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6.武器商人と話してみた。

今回は、会話文です。

「毎度~。武器商人でおま」


「あ、どうも。主人公です。異世界から来ました」


「中二病おつ~」


「ちがうから」


「ないわー。自分から主人公って名乗るって、ないわー。しかも異世界。異世界から来た人間設定」


「本当の事なんだから仕方ないでしょう! だいたい、この話、登場人物に名前の設定してないんですよ! 木村とか本田とかは別として!」


「でもないわー……ああいや。うん。わかりました。わかりましたから、涙目でこぶし握りしめるのヤメテや。異世界から来た主人公さん」


「まともにすらっと言われても、恥ずかしい」


「だったら、何て呼んだらええんや」


「……」


「……」


「と、通りすがりの主人公、では?」


「それもなんか痛いわ~……ああ、いやいや。すまん。すまんかった。泣きなや。わかったって。通りすがりの主人公さんね。


そいで、なんの用やねん。うちの店は、ただの武器屋やねんけどな」


「いや、この世界の武器についてちょっと……詳しく知りたいと言うか」


「解説してほしいってか? まあ良いけど。


ん~、まずは、ナイフやなあ。肉や硬いパンの切り分けなんかにも使う、日常使いの物やね。村の鍛冶師とかでも鍛えられる品や」


「これは普通なんだよなあ。パンは保存食扱いだから、固いんだよね、ここのパン」


「ナイフ一本あれば、重宝するやろ。蔓を切って来て籠を編んだり、皮や布を断ったり、糸を切ったりにも使うし。


でもどっちか言うと、生活雑貨のくくりやなあ。武器って言うにはなんかアレや。足りひん感じやな。まあ、売っとるけどな。うちでもな」


「あ、そうなんですか。武器って感じがしてたから、全部ここにあるのが当たり前だと思ってました」


「いやいや、これを武器だなんて言ったらイカンでしょう。普通に日常使い、してるやろ?」


「う~ん……まあ、こっち来てからは使うようにはなりましたが……正直、前の世界では、特にうちの国では、日常的にナイフを使うことがなくて。特殊な職業の人なら違ったかもですが」


「そうなん? 不便やなあ。生活するの、大変やったんちゃうん、それ」


「いや、……逆に、いろいろと便利なものがあったので。わざわざナイフを使う必要がなかった、感じですね。


料理には包丁、糸や布には断ち切りばさみ。木の枝とかは、剪定ばさみ。複雑なものや大きなものは、専門家に頼んでやってもらうのが普通でしたから」


「ふうん? めんどくさいな。いちいち道具変えたり、人に頼むより、自分のナイフでばっさり切るのが簡単ちゃうん?」


「う、うーん、でも、自分でやったら曲がったり、変な仕上がりになったりするし」


「ええやん、そんなん。ってか、俺らも、なんもかんも自分ではやらへんけどな。専門家って、育てるのに時間かかるし、金もかかるんや。そこらへんにホイホイいるもんと違う。


せやから、自分でどうにかするほかないやろ。まあ、どこの村でも、器用な奴は、そこそこなんでも自分でできるで。やから、村ん中で、得意なもんを頼みあったり、いろいろあるわ。でもそれ、普通とちがうん?」


「そ、そうですか(うーん……日本の状況は、どうしてああだったんだろう?)」


「せやから、技術持ってる人間は貴重なんや。うちの場合はなあ。目利きして探して、手入れする担当は、めっちゃ高級取りやわ









剣持を」








「……(出た。剣持)。あのー、剣持なんですか。ここは」


「うちは、剣持専門や。隣町には、剣崎専門の店あるで」


「良くわからんけど、特化してるんですね」


「まあな。それはともかくな。ほれ、見てみい。うちの剣持を。色つやが良くて、スッキリ引き締まってるやろ。な? な?」


「ソウデスネ~(わあ。野性的な少年)」


「騎士の人たちや、貴族のお坊ちゃま、お嬢ちゃまからの、注文通りに仕上げるの、大変やねんで。


細身が良いとか、太いのが良いとか。黒はいやや、金色が良いとかいろいろ来るんや」


「ソウデスカ~(黒髪とか金髪とか染められるのかなあ)」


「せや。小さい剣持、探して見つけてなあ。振り回して鍛えるやろ」


「振り回す……(三半規管を鍛える系?)」


「騎士のみなさんがたが振り回しやすいように、重さの管理とかもするやろ」


「重さの管理……(ダイエットとかもさせる!?)」


「それでここまでになったら、売り出すんや」


「はあ……(あー、だいたい、十五、六って感じの子が多いなあ)」


「あとな。中古の引き取りもやってんねん。うちは良心的なんや」


「中古……(え、捨てられるの? 捨てられる剣持もいるの?)」


「御貴族さまは、見栄を張ることがあってなあ。持ち上げられへんような、大きい剣持注文しといて、結局、こんなもんいらん、言うて返品してくる人もおるねん。


せやけど、一回でも返品されたら、中古扱いやで。こっちが親身削って調整した剣持が、中古やで。


やから、うちはなあ。信頼できる人にしか剣持は渡さへんし、万が一,中古になっても、メンテナンスはきっちりやる。新品と変わらん扱いと仕上げにしたる。そうして売る。


それがな。俺の、武器商人としてのポリシーやねん!」


「え、ええと、はい。あの、ありがとうございます?(人身売買のような気もするけど、良心的? 良心的なのかこの人?)」


「なんであんたが御礼言うねん。変なやっちゃなあ。ははは!」


「あ,あはははは……」


「まあ、そういうわけで、うちの剣持は、ええ子ばかりやで! 見たってな」


「あのー、それで、剣持の、使い方と言うか。扱われ方って……」


「貴族のお坊ちゃん、お嬢ちゃんがたは、子どものころに、自分用の小さい剣持を買われるんや。で、












 毎日、背負って振り回すねん」












「…………」


「子どもやから、そんな激しい動きとはちゃうけどなあ。適性のない剣持はここで、目ぇ回して吐いたりすんねん。三流の武器商人やと、そういうのつかませたりするから要注意な!」


「吐くほど振り回される剣持が気の毒と言うべきか、子どもなのに人ひとり振り回せる貴族の人たちがすごいと言うべきか」


「でもなあ。目ぇ回さん、良い剣持でもなあ。返品されることはあるねん」


「え、どうして」












「じゃんけんが弱くて、負け続けるやつもおるんや」












「…………………(じゃんけんか。じゃんけんがデフォルトなのか。この世界の戦闘は)」


「負け続ける剣持は、どれだけ見栄えが良くても嫌がられるねん。かわいそうやねんけどな」


「それで。そういう、負け続けて戻された剣持はどうなるんでしょうか」


「メンテナンスして、もう一回売りに出すけどなあ。値段はどんどん安なるねん。かわいそうやろ。ってことで、通りすがりの主人公さん。安い剣持がいるんやけど、もらってくれへんか?」


「はあ?」


「二十回勝負して、二十回とも全部負けたっていう、いわくつきの剣持やねんけど。もう後がないねん。これ以上負けたら、処分やねん」


「えっ、処分ってどうされるの」


「店先で、最安値処分品って札を張られて放置」


「微妙にイヤな扱いだな」


「食費も馬鹿にならんから、食べさすのは水とパンが一日一回になる」


「それあかんやろ人として!?」


「訛りがうつっとるでー」


「わざとやあらへん! いや、そんなの、育ち盛りの子どもにそんな真似したら、虐待でしょうが」


「だからもらったってや。安くしとくから。な? な?」


「いやいやいやいや」


「今、思ってん。あんたと会話してて。こんなに、こんなに、武器商人でもあらへんのに、剣持のことに親身になってくれるって、


中二病でもええ人やって! 中二病でも、こんな人に剣持もらってほしいって!」


「中二病中二病、連呼するな」


「俺の武器商人としての心がそう言うとるんや。もらったってや! 最安値にされたけど、ごっつええ剣持やねん! 頼むわ!」


「えー、えー、えーーーーーーっと」


「頼むわーっ!」


「いや、泣かなくても……食費が……ううう、でも、ああ、わかった、引き取る!」


「やったー!!!! 剣持一本、お買い上げ~~~~!」


「涙あらへんやん、ウソ泣きか!」


「ツッコミうまいなあ、主人公さん! ほら、最安値になってた剣持! 新しいご主人やで! 挨拶しいや」


「よろしくお願いします」


「え、剣持…………えええ、子どもじゃない…………むちゃゴツイ中年のおじさんやないか、しかも筋肉ムキムキ、え、え、ひどい扱いとか言ってわりに、顔色ツヤツヤでめっちゃ肉付き良いし、なんか身なりも綺麗なんやけどってこれ、どういうことやねんんんんんんんん~~~~~~~っ!!!!!」





 主人公の仲間に、ごつくて中年の剣持が加わった。





人身売買を推奨しているわけではありません。念のため。



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