犯人探し その2
「あっ!大倭くん、ちょっと聞いてよ~この2人ったら酷いのよ~私を襲った犯人の似顔絵を描いたから明日は犯人探しに行こうって言ったら、用事があるから無理って冷たく断るんだよ」
孝美は大倭の姿を見るや否や味方を得たとばかりに犯人の似顔絵を握りしめ、大倭の腕へと纏わりつく
「ちょっと孝美!面倒臭いから大倭を巻き込まないでよ!!」
と言ったところで孝美が素直に聞くわけもなく、どこから出てくるのか孝美は鼻にかかった甘ったるい口調で大倭に話し掛ける。
「ふんふん、なるほどね~俺も家族の恥だからあんまり言いたくないんですけど、うちの姉って人間が本当に冷たい意地の悪いやつなんですよ。自分中心で人の事なんてどうでもいいって感じでね~その代わり俺でよかったら、いつでも相談にのりますから」
大倭は腕を前で組みながら芝居がかった大袈裟な口調で孝美に応えると、チラリと芙美に視線を向けた。
「ありがとう大倭くん!大倭くんて顔だけじゃなくて内面もイケメンなのね」
「いやいや俺なんてそんな誉められるような者じゃないですよ」
「しかも性格まで謙虚~!!」
孝美に煽てられ単純な大倭は気はどんどん大きくなっていく
「しかし犯人も何の罪もない女性を襲うくらいなら、こういう極悪人こそ襲って欲しいんですけどね~」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべると大倭は親指の先を芙美に向けた。
「誰が極悪人よ!調子にのるな!!」
「イテッ!!!」
怒声と共に芙美の手刀が大倭の頭上へ振り落とされた。
「痛ぇな!何すんだよこの暴力女!!」
「自業自得でしょう。ギャーギャー煩いのよサルのくせに」
「誰がサルだ!お前こそゴリラ女じゃねぇか!!」
「なんですって!!」
近所でも評判の大和撫子で通っている芙美にとっては、ゴリラ女呼ばわりは聞き捨てならない呼び名だった。
「外ヅラばっかり気にしてるから、顔の皮膚がそんなにぶ厚くなるんだよ!そんな奴より俺のが頼りになるってところを見せてやるよ」
そう言うと大倭は孝美の手にしていた犯人の似顔絵を奪うと勝ち誇ったように鼻息を荒くする
「モタモタしてると俺に先を越されるからな~」
自信たっぷりな台詞を残し、大倭は似顔絵を手に意気揚々と立ち去って行った。
「……あの似顔絵で犯人捕まえられるかしらね」
「絶対に無理だろうね」
「だよね。てかさ、アイツって何であんなに私に絡んで来るのかなぁ?」
「……し、思春期とか?」
「思春期?!思春期ねぇ…」
「……」
大倭の背を見送りながら、芙美と琴の悩みが解決する事は無かった。




