そして決勝へ
サイト消滅とはいえ過去作を掲載
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『ここ福岡ドームは、決勝を前に異様な熱気に包まれております。今日の解説はジャーマン琥鉄さん。ゲストに準決勝でチームにゃんに惜敗した蒸機帝国の参謀リミッタさんと同じく準決勝でチームながみみ堂に敗北したミックスナッツのミィファ=アンブローズさんをお迎えして、実況わたくし古太刀でお送りします』
実況席から、独特の口調のアナウンサーが波乱に満ちた大会の決勝に至る経緯を立て板に水の如く話していた。
「実況を流すとは、さすがはドーム野球場のVIPルームといったところか?」
サムは持っていたビアグラスのビールをクイッと飲み干す。
「サムさんは、結果的に大会を守ってくれたのだから、当然の待遇ね」
隣で右腕に包帯を巻いた美花がニッコリと微笑む。
「しかし、結局グエンに逃げられたのは痛かったな…」
「過ぎたことね」
「ところで、この大会の主催者さんは今後どうするつもりなんだ?」
サムは、手酌でビールを注ぎながら尋ねる。
「別に…どこかの組織がちょっかい出してきても、いままで通り変わらないね…ま、今回はどっちが勝ってもスカウトができないのが残念だけど…そういうサムさんはどうするね」
美花は肩を竦める。
「この大会が、将来のテロリストを養成しているなら潰さなきゃならんだろうが…」
「ははは。それは黒龍の分野ね。赤龍がちょっかい出す事はないし、黒龍もちょっかいは出さないね」
サムの言葉に美花は引き攣ったような乾いた笑い声を上げる。
「ま、今はその言葉を信じて、この大会を楽しむことにするよ」
サムは再びクイッとビールを飲み干す。
「師匠。ビールです」
それまで無言で立っていたマッドアイがビール瓶をサムに差し出す。
「ありがとう」
サムはビール瓶を受け取り、代わりにカラのビール瓶をマッドアイに渡すのと同時に、館内がどよめきに包まれた。
「調子はどうだ?」
武が邪武に耳打ちする。
「全然。バッチグーにゃ」
邪武は指を鳴らしながら対角線上に陣取るアルを睨みつける。
「こてんぱんに叩きのめしてやるにゃ」
邪武はゆっくりとバトルフィールド中央に歩を進める。
それは対戦相手のアルも同じだった。
「それでは今からバトルファイターズの決勝を行います。先方チームにゃん邪武。チームながみみ堂アル」
レフリーに促され、邪武とアルは形だけの握手をする。
「武具の申請はありますか?ちなみに急所への攻撃と協会が認可した武器以外の武器の使用は禁止します。
ギブアップは審判にアピールしない限り無効。失神はカウント五でギブアップと見なします。
なお、審判は不肖わたくし神水流が務めさせてもらいます」
レフリーが邪武とアルに間合いを取るようにゼスチャーすると、ふたりは一メートルぐらい離れて向かい合う。
「では、バトル。レディー。ゴー!」
仕合を告げるゴングが高だかと鳴り響いた。
ありがとうございました




