表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1.転移した。

夜中のテンションでできた話。

活動報告にちょっと載せてみた、一発芸みたいなネタ。ストレス発散の小話です。


異世界トリップ系のテンプレな物語に、一文字が入ってしまっただけで、なんだか違う話になっちゃうな、という。


ぱーとわん。



***




異世界トリップ。


突然、目の前の景色が変わる。ひどい船酔いにも似ためまいに主人公は、大地に膝をついた。


体も、頭も、ぐにゃぐにゃだ。なにかにシェイクされたかのようだ。目が回る。


気持ち悪い。ひたすら気持ち悪い。


ぶちきれたみたいにゲーゲー吐いた。地面にひっくり返ると、空には二つの月があった。



テンプレである。




主人公がいたのは、泉の傍。ちょっとした林の中だった。そこには壊れた遺跡らしき、白い石が転がっている。



これもテンプレである。



木立の合間から、空が見える。目に染みるような青。そこに、昼間の白い月が二つ、ぼんやりと浮かんでいた。



「異世界じゃん」



くらくらする頭をなだめ、起き上がる主人公。足が震えて立ち上がれない。つんのめって、べしゃりとこけた。体を支えようとしたら、腕の筋肉もぷるぷる震えていた。




「どうして、こんなところに。帰れるの、わたし」



このセリフもテンプレ。



「召喚。事故。誘拐。異世界トリップにはいろいろあるけど。どの理由……?


あーでも、迎えに来てくれる人がいないところを見ると、事故っぽいなあ……」



主人公はため息をついた。


そういうわけで、堂々たるテンプレ異世界トリップものとして、この物語は始まった。




***




林を抜けた主人公は、道らしきものを見つけた。歩いていると、煙が上がっているのが見えた。


そっちに向かって歩き出す。


そして、進んだ先に見えたもの。


広がる大地。そこに上がる炎と煙。


泣き叫びながら、逃げまどう村人たち。


オラオラと叫びながら、村人を追い回す盗賊の集団。


そう、盗賊の集団が、











木村をおそっていた。








「え、なぜに木村」



主人公は、ぱかりと口を開けた。誰なんだ、木村。そして襲われているのか、盗賊に。


逃げ惑う村人たちが、泣きながら叫ぶ。




村人A「なんてことだっ、俺たちの木村が!」



みんなの木村らしい。



村人B「じいちゃんやばあちゃんが作り上げてきた、俺たちの子どもに残してやるはずの、木村が!」



木村は丹精込めて、育てられてきたらしい。



盗賊「ハーッハッハ! この木村は、俺たちのものだ!」



そしていま木村は、取り合いをされているらしい。やめて! 私のために争わないで!




村人C「許さないぞ、盗賊! 俺たちの木村は、必ず取り戻す!」



木村には、ちょっとロマンスの路線もあるかもしれない。




「いやこれ、どうしろって言うの」




テンプレな話のはずだったのに、「木」の一文字が入ったために、別の話になってしまった異世界トリップ物語の序盤で、主人公は途方に暮れた。



村人D「身を切るようにつらいっ、……だが今は、生き延びるのが先決だ。


みんな、



木村を捨てよう……!」




そして捨てられるのか、木村。





「あーとりあえず、全国の木村さん、異世界でもいろいろがんばってください」


村人E「ううっ……ところであんただれ?」


「あ、はい。単なる通りすがりの主人公です」






主人公の旅は、始まったばかりだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ