表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/98

045 自由の代償、†カムイ†に何が起こったか <04/05(金)AM 05:16>

 出会いの街[ヘアルツ]南口1方面で、”MPKもどき”のプレイヤー(†カムイ†)を、盗ゾック(斧)LV8先輩に任せて街に逃走し、そのまま睡眠をとった俺は、翌日の朝4時頃に起床して、確認のため現場に戻った。

 そこで、†カムイ†の遺産の”袋”と、”賞金首の首輪”懸賞金:84,000Gを入手した俺は、予定通りに、南(↓)の川沿いから東(→)の亀裂付近を通り、北(↑)の石壁に沿って、素材収集と宝箱探しをして南口1の門へと帰りついた。



 まずは俺の朝飯からだな、まだ早朝で薄暗いのだが”鉄は熱いうちに”、”お祝いも出来るだけ早く”だ。南口1前の広場には人影は無い、そのまま北に進み ミスターチキン[ヘアルツ]店へ向かう。


 ・・・はいはい、開拓精神フロンティアスピリット開拓精神フロンティアスピリット


「おっさん、ササミカツ丼だ」

「ササミカツ丼だな、500Gだ」

 500Gをテーブルに置くと、分身体の様な量産型おっさんが「4」と書かれた木製の番号札を渡してくる。「4」番は・・・末吉だったかな?。

 ふむ、そう言えば昨晩は「1」番だったなぁ。ん~、盗ゾック(斧)LV8先輩に運良く?遭遇して、†カムイ†に襲われて逃走し、ダメージと回復量のデータが取れ、しかも結局は大吉以上の大儲け、と・・・うん、大吉の上に来るモノ、”バリ吉”だな。「1」番は、バリ吉。

 そんな事を考えつつ、やって来たササミカツ丼を美味しくいただき、ミスターチキン[ヘアルツ]店を後にした。


 ミスターチキンを出てすぐの場所には、多くの露天があり”羊饅頭ひつじマントウ”を売っている店もある。「次は自分の朝ご飯だ♪」とばかりにミケネコさんが足元にすりよって、尻尾をウネウネと絡ませてきて少し歩きにくい。

 まぁ”良い成果”があった後に、しっかり”お楽しみ”の時間があるのは良い事だろう、ただ・・・ミケネコさんに足元で ぐねぐね蛇行されると、本当に歩きにくいんですけど。


「1つもらおう」

「羊饅頭、1つ300Gだよ」

 前回と同じ量産型おばちゃんに300Gを支払い、小さな紙袋に入った羊饅頭を受け取って、インベントリに放り込む。

「毎度~」


 約束通り”羊饅頭”を購入したのでUターンして、足元のミケネコさんを踏まない様に気をつけながら宿屋に向かう。宿屋前の量産型おっさんをスルーして、受付の量産型おばちゃんに鍵を貰い、借りている部屋に戻る。



 ざっと部屋を見渡したが”異変”も無さそうなので、椅子に腰掛けてミケネコを机の上に呼ぶ。インベントリから紙袋を取り出し、ホカホカの羊饅頭を一口分ほど ちぎって、かぶりついた。

 う~ん、”真・羊饅頭”は、生地がもちもち、しっとりで、中の餡は、肉汁たっぷりでジューシィだ、タケノコ?の”シャクシャク感”もやはり良い。

 ふと”良い笑顔”の饅頭ひつじが「ウメェ~」と鳴く姿が思い出される。・・・くっ、殴りたい。


「ご主人さま~ぁ」

 ミケネコさんが「待ちきれないよ~」とばかりに、机の上の俺の左手を、右前足でトントンと叩いて催促してきた。いかん”おあずけ”をするつもりは無かったのだが・・・。


「すまんすまん」

 せっかくアツアツなのだが、ミケネコさんは猫舌である。昨日と同様に包んでくれた紙袋を広げ、その上に羊饅頭の中身のあんだけを出して、ふ~ふ~と、しばらく冷ます。

 指先で少し触れて温度を確かめてみる。ひつじまんとう?(不確定名)が出来たかな?


「はい、どうぞ、熱いかも知れないから気をつけてな」

「きをつける~」

 ミケネコは慎重に顔を近づけて、舌でペロペロと餡の温度を確かめながら、少しだけハグッハグッと口にした。


「ひつじまんとう、おいし~♪」

 ミケネコさんは満足そうだ。俺は残ってしまった”もちもちしっとり”の外側の生地を、さっさと食べてしまってから、インベントリから バリ好きー(お得用)の袋を取り出す。

 袋に手を入れて掌に小盛りにしてから、ひつじまんとう?(不確定名)、を食べている最中のミケネコさんの前に、バリ好きーも差し出す。


「ほら、こっちもあるぞ」

「やった♪」

 ミケネコさんは、ハグハグ、カリポリと大忙しだ。大変”しあわせそう”なので何よりである。バリ好きーの袋は、さっさとインベントリに戻す。



 さて、と・・・俺は「オプション設定」、「処罰」と念じる。


《損害に対する対応を選択して下さい。残り2件》

《ブラックリスト登録と処罰をする場合は、先にBL登録を行って下さい》

※ブラックリスト=迷惑プレイヤー登録


《名:†カムイ† 損害:負傷  処罰 BL登録 許す <保留> 07:39前》

《名:†カムイ† 損害:負傷  処罰 BL登録 許す <保留> 07:40前》



 ・・・「†カムイ†」を「BL登録」と念じる。そこっ、BLと聞いて変な反応しない。この作品のキーワードに無いですよ?・・・まぁそんな事はどうでもよい。


《†カムイ† をブラックリストに登録しますか? yes / [no] 》

《ブラックリストに登録すると、相手からの全てのアクション(発言、ささやき、取り引き要求、パーティ勧誘等)が無視されます》



 全く問題無いので すぐに「yes」と念じる。


《†カムイ† をブラックリストに登録しました。》

《解除するには、ブラックリスト一覧から行って下さい。》



《損害に対する対応を選択して下さい。残り2件》

《ブラックリスト登録と処罰をする場合は、先にBL登録を行って下さい》


《名:†カムイ† 損害:負傷  処罰 許す <保留> 07:39前》

《名:†カムイ† 損害:負傷  処罰 許す <保留> 07:40前》


 ・・・「†カムイ†」、「処罰」と念じる。


《†カムイ† を処罰しますか? yes / [no] 》

《処罰後に取り消しは出来ません。また処罰するとリストから削除されます。》



 これも全く問題無いので すぐに「yes」と念じる。


《†カムイ† を処罰しました。》



《損害に対する対応を選択して下さい。残り1件》

《ブラックリスト登録と処罰をする場合は、先にBL登録を行って下さい》


《名:†カムイ† 損害:負傷  処罰 許す <保留> 07:40前》



 同様に、もう1件も”処罰”して、終了する。そして、所持品の”賞金首の首輪[†カムイ†]”を確認してみると・・・


 懸賞金:84,000G →懸賞金:94,000G


 よしよし、しっかり処罰2回分、懸賞金が増額されている。首輪に”引き渡し期限”等は無い。つまりデスペナルティ対策としても、優秀な”換金アイテム”なのである。まぁ”冒険者ギルド”でしか換金出来ない、という欠点はあるが、些細な事だろう。


 ハグハグ、カリポリ・・・アグアグ・・・



 「………」それでは、昨晩からの一連の†カムイ†事件の解説といこう。まず俺は、盗ゾック(斧)LV8との戦闘中に、突然”末期色”の†カムイ†に斬りかかられた。この瞬間、


”イエローネームで末期色”だった『LV14 †カムイ† 双剣使い見習い』

 は、”累積ペナルティ”により、イエローネームの許容範囲をオーバーし、


”レッドネーム”の『LV14 †カムイ† 賞金首:168,000G』

 へと『強制転職』させられる。


 TJOの1000職の中で”最弱”である”賞金首”に”強制転職”させられた†カムイ†は、それまでの”みならい戦士”と”双剣使い見習い”の職補正、職ボーナスが全て失われる。


 そのため、俺への”双剣使い見習い”での最初の1撃は、35%のダメージであったのに、”賞金首”での”2撃目を食らっても、HPが『半分ほど』にしかならなかった。つまり2撃目では、たったの”15%”しかダメージを食らわなかった、のである。(”斧”攻撃や、クリティカルを食らうとマズい、というのは盗ゾック(斧)LV8先輩の話だったわけだ)


 その後、俺だけが”逃走が成立する地点”に逃げ出したため、盗ゾック(斧)LV8先輩にとって『自分の戦場に居る攻撃対象ターゲットは、背中を向けて隙だらけの†カムイ†だけ』となっていた為、当然†カムイ†を攻撃する。


 LV14の”双剣使い見習い”だった・・・†カムイ†にとって、盗ゾック(斧)LV8は雑魚であったろう、だが、


>ゲーム時代、大まかな目安として、昇格すると「約 5LV分程度の強化に匹敵」する、と言われていた。


 ・・・ように、”みならい戦士”と”双剣使い見習い”、という2つ分の職補正、職ボーナスが消失してしまった†カムイ†は、一気に2ランクも降格し「約 10LV分程度の”弱体化”に匹敵」してしまった。


 とは言え、武器、防具などは”そのまま”だった様だし(高級装備などは、降格により装備要求を満たせなくなる事がある)6~8LVダウン相当くらいだろうか。

 つまりLV14”賞金首”の†カムイ†と、盗ゾック(斧)LV8は、あの時点で”ほぼ同等”の戦闘力になってしまっていた、と思われる。


 しかし最初の一撃、”斧”による”切断&衝撃系”の攻撃を、”無防備に”、”背後から”、まともに食らった”賞金首”(運(LUC)マイナス補正)の†カムイ†は、”不幸”にも”クリティカルヒット”を貰ってしまい、戦闘開始から大きなハンデを抱えてしまった。


 それでも最後に聞いた†カムイ†のセリフから、”まだ盗ゾック先輩をあなどっていた”様だから、戦闘を継続してしまい、恐らくFAを取ってしまったために、”逃走が成立する地点”が延びて、逃げきれず敗北したのだろう。



 TJOでは、”賞金首”は”西部劇の手配書”などと同様、DEAD or ALIVE、つまり「生死を問わず = 生きたまま捕まえるか、無理なら殺せ」である。しかしTJOでは『逮捕だと賞金満額』支払われるのだが、『殺害だと賞金半額』になってしまう。


 だがTJOプレイヤー的には、逆に『逮捕、連行すれば、現金になるが2倍貰える』という認識であった。HPを調整して”逮捕”しようとするより、殺してしまう方が楽だし、”連行”などの面倒な作業をしなくて済む。

 何より先ほど述べた通り、『賞金首の首輪』は”換金アイテム”として優秀なのだ。現金で支払われる”逮捕”より、殺して『賞金首の首輪』を入手して、”換金アイテム”を確保しておきたい、というプレイヤーも多かった。


 『賞金首の首輪』は入手後72時間ほどの間は、”処罰”により懸賞金が増額される事がある。先ほど俺がやったのも”処罰”して増額させたわけだ。処罰する権利?は72時間で失われるため、その後は増額される事は無い。

 例によって?、たまたま今回は”俺が首輪を拾って”、”俺が処罰した”から、俺の所持する『賞金首の首輪』の懸賞金が増額され、ダイレクトに”俺が得した”のだが。

 本来は、イエローネームを悪化させ復帰しづらくする、累積で赤ネームにする。懸賞金を増額=時効を延ばし、逃げきれにくくする、保釈金を増やし、保釈されづらくする、強制労働期間を延ばす、と『被害者が加害者を罰するため』の仕様である。


 さて、死んでしまったので、俺が貰える懸賞金は半額となったが、†カムイ†が1週間後に払う”保釈金”は、”元の懸賞金”の2倍、つまり俺の貰える”半額の懸賞金”の4倍、376,000G である。


>そもそもこの世界で悪事は割りに合わない。神罰では無いがペナルティが重すぎる。悪人や犯罪者には厳しいヤマコウクオリティ。


 ・・・なのである。TJOは自由度が高い、しかし善には恩恵を、悪には罰をしっかり与える。誰の言葉か忘れたが「”皆がやってる”、”皆がやらない”事には理由がある」のだ。TJOの世界(似た世界)でヤマコウ〔※1〕を甘く見てはいけない。



「いっぱい しあわせ~♪」

 ふと気がつくと、ミケネコさんが、ひつじまんとう?(不確定名)と、バリ好きーを食べ終えて、全身を丹念に毛づくろい していた。毛づくろいが終わった後、満足そうなミケネコのアゴの下を、しばらくの間コショコショしてやった。

LV:10(非公開)

職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)

サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)

所持金:7,275G

武器:なし

防具:布の服

所持品:10/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×24、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)100%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G



〔※1〕TJO総合統括プロデューサー 山岡 光一 ヤマコウ(通称)(CV:小山力也)

 長所短所、メリットデメリット、リスクリターンといった事を重要視する。挑戦者魂チャレンジスピリット開拓精神フロンティアスピリットを評価し、停滞、安定、マンネリを嫌う、TJOの理念に大きく影響を与える人物。


 彼の理念により、ただ得する、ただ損する、何のリスクも無いのに強力、苦労したのに儲けが無い、などといった理不尽さが、ほぼ存在しないゲーム性となっている。強力な攻撃、効果には必ずなんらかのリスク、代償を伴う。

 またゲーム内、ゲーム外を問わず、悪事、犯罪行為には厳しい。過去作でも迷惑行為、RMTチートbotなど、容赦なくBANしてきた実績を持つ。



「ご主人さま~、とうそうが、せいりつするちてんってなに~?」

「そうだな、繋がれた番犬みたいな感じだ」

「ばんけん~?」

「あぁ20mの”ゴム製のロープ”で繋がれた番犬だ、憎しみ(ヘイト)が低いと、その20mで追いかけるのをヤメて、犬小屋(出現地点)に帰っていく」

「へいとが、たかいと~?」

「ヘイトが高いと、20m過ぎても そのゴムを引っ張って、怒りの力で20m以上追いかけてくる、みたいな感じだな」

「いかりがうちょうてん、なんだね~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ