荷造り ①
魔樹の幹が不規則に絡み合い、アーケードのようになっている。
2人は商店街に来ている。ヴェルは、見る物が全て新鮮のようで、目を輝かせている。
すれ違う人々の視線など、全く気にしていない。
しかし、周囲の人間からしたら、ドワーフと人間のハーフが獣人を連れている。それ自体がおかしいのだ。
ヴェルの耳は、ルガルの事を悪く言う声に反応した。そしてルガルを見上げる。
「・・・ルル。」
「あとで話す。」
ルガルは前を向いたまま答えた。ヴェルはそれ以上聞こうとはしなかった。
しばらく歩き、とある服屋に入った。
「おお、ルガルじゃないか。」
店の中には、頭巾を被った幼い女児がいた。
「お久しぶりです。ザン師匠。」
ヴェルは耳を疑った。その幼女の事をルガルは師匠と呼んだと。
ザンは、ヴェルが戸惑っているのに気づき、頭巾を下ろした。ヒョコッと、尖った耳が現れた。
つかの間、さっきまでの笑顔が曇った。
「その娘、獣人か。まさか奴隷に手ぇ出したんじゃないだろうな?」
先ほどまでの愛らしい表情とは打って変わった形相でルガルを睨みつける。
それに対してルガルは、冷静に答える。
「まさか。この前、軍の取り残しの中で拾ったんですよ・・・。今は彼女という設定で。」
と言っても、ルガルは内心、首環外しといてよかったと安堵した。
ザンは、いろいろと察したようで元の無垢な顔に戻った。
「で、その娘、、」
「ヴェルです。」
「ヴェルちゃんに会う服を買いに来たと。」
「さすが師匠。話が早くて助かります。」
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ヴェルが服を選んでいる間の2人の会話。
「そうじゃ。これの弾、今持ってるか?」
ザンは、痛々しいデザインの拳銃を取り出した。これはルガルが護身用にと渡したものだ。
「持ってます・・使ったんですか! この前、お前らはつまらんものしか作らんな。とか、おっしゃってたのに。」
お前らというのもキリクも同じようなデザインのナイフをプレゼントしていたのだ。
2人は、ザンの好みを知っている。
「緊急事態だったんじゃ。ナイフは私の腕の長さでは届かなくて、これを使わなかったら私、犯されていたぞ。全く東からの移入者は。」
ザンは思い出して身震いをしていた。
「最近は王都の方から人間が沢山来ていますからね。それにしても、キリク以外にもそんな思考の持ち主がいたとは。こんな・・」
ルガルはザンの胸部を見る。
「まなぃ 痛っぁあ。なんで叩くんですか!」
「ふんっ。ヴェルちゃんの様子見てくる。」
ルガルは無意識に言ってしまったが、ザンの耳に届いた結果こうなった。
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服選び終了。
「ザンさんすごいです。服がこんなに沢山!」
「私だって普通の服くらい作れるのだ!」
「?」
いつの間にか仲良くなっていた。
用も済み、2人は帰宅する
「ありがとうございました。今度は刀にするようキリクに伝えておきますね。」
みなさん良いお年を〜