006 宿屋トラップ
宿屋前の量産型おっさんの話を聞き流し、受け付けの量産型おばちゃんに
2泊3日2,000Gの部屋を頼む(ちなみに飯等は無し、持ち込みは可、1泊2日だと1,200G)
鍵を受け取り指定の部屋に入る。最安といっていいだけに室内には木製のベッドと机と椅子しかない。
「………」基本的にTJOでは街中で自分の持ち物以外は全て他人の所有物と思って間違いない。街中に置いてある物、店内や他人の屋敷内の物を、購入や許可も得ずに勝手に持ち出すと窃盗扱いとなる。
ただし「あまりにも判別しづらい」「わかりにくい」という不満の声が多数あったために、これも1周年記念の大型アップデートで”対象物をクリックする”事で、簡単な名称と所有者、窃盗にあたる場合には警告が表示される”簡易鑑定”が行えるようになった。(ちなみに対象をダブルクリックで取得)
”クリック”をどうすればいいかわからないので、とりあえず椅子を見つめてみる・・・
《名:椅子(木) 所有者:宿屋[スパデズ]店 〈警告〉敷地内から持ち出すと窃盗となります》
うん、どうやらリアルになったからクリックしなくても見つめるだけでいいようだ。・・・助かる。
「ご主人さま~、いすがどうかしたの?」
ミケネコが首を傾げている。
どうやら”システムメッセージ”と”ボイス”は自分にしか聞こえない・・・のか?
「今なにか聞こえたか?」
「なにか???」
「聞こえなかったならいい」
本人にしか聞こえないのか、サポートペットには聞こえないのか要検証だな。
とにかく「ミケネコには聞こえない」のは確かなようなのでとりあえずはいい。
さて・・・じー
《名:パンティ(縞) 所有者:ネイコ 〈警告〉取得すると窃盗となります》
うん・・・どうやら思った通りの品だ、時折ドラマとかでこういう時に部屋の外に出て、部屋番号を確認したりするという光景を見るが、この部屋の鍵をあけて入ってきたのだから確認するまでも無く、ここは俺の借りた部屋で間違いない。
かなりサイズが小さいな、量産型おばちゃん(自称ぽっちゃり)の物では無さそうだ。そもそも量産型おばちゃん(CV:くじら)の物なら 所有者:宿屋[スパデズ]受け付け とかになるだろう。
「ご主人さま?」
いかん、このままではパンティを見つめるぼっち村人その1となってしまう。
それはいかん、誠にイカンであります。
「忘れ物のようだ、宿屋のおばちゃんに伝えて、そのまま道具屋に行く」
「は~い」
宿屋のおばちゃんに伝えておけば帰ってきた時には回収されて、そのうち持ち主のネイコさんの元に戻るだろう。良かったな、ネイコさんの縞パン。
《名:パンティ(縞) 所有者:ネイコ 〈警告〉取得すると窃盗となります》
「ご主人さま~?」
「なんでもない」
いかん、思わずまた見つめてしまった。パンティを2度見つめるぼっち村人その1になってしまう。それでなくてもTJOではプレイヤーの行動によって選べる職業が多様に変化していくのだ。”パンティ鑑定士”とかになってしまった日にはミケネコの軽蔑の視線は免れない。
おのれネイコさんめ、おそろしいトラップを・・・
「………」とはいえ、見つめるだけで識別できて本当に助かった。
元の操作がクリックだけに対象をつつくとかだったら・・・村を疾走する某人造少女のように”ネイコさんの縞パン”をつんつんするぼっち村人その1が爆誕していた。ありがとうヤマコウ。
「も~、ご主人さま~」
「あぁ、行こうミケネコ」
とっくにドアの前に行き、ふり返りながら不機嫌そうに尻尾をせわしなく振るミケネコにせかされ、部屋を出て鍵をしめ受け付けのおばちゃんのところに向かうのであった。
LV:1
職業:みならい僧侶
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,000G
武器:なし
防具:布の服
所持品:0/50