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032 3日目の朝 <04/04(木)AM 05:30>

 一旦街に戻りLVUP、転職&昇格チェックを行った俺は、LV9へとLVUPを果たし再度VITに振った。これ以上のLVUPチェックは、他の3つのクリスタルでなければ行えないため、次の 出会いの街[ヘアルツ]へ行かざるを得ない状況であったが、”みならい僧侶”のままでは道中が心許こころもとない。

 なんとか昇格すべく はじまりの街[スパデズ]周辺で、一番人気が無いと思われる狩り場、街の右上、北東部の森の切れ目辺りから少し森の中に入った地点で、再びイルカモネ山猫LV5に攻撃されては、治癒魔法[ヒーリング]による回復を行い、治癒での経験値稼ぎと治癒回数稼ぎを行うのだった。



 あたりが少し明るくなってきた、視界の右下の方へ意識を向けると<04/04(木)AM 05:32>と表示されている。いい頃合だろう。残りMPはまだ40%ぐらいあったが、治癒回数稼ぎを切り上げて南に逃走する事にする。まわりではスイカがブーブー鳴いている。


 ギルドカードを持って「出やがれ出やがれ」と念じる。


「ご主人さま?」

 ギルドカードからシュルンとミケネコが姿をあらわす。そのまましばらくミケネコのアゴの下をコショコショしてやる、道具屋で収納してから長い時間そのままだったしな。


「さて、とりあえず朝飯前に、昨日の朝と同じ様に、東(→)、南(↓)、西(←)北(↑)と大きくまわって、夜中に出現(POP)して見つかっていない宝箱を探すぞ」

「こんどは”たからばこ”みつける~」

「そうだな、昨晩は見つからなかったから見つけて しあわせになろう」

「しあわせになる~」

 うんうん、長い時間ギルドカードに入っていた反動からか、ミケネコさんは やる気に満ちている様だ。


 夜の間ほとんど暗い森の中だったのもあり、少し明るくなってきただけでも、やけに見通しが良く感じる。草原の様なフィールドを東口方面から南口方面へ、ずんずんと歩いていく。目についた素材があればミケネコのストレージに放り込むが、既知のアイテムばかりだ。(じ~っと見て”簡易鑑定”すれば入れる前にわかるが、どうせ放り込めばわかるので”簡易鑑定”はしていない)


 特に袋も宝箱もピンチなプレイヤーも見当たらないまま歩いていき、伯爵レグホンLV3がコケコケ鳴きはじめた。この辺りはすでに西口方面だ。

 昼前にはココから西に向かい、出会いの街[ヘアルツ]へ行く予定である。より安全性を高めるためにも、昇格条件に達していると良いのだが・・・


「ご主人さま~たからばこだよ~」

 ミケネコさんが嬉しそうに報告してくる。見ると左前方に宝箱が見えた、早い者勝ちなので急いで駆け寄る。ダンジョンで罠だらけだったので少し恐怖があるが、フィールドPOP宝箱に罠は無い・・・はずなので、さっそく開ける。

 気になる中身は・・・


「え~と、”青銅のブーツ”だな」

「せいどーのぶーつ?」

「あぁ昨日ユウコさんが装備していた靴だ、確か8,000Gだったかな?アタリだ」


 防具系は装備箇所が多いので、武器と比べ若干安めの設定になっている。それでもユウコさんの青銅一式で4~5万Gはかかるから、序盤に防具を揃えるのは結構大変だ。3人は回復スキルが無いから、壁役のユウコさんは無理をして防具を整えたのだろう。他の2人は武器防具が揃っていなかったから、お金を都合しあって購入したのかも知れない。

 ・・・ともかくNPC売りで1,600Gだ、ブタスキノコより高額なのだ。プレイヤーが取り引きをはじめるのは、大体10,000G以上のアイテムからだ。それ以下だと”買ってくれる人を探す”、”売ってくれる人を探す”労力と見合わなくなって、さっさとNPCで買うか売るかして、クエストや探索に出た方が稼げてしまう。


「よくやったな、ミケネコ」

「えへへ♪」

 ミケネコは尻尾をうねうねとウェーブさせている。まだ宝箱チェック途中なので、少しだけ額をコリコリかいてやる。ミケネコはくすぐったそうだ。”青銅のブーツ”はインベントリに放り込む。


「ん~?またそうびしないの~?」

「あぁ、防御力は0でいい、0がいいんだ」

「ふ~ん??」

 それに俺は夜の間、ひたすらイルカモネ山猫になぶられまくっていた。もはやイルカモネ山猫や”痛み”に対する”恐怖”はかなり薄れている。まぁ痛いものは痛いのだが。

 おそらく はじまりの街[スパデズ]の内に、俺ほどダメージを受けた経験をしたプレイヤーは、ほとんど居ないのでは無かろうか。


 その後、北の森の端を歩きながら北の道までやって来たが、2個目の宝箱も目ぼしい素材なども入手出来なかった。特にあげては無いのだが一応、毎回”風船兎の皮”とかも少量だが入手している。そのための”森の端”歩きだしな。


「よし、それじゃ街に戻って朝飯だ」

「は~い」

 もちろん朝飯の後は、バリ好きータイムである。ミケネコさんもすでにウキウキだ。もはや慣れ親しんだ、北の森~[スパデズ]北口間の道を、てくてく歩いて街に戻る。バルーンラビットLV1(罠)達は、今日も元気に飛び跳ねて初級者を誘っていた。視界の右下の方へ意識を向けると<04/04(木)AM 06:48>と表示されていた。



 街に戻った俺は北口広場からクリスタルへと向かう。まわりにはプレイヤーは見当たらない。なお当然だが”量産型おっさん1号 type エンドレスリピート”は居る。今日も元気に、新人に嫌がら・・・親切なアドバイスをするのだろう。

 とにかくチャンスとばかりに立ち止まり、祈る様にそっとクリスタルに触れる。システムボイス(CV:川澄綾子)とともに、目の前にシステムメッセージが表示される。


《このクリスタルではLV9までしかチェック出来ません、以降は別のクリスタルでチェックを行って下さい。》


《おめでとうございます! ”僧侶” への昇格条件を満たしました。》

《”僧侶” へ昇格しますか? yes / [no] 》

 よしっ、俺はすぐに「yes」と念じる。するとシステムメッセージが表示され、LVUPとは別の、昇格時用のファンファーレが頭に響き渡る。


《おめでとうございます!”みならい僧侶” → ”僧侶” へ昇格しました。》

 なんとか出発前に昇格出来た様だ、もうこのクリスタルに用は無い。足早に南に向かう。



 ・・・ええぃ、開拓精神フロンティアスピリットとか知るかっ。食べたい物を喰うんだよっ。


「おっさん、ササミカツ丼」

「ササミカツ丼だな、500Gだ」

 500Gをテーブルに置くと、変化の無い量産型おっさんが「2」と書かれた木製の番号札を渡してくる。今日の運勢はどうなんだろう。そう言えば昨晩は「4」番だったな・・・ん~青銅のブーツ・・・しかしとっくに効果は切れてたよなぁ。よし「4」番は「末吉」。

 そんな事を考えつつも、やって来たササミカツ丼を美味しくいただき、ミスターチキン[スパデズ]店を後にした。


 「………」ところで、おみくじの良い順は色々な説があるらしいのだが、俺は面倒なので、良い方から”大吉”、”中吉”、”小吉”で、”吉”、”末吉”、それから”凶”、”大凶”・・・という事にしている。

※「それは違う、本当は~」という方もいらっしゃるかと思いますが、このお話の中では”そうなっている”事にして下さい。

 つまり「4」番の評価は、まぁ「凶」では無かった、という感じだ。



 ミスターチキンを出た俺はそのまま宿屋に戻る。と言っても もうあまり寝る時間も無いが、とにかくおばちゃんに鍵を貰い部屋へと戻った。

 いつもの様に椅子に腰掛けてミケネコを机の上に呼ぶ、インベントリからバリ好きーを取り出して、袋に手を入れ掌に小盛りにして、バリ好きーを机の上のミケネコの前に差し出す。


「一晩中、お疲れ様、そして宝箱の発見、大儀である」

「やった♪」

 カリカリポリポリ、カリカリポリポリ・・・しあわせそうにミケネコがバリ好きーを噛み砕いていく。例によって俺の話は聞いていないが、まぁどうでもいいだろう。


 「………」はじまりの街[スパデズ]最後?のバリ好きーを食べるミケネコさんを見ながら、今後の予定について考える。とりあえず1時間は寝ておく必要があるだろう。


 TJOでは24時間”睡眠”を取らないと、HP/MPの微回復が停止してしまう、これはかなり重いペナルティだ。しかしこの睡眠と認められるのは、宿屋か、自分(知人等でも可)の家かショップ、または通常フィールド、ダンジョンでの”寝袋”、”テント”などを使用しての”1時間以上の睡眠が必要”となる。

※この時に”3時間以上の睡眠”を取るとHP/MPは全快する。

(ちなみに街や村の、その辺で睡眠を取ろうとしても、”戦闘状態”に切り替えた時の様に、すぐに守衛が来て起こされてしまう。起こされるだけでペナルティは無い)


 そして通常フィールド、ダンジョンでは”アクティブモンスター”に加え、PKプレイヤーキラーの存在がある。ひょっとして?と思われている通り、睡眠中に攻撃を受けると”必ずクリティカル”となる。また付近のモンスターと違い、PKのレベルは、そのフィールドとは何も関連性が無い。

 つまり「はじまりの街[スパデズ]南口には”非アクティブモンスター”の、バルーンラビットLV1しか居ないから安全」などと言って、無用心に”寝袋”で寝ていたりすると、LV100のPKがやって来て、睡眠中に先制クリティカル攻撃を喰らって、即死したりする可能性があるわけだ。(まぁLV100のPKがやって来たら、起きていても即死だが、気付いて”安全地帯”である街などに逃げ込める可能性はある)


 カリカリポリポリ、カリカリポリポリ・・・


 そのため誰もが、少ない所持金の中から宿屋代を捻出ねんしゅつし、安全な宿屋に泊まるのである。無論、自分の家かショップがあれば、当然そちらに泊まるところだが、某”猫とネズミのアニメ”の様に目玉が飛び出るくらい高いので、俺の場合は、間違って”大判”、”小判”を大量に入手でもしない限り、自分の家を買う事は無いだろう。(”大判”、”小判”については、またの機会に)

 ちなみにクリスタルの無い街、村であっても、宿屋だけは”安全地帯”となっているので、宿屋ばかりはPKの心配は無い。ただし割高になり宿の外は危険なので、やはり人気が無い。それだけにクリスタルの無い街や村周辺は”宝箱の楽園”となっている可能性もある、という・・・TJOならではの苦悩がある。


 他のゲームでは、マズイ、面倒、ダルイ、危険、不便・・・そういう場所やダンジョンには、初回以降は誰も近寄らなかったりするのであるが、TJOでは、だからこそ・・・・・行ってみよう、というプレイヤーは一定数居て、そういうプレイヤー(挑戦者)には、大きな見返り(宝箱の楽園)があったりする(もちろん無い事もある)ので、よく考えられていると思う。ヤマコウGJだ。



 気がつくと、いつもの様にミケネコさんが、ジョリジョリとザラザラした舌で俺の掌を舐めていた。そのまま顔を前足で洗い、その前足を舐めて毛づくろいをはじめた。


「ミケネコ、これから少し寝る、AM 08:45頃に起こしてくれ」

「は~い」

 ミケネコに起こしてもらう様に頼んで、俺は短い睡眠を取る事にした。

LV:9(非公開)

職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)

サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)

所持金:765G

武器:なし

防具:布の服

所持品:10/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×4、バリ好きー(お得用)60%、青銅の長剣、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ



「ご主人さま~、やどや あんぜん~?」

「あぁ”安全地帯”だ」

「しまぱんは~?」

「・・・たまにそういうトラップがある事も・・・いや、ほぼ無い」

「ふ~ん?」

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