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053 はかない”夢” <04/05(金)PM 00:13>


 ※※※ 注意 ※※※


 ただいま [夢の洞窟] 中です。



 大量だったり、黒かったり、テカってたり・・・そういうのが苦手な方は、しばらく読み飛ばしていただいた方が良いかと思います。ご注意下さい。


 [夢の洞窟]終了まで目印として、無理矢理サブタイトルに”夢”の文字を付けていこうと思います。よろしければ参考にして下さい。



 出会いの街[ヘアルツ]に到着して2日目、LV12になった俺は”プレイヤーショップ巡り”に繰り出した。そして南口2広場付近にやって来たところで、[夢の洞窟]探索の募集を見つけてしまい、参加を決定する。

 南口2方面の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]入り口前にて、準備を済ませた俺達3人は、”夢”の様な[夢の洞窟]内へと突入し、LV15以上のモンスターである”G竈カマド”LV16を発見し、”狂戦士”であるケイのダメージ調整をしてから、一刀両断で片付けたのだった。



 「………」さて先ほど『最上級職』である”狂戦士”の”圧倒的な破壊力”等を紹介したのであるが、「そんな凄いなら少しぐらい条件があっても、”狂戦士”やる奴いっぱい居るんじゃない?」と、感じられた方も居たのでは無いかと思われるので、マイナスの面についても少し解説しておきたい。


 まず当然ながら、基本的に”自分のLV以上”のモンスターとしか戦えない事。

 つまりLV100になった時、LV1~LV99までの全モンスターから”逃げ回らなければならない”という事であり、LV99以下に、どんなに経験値やドロップなどが”オイシイ”モンスターが居ても、もう迂闊うかつに狩れないのだ。

 そしてLV100~↑のモンスターは、一癖も二癖もあるモンスターが多く、”狂戦士”の維持も大変である。


 次に基本的に”毎回、一撃で30%以上のダメージを受ける”必要があり、下手にMAXHPを増やしたり、防御を固めたり出来ない。

 それはつまり戦う以上は『隙やチャンスがあっても、まずは相手に”攻撃を譲らなければならない』という事である。もちろん、どんなに”危険なスキル”や、”厄介な状態異常”を持った相手であっても、だ。

※このあたりプロレスラーや”3分制限の光の巨人”に似ている。まずは相手の見せ場を作り、その攻撃を受けきってから反撃して倒すのだ。

 しかし彼等と大きく違うのは、普通”格上”が”格下”の選手に攻撃をさせてやり、悠々と”受けて見せる”のだが、”狂戦士”は自分のLV以上の相手、つまり”格下”でありながら「まず格上の相手に攻撃をさせてやる」という、なんとも”漢気おとこぎ”に満ちた職業と言えるだろう。

 これにより、高LVミミックが判明(識別 = 非アクティブモンスター扱い)しても、先ほどのケイの様に”どうでもいいFA”を取り、わざわざ攻撃を受けるか?、”貯金”を使用して、更に掛けられるだけ補助などを掛けて貰い、先制の”超破壊力”で倒してしまうか?といった選択を迫られる。

 しかしそうホイホイ”貯金”を使用していると、仲間の危機や、逃げ切れない絶対絶命のピンチなどで、格下のモンスターの群れを討伐せざるを得ない時などに、”降格”してしまう危険性が高くなる。


 さらに「ダメージを食らわなければならない」関係上、”攻撃担当アタッカー”でありながら”壁役”もやるしか無い。しかし”ダメージを食らわなければならない”ため、防具もMAXHPも思う様に強化できず”壁役”には頼りない。

 TJOでは、FAをとった相手以外は基本的に無視される。つまり”狂戦士”の攻撃力だけを活かして、ユウコさんの様な”本職の壁役”の後ろから・・・という事をすると、ノーダメージの戦闘ばかりとなり、これまたすぐに”降格”してしまう。

 そのため、大ダメージを受けて”高価”で”低性能”なポーションを飲みまくるか、回復職に治癒しまくって貰いながら、”壁役”兼”アタッカー”をこなす、こなさざるを得ない。


 さらに、複数のLV差がある”アクティブモンスター”が居る様な場合、討伐可能なLV、不可能な低LVのモンスターが混合でやって来たり、攻撃力に大きく差があり、弱い方に30%食らう様に”調整”すると、強い方の攻撃で”即死”してしまう・・・等々の問題もあり、適切な戦場や、ダンジョンの選択が難しい。

 加えて、例え30%食らうモンスターばかりだったとしても、複数・・・単純に4体であらわれた場合。30%の攻撃 ×4体 = 120%・・・死亡である。この様に一撃で30%食らう様にしなければならない関係上、多数の群れるモンスターには相性が悪く、これまた逃げ回るハメになる。



 次に補正等についてだが、STR極(+100%)補正は確かに強力であるのだが、他の職も『最上級職』になる頃には、大体4~6職もの職補正が”重複”して掛かっている。つまり、最初こそ『抜きん出た絶大な性能』であるが、他の職も昇格毎に どんどん追いついて来るのである。

 大体の目安で、LV50を過ぎる頃から他のプレイヤーも、”上級職”と呼ばれる段階に入り、職補正、職ボーナス、強力なスキル・・・と充実し始めるため、この辺りで「追い付かれた」と感じて心折れる”狂戦士”プレイヤーも多い。


 またSTRの補正が強いので極振りして、LV50でSTR+50(MAX)まで振ってしまうと、逆に”狂戦士”は、LV50で”頭打ち”してしまう、という事になる。

 その後は、LVによる%補正と、武器をより良いモノ、より良い品質にする事による、”攻撃”の極補正(+100%)の効果を活かしていく必要がある。


 アクティブスキル(必殺技)も無いため、他の上級職、最上級職の”使い勝手の良いスキル”などが羨ましくて「キャラクターを削除して作り直した」というプレイヤーもゲーム時代には そこそこ居た。(これはこの世界では不可能っぽいが)

 これも逆に言うなら、ポーションや治癒魔法などで、HPさえ回復出来れば、『いつまでも戦闘を続けられる(継戦能力が高い)』という他職には無い”大きな長所”でもあったのだが・・・やはり”単調なのでツマラナイ”というプレイヤーが多かった。

 ・・・スキルに頼った職は”瞬間的には強力”であり”派手で爽快そう”なのだが、戦闘が長引いたり連戦等でMPが無くなると、目に見えて戦闘力が下がり苦しい戦いになったりするので、実際にはMP管理が大変なのだが。


 ・・・と、まぁこの様に”狂戦士”とは、長所と短所、メリットとデメリット、リスクにリターン、という”ヤマコウテイスト満載”の”夢”あふれる職業なのである。もちろん”叶わなかった夢も多い”わけですけどね、ヤマコウェ・・・



「ともかく隅々まで調べ無ぇとな」

「そうだな」

「・・・そうデスね」

 俺達の約10m範囲の外は、虫の壁、虫の床、虫のてんじょおおお、もうイヤだああぁぁ。・・・ともかく”G竈カマド”LV16との戦闘終了後、とりあえず”虫の床”の端まで歩いては、虫に退散してもらい、テカテカぬらぬらの黒や灰色や茶色のウェーブが「ガササササ・・・」「キチキチ・・・」「バサササ・・・」っと過ぎ去った後の床に、宝箱が無いかを調べながら、ゆっくりと前進していた。


 「………」ちなみに「こんなところ、さっさとダッシュで見て回ろう」などと考えて移動速度を上げると、”Gブラック”LV14以外のモンスターは、それほど”移動速度が速くない”ため、虫地獄の中に突っ込む事になる。

 「まぁまぁ、そう急がずに。[夢の洞窟]観光を楽死たのしんで、ゆっくりして逝ってね?」という、ヤマコウの有難い心遣いなのですよ?。えぇい、ぶん殴りたい。


 もちろん俺達の通り過ぎた後、ウジャウジャ、ワサワサと舞い戻って来て”虫地獄”に戻っているので、耐えられなくなって「いち抜けた」と脱落しても、”ダッシュで逃げる”事は出来ないのだ。ゆっくりと周囲の虫に退散してもらいながら、1人で虫地獄の中を出口へと歩いて出て行くしかない・・・罰ゲームすぎる。もう道は前にしか無いのだ。



「ん、道が3つ?に分かれてんな」

 見るとヒイラギの言う通り、左に通路(虫まみれ)が、右の通路(虫トンネル)は、すぐ先で更に2つに分かれていて、計3ルートになっている。


「と、とりあえず右、デスかね」

「まっ、結局は全部見て回るつもりだしな」

「そうだな」

 2人とも、ヘドロ、腐ったナモモノ?、”G亀”LV12、の共同作業による”悪臭”には、辟易へきえきしている様だが、虫地獄には さほどダメージは受けていない。羨ましい精神力だ。


 ケイが右の通路へと ゆっくりと進み、俺とヒイラギも付いて行く。すぐに次の分かれ道に付いた。まっすぐ前方に通路があり、右方向にも通路がある。


「右でいいか?」

「おう、ここもアクセル全開、インド人を右だ」

「・・・・・・(無視)」

「そうデスね」

 あまり見たくは無いのだが、”アクティブモンスター”も居るので、周囲を警戒しないわけにもいかない。もういいじゃんっ、全部”非アクティブモンスター”でいいじゃんっ、なんで1体混ぜてんの?ほんとヤマコウ意地悪いわっ。


 そんな訳でケイを先頭に周囲を(イヤイヤ)警戒しながら ゆっくりと進む。


「おい」

「ん?・・・・・おおぉぉ!」

「なんデスか?」

 ヒイラギが興奮しているので、ひょいと見ると、虫達が退散中の床の上で、2つの宝箱が姿を見せはじめていた。


「おいおい、こりゃぁ幸先さいさき良ぃぞ!?」

「えぇ、最初の部屋?で2つもあるなら・・・かなり期待出来ますね!」

 俺達の目の前では、虫の姿はすっかり無くなり、2つの宝箱だけが残されていた。


「おらっ、ヒイラギさっさとしろ」

 ケイは割と冷静だ。まぁこうしてても仕方無いのではあるが、もう少し喜んでも良いのでは無いだろうか?・・・いや、この冷静さが鋼の精神力を生み、高いSANを?(※TJOにSANという概念はありません)


「わかってるよ、2人とも少し離れてろ」

 ヒイラギは、右の宝箱に近寄っていく。俺達は少し離れ、一応周囲も警戒しておく。俺はいつもの様に、万が一の時には、すぐ回復出来る様に備えておく。



「さて・・・分析:罠[トラップアナライズ]」

 ヒイラギがスキルを使用すると、シノブさんの時と同様に宝箱の上面部から下底部に向けて、光る板状のモノがス~っと降りていった。


「罠は”仕掛け弓矢”で、罠LVは29だな」


 「………」罠LV29か、”僧侶”LV12の俺だと運ゲーですら無いな。半減出来ないのでDEXが29必要だ・・・無理ゲーすぎ。すると確実に失敗するのでLV29の攻撃を食らう、いくら”VITに全振りしている”とは言っても、LV12でLV29の攻撃食らうとか、正気か?としか言えない。

 ロングフリーズ?が発生して”矢ガモ”ならぬ”矢マサヨシ”ムービーが流れる、という死亡確定演出が拝めるだろう。


 ヒイラギは”斥候”LV17である、罠LVは”半減”して14だから、解除に失敗しても大ダメージかも知れないが恐らく即死は無いだろう。DEX全振りなら解除は100%成功するだろうが、TJO経験者の”斥候”であればSTRや、特にVITに多少は振っている気がする。

 それでも”みならい斥候”と”斥候”のDEX大補正(30%?)が、”重複して掛かっている”のでDEXに60%?ほど補正があるはず。DEXに10程度振っていれば、DEXだけで16相当で楽勝だが・・・


「余裕だな、・・・解除」

キンッ!

 ヒイラギは迷う事無く、解除にかかり難なく解除に成功した。やはり謎の金属音(罠解除成功音)がして、宝箱の前面の錠前がポトリと地面に落ち、錠前は霞んで消滅していく。


 「………」俺達が諦めた[山の洞窟]1層の3個目の宝箱は、”仕込み刃”罠LV19で、あの時点の シノブさんは”みならい斥候”LV6だった。

 そして今”みならい斥候”+”斥候”補正の、LV17のヒイラギは”罠LV29”を余裕で解除してみせた。LVUPして昇格すれば、より高LVで良いアイテムの入った宝箱が、楽々と開けられる様になるのである。


 あの時点では”LV19の宝箱”は魅力的だったが、今となっては「そんな低LVな宝箱どうでもいいじゃん」であろう。もちろん命懸けで開ける価値など無い。しかし いざ低LVの時には、夢見て”開けてみたくなる”のが人情だろう、むずかしいものだ。

 ましてTJO未経験者であったなら、せっかくの宝箱を前にして無視して立ち去れるか・・・。実際ゲーム時代には「死んだら死んだだw開けろ開けろ~」なプレイヤーも多かった。・・・まぁその結果、よく訓練された俺達の様な”TJO経験者”が生産されたわけですが。どこの軍の鬼教官だよっ。



「それで順番だが、マサヨシは最後でいいんだな?」

「えぇ最後でいいデス」

「俺も2番でいい」

 ケイはそう言いながら、ヒイラギに向かって「さっさと開けろ」とばかりに、力無く右手をフラフラ振って「しっしっ」という感じの合図を送っている。


「なんだ、お前ら欲が無ぇなぁ」

 そう言いながらヒイラギは宝箱をガバッと開ける。そしてヒイラギが宝箱の中から取り出したのは・・・10cmほどの小さなビンだった。

LV:12(非公開)

職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)

サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)

所持金:4,961G

武器:なし

防具:布の服

所持品:10/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2



分析:罠[トラップアナライズ] 宝箱等に仕掛けられた罠の種類と罠LVを識別し、罠LVを半減させる(小数点以下切捨て)

  補足:ミミックだった場合は、そのミミックのLVも識別する、ただしミミックのLVは半減出来ない。



「しのぶさん、いないのにあけたの~?」

「あぁ、ヒイラギも同じ”みならい斥候”系の”斥候”だから大丈夫なんだ」

「”みならいせっこう”けい?」

「まぁ”みならい斥候”系でも”スキルが無くなる職”もあるが、俺と同じで”正ルート”の昇格だから、スキルはシノブさんと全部一緒だ」

「ふ~ん?」

「・・・(う~ん、斥候なら尊敬するってわけでも無いのか?)」

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