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3.薬草を採取してみた。

ぱーとすりー。



***



襲われた挙句に、捨てられた木村。


怪しい宗教状態で、臭いをかがれる本田。



「異世界こわい」



主人公は、つぶやいた。


そして今、主人公がいるのは、


目つきの悪い、むさくるしい男たちがうろうろし、


同じく目つきの悪い、迫力ある女たちがうろうろしている、



『冒険者ギルド』



であった。テンプレである。



「何をするにも、先立つものがないと困るしなあ」



要は旅費が尽きたので、稼ぎに来たのである。


残念なことに、異世界トリップ特典のチートは、主人公にはなかった。変なポーズを決めながら、ファイアー、とか、サンダー、とか言ってみたのだが、結局、魔法は使えないという事実を確認しただけだった。


ちなみにその時、通りすがりの村人に目撃されて、なぜか飴をもらった。気の毒な人を見る目だった。何だと思われたのだろう。


そういうわけで主人公は、地道に働くつもりだった。冒険者ギルドで。



「えーと、すみません。登録したばかりの新人なんですが、仕事、ありますか」



受付らしきカウンターの、向こう側に座る女性に声をかけると、「初心者向けの仕事は、薬草採取かしらね」と言われた。



「薬草採取ですか」


「今の時期なら、夏枯れ草かしらね」


「それ、どんな薬草ですか」


「もう少し待てば、引率者が来るから。彼に聞いて」



礼を言ってしばらく待っていると、しぶい感じの男が来た。



「薬草採取の仕事をうけるのか?」


「あ、はい。でも薬草の区別がつかないので、教えていただきたくて」


「良いぜ。そのかわり、手数料払えよ。じゃ、ついてきな」



男と共に、薬草の採取ができる場所へ移動する。



「夏枯れ草は、まあ、地味な薬草だが。ほかの薬草と一緒に使うと、いろいろと効果が高まったりするんだ」


「そうなんですか」


「ついでに他の薬草も、採取したら良いぜ。薬草についていろいろ覚えておけば、いざって時に役立つからな。


ああ、見えてきた。あの辺りだ。ほかのやつらも来てるなあ。急いでむしるか。







この原田を」








原田。








「原田?」


「おう。良く薬草生えてるぜ」





原田には、薬草が良く生えるらしい。




「え、どこに。って、他にも薬草取りに来た人がいる?」


「見つけた薬草は早い者勝ちだからな。春先なんか、みんな原田に群がってるぜ」




原田は、春先になると、男や女に群がられるらしい。




「初心者向けの仕事だからなあ。男も女も血眼になって原田を探すなあ」




原田は、血眼になられて、探し回られるらしい。なにそれ、ストーカー? ストーカーの集団?




「さ、採取って、どうするんですか」


「むしりとるな!」




原田は、よってたかって、むしられるらしい。やめてあげて! 二度と生えなくなったらどうするの!





「き、気の毒すぎる、原田……」


「森田にも薬草は多いけど、俺のおすすめはだんぜん、原田だ! 良い薬草が毎年、取れる。


ああ、けどな。取りすぎたら、ハゲ地になるぞ。適度に残しておくのが肝心だ。ハゲになるまでむしるんじゃないぞ」


「森田もいるのか。森田もむしられるのか……」




春になると、毎年のように男や女に探し回られ、群がられ、つるっぱげ寸前までむしり取られる原田。と、森田。



「田」の一文字が入ると、こんな悲劇が起きたりする。




「異世界こわい……」




主人公は、遠いまなざしになってつぶやいた。


逃げて原田。ちょー逃げて。ついでに森田もちょー逃げて! あ、でも、その前に路銀の為に、ちょっとむしらせて!




ここは薬草の原田。とか、ここは薬草の森田。とか。


変換ミスしたことがある人、いるよね。


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