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エンドル戦役 ⑹

 エランドルクのカリヴァ隊が、一斉に射撃を開始する。


 自分が撃ち終われば後ろに回り、構えている次の者が撃つ。その後ろに弾込めなどの準備をする者がいる。30人一班が街道の両側の建物に配置されている。


 撃つ時は、バラバラだ。早い者もいる、遅い者もいる。弾幕からすり抜ける敵もいる。

 しかし、射撃位置は、敵の鎧を貫通するには充分の距離だった。


 エランドルク王国、軍務大臣のシドウェルは、このエンドル防衛戦において、指揮兼参謀を務める。

 エンドルの主、オルヴァニオンの館の一室が、防衛軍の指揮所となっている。指揮所には、館の持ち主のオルヴァニオン、その補佐役のネグラス、シドウェルの部下のフィンとヨークがいる。何かあれば、彼らが伝令に走る。


 国王アレクゼスは、自分も指揮所にいると言い張ったが、シドウェルが断固拒否した。当然危険だからだ。国防上、あんたの存在が最も重要だと言ったばかりだというのに。あの出しゃばりめ!

「陛下が出張るには早すぎますよ」

シドウェルは、国王にそう言って、お引き取り願った。



 撃ち込まれたキンレイ兵の大半が、重傷を負うか、即死して、その場に倒れた。しかし、騎馬隊隊長を含め、半数は、弾幕を逃れて、前や後ろに逃げた。

 後ろに逃げた歩兵たちは、しかし、門から次々と歩兵隊が入ってきて、それ以上逃げられなくなる。

 前方へと逃れた騎士たちは、街道が先で右折しているのに従って右へと曲がる。その瞬間、前方の教会の鍾塔と、住宅の二階の窓から、またしても鉛の雨が降って来る。


 一発が、隊長の兜の顔の部分を貫き、中で割れて、破片が左目に飛び込んだ。例えようの無い激痛に焼かれて、隊長は、絶叫する。体勢を崩した所に、馬が撃たれ、隊長に覆いかぶさるように倒れる。隊長は、馬の衝撃と圧迫によって死んだ。


 エランドルクは、門や柵を作っておきながら、実は、キンレイに入って来て欲しかった。間合いを詰める為と、あまりにも入れないようにすれば、しびれを切らしたキンレイが町に火を着けることが予想された為である。そうなれば一巻の終わりだ。だから、簡単に破れる門にした。


 第一波から逃れても、次の地点で撃ちかける。逃れても、更に次の場所で。

 

 建物の中には簡単に入れない様にしてある。ドアの前で手間取っている間に、弓矢や投石が飛んでくる。



 門の前で、キンレイの歩兵隊は、先に進めないでいる。

 はるか後方の方にも、カリヴァの轟音と、兵士たちの悲鳴が聞こえている。

 何が起きているのか。見えない、というのが、余計に恐ろしさを掻き立てる。

 後方には、まだ歩兵たちが連なっていて、逃げられない。


 一人、また、一人、こっそりと麦畑に姿を消す者が現れる。隊長は、やはり麦畑を焼くべきであった。

 

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