能ある鷹
ちょっとしたバトルシーン?があります。
「僕の彼女に手を出さないで頂きたい。」
なるべく丁重に断ったつもりだったが、どうも効果は無かったようだ。
「俺に逆らうとは良い度胸だ。やってしまえぇ!」
複数の私兵が長槍を突きつけてくる。
彼らからすれば、この距離で相手は魔法でも使わない限り攻撃できない。仮に使われたとしても魔法不正使用で治安部隊に連行される。負ける余地はないということ。
私兵らは一斉に突貫した。
銃声が響く。
長槍が落ち、私兵らが手を押さえ呻く。
この一瞬の出来事に民衆も目を疑った。
ルガルはコートの中から撃ったため、周りから見たら何が起きたかは分からない。それこそ魔法を使ったと思っただろう。
「・・はっ。馬鹿め。この街で魔法を使うとは。」
いち早く言葉を取り戻したのはスダムだった。余裕の中に焦りの滲む声。銃という存在を知らないのだろう。
「あなたも魔法を使えば良いのでは。使わないのであれば、次は貴方の鼻孔を1つに繋げてあげましょうか?」
「くっ、、 お前は少々痛い目を見たほうが良いようだ。」
スダムは牛車から降りた。頭上にサッカーボール程の火球が5つ現れた。いつの間にか2人の周りからは人が居なくなっていた。
「喰らえぇぇ!!」
火球が2人に向かって飛んでいった。ヴェルはどうすることもできずルガルにしがみつく。
が、火球は2人に接触する前に消滅した。
「馬鹿なっ!」
スダムは繰り返し火球を打ち続けるが結果は変わらない。スダム、観衆、ヴェルさえも何が起こったのか分からなかった。
観衆の1人が、にいちゃんスゲェぞ。と囃し立てる。それにつられもう一人。また一人と。観衆から拍手が飛び交う。
スダムは怒り狂った。先程よりも数倍大きな火球を両手に抱えた。逃げ惑う観衆。それに乗じて、ヴェル達はその場を後にした。
突然空から巨大な雨粒が投下され、火球はすぐさま鎮火された。
直後、黄色い髪の青年が空から軽やかに降り立った。
「はーい。治安課でーす。大人しく投降してくださーい。」
西洋建築には似合わぬ和風の角袖を羽織り、袴をはいている。
治安課の制服だ。
「魔法不正使用でスダム・サタ・トゥルーエ。あなたを現行犯逮捕します。」
青年はスダムに手錠を掛け連行する。
「待った!なんで俺だけなんだよ。彼奴も同罪だろっ。」
だが彼は真っ当な理由を持って否定する。
「観測された干渉波は貴方のもののみでしたが。」
スダムは納得がいかないようで抵抗を続ける。手錠には魔封じの効果があるため魔法は使えないが。
まだ何か言いたいようだ。口を開きかけた時、空からまた何かが降って来た。
「シーノールゥ〜〜」
スダムは避けることができず。そのまま下敷きになった。
「ライ。遅い。」
「犯人はいずこ?」
「今お前が踏んでる。」
降って来たのは角袖を羽織った少女だった。
「おっとこれは失敬。」
ライはサッと飛び退く。
「うっ、、、」
手錠のもう1つの効果。簡単には死ねない。罪人の自殺を防ぐ目的がある。
その後、治安課の彼らはスダムと私兵を牛車に積み、帰っていた。