第9話 〜登校〜
■第9話 〜登校〜
虚無が「視える」ようになってから、初めての学校。いつものように自転車にまたがり、わずか12分の道を風を切るように学校へ向かった。やはり、行き交う人には、黒い影が見える。しかし、その影も多少の差はあれ、気にするようなものではなかった。
「なんだろ?怖いはずなのに、すこしどきどきしてる。虚無羅に会いたいのかな?いや、会いたいというよりは、見てみたいって感覚だな。きっと。」
「ポンもよく分からないポン。虚無羅を成仏させてあげられれば、苦しんだり、悩んだりする人が減るポン。だけどやっぱりポンも怖いポン。」
「おいおい、守り神様がそんなこといってどうするんだよ。」
左手に正門が見える。いつものように駐輪場に自転車を置き、ふと顔を上げるミコト。校舎に目をやる。階段をあがった二階が玄関になっている。
(ああ、学校が休校になって、翌日倒れて保健室。それが昨日。そして今日か。なんかいろんなことがありすぎて、なつかしくかんじるぜ!まあ、みんなに影がついて視えるってこと以外、いつもと変わらないか。そうだ、シンジは来てるかな?昨日の朝、会ったときには、やっぱ少し元気が無かったようだからな。シンジの自転車は、…まだないか。いつもは自分よりも早く来ているはずなのに。)
「神崎君、おはよう。」
ふと後ろから声をかけられた。同じクラスの山口ミキだ。背が高いけど裏表の無い話しやすい子だ。身長は170センチ弱だろう。自分がぎりぎり170センチを超えた172センチだから、自分はこの子より大きいってことが少し嬉しい普通の高校2年生だ。
「ああ、おはよう。」
ミキの笑顔と明るい声に少し顔が紅色に染まってしまう。
「やっぱり、見てるんだよな?」
「気にするなポン」
「別に、好きって訳じゃないけど、やっぱ、女の子に弱いっていうか…かわいいとは、思うけど…。」
「知ってるポン。いいポン。健全だポン。」
「それより、一つ思い出したポン。虚無羅に会ったら、目を合わせないようにするポン」
「まじ?目が合うと石になったりするのか?」
「石にはならないけど、ミコトの目は気付かれるポン。襲ってくるということポン。」
「ああ、いい忠告をきいたよ。絶対気をつける。っていうか、逆に、目を合わせなければ、大丈夫っていうこと?」
「おそらく、相手は気がつかないポン。相手は、どちらかというと、本能で生きているよなものポン。」
「今のとこ、いないよな。」
「大丈夫。いないポン。」
すみませんでした。
山口ミキは、フルネームを使ったのですが、かなりのサブです。
メインキャラは次回です。ごめんなさい。
★筆者コーナー★
今回の紹介はバンプオブチキンの「アルエ」です。
白いブラウス似合う女の子〜から始まるアップテンポのリズムと
いやらしくないひびきのよい歌詞がすきですね。




