038 出会いの街[ヘアルツ] <04/04(木)PM 01:22>
はじまりの街[スパデズ]を旅立った俺達は、何事も無く”危険な街道”を突破して、出会いの街[ヘアルツ]に到着した。クリスタルに触れて、死亡時の”復活地点”の変更と、LV9で止まっていたLVUPのチェックを行ったところ、ユウコさんと俺はLV10になった。
その後、俺達は”[ヘアルツ]クリスタルまで同行する”という条件だったので、そこで解散し、俺は[ヘアルツ]名物?の羊饅頭を購入して、宿屋を確保し少し遅めの昼食をとった後、街中へと散策に出かけたのだった。
「………」さて出会いの街[ヘアルツ]では、クリスタルを中心に、北側(↑)に冒険者ギルド、東側(→)に武器屋、西側(←)に道具屋、南側(↓)に宿屋があり、ここまでは はじまりの街[スパデズ]と同じ、と説明したのだが、当然それだけでは不十分だろう。
大雑把に、3×3の9マスを想像していただいて、その左端の縦一列を除外した縦長の6マス、その6マスの”右下の1マス分”が、はじまりの街[スパデズ]と同じ構造、規模になっている感じである。つまり はじまりの街[スパデズ]の約6倍の街という事になる。
はじまりの街[スパデズ]全体イメージ
田
出会いの街[ヘアルツ]全体イメージ
□□
□□
□田←この部分です
しかしいきなり巨大な街になっても混乱するだろうし、はじめて”安全では無い街中”というエリアがあらわれるので、まず到着した初級冒険者は、東南(右下)の、はじまりの街[スパデズ]と同じ様な構造をした1区画で慣れてから、徐々に他のエリアや、”安全では無い街中”にも足を延ばしていく事になる。
◆◆◆◆◆
以下に大雑把な”主要街路”イメージ図
周囲は塀で囲まれていて、それぞれ方角を示した位置に門がある。
[スパデズ]は十字路の中心にクリスタル
[ヘアルツ]は東1、南1の十字路の中心にクリスタル
はじまりの街[スパデズ]
北
西╋東
南
出会いの街[ヘアルツ]
21
北北
2西╋╋東2
┣┫
1西╋╋東1
南南
21
あくまで主要街路、大通りの図で、細かな通りなどは略してあります。
主人公達は東1の門から入ってきました。
◆◆◆◆◆
「ご主人さま~どこいくの~?」
「あぁ、まぁ特に目的も無いんだが、とりあえずプレイヤーショップを見て回る感じだな」
「ぷれいやーしょっぷ~?」
「ん~、まぁシノブさんが店を出してる、みたいな感じだ」
「しのぶさん すご~い」
ミケネコさんに分かりやすいかと思った”たとえ”なのだが、またシノブさんの株が上昇してしまった様だ、もう何をどうやっても評価が上がるのだろう、”あばたもえくぼ”的な?。
「………」TJOでのプレイヤーショップとは、俺達プレイヤーが店(土地)を購入して出店し、探索などで入手したり、売買やオークションなどで得たアイテムなどを売る店である。
当然プレイヤーが自由に価格を設定するために、掘り出し物があったり、鑑定、鍛冶の価格などが、NPCショップに比べて格安な店も存在する。まぁ割高な店も存在する。
ゲーム時代であれば某掲示板の”オススメショップスレ”などで、安く鑑定などをしてくれる店が紹介(または自薦)されていて、良さそうな店は常連になったりしていたのだが、残念ながら、この世界では”その知識や人脈?は完全に無意味なもの”となったであろう。
つまり、自分自身で各街村の多くのプレイヤーショップを回って、良い店を探していかなければならないのだ。しかもプレイヤーショップという事は、相手は人間である。
NPCであれば”割高”とはいえ”軽犯罪者”や”賞金首”でも普通に対応してくれるのだが、プレイヤーショップだと「青白の方以外お断り」というプレイヤーは少なくない。また白ネームであっても「気に入らない」というだけで、売ってくれなかったり入店お断りにされる事まである。
ようするに店主との”良好なコミュニケーション”も大事になってくるのだ。単に”合う合わない”もあるので、こればかりは数をこなすしか無いだろう。
さて、この東南(右下)区画は、クリスタル近辺という”超高額地価”地帯である。つまりここに出店しているのは、かなり有力でG持ちのプレイヤーのショップであるし、場所的に”初級冒険者が一番はじめに訪れるプレイヤーショップ”であるので、相手も商売の達人で初心者にも優しい(はず)。
まぁその代わり客が良く来るという事は、価格なども あまり期待出来ない事が多い。・・・しかしこれもゲーム時代の話であるので、とにかく覗いてまわろう。比較データは多いほど良い。
プレイヤーショップの見分け方は簡単だ、まず はじまりの街[スパデズ]では、ほとんどの家の庭の門が閉まっていたが、出会いの街[ヘアルツ]以降は、その庭の門が開いている事がある。
それらはプレイヤーの家である事が多い。そして門が開いていて、”門の所に看板が出ている”のがプレイヤーの店である。
この看板が出ている限り、”不法侵入”になる事は無いので、安心してショップを覗いてみる事が出来るが、「青白の方以外お断り」などの”設定”がされていた場合は、条件に合わないプレイヤーには警告文が出て、それを無視して入ると、街中で”戦闘状態”にした時と同様、善行悪行値がマイナスされ守衛がやってくる。
あぁ、プレイヤーショップの大きな利点があったな。店主が”量産型では無い”のだ、こんなに嬉しい事は無い。これもヤマコウの「プレイヤー同士で積極的に売買などを行ってほしい」という目論見の成果であるなら、非常に不本意であるが「テメェの思惑通りだよ、コンチクショー」と言わざるを得ない。
「いらっしゃいませ~」
とりあえず宿屋からクリスタルに戻る途中の店に入ってみた。宿屋⇔クリスタル間とか、超一等地である。どれだけGが必要だったのか見当もつかない。
店内を見渡してみると、見るからに高そうな武器防具が並んで、アクセサリーなどもケースに並べて置いてある。宝石店の様な高級感あふれる装いだ。こういった”調度品”などもユーザーが作製販売するため、中世的?なNPCショップとは、ガラリと雰囲気が違うショップもあって面白い。・・・まぁその調度品も、いくらするのか見当がつかない、俺には縁が無い世界だ。
とりあえず店内の物を、じ~っと見て”簡易鑑定”して回る。当然だが、何一つ買える物など無かった。まぁだからこそ、
>「宝箱の中身だが、最寄りの街、村のNPCショップの品揃えの中で、”平均以上の品からランダム”に選出されている」
・・・のだ。プレイヤーショップを含めてしまうと、この街の周囲で、とんでも無い高級アイテムが入った”フィールドPOP宝箱”が出没してしまうだろう。ゲームバランス崩壊どころでは無い。
「お邪魔しました~」
「は~い、またお越しくださいませ~」
俺の様な貧乏人の”ひやかし”にも慣れたものなのだろう、そつのない対応である。
「ご主人さま~かわないの~?」
「あぁ、俺に買える物など1つも無かった」
「たかい?」
「ん~、バリ好きー(お得用)が、1000袋ぐらい買えるGが必要だな」
「ぷれいやーしょっぷ、たか~い!」
うん、ミケネコさんにはバリ好きー換算が良い様だ。驚いているミケネコの狭い額をコリコリかく。
「まぁ逆に高LVになっても、この街で必要な物が買えるって事なんだ、こうやって見て回って、自分のLVに適したショップを、その都度利用していけばいい」
「ふ~ん?」
「そうだな、しばらくは「早朝、日暮れは宝箱探し」、「朝~昼は探索やダンジョン行きパーティに参加」、「夜間、深夜に修行」、「空いた時間はショップ巡り」という感じになるな、まぁ はじまりの街[スパデズ]でやってたのに”ショップ巡り”が増えるだけだ」
「ん~?」
「すぐ慣れる」
「は~い?」
ちょっと疑問に思ってるミケネコを連れて、夕暮れまでプレイヤーショップ巡りを続けた。
・
・
・
「よし、少し早いが晩飯を食べてから宝箱探しだ」
「たからばこ、みつける~」
まぁ料理人による”レストラン?や、お食事処”のプレイヤーショップもあるのだが、当然”お高い”のでミスターチキン[ヘアルツ]店に直行である。
羊饅頭を買う時に”店の位置”は確認していたので迷う事も無く到着し、扉を引いて中に入ると、[スパデズ]店同様、揚げ物の匂いが漂ってきた。
「よう兄ちゃん、新顔だな?うちはチキンが自慢だ、チキンオンリーだ、何にする?」
どう見ても慣れ親しんだ、いつもの量産型おっさん(CV:立木文彦)だが、どうやら俺のデータがリセットされた様だ、いっそデータ引継ぎしておいてくれれば良いものを。
「ササミカツ丼」
「ササミカツ丼だな、500Gだ」
500Gをテーブルに置くと「1」と書かれた木製の番号札を渡される。「1」番か・・・珍しいな。
「それを持って適当に空いてる席で待っててくれ、おいササミカツ丼1丁」
「あいよ」
厨房から量産型おばちゃんらしき声(CV:くじら)が聞こえる。やはりデータがリセットされただけ、にしか感じられない。
まぁよい、気にしても仕方が無いだろう、ここでも少し奥のゲーム時代にいつも座っていた席に座る、ミケネコがヒザの上に跳び乗って丸まったので、背中をサラ~っと撫でながら、とりあえずテーブルの上に、ひっくり返して重ねてあるコップと隣の水差しを見つめてみる。
《名:客用コップ(木) 所有者:ミスターチキン[ヘアルツ]店 〈警告〉敷地内から持ち出すと窃盗となります》
《名:客用水差し(木) 所有者:ミスターチキン[ヘアルツ]店 〈警告〉敷地内から持ち出すと窃盗となります》
一応 ミスターチキン[ヘアルツ]店に変わっている。「引っかかったな!実は店に入った瞬間、[スパデズ]店にワープしていたのだ」などという事は無いようだ。THE 水 を一杯飲んで、ミケネコの背中を撫でつつ待っていると、
「「1」番の兄ちゃん、ササミカツ丼お待ち」
量産型おっさんがササミカツ丼を持ってやってきた。「1」と書かれた木製の番号札を量産型おっさんに渡す。
「ごゆっくり」
「1」番の札と引き替えに、持ってきたササミカツ丼を置いて、おっさんがカウンターに帰っていく。俺は違いのわからない男、陶器らしき丼を観察したり、卵やササミカツ、ご飯をしっかりと味わったりしてみたが、ついに[スパデズ]店との違いを感じる事は無かった。もう美味けりゃいいじゃない。
ともかく ここでも存分にササミカツ丼を堪能し、ミスターチキン[ヘアルツ]店を後にした。視界の右下の方へ意識を向けると<04/04(木)PM 06:08>と表示されていた。
LV:10(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:5,665G
武器:なし
防具:布の服
所持品:9/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×24、バリ好きー(お得用)100%、樽(中)100%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ
「ご主人さま~、しのぶさんのおみせは~?」
「・・・いや、たとえ だからなぁ」
「ん~?」
「そうだな、このゲームでは小数点以下を切り捨てているため、実際は小数点以下の確率で、シノブさんの店に辿りつける。気が遠くなるほど低い確率だがゼロではない」
「んん~?」
「盾を壊すことができれば、あるいは?・・・」
「しのぶさんは たてもってないよ~?」




