心当たり その1
「大倭ーっ!!!」
「ねぇ大倭が隠れてたのって、ここら辺であってるよね…」
「うん、ここだよ…間違いない」
大倭を探しにようやく現れた芙美達は周囲をぐるりと見回すが、そこには大倭の姿も犯人の姿も見当たらず、声も気配も感じられない。
3人は手にした懐中電灯やスマホのライトで辺りを照らすが大倭の姿を確認する事は出来ず、焦る気持ちが強くなっていく。
「大倭!聞こえてるなら返事して!!」
どこまでも響き渡る声に返答はない。
聞こえてくるのは鳥と虫の鳴き声だけだった。
「ダメ…スマホも繋がらない。電源が切られてるみたい…」
琴は何度も番号を押すが機械的な音声が流れるだけで、大倭が出ることは無かった。
「そんな…それじゃあ大倭くんはどこにいるのよ」
「犯人を追い掛けて行ったのか…それとも今ごろ犯人に捕まって酷い目に遭わされてる…とか」
「ちょっと琴!そんな怖いこと言わないでよ」
「だって…」
珍しく弱気な琴の様子に、孝美も不安が募っていく。とり憑いた不安はあらぬ妄想を煽り、脳裏に過るのは深刻な出来事ばかりだった。
「ととと、とにかく事態は一刻を争うから、早く大倭くんを助けなきゃ」
「そうだよね…」
琴と孝美は広がっていく不安を掻き消すように頷くと、先程から静かに佇んだまま微動だにしない友人へと視線を向けた。
「……やっぱ………か…とも」
ぶつぶつと独り言を繰り返しては顎に寄せた指は忙しなく動いている。
「…?!芙美…どうしたの…?」
声を掛けるがその声は届いていないようだ。
眉間に寄った皺はどんどんと深くなっていく。
「やっぱり、そうだよ!!」
「「な、何が?!!」」
芙美は突然大きな声を上げると傍らの琴と孝美には目もくれず、スマホを取り出すとどこかへと電話を掛け始める。
「もしもし芙美です。突然すみません、ちょっと確認したい事があるんですが…」
琴と孝美は訳もわからず芙美の様子をただ見詰めるしかなかった。




