■第35話 〜虚無羅対ミコト〜
鳥のように軽いミコトの体は上昇していた風に乗り、牛の虚無羅の10m程上に陣取った。
『きっと、あいつは、クィーンクラスの虚無羅だポン。』
両手に風の塊を作り虚無羅に向かって投げつけながら意識の中でポンポンに答えた。
『クィーンクラス?強いってことは分かるけど。』
『虚無羅を他にも作り出せるっていうことポン。こんな危険な奴がシンジ君に憑いてたポンか?シンジ君もよくがんばったポン。』
『みたいだな。それはそうと、どうしたら勝てると思う?』
『…がんばるポン!ポンはミコトと一心同体だポン。』
『…そうか、ナイスアドバイスだ。』
両手を上に掲げ手のひらを大きく開きミコトは先ほどよりも大きな風の塊を作り出した。しかし虚無羅も待ってはくれない。それを見止めるとすぐさま羽をばたつかせてミコトへと向きを変えて向かってきた。
<ぐをおおおおお。こざかしいやつめ>
邪悪としか感じられない恐ろしい気迫と声に一瞬体が硬直するミコト。
「なんだってんだよ。」
気を取り直したミコトは、上がってくる虚無羅に正面から向かっていった。
<人間風情が!引きちぎってくれる!>
「これでもくらえっ」
両手を振り下ろし、集めた風の塊を虚無羅に向かってぶつけるミコト。しかしその風の塊は虚無羅の雄叫びと共に二つの角で振り払われた。振り払われた風の塊は、今度は駐車場にとめられていた車を直撃し、窓ガラスが飛び散りタイヤはパンクし、車体は傷だらけになっていた。虚無羅の角の根元からも濁った青色の液体が滲んでいた。
そのまま下にもぐりこんだ虚無羅は硬く握り締めた拳をミコトの腹に向けて思いきり振り上げた。
瞬時に両腕をクロスさせたミコト。そのガードの上から虚無羅の拳がミコトを襲う。ミシミシという骨のきしむ音と共に、ミコトははるか上空まで飛ばされた。角によって付けられた左腕の傷から鮮血が飛び散り虚無羅の顔にかかる。虚無羅は顔についた血を長い舌でなめるとまた勢いよく羽をはためかせ、ミコトが飛ばされた方へと飛んでいった。
(やばい、腕が動かせない。痛え。)あっという間に病院がマッチ箱のように小さくなった。(かなり飛ばされたな。肺はやられてないか。)かろうじて右腕に感覚が戻ってきた。(きっと奴は追ってくる。こっちがくたばるまであいつらは死の宣告を免れないんだから。・・・懸けるしかない。)
虚無羅が追いつくまでの残り数秒、ミコトはその右手を開き、集められるだけの風を集めた。(ここで気を失ったら、死ぬな…。)
ミコトは風の龍を呼び出したとき、一度目は動けなくなり、二度目は気を失った。果たしてこれだけの風の力をぶつけたとき、命があるかさえミコトには確信できなかった。
(さすが高い所だけあって、いい風が吹いてくれるよ。)
ふと眼下に入ってきたのが、一直線にこちらに向かってくる黒い物体だ。それが虚無羅と認識するまで僅かの時間もかからなかった。(来るっ!)
どうも^^筆者です。『新世界』も、あと僅かです。
個人的には自分の世界観が出せて楽しかったのですが、なかなか読み手を引き込む小説になっていたかどうかと思うと疑問視されます。
ですので、この戦いでけじめをつけて、終幕にしようと考えています。
それでは、あと僅かですが、最後までお付き合いしていただけたらと思います^^
★筆者コーナー★
お勧めコーナーが苦しくなってきたので、話に関係のない雑話を書いていこうと思います。
好きな人は、イチロー選手です。毎日カレー食べようかなと、真剣に思いました。(そこをまねてどうする^^;)




