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custard  作者: 洋巳 明
8/9

8話 隣に


 依然として蓮の家で杷子は生活していた。局には一度顔を出しただけで、忠直からの指示により蓮の家で仕事をこなして3日ほど経ったとき、杷子は久しぶりに外に出た。

 その日、蓮はどうしても出向かなければならない仕事があって。それも敵の狙いであったのだろうか。

 家に荷物を取りに行こうとしていた杷子の目の前に現れたのは。


「こぉんにちは、“あこちゃん”。」


 聞き覚えのある声。飴屋だ。杷子は息を呑んで身構える。

「おっと。もう今日は油断してへんで。とっくに仕掛けさせてもらっとる。」

 飴屋はにこりと微笑んだ。杷子は腕にちくりと痛みが走った気がして自分の腕を見た。すでに3本、刺さっている。視界が眩んだ。

「さ、行こか。桂花さんがお待ちや。」


 カンカンカン、と金属製の階段を降りていく。地下にあるこの施設の奥で桂花は待っている。飴屋は鼻歌混じりに杷子を抱えて歩いた。

 先程検めさせてもらったが、杷子の体に発信機の類はついていなかった。存在を抹消されている以上、局にはもう頼れなかったのだろう。飴屋は勝手にそう解釈した。

 飴屋には特別な処理が施されていて、桂花の『異能』の影響を受けないようになっている。だから、彼には杷子が“自分”を取り戻したことがわからなかったのだ。

 門番のように控えていた護衛2人に扉を開けさせて、飴屋は更に奥に入っていく。そして、ある大きな扉の前で足を止めた。

 ピッピッと彼が脇にある数字を打ち込む式の電子版にパスコードを打ち込むとドアのロックが外れた。その瞬間。

 飴屋は腕に鋭い痛みが走ったことに気づいた。まるで、切り裂かれたような。そのせいで思わず杷子を落としてしまった。

 一体何が起こった。もしかして、尾けられていたのか。そう思って杷子を人質に取ろうと彼女に手を伸ばして、彼女の目が開いていることに気がついた。

「!? あ!?何が、起こって。」

 飴屋は動揺しつつ杷子から距離を取る。だが状況を理解する前に『風』に襲われて足を切り裂かれた。思わず膝をついたその頰に蹴りが入って頭がぐらつく。

 杷子に縛り上げられながら飴屋は呻くように言葉を発した。

「ッ、一体全体、何が起こっとんねん。」

 返事はない。杷子は拘束を済ませると飴屋を廊下の隅に転がして、扉の前に立った。

 ギギギ、とわざとらしくドアは開く。中には桂花が控えていた。彼は余裕の笑みでじっと杷子を眺めている。


「やあ、なかなかやるな。」


 杷子は桂花を冷たい目で見つめた。彼女は一言も発さない。


「飴屋くんの『異能』を凌ぐとは大したものだ。だが、その毒を相殺できたわけではあるまい。あくまでも、体内で彼の『力』が浸潤するのを抑えているだけだろう。」


 桂花の表情はまるで鴨がネギを背負ってやってきた、とでも言うようだ。その油断が命取りになるのに。


「だが、君1人で何ができる。私は君より強い。頼れる者が蓮以外におらず、自暴自棄になるのは構わないが……ッ!?」


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて、でっぷりと肘掛けのあるソファに腰掛けていた桂花はすんでのところでそれを避ける。慌てたように飛びのいて、流石の彼もそれを見て表情を凍りつかせた。


「……べらべらと、よく喋るのう。」


 ソファの背もたれはざっくりと切り裂かれている。桂花の視線の先には蓮が立っていた。不機嫌そうに桂花を睨みつけている。

「…………私の『異能』を、破ったのか。」

 桂花は蓮の背後をじっと見ている。そこから、ズズズ、と徐々に忠直が姿を現した。

「鬼崎桂花。貴方にはお伺いしたいことがいくつもある。同行を願えるか。」

 淡々とした彼の声に桂花は苦い顔。さすがに予想外だったらしい。それは、甘く見過ぎであろう。

「自分の『異能』が破られるとは思っとらんかった顔だの。はは、それもそうか。貴様はその方法を知らないんだからな。」

 馬鹿にしたように蓮が笑む。桂花は自分の『異能』の例外について知らない。抹消すればそれまでだと思っている。その傲慢さに足元を掬われたのだ。

「…………。」

 桂花は顔を歪めながら、素早く部屋の端に移動した。そこには1人の女性が横たわっている。アスカだ。たぶん、何かあったときに人質にとる予定だったのだろう。

 だが、そこでも桂花の顔が凍りつく。ちょうどそこで彼女を抱えた人物が目に入ったから。

「諦めた方がいいっすよ!」

 円は指先に集中させていた『力』を放った。頭に直撃したそれは彼の脳味噌をぐらぐらと揺らす。さすがに立っていられずに桂花はよろめいて膝をついた。

 杷子はアスカを抱えて離脱してきた円に駆け寄る。アスカに目立った外傷はなく、今は眠らされているだけらしい。それに安堵しつつ、蓮と忠直に冷たく見下ろされている桂花の方に目をやった。

「……ッ、小賢しい、局の鼠が……。」

 悔しげに呻く桂花。さすがに、万策尽きてくれただろうか。

 蓮がチャキ、と刀を桂花に向けた。

「そろそろ大人しく諦めろ。友人の手前、ここで降りれば斬らずにおいてやる。」

 彼の目はどこまでも冷淡で、どれほど目の前で蹲る人物に苦しめられてきたのか窺えるようだ。

 だが、蓮の言葉に桂花は笑った。彼を嘲るように高らかに笑い始める。


「ははははは、私を斬れるつもりか、蓮。断る。貴様らに降るくらいなら、こうする。」


 桂花はいつの間にか持っていた何かしらのスイッチを躊躇いなく押した。

 ザーーーッ

 数秒、室内に液体が降り注ぐ。すぐにガソリンのような匂いが漂った。いち早く事態を察知した忠直が叫ぶ。


「全員、退避!自分の命を最優先しろ!!」


 杷子はその声にすぐには反応できなかった円の腕を咄嗟に掴んで引いた。こんな狭い空間で、これはまずい。だけど開いていた扉の方に飴屋を抱える宵人の姿が見えて少しだけ安堵する。彼がいれば、大体の衝撃は軽減できるから。

 そんなことを考えていると、すぐに何かが覆い被さってきた。忠直だ。間に合わないことを察して、杷子と円を庇うことを優先したらしい。ただ、この距離であれば彼ごと宵人が包める。だけど。

(鬼崎さんは!?)

 蓮の姿を捉えることが、できなかった。



 ドォーンッガラガラガラッ



 桂花はずる賢い。逃げることに対する躊躇いなどないだろう。人は殺すくせに生への執着心は人一倍強い。そういう、汚い人間である。

 爆発音がする直前、蓮は『異能』で桂花に肉薄した。蓮が逃げなかったことに桂花はさすがに驚いた顔をしていた。

 轟音が響く。体を吹き飛ばされるような衝撃。耳元と首筋を熱が襲った。

 だが、蓮は死ななかった。予想通りだ。桂花はきちんと、自分は生き残れるように熱と衝撃に耐えるスペースを用意していた。

「……蓮。」

 轟々と炎が燃え盛っている。中途半端に鬱陶しくまとわりつく髪の毛。長く伸ばしていたそれは炎に焼き切られてしまって、異臭を発していた。

 しかし、蓮はそんなことを気にも留めない無表情で刀を抜く。対峙した桂花は案外静かな表情で蓮を見つめている。

「……貴様にも、俺にも相応しい死に場所だ。」

 たぶん、桂花はこの後の脱出路も用意しているだろう。だが、この分ではすぐに焼け落ちる。瓦礫の山。ここもじきに炎に包まれる。

 他の人間の気配はない。忠直のことだ。部下の命を最優先する選択をする。彼がその判断をできる人間であることはわかっていた。ただ1人のために戻ってきたり、誰かをこちらに寄越すようなことはしない。


 もう、誰も戻ってはこない。


「ここが俺たちの煉獄だ。なあ、親父。」


 桂花の目が死んでいない。かれは蓮と心中するつもりはないらしい。悲しいな。蓮はニヤリと不敵に笑った。


「当方は、随分と取り繕うのが上手になっただろう。貴様の殺した恩人たちのおかげだ。褒めてくれよ、親だろう?」


 隙をついて逃げようとした桂花を引き寄せて胸ぐらを掴んで持ち上げる。かっ、と彼の口から苦しげな声が漏れた。


「蓮、私を、殺す気か。」


 切れ切れにそんなことを言われても何一つ響かない。蓮は笑みを崩さない。


「貴様は俺を苦しめるために苦心していたようだがな、俺にはそんな思い入れはない。一息に、ゴミ屑のように打ち捨ててやる。」


 ぶんぶんと桂花の足が揺れた。体は恐怖で藻搔いているのに、彼の口元から笑みが消えないのが不気味で。


「……クッ、クッ、お前も、死ぬぞ。」


 まだそんなことを言えるのか。それだけは、賞賛に値するだろう。


「このときのためだけに狂った中身を隠して生きてきた。とっくに俺など壊れている。だから、ここで貴様と死ぬのがお似合いなのさ。」

 

 チャキ、と刀が鳴った。抜けば一閃、桂花の首を綺麗に跳ねるだろう。これで、終わる。積年の全てが、やっと。


「……!?」


 だが、刀が肉を切り裂くことはなかった。蓮は“有り得ない人間の気配”を感じ取って思わず振り向いた。

 その瞬間、この場を取り囲んでいた瓦礫の一部が吹き飛ばされる。感じたその『風』は、勿論。


「人の忠告は聞くもん、なんやろ!?」


 聞こえてきた声に思わず目を見開いた。ピシ、と飛んできた細かな礫が頬を切っても目を離せない。

 蓮はドサリと桂花と刀を取り落とす。走ってくる杷子の怒った表情に、彼は思わず笑ってしまった。

「ッ!!鬼崎さん!後ろ!!」

 杷子の叫びも虚しく、蓮の肩を桂花が刀で貫いた。その衝撃で蓮は思わず膝をつく。


「……愚かな息子だ。最後まで、獣にはなりきれなかったな。」


 桂花が刀を引き抜いた瞬間、血飛沫が。もう一度それを振り上げて蓮を斬ろうとしたのを杷子が庇うように遮る。

「この、外道!息子を本気で殺す気!?」

 大きな声を出して牽制するが、それに怯む桂花ではない。しかし、その一瞬の隙で十分だった。

 ズン、と空気が重たくなる。桂花の体は自然にくずおれて、からんからんと刀が落ちる。

「……ぐっ、これは、“旭兎美”の!」

 苦しげに呻く桂花に近寄る影が一つ。忠直だ。最近はいつもつけていた手袋を片方、外している。

「……ふっ、ははは、こんなところで、手の内を晒すとは、馬鹿な男だ。」

 桂花の嘲笑にも動じず、忠直は冷たい目で彼を見下ろす。そして、不快そうにため息をついた。

「池田、悪い。こいつの拘束を頼めるか。俺は手が離せない。」

 蓮を庇う姿勢のまま固まっていた杷子はハッとして慌てて『異能封じ』を取り出す。そのとき、目に入った忠直の顔はどこか険しかった。


「池田!課長!それに、旦那……ッ、この傷。」

 出てきたところで待っていたのは一巳。外は総務やら捜査課やらの職員がわらわらと後始末に駆り出されている。宵人や円が彼らに指示を飛ばしているのが遠くに見えた。

 蓮は杷子に肩を借りてずるずると足を引き摺るように歩いていて、桂花は忠直によって眠らされて連行されている。一巳はそれを見て顔を顰めた。

「よく歩けるな、あんた。榊さんはもう少しで到着する。池田、それまでここについてて。」

 頷いた杷子は蓮をその場に座らせる。彼は素直に応じて小さく笑った。

「……馬鹿。」

「すまん。」 

 会話はそれだけ。惣一が到着するまで後はずっと、蓮の手を握っていた。


 かくして事件は収束する。今回捕らえた鬼崎桂花と飴屋によって、“ラパノス”の内情が割れることになったのは言うまでもない。そして、この事件はあくまでも“旭兎美”を巡る争いの始まりでしかなかったことも。



 1週間後。夕方の事務所には置かれているソファで眠っている一巳とその手前のソファで難しい顔で資料を読んでいる宵人がいた。事件後、特に後処理に追われる2人だ。今は、束の間の休息。

 そのとき、ガチャ、と事務所のドアが開いた。忠直だ。宵人がゆっくりと資料から顔を上げる。

「お疲れ様です、忠直さん。」

 にこりと笑みを作りながら立ち上がって、宵人は忠直の分のコーヒーを淹れる。それで何かを察した忠直は持っていたものをデスクに片付けて宵人が座っていた場所の隣に腰掛けた。

「……飴屋。実名は木村きむら しょう。ラパノスの幹部にあたる男で、他に4人幹部がいることを教えてもらいました。一見楽天的で気まぐれに見えて案外職務には真面目な野郎です。……なまじ鬼崎桂花よりも組織の内部に対する造詣が深い。」

 寝ていたはずの一巳がいつの間にか目を開けていた。彼は天井を見ながら淡々とそう報告する。忠直はコーヒーを運んできてくれた宵人に礼を言いながら静かにそれに耳を傾けた。

「捕らえられた今でも旭兎美に関する情報を得たいようでした。相手は7年前の杉崎勇気事件と2年前のあんたと旭さんの事件から、今回の計画を組んでいるらしい。あまり旭兎美に対する情報は得られていなかった。」

 淡々と述べられる報告。それ以外には宵人がかちゃかちゃと動き回る音だけ。テーブルの一巳側にもコーヒーを置いて、宵人は元の場所、忠直の隣に座った。

「あれ、よいっちゃんまだいたの?明鈴が拗ねるよ?」

 不意にぐるん、と一巳の首がこちらを向いた。彼はいつものニヤニヤ顔で宵人を見ている。

「明鈴さんには帰りが遅くなるからしばらく会えないって伝えてる。……やめろ、その顔。」

 一巳のはあ?という顔を見た宵人は顔を顰めた。彼の言わんとすることはわかるから。

 余計なお世話だ、と首を横に振って、宵人は忠直の方を向いた。

「俺からも報告です。真中東弥、並びに鬼崎桂花から押収した『力を濁らせる薬剤』。発明課に解析してもらったところ、どうやら複数の『異能』が応用されたものらしい。ラパノスは水面下で大々的な人身売買をしていたようですね。だから、彼らは桂花を仲間に引き入れた。」

 宵人は持っていた資料を忠直に手渡す。その厚みに忠直が顔を顰める。これは、とあるリスト。胸糞が悪くなる。

「桂花の『異能』が解除された途端、局に行方不明者の情報が立て続けに入りました。なんなら局員も何人か行方不明になっていたようです。生死は不明。桂花が殺した、と明言した方については印をつけています。」

 これだけで犠牲者は何人に上るだろうか。忠直は険しい顔になる。鬼崎桂花。彼の『異能』は強力であった。こちら側に蓮がいたことと特務課は人数が少なかったことが幸いして、彼を捕らえることができたがそれができていなかった場合。

「運の要素がでかいけど、今回は池田の頑固さも幸いしたところはあるねえ。素直に俺の指示で退がってたら桂花の尻尾は掴めなかったかもしれないし。はあ、人生、どう転ぶかわかんないもんだな。」

 一巳は起き上がって頭を掻く。彼の指示で『裏』から引き上げ、蓮と杷子が2度と会わないことになっていれば。

 だが忠直は首を横に振る。

「それでもあそこでは退くべきだった。もし蓮が助けに来ずに、池田がこのリストに並んでいたとしたらゾッとする。」

 その未来も有り得なくもなかったのだ。今回はこうして、最終的に丸く収まったからそんなことが言えるだけで。

「……嫌な感じでしたね。知っているはずの人間を忘れてるってのは。」

 宵人の言葉に場がしん、と沈黙に包まれる。それぞれに何か思うところがあるらしい。

 ふと、宵人が忠直の方を見る。忠直はまだ物憂げにリストに目を通していて、その手にはここ数ヶ月でつけ始めた黒い手袋。実は結構前から気になっていたこと。


「…………忠直さん。」


 宵人の声に忠直が顔を上げる。


「あんた、何を企んでます?」


 いつの間にか、一巳も真剣な顔で忠直を見ていた。部下2人は何か不安のような違和感を感じているのだ。

「旭さんの『異能』、それを使えること自体は別段気になりません。ですが、あの濃度。まるで旭さん自身が放ったものみたいでした。」

 外からでも視えたそれは怖いほどに美しかった。兎美に初めて会ったときにも同じような恐怖を覚えたことを宵人ははっきりと記憶している。

 忠直は蓮を救い出し、桂花を捕らえるために兎美の『異能』を使って瓦礫を軽くして、杷子に吹き飛ばさせた。操作を得意とする忠直らしい精緻さで、彼の『力』のほとんど混じらないそれを視た宵人は不安に満たされたのだ。

「……大丈夫、なんですよね。旭さんを逃がすために忠直さんが彼女のものを何もかも全部請け負ったとか。そんなことはないんですよね?」

 宵人は忠直の自己犠牲を気にしているらしい。兎美の『異能』を使ったこと、それに関する説明がほとんどないことも。

「なあ、課長、勝手な行動やめろよ。ここにいる年月の浅い柴谷や池田を巻き込みたくねえ気持ちはわかる。俺だってあいつらは可愛い。」

 珍しく噛み付くように一巳が口を挟む。宵人から先に話を聞いていた彼は、そのときからずっと、忠直に対する不満を抱いていたのだ。

「でも俺らくらいには話してよ。あんたが弱味を見せないようにしてくれてんのはわかってる。だけど、もうガキじゃねえんだわ、俺たち。」

 きっと、2人は事前に話し合っていたのだろう。そして、3人になれるこのタイミングで話を切り出した。最近派手な喧嘩をしたこの2人は、より信頼関係を深めている。それは非常に心強い。

「……ああ。わかっているさ、お前たちの頼もしさくらい。」

 忠直は綻んだように笑う。その表情の柔らかさに宵人も一巳も目を見開いた。

「別に俺だけが犠牲になればいい、と卑下して話していないわけではない。まだその時ではないというだけだ。安心しろ。」

 少しは動揺を誘えるかと思っていたのに。顔を見合わせた2人は、小さく笑んでため息をつく。

「……ふーん。信頼してるかんな、忠直さん。」

 一巳はそう言うと立ち上がって伸びをした。定時はとっくに過ぎている。宵人もそれにつられたように立ち上がった。

「忠直さんもほどほどで帰ってくださいね。あんたの残業が多いって経理にこの前愚痴られましたよ。」

 コーヒーを啜っていると、帰り支度を整える宵人になじられてしまう。それには苦い顔になった。帰る理由がなければ、際限なく仕事をしてしまうのだ。

「ああ。心配してくれてありがとう。」

 部下の心配は疲れた体に染みる。去っていく2人の背中を見送って、忠直はぼんやりと自分の手を眺めた。

 ほんの少し、嘘をついてしまった。一巳にはどうやら気づかれてしまったようだが。

 自分だけが犠牲になればいいと卑下するわけではないことは事実。だが、もしも兎美を救う上で犠牲を払うのであれば、その最前線に立つのは自分だ。


「……俺は、もう誰も死なせたくない。」


 一巳が嘘について見て見ぬフリをしてくれたのはその想いを汲んでくれたからだろう。相変わらず、彼は優しい。優しすぎるほどだ。

 忠直にとって、部下は須く可愛い。入った時期など関係ない。彼らだけは、害されたくない。

 自分を生かす判断をした上司たちや、唯子もそんな思いでいてくれたのだろうか。

 あの頃とはまた違った雰囲気を持つこの部屋を眺めながら、忠直も帰り支度をするのだった。



「はあ!?いなくなったぁ!?」


 夜の診療所に杷子の叫び声が響き渡る。幸い、この部屋には惣一しかいなかったが、彼は迷惑そうに耳に指を突っ込んだ。

「杷子ちゃん、一応ここ病院だからね。」

 たしなめられて素直にしゅんとする杷子。それを横目で見ながら呆れたように惣一が言った。

「俺の『異能』でも全治2週間って言い含めたんだけど、『傷は塞がった。世話になったな、先生』って書き置きと共に部屋はもぬけの殻。ったく。次来たらベッドに縛り付けてやろうかな。」

 いつもニコニコしているその顔に疲労感と不機嫌さが滲んでいるのは少し珍しい。彼なりに今回は思うところがあったのだ。

「あの、先生。ワタナベさん、いえ、森みゆきさん。彼女は。」

 惣一がゆっくりと首を横に振った。その反応に杷子は目を伏せる。あれはお互いに苦い出来事だった。

 アスカは円によってなんとか助け出された。彼女も取り調べを受け、杷子への傷害行為、杷子と惣一の誘拐の手引きをしたということで留置所に送られた。そして、上の沙汰を待っている。

「馬鹿な人だよねえ。あんな危ない奴についていってまで自分の存在を消してもらうなんて。それほど俺のことが許せなかったのかな。……悲しいね。」

 紅茶を啜りながら微笑む惣一。杷子が気遣おうとしたのをスッと躱して、平常を繕うことができる彼はかなり大人だ。

「……いいんだよ。終わった話だ。今更慰められることじゃない。」 

 ぽつ、と吐かれた言葉に沁みる感情に杷子はこれ以上この話を聞くのが悪手であることを察する。たぶん、この先は忠直が受け止めるのだろう。それでいい。

「それよりも頭目殿だよ。信じらんない。今度顔見せたら首根っこ捕まえて俺のところに連れてくるんだよ?約束だからね。」

 冗談には見えない剣幕だ。杷子はこくこくと頷いて部屋を出た。


 蓮の見舞いをしに来たのに本人がいなくては意味がないではないか。はあ、とため息をついて杷子は帰路に着く。

 3日前に来たとき、蓮はまだ眠っていた。美しく伸びていた深紅の髪の毛はバラバラな長さに焦げてしまっていて、肩に刀が貫通した刺し傷。それにところどころに火傷があってそれはそれはひどいものだった。それでも生きていてくれたことに安堵した。彼には伝えなければいけないことがたくさんある。あるのに。

「あんのバカ、病院抜け出すなんて何事もよ。」

 口から漏れるため息は重い。今日くらいには目覚めているだろうと覚悟して来たのに。

 もういっそ言わないでおこうかな、なんて。今の距離感も悪くないではないか。掴めそうで掴めない。お互いにそれでも。……それでも。


 ピリリリリ ピリリリリ


 ん、と固まる杷子。電話だ。相手は。


「……どこにおっと。」


『はは、先生には謝っておいてくれたか?』


 蓮だ。呑気に笑いやがって。こっちは心臓に悪い思いでいっぱいだったのに。


「自分で謝って。私、鬼崎さんの保護者になった覚えはなか。」


『へえ、じゃあ何になってくれるんだ?』


「……それは。」


『待った。まだ言うな。』


 遮られて思わずはあ?と言ってしまう。終わったら聞くと言ったのはあんたの方じゃ。


『顔を見て聞きたい。……駄目か?』


 蓮の顔が見えるようだ。期待と、不安と、ちょっとだけの緊張感。答えなど大体わかっているはずだろう。


「…………いい度胸やね。」


 返す言葉はそれだけ。期待はさせない、というように杷子はフンと鼻を鳴らした。


『はは、そうだろう。……すぐに戻る。』


 それだけで電話は切れる。あちらの事情は、どうせ桂花が消えた後の『裏』の自治とかそんなところだろう。すぐに戻る。その言葉を信じて、杷子は。



 数ヶ月待った。夏は過ぎ、秋が来た。その間、蓮はぽつぽつと気まぐれに連絡を寄越してきて、杷子が拗ね気味に対応して。

 そのやりとりの最中、そういえば、そろそろ戻る、とすごく軽く言われてしまった。ふーん、そう。こちらも軽く流してあげたが緊張を背中が駆け抜けたのは事実。いっそ行きたくないとも思った。

 だけど、会いたくなかったわけではない。声を聞くたびにどうしているんだろうか、と思案していたから。

 そわそわしながら10月のある日、杷子は『般若の面』のアジトの前に立った。門はすぐに開く。

「お久しぶりです、池田さん。」

 対応してくれたのは蓮の側近である石原。にこやかに中に通してくれた。

「お疲れ様です、石原さん。今日はなんだか静かですね。」

 彼に頭を下げながら杷子は辺りを見回す。いつもならばこの時間まで結構な人数が残っていたりするのだが。

「ああ。先日やっと、頭目が追っていた件が落ち着きまして。皆には長期休暇を取らせているんです。私も今日はもうこれで帰ります。」

 『般若の面』は『裏』の自治の仕事も担っている。どういう社会でも、大きな影響力を持つ者が去れば下は混乱するのだ。その火消しに回っていたのか。にしても長期休暇なんて羨ましい。

「それは大変でしたね。大仕事だったんだ。」

 呑気にそう言う杷子に対して、石原はにこにこと笑いかける。その笑顔に含みを感じて杷子の表情が固まった。

「ええ。ですが1番動いていたのは頭目ですから。池田さん、どうか労ってやってくださいね。」

 真っ赤になる彼女を見て目を細めると、石原はそこで去っていった。いつの間にか、いつもの縁側の手前に到着していたのだ。

 角を曲がるといる。なんとなくわかった。緊張しながら行くのは癪だったので躊躇わずに踏み出した。

 蓮は、月の光が良く似合う。太陽のような明るいよく笑う人なのに、その目に差す影のせいか。

「……髪、短くなっとるし。」

 躊躇わずに縁側に腰掛けた。杷子の声に蓮が反応して、ふふ、と微笑む。

「ああ、似合っとるだろう。」

 腰あたりまで長く伸ばしていた髪はバッサリと切られていて、かなり短くなった。焦げた影響だろうか、それとも何かを断ち切ったからか。

「なんか、チャラくなった。」

「お前さん、失礼だのう。」

 悪態をつくと呆れたように頭を小突かれた。杷子は戯けたように笑っておく。心の中を悟られないように。

「久しぶりだな、杷子。会いたかったぞ。」

 蓮はニカッと笑った。見間違いではない。彼は憑き物が取れたような顔をしている。

「……そう。」

 それに見入ってつい生返事をしてしまった。蓮には怪訝な顔で見られる。

「なんだ、心ここに在らずだな。疲れておるのか。」

 心配そうに、というよりは拗ねたような反応。杷子がゆっくりと首を横に振ると、じゃあなぜ?と眉間に皺。

「鬼崎さんが、どういう気持ちで戻ってきてくれたんやろうって思って。」

 その言葉に蓮のいつもの飄々とした雰囲気が引き締まる。彼は一瞬難しい顔をして、杷子の話に静かに耳を傾ける姿勢をとってくれた。

「鬼崎桂花。まだ捜査中やけど、たぶんもう一生出てこれんよ。……もう、殺せんよ。」

 上手い言い回しは見つからなかったのでストレートに思ったことを伝える。蓮は、困ったように笑うだけ。

「私は、鬼崎さんがここにいてくれることを本気で嬉しいと思っとる。けど、鬼崎さんは?あんたの復讐を奪った私のこと、恨んどらん?」

 長い沈黙。蓮は答えを悩んでいるのではなく、どう言おうか考えあぐねているらしい。杷子は黙って彼が口を開くのを待った。

 蓮の悩む横顔を見つめる。月の光で紫がかる髪の色。小さく伏せられる目。そのどれもが、美しかった。

「……わからんな。」

 ぽつりとそう言われて、杷子の体にピンと緊張が走る。彼を止めたことに後悔はない。だけどそれに対して彼がどう思ったかに関しては不安でいっぱいだったから。

「だが安心しろ。悔いがないかと言われれば迷うが、お前さんのことを恨んではおらん。むしろ、ここに座っていられることは嬉しいと感じている。」

 杷子の迷いを晴らすように蓮は断言した。それに安堵して、それでも少しだけ罪悪感があった。

 そんなふうに不安そうに見たのがバレたのだろう。杷子は蓮に頭を撫でられる。まるで大丈夫だ、とでも伝えるように。

「それに、ここには“頭目”が必要だ。師父の意思を継いだ、強い頭目が。それは現状では当方しか成り得ない。お前さんは何も、俺から奪っただけではない。だから気にするな。どう転んでもこれが運命で、誰もなるようになったとしか言えないんだ。」

 そう言いつつ、その目は寂しげに揺れている。いつだったか。以前にもそんな彼を見たことがある。

「……そう。じゃあ、謝りませんよ。」

 蓮の出した答えを汚さないようにそう言うと、それでいいというように彼は頷いてくれた。正解などない事象だった。それだけは、2人の中で確かな共通項。

「お前さんが謝る必要などない。むしろ礼を言わなければいけなかったな。助けてくれてありがとう、杷子。」

 蓮にきっちりと頭を下げられて、杷子は小さく頷いた。だけどありがとうと言わなければいけないのは、こちらの方。

「ねえ鬼崎さん。貴方がいてくれて、本当に良かった。たくさん助けてもらったのは私の方だもの。」

 蓮の方は見なかった。ただ、推測で彼の手を手繰り寄せて自分の手を重ねる。

「でもいなくなるのはナシやろ。この期間、あんたが心変わりせんか不安でたまらんやったとよ。」

 拗ねたように訴えると重ねていただけの手に指が絡まった。それだけでもなんとなく彼の言いたいことはわかったが、一応言葉を待つ。

「心変わりなんてしていない。ずっと、待っていた。俺は変わらずお前さんのことが好きだ。」

 別に、ロマンチックでも何でもない。さも当たり前のようにさらりと。うん。それくらいでいい。

 杷子は蓮の顔を見上げた。たまに影のさす眼差しは今、切なげに揺れている。いつからかはわからない。自分が“好き”という感情を彼に抱いているかも定かではない。だから、ありのままに言おうと思った。


「……鬼崎さん、抱き締めてもいいですか?」


 蓮の袖を引く。予想外の言葉に彼がきょとんとするのがわかった。でもそのまま続ける。


「たまに、貴方のことを無性に抱き締めたくなります。掴みどころない人だから、ちゃんとこの手を掴んでいたくなります。こういうのを、好き、と表していいんでしょうか。」


 蓮に言い寄られるとやけに素直になれなかった。いつも、適当に告白されれば付き合って、適当なタイミングで別れていたから、彼の目がわからなくて怖かった。

 そしてそれが自分の欲しいものであることに気づいて更に抵抗感は強まった。応じたら離れられなくなる。それを受け入れて欲しいだなんて傲慢すぎて。


「曖昧で、よくわからんけど、でも抱き締めたいと思いました。貴方ならそれを受け入れてくれるんじゃないか、とも。だって、貴方は。」


 蓮の目を見る。呆気に取られたようにこちらを見られるとすごく恥ずかしい。


「鬼崎さんは、私のこと、可愛いって言ってくれたけん。」


 素の方が可愛いなんて、誰も言ってくれなかった。取り繕っている方が従順そうでウブそうで楽だって。

 そんな杷子に素を見せるように言ったのは蓮。最初は嫌だったのに、慣れると心地よかった。ずっと取り繕う労力と罪悪感に辟易していたのだと思う。

「あんたのおかげで変われた。本当に感謝してる。……たくさん迷惑かけた私がおこがましかけど、その、鬼崎さん、私の恋人になってくれますか?」

 なるべく震えないように意識して、でもやはり恥ずかしくて、おずおずと蓮を見上げる。すると、彼はよくわからない表情をしていた。そのまま黙ってしまう。

 え。もしかして悩んでる?いざ言葉にされたら何か違ったのだろうか。不安になった杷子は取り繕うように口を開いた。

「あ、でも、よく考えた方がよかと思う。だってほら、頑固極まりないし、気強いし、女の子らしい格好は本当に似合わんし、本当にあんたのこと好きかどうか……。」

 話の途中で頬に手が添えられる。蓮はいつの間にかニッと笑っていた。どうやら、杞憂であったらしい。キスされる。もう今日は寸止めはない。これ以上ないほど顔は真っ赤で、照れて繕えもしなかった。

 柔らかい感触が重なった。離れて、また。そうやって何回も重ねられて、少し余裕の出てきた杷子はぐい、と蓮の肩を押した。

「……ッ、何回する気?」

 別に嫌だったわけではない。だけどさすがに恥ずかしくなったのだ。押し退ければ蓮もいつものように笑って返してくれる。そう思ったのに。

「敬語を、使ったな。」

 ものすごく真剣な、というか飢えた目で見られて杷子はヒュッと息を吸い込んだ。

「そ、それ、もう、無効じゃ……。」

 慌てて逸らそうとした杷子の視界は、ぐるんと回った。見下ろしてくる蓮の顔が嬉しそうで何も言えない。彼の気の済むまで付き合って、最後にぎゅうっと抱き締められた。

「わからなくても、お前さんが俺に対するそれを好きでいいと思ったならそれでいい。ここから先は、俺が面倒を見よう。」

 体を起こすのを手伝ってもらいながらそう言われて、杷子は目を丸くする。面倒を見るって。

「あはは、それ、なんだかプロポーズみたいやね。口説きすぎて緊張感なくなっ……え、マジ?」

 揶揄うつもりで放った言葉を蓮は『ふむ』というように真面目な顔で聞き入れている。こういうのって、男性の方が躊躇うもんじゃないの。杷子は思わず鼻じろんだ。

「……ああ。それでも一向に構わんな。お前さん、結婚に関してはどういう考えを持っとる?籍を入れたくないとか、子どもは望まないとか、そういうのは。」

「ちょちょちょ、私、まだあんたのこと好きってしか言っとらん!」

 慌ててその腕をべしべし叩くと、蓮がニヤッと笑う。何気なく吐いた好き、が嬉しかったらしい。なんかムカつく。

「まあ、それもそうだな。焦りすぎか。」

 先程押し倒されたのでぐしゃぐしゃになっていた杷子の髪の毛を整えながら蓮が微笑む。言葉では退きつつ、その目は2度と逃がさないと語っていた。

「……でも、別に、私は一緒におれるなら何でもよか。今すぐには困るけど。」

 だけど杷子にとってもやぶさかではない。むしろこの前のように距離を取られて逃げられる方が困るのだ。結婚というのが、この雲のように揺蕩う男の枷になってくれるのであれば、杷子は躊躇わないであろう。

「そうか。なら、あれだな。結婚を前提に俺と付き合ってくれ、が適当か?」

「……うん。それで、よかよ。」

 互いにニコリと微笑んだ。どちらからともなく手を繋いで、杷子は蓮の肩にもたれかかる。新しい距離感も、なかなかどうして悪くない。

「それと、そうだった。これを。」

 それに浸っていると、ふと思い出したかのように蓮が懐から小さな紙袋を取り出した。なんだろうか。手渡されて袋の上からその形をなぞると、何やら硬い感触。恐る恐る杷子は中身を取り出した。

「……ポッペン。」

 小さなサイズの青いポッペンが中に入っていた。月の光に透かすと青白く鈍く光る。

 いつの間に買っていたのだろう。蓮の方を見ると、彼は穏やかな顔を向けてきた。

「杷子、母君のことは許さなくていい。お前さんの思うがままに恨むといい。血の繋がりなど、人によっては厄介なものでしかないからな。」

 地元での出来事を彼なりに気にしてくれていたのか。別にそんなことしなくてもいいのに。とっくに母親については諦めている。

「だが、お前さんが幸せだと思った瞬間は大切にしてほしくてな。きっと、何かの心の支えになることがあるから。……いや、踏み込みすぎか。忘れたければそのビードロは捨てろ。」

 このポッペンは、確かにもう余計なお世話なのかもしれない。だけど葛藤しながらも蓮が自分の事情にどうにか向き合おうとしてくれたことが嬉しかった。杷子はポッペンを紙袋にしまうと月を見上げる。

「お母さんに関しては一生許さんよ。そう、決めた。いくらあの人にもらった幸せな思い出があろうと、捨てられた傷は癒えんもの。」

 自分を捨てた先で幸せに出会えたならば、捨てた子どものことなど知らない顔して生きるべきだ。そして、悪役に殉じて欲しい。許されない存在であって欲しい。

「でも、これは大切にする。だって、鬼崎さんがくれたもんやけんね。あんたがくれた、大切な幸せな思い出。」

 ニカッと笑みを向けると、蓮は嬉しそうに目を細めてくれた。彼は杷子の出した結論にそれ以上口を挟まず、ただただ手を握っていてくれた。

 見上げた月は青白い。そして、この夜は穏やかだ。きっと、そのうちまた忙しくなる。誰かさんは近いうちに嵐と共に戻ってくるだろう。

 今回のことで憧れた背中に少しでも近づけただろうか。そうでなくても何か吹っ切れた気がするのだ。きっと、これはいい方向に転がる。自分にとっても、仲間にとっても。

 今はただ、隣にいる甘えられる背中と好みの空気を作っていけばいい。そうして彼女を驚かせるのだ。私にも、隣にいて欲しいと願える相手ができたよ、と。


                 (custard 完)

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