桜子ちゃんVSジュルジュル
洞窟内を歩くアホの子と桜子ちゃんの2人。
アホの子がふんふふーんと鼻歌を歌いながら先頭を歩き、スライムを見つけ次第腕を突っ込み核を取り出してポケットに入れている。
「あ!!」
突然アホの子が声を上げたかと思うと走り出した。
「ま、待ってください.......!」
一拍遅れて桜子ちゃんも必死にアホの子の後を追う。
「安さん、ど、どうしたんです……?」
「見てこれ桜子ちゃん!!このジュルジュル色が水色だよ!!美味しそう!!」
「は?」
(突然走り出したから何かと思えばそんな理由。
まぁ、確かに?そのスライム水色だけど.......美味しそうとは思えないかなー.......。)
そんなことを思っている桜子ちゃんの目の前で、アホの子は大口を開けると水色のスライムを一口食べた。
「えっ!?安さん!?それ食べ物ちがっ!」
慌てる桜子ちゃんに対してアホの子は、んー、と言いながらモグモグと口を動かしてスライムを食べている。
ゴックンとスライムを飲み込むとパァっと笑顔を見せるアホの子。
「このジュルジュルなんかおいしー!!口の中シュワシュワすんの!!炭酸ゼリーみたいだよ!!」
呑気にそんな事を言っているアホの子に慌てる桜子ちゃん。
(いやいや!?それ口の中溶けてるんじゃないの!?溶けてるって絶対!!いや待って普通スライム食べる!?状態異常とか普通なるでしょう!?)
桜子ちゃんは慌てて持っている謎の本を開くとアホの子のステータスを確認する。
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アホの子は 毒耐性弱 を 獲得した!!
ついでに 麻痺耐性弱 も 獲得した!!
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(ほらーーー!!やっぱり毒ってるんじゃん!!)
桜子ちゃんが内心で叫び声を上げている間もアホの子は水色のスライムを食べ続ける。
水色のスライムを食べていたアホの子の方から突然、ガリンっゴリんっバキンッと音がし始めた。
「えっ!?や、安さん!?何か凄い音がしてるけど.......!?」
「んー?ひゃにー?ひゃんかいっひゃひゃー?」
口をモグモグと動かしながらアホの子は答えるものの、その間もガリリッバキゴッゴガッと酷い音が続いている。
「も、もしや.......歯が折れている音じゃ.......!?」
「はくらほひゃんひゃにいっひぇんのー?」
ゴガッゴギッゴギンッ
バリゴッバギャンッガリョッガリョッガリョッ
「あの.......?安さん.......?」
桜子ちゃんが心配する中アホの子はモグモグと動かしていた口の中のモノをゴッキュンッと盛大な音を立てて飲み下した。
「はー!このジュルジュル飴ちゃんあったよー!何も味しなかったやー!ん?」
アホの子はスライムが乗っていたはずの手のひらを見て首を傾げる。
「あれー?ジュルジュルいなくなっちゃったー。なんでかなー?」
(多分それそのスライムの核を食べたからだと思います。スライムの核って食べれるんだねー.......って違う!!私までそんな思考に染まってどうするの!?スライムは!!食べ物じゃない!!)
思わずアホの子に染まりそうになった桜子ちゃんは目を閉じて深呼吸を繰り返しして、暗示を掛けるように自分の中で何度も、私はアホじゃない、と繰り返す。
「ふぅー.......」
落ち着いて目を開けた桜子ちゃんだが、目の前の光景に頭の中がフリーズする。
ジュルルルルルルルルルッ
アホの子が凄い勢いで水色のスライムを飲んでいたのだから
綺麗に水色の核だけを残すと、核はポケットに突っ込み、また別の水色のスライムを鷲掴み吸う。
を繰り返していた。
(.......どうしよう。取り敢えず、安さんのステータス確認しとこうかな.......。)
謎の本を開くとそこに早速文字が出た。
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アホの子は 毒無効 麻痺無効 を獲得していた!!
次は何を獲得するかな?ワクテカ!!
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(あ、もう獲得してたんだ.......。うん。そしてこの本ウザイ。誰なの!?これ書いてる人!!)
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ヒ ミ ツ (ハート)
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(うざーーーい!!!)
ぶんっと本日3度目の本の投擲を行う桜子ちゃん。
シュルシュルと音を立てながらブーメランのように帰ってくる本。
桜子ちゃんの目の前で止まり、開かれた頁
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だーかーらー、ムダって言ってんじゃん?
一生付き纏ってあげるから感謝してよね!
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(どこも何も感謝できるかーーー!!!)
実際に叫ぶことも出来ず内心で叫ぶ桜子ちゃん。
疲れてゼェハァと肩で息をしているとアホの子がやって来て、ニコニコしながら水色のスライムを差し出してきた。
「桜子ちゃんも食べてみなよー!美味しいよー!」
「いえ.......あの.......私は、遠慮しておきますね.......」
(プルンプルンと揺れる水色のスライムを前に私は絶対に食べるもんか。
たべ、食べるかー!!近づけるなー!!)
アホの子は良い笑顔で桜子ちゃんの顔面に水色のスライムを近づけていく。
私は両手を前に出してそれ以上スライムが来ないよう制止しようとする。
「あああああの.......!そんなに.......!近づけないで下さもがァ!!」
意味がなかった。
顔面、と言うか主に口中心に水色のスライムがアホの子によってベチャァと音を立てて張り付いた。
喋っていた途中に突っ込まれたせいで口の中に水色のスライムが入ってくる。
ジュワッと口の中が溶かされる感覚に焦って水色のスライムを取ろうとするが、ヌメっていて取ることが出来ない。
私は思い切って口の中に入っている水色のスライムを噛み切ることにしてみた。
「.......ん?」
スライムを噛んでみるとどこかで食べた事のあるような噛みごたえがする。
「んん?」
さらに私はスライムを噛んでみる。
この、呼び起こされる古い記憶、これは.......。
(ゼリーだ。
しかも駄菓子屋で売っている細長くてピンクとか水色とか紫に黄色、緑とかの色があるあのゼリーみたいな)
そんな感触がこのスライムにはある。
(モチモチっとしていてツルッといける。
ヤバい、これはゼリーが好きな人はハマってしまう気がする
これはゼリー大好きな私もちょっとヤバいかも.......)
テロテロテロレンッ
あの音が頭の中に響き渡りレベルが上がった音がする
と、同時に浮いている本が開いた。
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桂木桜子 は 毒耐性中 を手に入れた!
ねぇ、普通の子はスライム食べないのに何食べてるんですかぁープスゥーwwwwwwwww
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(で す よ ね ー。
めっちゃムカつくこの本。本当に捨てたい。
でも多分この本を今捨てると色々と不味い気がする。
私が目覚めた場所と今までに見てきた生き物にレベルという不思議な概念.......)
私はモチモチと水色のスライムを食べながら考える。
ココが一体何なのか。
アホの子には期待出来なさそうだから聞くことはしない。
(私は始め学園の図書室にいた。そしたら突然気を失って.......目覚めたらダンボール箱がいっぱいある洞窟の一部屋にいた)
モチモチモチモチモチモチモチモチモチ
(訳もわからず呆然としていたら誰かが来た。その誰かは安さんだったわけだけども、安さんは平然とダンボール箱の中に入っていたお弁当を食べてた。
後ろから見ていた私に気付いた安さん、それからここに来るまでの道中で出会ったモンスターを倒している時の安さんの表情は無表情で怖いし、モンスターを一撃で倒せるほど強い.......)
モーチモーチモチモチモチモチ
どんどんと体積が減っていく水色のスライム。
あと少しでスライムの核にたどりつきそうだが、それに気付いていない桜子ちゃん。
(安さんは一体何者なの.......?)
真剣な顔をして考えているものの無意識でスライムを食べ続けているせいで色々と台無しである。
ペーンポーンパーンポーン
頭の中に鳴り響く音に桜子ちゃんはハッとした顔をして手元のスライムを見る。
体積のかなり小さくなった水色のスライムを見た桜子ちゃん。
「.......」
(うわー!私何スライム食べてんの!?えっ!?しかも安さんに渡された時よりもスライムかなり小さくなってるんですが!?え?これ、全部私が食べたって事!?いやいやいやいやいや!!私は安さんな訳じゃないし!!)
桜子ちゃんは焦っているようで手の中にあるスライムを握り潰しそうな勢いで持っている。
勿論、スライムは変形している。
と、ここで桜子ちゃんは目の前で浮いている本が光って頁が開かれていることに気付く。
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桂木桜子は 毒無効を 手に入れた
ねぇ。そのスライム死んじゃいそうだよwww?
なに食べてんの?おもしろぷすすーーwwww
てゆーかースライムを駄菓子のゼリーと一緒にする人初めてなんだけどーwwwwwwwww笑える〜プギャ――m9(^Д^)――!!
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(ムカつく。この本の頁一枚一枚破ってちぎって燃やしたい衝動に駆られるんですが?やっていいですかね?)
「ね!美味しいでしょー!!この水色のジュルジュルー!!」
アホの子は浮かんでいる本を掴んで下へと押しのけると桜子ちゃんに顔を近付ける。
(うわっ!?安さん距離近っ!近くない!?てか、あの、何をそんなにキラキラしてる目で見ているんですか.......?)
「あの.......安さん.......?」
「桜子ちゃんこのキラキラいらないんだったら私にちょーだーい!!」
「な.......何に使うんですか.......?」
(安さんとの話しが噛み合わないよー!!えーと、アホの子って呼ばれてるくらいだからアレかな?綺麗な物を集めて自慢でもしたいの?.......まさかねぇ.......。)
「えーとねー!キレーだから大雅くんにみせて自慢するんだー!!ついでにえーしろーにもー!!」
(アホの子だったー.......。分かってはいたけどかなりのアホの子だー。その思考小学生並じゃないかな)
予想通りの返答に呆れてしまった桜子ちゃん
「そ、そうなの.......。」
とそれしか言えなかった。
完全に肩の力が抜けてしまった桜子ちゃんは掌の中にいる水色のスライムを見るために握っている掌を開く。
変形していたスライムのジェル状の部分は開いたことで元に戻った。
プルンッと揺れ動く小さくなってしまったスライムは逃げようと桜子ちゃんの掌の上をモゾモゾと動く。
「まだジュルジュル残ってるよー?しっかり全部食べなきゃダメじゃーん桜子ちゃん」
呑気なアホの子の声に逃げようとしていた水色のスライムは飛び上がった。
文字通り飛び上がった。
文字で表すとしたらピャッ!だろうか。
桜子ちゃんの掌の上で飛び上がった水色のスライムは掌の上で右往左往すると手の縁から飛び降りた。
「あ」
「そいやっ!」
飛び降りた水色のスライムをアホの子は空中で掴む。
「はい!ジュルジュル落ちかけたよー!ちゃんと食べるんですよー?そうだ!桜子ちゃんが全部食べるまで見ててあげるよ!」
「あ、うん.......。うん.......?」
笑顔で桜子ちゃんの掌に水色のスライムを乗せるアホの子。
そしてアホ丸出しの笑顔でアホの子は桜子ちゃんを見ている。
(もう食べる気ないんですが.......。そうだ!この子を逃がしてしまおう!)
プルプルと震えている水色のスライムを見て逃がす事にした桜子ちゃんはアホの子の視線をどうやって逸らすか急いで考える。.......でないとアホの子がこの水色のスライムを食べてしまいそうな気がするからだ。
(えと.......。えーと。どうしよう。どうしたら安さんの気を逸れせるかな.......)
アホの子から唾を飲み込む音が鳴るのが聞こえてきた。
(あぁぁぁ、大変.......!早くしないと.......!!もうこうなったら.......!!)
「や、安さん.......!!私はもうお腹がいっぱいなのでこの子は後でまた食べる為にポケットに入れておきますね.......!」
「そっかー。桜子ちゃんお腹いっぱいになっちゃったかぁー!じゃあ仕方ないねー!」
「.......あの、早く学校行きましょう?」
「ハッ!!学校!!」
スカートのポケットにそっと水色のスライムを入れる。
アホの子は次のスライム探しに行こうとしていたので、桜子ちゃんが学校へ行こうと促すとアホの子は学校の事をすっかり忘れていたようだ。
思いっきり今思い出しましたみたいな顔をしやがった。
「いけないいけない。遅刻しそうだったんだ!!」
(いやもう遅刻確定です安さん。ていうか異世界丸出しなこの場所で遅刻とかあるのか怪しいです)
「さぁ行くぞー!学校へー!」
遠い目をしている桜子ちゃんの手を握って歩き出したアホの子。
引っ張られるようにして桜子ちゃんはアホの子の斜め後ろを歩いて行く。
(学校に無事に着くといいなー.......。)
なんとなくだけど、桜子ちゃんの目が死んでいるような気がした。




