表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケルベロスの首事情  作者: 蒼井絵宇
第4章 彩苗
11/52

4.1 会議

 そこには、六名の悪魔が集まっていた。

 それは魔王洞の枝道の一つの先にある小部屋だった。

 体格も顔も様々だが、一様に翼を持っている。ヤギの頭を持つ者、人と見分けのつかない姿をしている者、中には裸寸前のきわどい恰好をした妖艶な女性の姿を持つ者もいる。

 俺が彩苗と迷宮に挑んでいた時に戦ったことのある悪魔が半分ほどいた。確か六魔将とか呼ばれている連中だった。倒したと思っていたのだが、滅ばずに転移したのか、再生成されたのかは分からない。いずれにせよ、倒す前と同様の姿を部屋に見せている。

 いわゆる中ボス的な存在なのだが、全員と当たらなかったところを見ると、ルートによって戦う相手が違うのだろう。

 それにしても、彼らの持ち場は迷宮の中層だったはずである。そこからここまでは結構な距離があるはずだが、どうやって集まったのだろう?

 転移装置でもあるのか、はたまた魔族だけが使える通用路で大幅なショートカットができるのか。

 あり得る話だった。迷宮は立体的で、くねくねと迷路を進み、階段を降りて、を繰り返していた。階段を縦に通せば一気に中層に行けそうな気はする。

 方法はどうあれ、彼らは迷宮の最深部である魔王洞に集まっていた。

 他の部屋と同様、石煉瓦で囲われたシンプルな部屋である。六魔将は部屋の壁に沿って立ち、最奥にたたずむ黒い影に向けて報告をしている。

 俺たちは部屋の入口に寝そべり、部屋の外へ監視の目を向けながらその報告を聴いていた。


 報告内容は主に侵入者に関するものだった。

 侵入者のパーティ編成、勝敗、戦闘の様子などを報告していく。

 いずれの魔将もかなりの戦績を誇っていた。迷宮に挑む冒険者の中で、最奥までたどり着けるものは少ない。ほとんどはトラップや魔物にやられ、中でもこの魔将に敗北を喫する冒険者が多かった。

 敗北した冒険者は多くが帰還リターンに成功している。要は逃がしているわけだが、魔王がそれを気にする様子はない。そういえば、宝物庫へ俺たちが冒険者を迎え撃ちに行ったときも、魔王は「追い返せ」と言っていた。

 魔将が敗北するケースについても、魔王がそれをとがめるようなことはなかった。戦闘の様子を分析し、魔王と魔将が戦術の改善点を議論している。迷宮の改装に関する議論も出ていた。

 魔王が主導する会議から俺が勝手に抱いていたイメージからはだいぶかけ離れている。

 魔王軍の会議と言うともっと殺伐としたものをイメージしていたし、魔将が集まる様子を見ている時には、そのような会議になることを実は少し期待していた。怒号が飛び交い、魔将の敗北に対して魔王が怒鳴りつけるような展開を期待していたのだ。

 魔王が主導権を握っていることは間違いない。だが、実際には、魔王と魔将が対等に近い立場で、何というか建設的な議論を交わしていた。

 彼らの話を耳に入れながらも、俺は思考に沈む。

 ゲームの世界に迷いこんだはずなのだが、ゲームの世界にしては、やけに生々しい部分がある。

 無論、魔法が違和感なく使えたり、溶岩に浸かっても平気だったりと現実離れした部分もある。

 その一方で、俺たちの移動用の通路があったり、開錠された扉が閉まる操作があったりと、ゲーム上で考えれば一見必要のない作り込みがされているように感じられた。

 そもそも、どんなゲームだったっけ?

 俺は記憶を引っ張り出す。いまさらと言う気もするが、倒したはずの魔将が顔を揃えていたのを見たことが、この世界に対する考察を進める材料になっていた。

 友人から紹介されたゲームだった。大々的な広告などはされていないフリーゲームで、最初は手を出していいものか怪しんだものである。

 確か、「進化するロールプレイングゲーム」という触れ込みだった。

 実際、このゲームは時間の経過とともに急激に進化していった。

 最初はゲーム特有のチープさとでもいうべきものがあったのだが、日が経つごとにそのチープさが解消し、リアルに、よりリアルになっていった。

 毎日アップデートが入っているのかと感心したものだが、そんな生易しいものではない。ゲームプレイ中にも、世界が洗練されていく様子に感激したものである。

 そこまで考えた俺は、この世界の正体の仮説を二つに絞った。

 一つはあくまでゲームの世界であり、リアルに進化していった結果、俺が取り込まれた。

 もう一つはもともと異世界があってゲームはそれを表現したものであり、その表現の技術が進化した結果、リアルになっていった。

 ・・・どちらも信じがたいことではあるが、どちらの説をとるかと言えば、前者かな、と思う。特に魔将が誰一人欠けていないところを見ると、再生成された可能性が高いし、それができるとしたらゲームの世界だから、であろう。

 現時点で分かるのはここまでかな、と思う。また、この世界を見ていくうちに気付くこともあるだろう。


 会議は魔王の報告に入っていた。

 最深部に踏み込んだ冒険者の顛末てんまつが報告される。俺たちが撃退したパーティ、そして魔王が魂を取り込んだパーティの報告があった。

「五体目の人形ゴーレムの魂が手に入った。あと五体だ」

 低い声が伝えると歓声が上がった。

「十体揃った暁には、我々から王国へ攻め入ろうぞ」

 再び歓声が上がる。


 ・・・え?


 魔王が魂を集めている理由が判明したわけだが、俺にとってそれは意外過ぎる話だった。

 今までのストーリーやゲームの流れを超えていないか?これも進化した結果、なのか?

 混乱する俺をよそに、会議が終了して六魔将が部屋を後にしていった。

 その様子を呆然と眺めながら俺は自問する。

 ・・・俺はこのままでいいのか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ