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目の前が真っ暗から始まる(2回目)

「ふがっ!」


苦しくて飛び起きた。


「ぺっぺっ、おぇ」


口の中にざらつきを感じ、嗚咽混じりで吐き出した。

真っ暗だ、いや、目蓋が糊付けされたように開かない。何かがくっついている。指でガサガサと目のあたりを引っ掻くように何かを剥がしている内にまだ閉じたままの目蓋の向こう側から陽の光を感じた。


ようやく目を開けると陽の光が差し込む。

朝になっていた。


「うぇえ??」


呆けた顔から飛び出した声だけが情けなく感じる。

静謐な陽の光が反射する幻想的な森の中に、もうそろそろ三十路になろうかという男がひとりで、アホ面を引っ提げているのだからこの感想も仕方ないであろう。


自身の置かれた状況に情けなさを感じつつも、気絶直前の状況を思い出し、ゆっくりと立ち上がり体に異常は無いかを確かめた。


全身から何処か懐かしい肥溜と同じような匂いがする以外、特に異常は無さそうだ。

気絶前に顔面から落ちたからだろうか、少々顎に違和感を感じつつも、寝相が悪い時に時々ある、何時もの事かと流した。


少しずつ状況が整理できてきたからだろうか、気分が良い。


一晩寝ると人は大抵のことを忘れるというが、こんな状況でも同じようだ、昨日の混乱を忘れたように思考がスッキリとしている。


きっと嫌な事でも忘れたのだろう。


(さて、と)


無駄だとは思いつつも、匂いがどうにかならないものかと服をはたきながら周りを見回す。


記憶にある光景と同じように、背の高い木々の合間から入ってくる光と、それを受けながらもどこか暗さを感じる遠景、また、今立つ場所を含めて所々フカフカと足下を優しく押し返す苔と草。


やはり、置かれている状況自体は変わらず意味が分からない。


ただ、分からない境遇ながらも状態の変化はあったので考察していきたい。


まず、30秒程歩いた場所にあった筈の例の小山は無くなっている。

次に、寝入る直前に見ていた球体は記憶違いでなければ心なしか大きくなり、楕円形に変形しているようだった。

また、目の前の大木の根にあるコブの上にコンビニで買った弁当が置いてある。


今まで座っていた場所に置いてあるのだから、恐らく尻の下にでも敷いていたのだろうか?


若干混乱しながらも空腹を前にして理性は保たれないらしく、弁当を手に取ると代わりに尻をコブに乗せ、特別へこんだ様子もない弁当の蓋を開けた。


この弁当は俺がコンビニで買ったやつだ。


シンプルなシャケ弁当に生姜焼きが添えられた一品。薄味過ぎるシャケ部分を生姜焼きの塩辛さが補ってくれるため、不完全同士が互いを補い合う形になっており、助け合い弁当と勝手に呼んでいる。


ぶっちゃけおかず単品同士が不味いため、不人気だから今日の入荷でおしまいだよ。とレジの田中さんに言われた記憶も新しい。


お弁当不評をしているようで癪だが、このお弁当は更なるマイナスポイントがある。


生姜焼きの部分、ここにはコンビニお弁当の工夫で、周りの味を阻害しないようにゼラチン状にタレを固めており、温めると初めてタレが溶けて肉に絡まるという考えた人を褒めたい仕様ではあるのだが、だがしかし、コンビニ弁当の宿命である、袋内での傾きを少しでも加えるとご飯にタレが吸われてしまうという構造的な欠陥を抱えていため、タレは肉をほぼスルーしてしまい、後に残るのはタレにディップされる事を見越して中々しょっぱ目に調理された味薄めのお肉と、味の濃いおかずの箸休めように置かれた塩み薄めのシャケと汁だくの米である。


それぞれで見たらとてもじゃないが食べたいとは思えないが、俺は裏技を使っている。

単品同士がダメなら、混ぜたらいいじゃないか。


そう、俺はすべてのおかずを米とガッツリ混ぜ食べる事で、全ての問題を解決に導いた。


さて、話は戻り現状の考察であるが、このお弁当、温めて持ち帰ると、具体的には5分以上の持ち歩きをするとその間に汁が米に吸われて尽くしてしまう。


だが、今俺の手元にはブツリと意識が途切れた場所、コンビニから1分程の路上時点のもので、その時点ではまだ気を付けていたためであろう、見事な白米と汁だくだくの生姜焼きが乗ったお弁当がある。


お弁当の白米に乗る小指の先程の梅を食べつつ、辺りを見回すが、そんな近くにレンジは無さそうだ。


走ったら確実に米は汁だくだし、いったいどうなっているのだろうか。


このお弁当を買い続けるなか、初めてお肉を生姜焼きのタレに存分に絡ませつつ考えるが答えは見つからない。


テラテラと陽の光を反射する生姜焼きを口に運び、その初体験に感想を言うも、状況は変わらないままだ。




ハッキリ言いましょう、不味いです。


ちなみに次のページ途中まで主人公は最ッ高にハイです。


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