほんとに助かる。部屋の中は30分ほどでほとんど元通りになってしまった。

 後は明日にでも片付ければいいだろうと言うことになった。


 「カイト、それにエリオットやチャドにレイモンドも今日はありがとう。それに登録もありがとう。これから希望に沿うような人を紹介していくつもりだからよろしくお願いします」

 「いや、そんな。こっちこそ、俺達ほんとに出会いがなくて相手も最初から真剣な付き合いなら心配なく付き合い出来そうだし。なぁみんな」エリオットが言う。

 「ああ、俺も…親が持ってくる縁談はいやだし、出会いのチャンスなかなかなくて、真面目な女の子と出会えるなら願ってもないよ」チャドも同じらしい。

 「俺なんか一度ひどい子と付き合って嫌な思いしたから、今度こそいい出会いを期待してるんだ」レイモンドが嬉しそうに言った。


 プリムローズは喜んでもらえてよかったと胸をほっと撫ぜ下ろした。

 (そう言えば花火かなり余ったわね。そうだ!ローリーとカイトを近づけるチャンスかも…)

 「期待に応えれるよう頑張るから、あの、もし良かったら線香花火でもしない?」

 「線香花火ってさっきの?」

 「そう、誰が最後まで花火を残せるか競争するって言うのはどうかしら?これ、結構難しいの」

 競争と聞いてみんなの瞳が輝いた。

 (そうよね。こういうのみんな好きだよね。)

 「いいね、乗った!」「「俺も、俺も!」」

 「「「「俺達もやる!」」」」ピックやブレディ、レゴマールたちもやってきた。

 更にアルナンドやダイルまでもいた。


 みんなで庭に一列に並んで「いっせいの!」の合図でロウソクで線香花火に火をつける。

 もちろんローリーの隣はカイトだ。

 線香花火の先に赤い火玉が丸く大きく膨らんでいく。まるで蕾のような可憐だ。

 次にその火玉から火花がバチバチと飛び散り始めるとみんなが歓声を上げた。

 持つ手には次第に力が籠り少しでも長く火玉をもたせようとそれぞれの想いが交錯する。


 ~では、並んでいる順番に様子を少し~

 「……」ローリーは口元を引き締め静かに自分の線香花火を見つめたりカイトの花火を見つめたりしている。時々カイトの顔を伺いながら花火を持つ手に力が籠る。

 「これ、意外と難しくないか…ろーりーきれいだな」カイト。真っ直ぐ線香花火を見てぶつぶつ呟役とローリーを見て微笑んだ。

 「しっ!静かにしろよ!」レゴマール。気が散ると怒鳴る。

 「あっ、あぁぁぁぁ、終わった」ブレディ。ものすごく肩を落とす。

 「ほら見ろ、まだ、火花が出てる。すごい」エリオット。感激しながら小さな声で囁く。

 「ああ、すげぇきれい」チャド。見惚れるようにつぶやいた。

 「うん、これ好きだな」レイモンドも同じく。

 「ほんとにとってもきれいですね」ダイル。ただただ線香花火に見惚れている。

 「何だかプリムローズみたいだ。とっても頑張り屋さんの花火だな」アルナンドがぼそりと呟いた。

 その隣にはプリムローズがいた。

 「なん、何でそんな事…アルナンド時々照れるようなこと言わないで下さいよ。あっ、あぁぁぁぁぁ」プリムローズは思わずポトリと火玉を落としてしまう。

 「ああ、落ちる…ああ…どうしよう。プリムローズ…あぁぁ、あぁ~。プリムローズすご~い。まだ残ってるの?頑張れ花火…あっ、落ちたよぉ~…ぼ、僕の性じゃないよね?」ピックの声が上ずった。


 そしてついにアルナンドの最後の火玉がチリチリと細長い火花を散らして遂に火種がポトリと落ちた。

 「「「「「「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」」」」」」

 みんなの声が一斉に響いた。


 「何だか、めちゃくちゃきれいだな。最後の最後まで粘るって言うか…小さな塊からあんなにチリチリ火花出しやがってさぁ」

 あまりにあっけなく終わらせたブレディがつぶやく。

 「俺、もう一本やろうっと」ブレディはまた線香花火に火をつける。

 「あっ、ブレディずるいぞ。それカウント入ってないからな」レゴマールがすかさず突っ込む。

 「俺も」

 「ずるい。俺も」

 そうやって花火がなくなるまでみんなで楽しんだ。

 極めつけは火薬を空中にばらまいてレゴマールが指先から火を放つ。

 ばらばらに飛び散った火薬に火花が散ってそれをピックが思いっきり吹き上げるとまるで満開の花が開いたような花火が打ち上げられた。

 「たまや~」プリムローズが思わずそう叫ぶ。

 みんなが何だと言う顔をして一瞬振り向いたが花火を見る方が忙しくおかしな声はかき消された。

 「すげぇきれいだ」

 「ああ、こんなの初めてだ」

 「これはもう完璧に打ち上げ花火ですね」プリムローズがうっとりしながらつぶやいた。

 「打ち上げ花火?っそうか。うん。そうだね。打ち上げ花火…」

 みんなそれぞれ妙に納得して何度か打ち上げられた大輪の打ち上げ花火を満喫したのだった。


 そして最後にアルナンドにはプリムローズが作った特製のクッキーが送られた。

 (ほんとは後でこっそり食べようと思ってたんだけど、こんなことになるなんて予想していなかったから何も用意してなかったのよね。まあ、こんなもので喜んでもらえるなら)

 「花火の優勝はアルナンドさん。おめでとう。景品は特製クッキーです。急だったからこんなものしかないけど許してアルナンドさん」

 「いや、すごくうれしい。クッキーは大好きなんだ。ありがとうプリムローズ」

 プリムローズは小袋に入ったクッキーをアルナンドに手渡すと彼の頬にキスをした。

 (だって、お祝いなんだからこれくらいサービスって言うもんでしょう)

 「ぷ、ぷりむろーず!!こ、これはキス?」

 アルナンドの顔つきが強張った。

 プリムローズはアルナンドのいかつい視線にいけないことをした子供みたいにあたふたと慌てて誤る。

 「あの、いけませんでした?ご、ごめんなさい」

 「ちがっ!う、うれしい。もう、お開きにする。俺は帰る」

 アルナンドは真っ赤になって走り去っていった。


 みんなは顔を見合わせて大笑いした。

 「アルナンドの奴。なんだ?キスくらいで」レゴマールが大声で笑う。

 「プリムローズ。お気を悪くされたらすみません。あの方はこういう事にはほんとに免疫がなくて…」ダイルが誤って来る。

 「いえ、私が余計なことをしたから、すみません。じゃあもうこの辺で解散と言うことで…カイトたちほんとにありがとう。みんなも気を付けて帰って下さいね」

 「ああ、楽しかった。また会おうなプリムローズ」カイトが言う。

 「ええ、また。あの‥カイト。ローリーを送ってあげてね。もう遅いし」

 「あの、わたし、ひとりでかえれるから」ローリーは遠慮してそう言う。

 「ばか、こんな夜遅く一人帰すわけないだろう。安心しろ俺が送って行くから」カイトはローリーの手を掴んだ。

 ローリーはきっと真っ赤になっているのだろう。何も言わない。

 プリムローズはそんなふたりに挨拶をする。

 「うん、カイトお願いね。じゃあ、ローリーまた会おうね」

 「うん、ありがとう。ぷりむろーず。さようなら」

 「うん、さようなら。またね。気を付けて帰って」

 そうやって祭りの夜はやっと終わりを告げた。




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