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新世界  作者: 北極星11
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第37話 〜虚無羅対セイラ〜

セイラに助けられたという安堵感が、ミコトが必死に隠していた痛みと緊張を呼び覚まし、ミコトはまたも気を失ってしまった。

「うふっ。しょうがない人ね。」

何が可笑しいかわからないが、セイラは穏やかな笑みを見せると、やさしく地面の上にミコトをおいた。

病院の隣にある公園の中でも、比較的木が生い茂っているひっそりとした場所にミコトは落ちてきたのだ。木を操り無事に寝かすことができたセイラであったが、次の瞬間、まがまがしい気配が上から迫っていることにセイラは気がついた。

<うをおおおお>

雄叫おたけびをあげた牛の形をしたミコトの倍はあろうかと思うほどの巨体は、龍の形をした何かに押され、セイラとミコトから僅か10mほどしか離れていない林の中に突っ込んだ。

 虚無羅も無機質なものは通り抜けることができるが、土や木などはその質量を感じる。砂煙とともに半径3m程の半球状の穴ができ、その中心には虚無羅が埋まっていた。龍の姿は消え、あたりに放射状に勢いのよい風が吹き、セイラの髪を掻き揚げた。


(まだ、虚無羅の核が残ってるわ…。)

 セイラは木に手を掛け、すぐにつるを虚無羅へと伸ばした。

 穴の中心から砂煙が立ち、太い右手が地面をつかんだ。その右手に力が込められ、起き上がってくる巨体を支えていることが分かった。その右腕を木のつるがつかみ、つるによって引き上げられた巨体に、瞬時にその左手と両足とにつるが巻きついた。

 <ぐをおおお>

「オンコロコロマカリシエイソワカ」

 力を込める巨体にセイラもマナの力を強めて対抗する。

「瀕死なのに、すごい力ね。でも、無駄よ。」

 巨体の首にはまた新たな木のつるが巻きつき、その首を締めつける。

<ぐわあああああ>

 痛みにも似たその雄叫びとともに、巨体はさらに力を込める。

「くっ、なんて力なの…。もう、限界ね。」

 額に汗の滲むセイラが手をかざし、その手を自分のほうへと勢いよく引き戻すしぐさをすると同時に、新たな5つの太いつるが今度は先端を尖らせ、巨体へと向かっていった。次の瞬間、

<がぐわああああああ>

という悲痛な叫びとともに、巨体は5つのつるに貫かれ、獣のそれと同じようなしぐさでどす黒い青色の液体が飛び散った。

<お前たちが憎い…殺す…殺してやる…>

 心の底まで響くような低い虚無羅とは対照的なもの静かな声で、セイラは次の言葉を口にした。

「そうね。私もあなたたちが憎いわ…。」

 巨体はつるに貫かれたまま動かなくなり、体は次第にその色を薄くし、セイラの目にもその姿を認めることはできなくなった。

「浄化、完了。」

 緑色に輝く瞳には、悲しみや憎しみの感情が垣間かいま見られた。


長く長ーくお休みしてすみません。

パソコンが壊れてました。

心よりお詫び申し上げえます。

もうすぐ最後になりますので、お付き合いお願いします。

読んでくださりありがとうございます^^

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