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キャットファイト ~ヒロインの戦い~

ぺんぺん草すら生えぬ荒野の上で、二人のヒロインが一人の男、朱仁好を取り合い戦っていた。

原因は修学旅行の二日目の夜。集団行動から離れ、海辺で朱仁好とサニーが逢瀬を楽しんでいたところを琴姫が垣間見たのだ。

サニーが一人でいるとき、琴姫が追及のため鳥取砂丘へと呼びだした。


「あの日は何もなかったの。けれど、あの日ようやく私は私の気持ちに気づいたわ。私は彼が好き。これが私の気持ち」


金髪の少女、サニーはようやく自らの気持ちを正直に恋敵に伝えることとなった。


「ぐっ……」


黒髪の乙女、琴姫は血反吐を吐きたじろぐ。彼を想いし彼女の気持ちに負けそうになったのだ。

しかし、琴姫にとっては横恋慕もいいこと。

付き合ってこそいないが、もう少しで両者の気持ちに気付けそうな時に突如現れた転校生。

せいぜいプッシーキャット止まりの女だったが今では泥棒猫に進化を遂げていた。


「私は彼と幼馴染だ! 幼馴染なのにどうして……」

「悪いけど諦めてくれる?」

「……でもね。私の十年以上に積み重なった想いがそんなものに負けるわけない」

「ふん。ようやく本気を出してくれたわね」


小競り合いが終わり、ようやくキャットファイトの始まりだ。


キャットファイト――それは男を取り合うヒロインたちの戦い。

雌の数だけ存在する恋路も行く先が同じならいつか合流してしまう。

込めた想いを賭け、奔流の中で己の想いが本流だと示せ。

敗れてしまえば獣道。

譲らぬ乙女よ、断て! 路を! 赤い糸を!

己の路が正しいと見せつけろ。

さあ戦え――その想いのために――


「そういえば、あの夜の話をまだしてなかったわね。海辺でのデートの夜のこと」

「ふん、何もなかったって言ってたじゃん。いけしゃあしゃあとデートだなんて……」

「……ハプニングキス」

「え?」

「ずっこける形でハプニングキスをしてしまったわ」

「なん……だと……ファーストキスが奪われたなんて……」

「悪いけど、これで転校してきた初日と合わせて二度目のことよ」

「ぐわぁぁぁぁ!」


あまりの衝撃に琴姫の瓶底眼鏡が壊れる。


「眼鏡のレンズが割れてしまった……」

「ごめんあそばせ。そんなつもりはなかったけど、私のヒロイン力が強すぎたせいで耐えきれなかったのね」

「いえ、いつかはずそうと思っていたの。これは拘束具。私の力を抑えるためのね……」

「そ、その顔」


眼鏡をかけていたとは思えないほどの鋭い目つき。

琴姫は、眼鏡をはずすと美人タイプのヒロインだったのだ。

他の男の愛情が自らに向くことを避けるため、拘束具となる瓶底眼鏡を掛けていた。


「私は負けない。だからこれからはコンタクトにする!」

「なんですって……」


サニーの体が痙攣している。膝から崩れ落ちる。それほどの恐怖を味わっている。

勝ち目がないとわかったヒロインは生存本能から痙攣をするのだ。


「これじゃあ私は負ける。負けちゃう……そんな。負けたくない……」

「なんて無様な姿。今に仕留めてあげる」

「フフ。ハハハハハッハハアアアアアアハッハハハハッハア!」


狂った笑い声が砂丘に響いた。


「壊れたみたいね。サニー。あの頃は輝いていたわ」

「ハハハッハハハアハハハア!」


正気だった頃のサニーを思い出し、慈悲深く命だけは刈り取らなかった。

サニーを残して宿に戻る琴姫。


「フフ、フフフフフ」


異変を感じ琴姫が振り返る。

先ほどまでと違うただならぬオーラを感じた。


「壊れた。いや……違う。何が起きてるの? サニーのヒロイン力がどんどん上がってきている」

「絶望の危機に瀕し、忘れてた過去を思い出したわ。子供の頃、園児の時、私は一度彼に会ってる」

「そんな……乳飲み子の時から幼馴染の私はあなたのことを知らない」

「当たり前よ。ひと夏の思い出だもの。彼は私に日本を教えてくれた。とっくの昔に忘れてた思い出が今よみがえった!」


思わず生唾を飲みこむ。鉄の味が戦闘意欲をかきあげ、まだこの戦いの終わりでないことを告げていた。

そして、最後の奥の手を出す必要も。


「ふふふ、同じ幼稚園児の時の思い出があるのね。なんて因果な関係。こんな風に出会わなかったらきっと一生のお友達になれたと思う」

琴姫は懐から一枚の紙を取り出した。ボロボロになった紙。

「それは何?」

「これは、婚姻届。記入済みのね」


こんなもの大事にしてるなんて思われたくないと考え今まで誰にも伏せていた秘密だ。

だが、サニーには見せてもいいだろう。見せるに値する相手だったのだから。


「ま、まさか」

「そう! 幼稚園児の時契りを交わしている!」

「うわぁぁぁぁ!」

「さあとどめを刺すわ。言い残すことはない?」

「……っく」


静寂。何も言おうとしないサニーにしびれを切らし、とどめの構えをとる琴姫。


「あれれー、琴姫ちゃん、サニーちゃん。こんなところで何してるの?」


砂丘でさまよって行方不明になっていた巨乳でとろいお色気要因のモブ子が現れた。

彼女を巻き込むわけにはいかない。この場に巻き込まれればひとたまりもないだろう。


「こんな時に……サニー、休戦だ」

命拾いすることとなったサニーは、琴姫に屈辱の顔を晒すしかない。

「……そうね」

もう少しで倒せるはずだった宿敵。だが、ここで焦って倒そうとすれば面目が潰れてしまうところ。

琴姫は幼馴染ヒロインのプライドを優先した。


このままいけば勝敗は明白だったはずだ。だが決着は着かないまま、歯切れの悪い終幕を迎えた。

有利なのは琴姫。この差が縮まらないうちに攻めきるしかない。


翌日。修学旅行最終日。皆が荷造りをしている最中に琴姫は朱仁好を呼び寄せた。

影ではサニーが二人の会話を聞いていることを知っている。

琴姫は単刀直入に告白することを決めた。


「ねえ。仁好は、誰か好きな人いるの」

「えー。いないなあ」


告白を難聴で何度もかわされてきた琴姫。分かりきった返答だ。


「じ、じゃあせめて好きなタイプだけでも教えてよ」


朱仁好は恥ずかしそうな顔を琴姫に向けた。


「しいて言えば……おっぱいの大きい子かな」


以降まな板負けヒロイン二人の間に諍いは起きなかったという――


某コピぺのパロディネタです

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