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福岡ファイトれでぃ~ごう  作者: 那田野狐
第五章 暗躍
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何かが暗躍する その3

「リ、リミッタ姉さま~まだですか~」

「もう少しお待ちなさい。想定外のナチュラルダメージデータは貴重なのですから」

簡易ベットの上で身動きできないヒューズをなだめながらリミッタはノートパソコンに表示されるデータに僅かに恍惚とした表情を見せる。

「は、その気になれば天空のパイナップルと直接やりとりできるのにご苦労なこって」

どこから拾ってきたのかと尋ねたくなるようなボロのソファーに寝転がっていた竜平が卑下た笑いを浮かべながら突っ込む。

「虚空を見つめて微笑むのは不気味ではないでしょうか?」

「今だって充分不気味だよ」

竜平は聞こえないように呟く。

「言いたいことがあるならはっきり・・・」

突っかかるブレーカを竜平が黙って手で制すると腰だけを上げる。

「なんだ?」

ブレーカが顔を僅かに捻ったとき竜平は豪快に屁をこく。

「悪ふざけが過ぎます!」

きょとんとしているブレーカに変わってリミッタが文句をいう。

「出もの腫れものところ嫌わずだ。ガッハッハッハッ」

大口開けて笑いながら竜平はソファーの下に手を突っ込む。

「ゴウ!」

竜平が叫びながらソファーの下からコルトガバメントを引っこ抜くのとガラスが破られるのが同時だった。

「照明を!ブレーカ!ヒューズ!ノクトビジョン。モードソナーオン。フリーアタック」

「オーライ」

竜平は持っていたガバメントで素早く蛍光灯を撃ち抜くと部屋は一瞬で真っ暗になる。

「なに?」

部屋に乱入してきた誰かが叫んだ。

「ぐは」

声のした方向から鈍い音と呻き声が響く。

「見えてやがる。投光器照射」

声と同時に部屋が閃光に包まれる。

「ちい」

竜平はすかさず光源に向かってガバメントをぶっ放す。しかし投光器は金属音を響かせるだけでびくともしない。

「防弾だと?」

竜平は空になった弾倉を引っこ抜きながら叫ぶ。

「制圧隊前!」

かけ声と同時に銃身の大きさが一斗缶ほどのショットガンを持った男達がわらわらと出てくる。

ポン

恐ろしく間抜けな音に、それでも条件反射的に身構えたリミッタ達めがけてドッチボールのようなものが撃ち出される。

「なめるな!」

ブレーカは持っていた金属製の大型トンファーで飛来するドッチボールのようなものを叩き落とす。

「うわ!」

「きゃ!」

「いや~んベトベト」

「なんじゃこりゃあ~」

叩き落とされたり着弾したドッチボールは破裂して、白くて粘度のある液体を撒き散らす。

「次々と掃射!」

織田信長の鉄炮三段撃ちよろしく次々にドッチボールが射出され命中する。

「帝国量産型自動人形相手に力で攻めても負けるのは目に見えているからな。小細工させてもらった」

「追跡者か?」

「お前ら自慢の早期警戒システムに引っかからなかったろ?」

指揮していた男が得意げに胸を張る。

「不覚」

表情こそ変らないもののリミッタは悔しそうに呟く。

「ど、どうするつもりだ」

「どうする?決ってるだろ。本部の研究室で徹底的に分解して調査だよ」

「いやあ~分解いやあ~分解嫌い~」

ヒューズが唯一自由に動く首をブンブン振りながら本気で嫌がる。

「ま、諦めるんだな。おい。連れてけ」

男の指示で数人の男がヒューズを取り囲みスプレーを吹きかける。そして床から引き剥がす。

「なあ~俺はどうなるのかなあ~」

竜平は情けない顔で尋ねる。

「そうだな」

男は懐からトカレフを取り出すと竜平の額に押し当てる。

「下手に生かしても後々厄介だからな」

「分解い~や~」

担ぎ出されるヒューズを尻目に男は引き金に手をかける。

「俺の悪運もここまでか・・・」

竜平が呟くのと同時に乾いた音が響く。

「あれ?俺、まだ生きてる?それとも即死で死んだことにも気が付いてないのか?」

竜平はゆっくり目を開けると、そこには血まみれの手を握って呻き声をあげる男の姿があった。

「だ。誰だ!」

「サムソン=トーマス。軍人だ」

窓の外から舞い下りるようにダークグリーンのミリタリージャケットに身を包んだサムが降り立つ。

「排除しろ!」

「了解」

手を押さえながら男が命令を下すと数人の男達がサムの回りを取り囲む。

「さっきのライフルじゃないのか?」

「人間相手に使うわけないだろ」

「そうか。なら後悔してくれ」

ジャキッ!

サムが両手をクロスさせ再び広げたときには両手にしっかりとワルサーPPKが握られていた。

「諸君。バッドラック!」

サムはそう宣言するとワルサーの引き金を引く。

「ジャスト三秒」

一丁八発合計十六発の弾を撃ちつくしたサムは素早く弾倉を入れ替える。

「わ、私達は後でいいから、ヒューズを助けて」

リミッタが叫ぶ。

「玄関はどっちだ」

「右です!」

サムは窓から飛び出して指示された方向へ走る。

「敵側のガーディアンだ。阻止しろ」

銃声である程度のことは予測していたのだろう。サムを認識するなり男達はワゴン車を守るように展開した。

「一筋縄ではいかないか!」

サムは腰に手をまわすと銃身にZの刻印がされているやたらと口径の大きい拳銃を取りだし発砲する。

カッ!

凄まじい閃光が辺りを照らす。

「ぐわ!」

男達は両目を押さえて転がりまわる。

「う~む全員が暗視装置付きとは」

感心しながらサムはワゴン車に近づく。しかしいま一歩のところでワゴン車に発進されてしまう。

「防弾タイヤか・・・面白い」

サムはワルサーPPKを数発発射したところで小さく息を吐き出し、そして小さく笑った。



ピンポーン

「猿。誰か来たぞ応対しろ」

太股の上にちょこんと座っている神の九十五センチEカップの巨乳を服の上からまさぐっていたマッドアイはチャイムの音に反応して命令する。

「へいへい」

猿はポリポリと頭を掻きながら玄関に向かう。

「狂眼よ~お前さんに客だぜ」

猿に案内されて一人のチャイナドレスの女性が現れる。

「俺様になんか用か?」

マッドアイは女性の顔、胸、腰、尻、太股、足首と丹念にチェックしながら尋ねる。

「わたくし四虎の李光琳といいます」

「すーうーふーうー?」

「四虎は中国語です。日本語だとよんとらですか」

「はん。で、中国の四つの虎が俺様になんの用だ?」

光琳の大きく開いたチャイナドレスの胸の谷間を眺めながらマッドアイは尋ねる。

「我々四虎に力を貸してください。もちろん報酬も大会の優勝賞金以上に用意させていただきます。これはこの場で即答していただければ差し上げます」

光琳は指にしていたダイアの指輪をテーブルの上に置く。

「モアサナイトじゃないでしょうね?あん」 置かれた指輪を素早く拾いあげる神。その神の胸の先をマッドアイは強く摘みあげる。

「はしたねぇことするなよ神。それより李光琳。俺様と賭けをしないか?」

「賭けですか?」

「ここで俺様と仕合ってあんたが勝てば金は四分の一でいい。しかし俺様が勝てば一日あんたの体を自由にさせろ」

マッドアイは口元に卑らしい微笑みを浮かべる。

「わたしを抱きたいと?欲求に忠実なのですね」

光琳はなんとなく小馬鹿にしたような微笑みを浮かべる。

「本能の赴くままに!それが俺様のポリシーだからな。で、受けるのか?それとも」

「その前に、わたしが勝っても負けても我々四虎に力を貸していただけるのですか?」

「ああ。力は貸してやるよ。どうせバックレかます気だったからな」

マッドアイはゲラゲラ笑う。

「それを聞いて安心しました。で、この部屋で仕合うのですか?」

「まさか!外でやるに決ってんだろ?」

マッドアイはのっそりと立ち上がる。

「ひゃん」

急に立ち上がられて神は尻もちをつき悲鳴をあげた。


「さて、はじめるか?」

部屋の下にある駐車場に着いたマッドアイは指を鳴らしながら光琳を見る。

「いま気が付いたのですが、我々に力を貸す事に他の人の意見は聞かないのですか?」

「ああ。言って聞く人じゃないから」

光琳の問いに猿は肩を竦めて答え、神はコクコクと頷く。

「そうなの・・・ま、力を貸してくれるのならどっちでもいいけどね」

光琳は半身にかまえる。

「いくぜ!」

マッドアイは一気に間合いを詰める。

「せい。は!」

光琳は一足ほど踏み込むとかちあげるように左の掌をマッドアイの顎先に放つ。

ガシッ!

カウンターとはいえ百二十キロあるマッドアイの体が宙に浮く。

「はあいぃぃぃぃ」

光琳は立て続けに三発左右の掌を打ち込みさらに回し蹴りを放つ。

「効いたねぇ~」

コキコキと首を鳴らしながらマッドアイは立ち上がる。

「一撃で屠れたのではスカウトした意味がありませんからね」

光琳はペロリと親指を舐める。

「ぬかせ!」

マッドアイは肩を前に姿勢を低くして突っ込む。

「はい」

光琳はマッドアイの背中にポンと手をつくと側転で背後へと回り込むと右足を振り上げ踵落としを敢行する。

「甘い!」

素早く右腕を背中にまわし光琳の左足を掴んだマッドアイは勢いよく立ち上がる。

「うわっ」

光琳はまともに後頭部を床にぶつける。

「ふん」

マッドアイは光琳の両足を抱えると体を捻って逆エビ固めに移行する。

「やあ!」

光琳はマッドアイが腰を落とす寸前に捻られた方向へ自ら体を捻り、その勢いで辛くも脱出に成功する。

「いくぜ!」

マッドアイは大上段から袈裟切りチョップを打ち下ろす。

「せい」

光琳は打ち下ろされるマッドアイの拳を流れに逆らうことなく受け流すと、そのまま体重をかけながら脇固めへと移行する。

「うぉおぉぉぉぉ」

マッドアイは完全に極められる前に強引に脇固めを外す。

「下衆な性根では勝てないってか。辞めだ辞めだ」

マッドアイはあっさりと闘いを放棄する。

「では私が勝ちということで依頼料は四分の一で」

「おおっとそれを忘れていたぜ!」

マッドアイはおもむろにその太い腕を光琳の首に正面から引っかける。

「き、貴様卑怯な」

「油断だな!」

卑下た笑いを浮かべながらマッドアイは回転をはじめる。

「ディスククラッシュ!」

掛け声とともにマッドアイは光琳を投げ飛ばした。

「卑怯さに免じて一発で勘弁してやるよ。感謝しな」

くるくると目を回した光琳を見下ろしてマッドアイはいやらしく笑った。


ありがとうございます

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