048 ”夢” <04/05(金)AM 09:26>
出会いの街[ヘアルツ]に到着した日の夜、南口1方面で、盗ゾック(斧)LV8先輩との、ぶつかり稽古、その後の†カムイ†事件、そして一夜明けて早朝には、†カムイ†の遺産と”賞金首の首輪”懸賞金:94,000Gの入手、そしてその”お祝い”と色々な事が起こる。
その後、道具屋で鑑定を行い、その”色々な事”があったために、すっかり忘れていた真・クリスタルでの2度目のチェックで、俺はLV10→LV12へと、2LV”も”上昇し、VITに振ってVIT12とする。そして本日のところは良い店を探そうと”プレイヤーショップ巡り”に繰り出したのだった。
◆◆◆出会いの街[ヘアルツ]”主要街路”イメージ図◆◆◆
※東1、南1の十字路の中心にクリスタル
21
北北
2西╋╋東2
┣┫
1西╋╋東1
南南
21
>しかしいきなり巨大な街になっても混乱するだろうし、はじめて”安全では無い街中”というエリアがあらわれるので、まず到着した初級冒険者は、東南(右下)の、はじまりの街[スパデズ]と同じ様な構造をした1区画で慣れてから、徐々に他のエリアや、”安全では無い街中”にも足を延ばしていく事になる。
「………」のであるが、東南(右下)の区画は、”ミスターチキン”の様なNPCショップなども多く、また地価なども高い”一等地”であるため”プレイヤーショップ巡り”はあまり成果が無い。東南(右下)の区画は、ある程度見て回ったので、今後は、西南(左下)の区画を見て回ろうと思う。
出会いの街[ヘアルツ]全体イメージ
□□
□□
□田
↑
この辺りの区画です
・・・という訳?で、俺はミケネコを肩に乗せたまま、真・クリスタルから南(↓)へと進み、南口1前の広場でミケネコさんを肩から降ろし、西(←)へと歩いて目に付いた”プレイヤーショップ”を覗いて回る。少しクリスタルからは離れているものの”安全地帯”であるので、まだまだ高級住宅地?である。取り扱う商品も お高い。
しかしまぁLVが上がってきた時に、大体どの辺りに”どの程度の品”のショップがあるのか?、調べておくのは悪い事では無いし、全くの無駄になる訳では無い。さらに”優良店”を見つけられれば、十分に元が取れるだろう。
某掲示板があれば「2割引で鑑定してくれる店~」とか、「武器修理が安い店~」とか、「ただいま〇〇高価買取中~」などと、色々な情報が簡単に入手出来るのだろうが・・・。
まぁ無いモノは仕方がない。ぼっちな俺は地道に、一軒一軒歩いて探すしか無いだろう。相手が量産型おっさん、おばちゃんで無いから、毎回”新鮮”だしな。
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「[夢の洞窟]同行者募集、特に回復が出来る職、頼む」
南口2前の広場付近にやって来たところ、とある”一つの募集”が目に付いた。よくあるダンジョン探索のヒーラー募集だ。募集主は”LV17 ヒイラギ 斥候”、白ネームの男性プレイヤーである。視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)AM 10:14>と表示されていた。
「………」TJOでのダンジョン探索は、とりあえず”罠”を察知、回避、解除出来る”みならい斥候”系と、”回復”職が居ないと危険度がハネ上がってしまう、薬草、ポーションの使い勝手(効果や価格)がイマイチであるためだ。
”斥候”である彼が”回復職”を募集しているのは当然だろう。後は壁役とアタッカーが数人居れば、普通のダンジョンは どうとでもなる。
[夢の洞窟]は、出現するモンスターのLVこそ、LV10~18と高くなっているものの、”ダンジョン”としての難易度は、はじまりの街[スパデズ]唯一のダンジョン[山の洞窟]よりも低いほどである、激ヌルダンジョンだ。
実際のところ、俺も[ヘアルツ]で最初に参加するとしたら、はじまりの街[スパデズ]~出会いの街[ヘアルツ]間の、”危険な街道”で話していた[盗賊のアジト]か、この[夢の洞窟]の探索になるだろう、と考えていた、考えてはいたのだが、やはり”リアルタイプになった”という事で若干、その、な?
・・・いや、挑戦者魂、開拓精神が大事だ。うん、そうだな、わかってる、わかってるよ。行くよ、行きゃいいんだろ、ヤマコウめっ。
(ヒイラギへささやき)「すみません、パーティ組めないけどいいですか?回復は出来ます」
(ヒイラギからのささやき)「お~、回復と・・・ワクチンだっけ?それが使えりゃ問題無い」
募集をしていたプレイヤーが こちらを探している様なので、手をあげながら軽く会釈する。それほど離れていないので、すぐこちらに気付いた様だ。
(ヒイラギへささやき)「どちらも大丈夫です、それで”条件”があるのですが、こちらはワクチンと”回復をするだけ”で。ドロップは全てそちらの方で分けて下さい、宝箱は順番の最後でいいです」
(ヒイラギからのささやき)「ん~、変な条件だなぁ、え~と、パーティは組まない、ワクチンと”回復をするだけ”、ドロップはいらない、それで宝箱は順番の最後・・・でいいのか?」
(ヒイラギへささやき)「えぇ、勝手に辻ヒーラーが付いて来てる、ぐらいの感覚で」
(ヒイラギからのささやき)「ん~まぁ、こっちは助かるが、ドロップは”山分け”でいいんじゃ無いか?」
(ヒイラギへささやき)「いえ、本当に”回復しか出来ない”ので、治癒経験値を稼がせてもらえるだけで十分助かります」
(ヒイラギからのささやき)「そういうもんなのか?、まぁちょっと もう1人に聞いてみるわ、待っててくれ」
(ヒイラギへささやき)「はい、決まったら また声をかけて下さい」
募集をしていたプレイヤーは”隣の白ネームの男性プレイヤー”に話しかけている。どうやらすぐ横に居る彼が”もう1人”らしい、”LV15 ケイ 狂戦士”・・・お~”狂戦士”、TJO経験者だろうか?、それなりの知識と覚悟が無いと難しい職だ。
(ヒイラギからのささやき)「お~い、「とにかく回復してくれればいい」だそうだ。よろしく頼む」
(ヒイラギへささやき)「はい、よろしくお願いします」
さて、[夢の洞窟]行きが決まったな。・・・はぁ。
「ミケネコ、ダンジョンに行く事になった」
「だんじょん~?」
足元のミケネコさんは、首を傾げながら俺の方を見上げている。
「ちょっと事情があってな、今回は最初からカードに入っていてくれ」
「は~い?」
ギルドカードを取り出して腰を落とし、少し疑問に感じているらしいミケネコを抱きかかえ、その狭い額にカードを当てて収納する。
「寝ていていいからな」
「みてる~」
「そうか・・・まぁ無理はするな」
一応ミケネコにそう言ってから、腰を上げて2人のところへ合流する。
「あらためて、”斥候”だ、よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします、”みならい僧侶”です」
「”狂戦士”だ、回復は頼む」
2人と自己紹介を交わす。
「それで、だ。[夢の洞窟]だが、大丈夫か?」
「えぇ、わかってます」
「そうか、まぁ知らんヤツだと”途中で抜けられたり”しかねないから、一応な」
「まぁ知らないとアレですよねぇ」
ヒイラギさんに”一応”の確認をされ、問題が無い事を告げる。
「昨日もダメでなぁ、今日も(募集をはじめて)1時間すぎたが、だ~れも のって来やしねぇ、そろそろ普通の狩りに出ようか、と思ってたところだ」
ヒイラギさんは両手を広げて”お手上げ”といったポーズで苦笑いをしている。
「やっぱり人気無いんですねぇ」
「あ~ゲーム時代でもアレだからなぁ」
「そうですね、こうリアルだと尚更・・・」
「だからこそ”夢”があるんだろうに(笑)」
「それもそうですね(苦笑)」
ケイさんはじっと目をつぶっている、無口な人なのだろうか?。シノブさんも口数が少ない感じだったが、それとはまた少し違う気がする。ともかく俺達は それからしばらく募集を続けながら、雑談をしていた。
「ん~、ダメだな、もう俺達3人だけで行くか?、ぶっちゃけ”回復”と”ワクチン?”がありゃ楽勝なとこ、だしな」
「まぁダンジョン”は”、やさしい、ですよね」
「………」念のため、ヒイラギさんは自分が斥候なので、”斥候ありき”で”こんな事”を言っているのだが、TJOでは”斥候”が居ないと、どんなダンジョンも それこそ”お手上げ”である。
ダンジョンの罠、宝箱の罠、ミミック・・・と、どれも”そのダンジョンの適正プレイヤー”のLVの倍~それ以上あっても普通だ。[夢の洞窟]に出現するモンスターはLV10~18であるが、罠類のLVは 20~40?とかだろう。
そんな”高LVの攻撃”を、結構な確率で”不意打ち”補正などで”クリティカルヒット”されるのだ。いくら罠のほとんどが”1回限りの攻撃”とはいえ、たまったものでは無い。
ちなみに はじまりの街[スパデズ]のダンジョン[山の洞窟]1層の場合、
モンスター・・・ヒキ蝙蝠LV4、山ゾック(斧)LV6。
宝箱の罠・・・仕掛け弓矢LV12、爆弾LV15、仕込み刃LV19。
ダンジョンの罠・・・毒針LV11、爆発物LV16、ピット(落とし穴)LV18。
そして俺達のLVは、LV6~7であった。あらためて見ると「これはひどいwww」、ヤマコウぶっ殺す気マンマンである。
TJOにおいて”罠LVは半減するモノ”なのである。しかも半減してすら”諦める勇気と決断”を要求される。当然”みならい斥候”系無し でダンジョン探索など、正気の沙汰では無い。
しかしまぁ[夢の洞窟]に出現するモンスターのLVは10~18、だが”アクティブモンスター”は”1体だけ”である。他は全て”非アクティブモンスター”であるので、乱入されて乱戦になる確率が低く、しかも間違って誤爆しても、反撃するより”逃走してしまう確率の方が高い”という性質なのだ。このダンジョンの半分は”やさしさ”で出来ています。
「どうする?罠なんかは俺が、それで壁&攻撃担当、回復&ワクチン担当、と一応は最低限そろってるわけだが」
「あぁ、とにかく回復さえしてもらえりゃ大丈夫だ」
「えぇ回復は大丈夫だと思います」
「よしっ、それじゃ行くかぁ」
おっと、しまった、リーダーの事を忘れていた。
「えっとっ・・・リーダーは、ヒイラギさんにお願いして いいですか?」
「ん?あ~コイツはリーダーってガラじゃ無いし、お前さんも いきなりリーダーは無理だよなぁ」
「うるせぇ」
「まぁよくわかりません」
「お~し、それじゃ俺がリーダーな。それで早速リーダー命令だ、ヒイラギさんはヤメろ、ヒイラギでいい」
「俺もケイでいい」
・・・まぁ男3人、あまり気を使う事も無いだろう。
「わかりました。それじゃ俺もマサヨシと呼んで下さい」
「よっしゃ、それじゃケイ、マサヨシ、[夢の洞窟]へ出発するぞっ」
「あぁ」
「了解です」
そうして俺達3人は、”夢”あふれる?[夢の洞窟]へ向けて出発する事にしたのだった。視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)AM 10:38>と表示されていた。
LV:12(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,961G
武器:なし
防具:布の服
所持品:10/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×24、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)100%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2
「・・・・・・なんだ、その目は?」
「しばらく、しゅぎょうって いったのに~」
「まぁ自分の都合良く募集は無いからな、チャンスには飛び込まないと、だ」
「ちゃんす~?」
「あまり無い募集なんだよ」
「ふ~ん?」




