苦痛を克服するには?
なかなか筆が持てず、エタるところでした。
「私は憎い! 何も知らずに過ごしている人間が! 私達を滅ぼして喜んでいた人間全てが憎い!」
クロユリの怒りを体現するように、影が荒れ狂う。そんな中、俺の体は冷静に対処していく。
左右から迫ってくる影は後ろに下がって避けて、前から飛んできた影は右足を軸に回って回避する。
すごい……そんな感想しか出なかった。
ちなみに、俺は別にプレイヤースキルが無い訳ではない。むしろゲーム時代ならトップ10に入ることが出来た。それでも、今の体の動きを真似できるかと聞かれたら、多分無理だ。
なぜなら今の動きをするには、全体の動きをきちんと確認して、その数手先の動きを予測して最善の動きを行わないといけないからだ。今の俺では同レベル帯の動きを予測することは出来ないだろう。まぁ予測できなくても誘導は出来るけど。
そう考えていると、俺の体の口から無視出来ない言葉が聞こえてくる。
「ふむ……時間が足りないな……」
「なら……さっさと死んで!」
クロユリは今の声を拾っていたのか、先ほどよりも攻撃が激しくなる。
…………今気づいたけど、カルマの意思の活動時間が無くなったら、俺……死なね?
もし体があったのなら、俺の顔は青く染まっていたことだろう。
残りの活動時間は14分26秒。
ヤバイ! 俺の意思が戻ってもファントムペインで気絶させられる未来しか見えない! ど、どうしよう!
俺は悩みに悩んで、1つの意見を思い浮かべる。
〈鑑賞〉が出来たってことは、スキルが使えると言うことだよな? ……今の俺は、もう気絶してる状態だから意識が無くなったりはしないはずだ。
俺は深呼吸をする。
……嫌だなぁああ! それでも、やらないと死ぬよな……はぁぁぁぁ………………やるか。
俺は覚悟を決めて、ある魔法を自分に掛ける。
その瞬間体中に痛みが走る。
『ッ!! ひぐっ!! ぐうぅぅ!!』
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!! 終われ!! 早く終わってくれぇぇぇええ!!
♢ ♢ ♢
『はぁ……はぁ……はぁ…………はぁ……………ふぅ……………やっ……やっとだぁあああ!』
あれから12分ほど立った頃。俺は苦痛を乗り越え、目的のスキルを手に入れていた。目的のスキル、それは…………〈苦痛耐性〉だった。
『滅茶苦茶辛かった! マジでめっっちゃ痛かったもん! どれ位痛かったか例えると、腸炎の2倍は痛かった! マジで! それでも気絶できないとかマジで地獄だった………………体があったら、汗で水溜りができるくらい』
俺があの時使ったのは、相手に痛みを与える〈ペイン〉と言う闇魔法だった。一応言っておくが、本来は魔物に使う魔法であって、決して自分に使う魔法ではない! と言うか、ゲーム時代なら痛みがないからプレイヤー相手じゃ意味がない。
まぁそんな魔法を自分に使った理由は、手に入れたスキルを見てくれたら分かるだろう。簡単に言うとファントムペイン対策だ。
……それにしても〈苦痛耐性〉があって良かった。もし無かったら、世界を破壊するところだった。冗談抜きで。
まぁそれは良いとして、〈苦痛耐性〉が有ると無いとじゃ全然違う。痛みは変わらないけど、我慢して動ける位には余裕が出来た。
これならさっきの痛みも耐えられるだろう。
俺はスキルの便利さを噛み締めながら、体に戻る時を待つのだった。
最後まで読んでいただき感謝いたします。ご指摘、ご感想お待ちしております。
ブックマーク190件ありがとうございます!あと1000PVで5万PVを達成します!……………絵はどうしようか。まぁ、思い浮かんだら描きます。
…………腸炎って、悟りを開くような痛みですよね。(体験談)