表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/98

027 [山の洞窟]1層探索終了 <04/03(水)PM 01:46>

 はじまりの街[スパデズ]周辺で唯一のダンジョン[山の洞窟]1層で、最初に罠が発見されたため、後回しにしていた”右ルート”の探索に取りかかった俺達は、木製のドアのある部屋の前に辿り着いた。

 広間の時とは違い、中の様子が全くわからないため、”ユウコさんが通常状態のままドアを蹴り開けて、中の敵が勝てそうに無いなら逃げ出しちゃえ”作戦をたて、ユウコさんが勢い良くドアを蹴り開けたのだったが・・・



 ドアを蹴り開けた後、気が抜けた様なユウコさんの後ろから、みんなで部屋の中を覗くと、そこにはヒキ蝙蝠コウモリが3体、地上で ぼ~っとしていて、2体が天井にぶら下がっていた。


「あ、あははは・・・まぁ?最初の洞窟の~?1層だし~?」

「そ、そうだよね・・・」

「えぇ・・・そうですよね」

「・・・」

「ご主人さま~?」

 緊迫した状態だった俺達の、気の抜けた様な変化にミケネコが首を傾げている。少しアゴの下をコショコショしてやる。


「あぁ、この部屋は”俺達が思ったほど”危なくなかったようだ」

 しかしこれも結果論だろう、ヒキ蝙蝠LV4が5体いたという事は、山ゾック(斧)LV6が5体いた可能性だってあるはずなのだ・・・あるはずだっ!恥ずかしくないっ。


「えっと、あそこに宝箱がありますけど、とりあえずヒキ蝙蝠から倒しましょうか」

 ユウコさんが指差した部屋の奥の方を見ると、確かに宝箱が見えた。


「ん~、そうだね~爆発したりして?巻き込んだヒキ蝙蝠達に~襲われるかもだし~」

「・・・とどめさす」

「そうですね、安全を確保してから、でいいと思います。」

 広間の時は右隅のピットの向こうで、3体とも離れた天井にぶら下がっていたので、最初は無視していたのだが、今回は宝箱に近すぎる。

 それに現在「ユウコさんがFA〔※1〕取った後、再度攻撃してから、シノブさんがFB〔※1〕を取る」という1層一掃作戦(改)の作戦中で、ヒキ蝙蝠の激レアドロップ”BADもーびる”を狙っている最中でもある。


「それじゃ、あっちの端っこの、ヒキ蝙蝠から倒していくよ」

 ユウコさんが右端の方で少し離れて、1体だけでぼ~っと立っているヒキ蝙蝠を指差した。

「おっけ~」

「・・・ぜんぶとどめさす」

「了解です」



 ・・・そんなわけで、その1層一掃作戦(改)により、何の危なげも無く部屋内のヒキ蝙蝠達の討伐は行われた。シノブさんによって5体にトドメがさされ、部屋には俺達と宝箱だけとなった。

 ちなみにドロップは・・・「さすがマズいモンスター」とだけ言っておこう。ツカサさんは、また「あははは・・・」と笑いながら、それらをササッと収納していた。


「シノちゃん、お願いね」

「・・・うん」


「・・・分析:罠[トラップアナライズ]」

 シノブさんが宝箱の前に行き、術を使用すると宝箱の上面部から下底部に向けて、光る板状のモノがス~っと降りていく。ミケネコさんはその様子を尊敬の眼差しで見ている。すっかり斥候のシノブさんのファンのようだ。


「・・・罠は仕込み刃、罠LVは・・・19」

 罠LV19?、シノブさんは”みならい斥候LV6”だ。仮に全てDEXに振っていたとしてDEX5、職ボーナス、職補正がかかっておそらくDEX7、8になる。罠LV19という事は半減して9。全てDEXに振っていたとしても、かなり微妙なところだ。


「え?・・・19!?」

「ヤバくな~い?シノちゃんLV6だしね~」

「ん~ちょっと高いですよね」

「えっと、仕込み刃って、どんなんだっけ?」

「確か・・・仕込み刃は、単体への切断属性攻撃で、識別せずに、開けるか解除失敗すると、開いた隙間から 高速でなぎ払われる刃によって、不意打ち補正でクリティカルヒットする・・・でしたか?」

 ようするに、居合いの達人、の様なトラップなのである。


 「………」単体切断で”一見たいした事の無い罠”のように思えるが、仮に”識別していない場合”は罠LVが半減されていないので、何もせず開けたりすると、LV19のクリティカル攻撃を食らうのだ。ユウコさんでも耐えられないだろう。

 つまり解除するとなると、”罠LVを半減させているシノブさん”のDEX次第なのであるが、多めに振っているのだろうとは思うが、俺は正確な振り分けを知らないので意見が出せない。


「ん~、これ諦めよっか~、ヤバそうだよ~?」

「そうだね、こんな事でシノちゃん死んじゃったら嫌だよ」

「・・・むずかしそう」

「そうですね、中身は期待できそうですが、しょせんは最初の洞窟ですしね」

 みんなの意見が一致した。TJOは挑戦チャレンジを求めている、だが無謀は求めていないのだ。そこをはき違えてはならない、自分の実力とリスクとリターンを照らし合わせ、「出来ない事は出来ない、無理そうな物は無理」それでいいのだ。



「・・・よし、この宝箱は諦めましょう」

「さんせ~」

「・・・むねん」

「安全第一ですね」

 まぁ安全策をとって2層を諦めたのに、こんな所で死亡しては本末転倒である。


「ご主人さま~、たからばこあけないの?」

 ミケネコが首を傾げて俺を見上げながら質問してきた。


「あぁ、ものすごく危ない宝箱なんだ」

「せっこうのしのぶさんでも、あけられないの?」

「それが”ダンジョン宝箱”って奴なんだ」

「だんじょんたからばこ、あぶない~」

「そうだなぁ」

 納得した様なミケネコの背中を数回サラ~っと撫でる。



 さて、こうして部屋の中の事が落ち着いた所で、オートマッピング(自動で通過した所のMAPを作成してくれる)による、MAPを確認したところ、どうやらこの部屋を囲むように丸く通路がある様だ。

 丁度 時計の6時の辺りから、杖の倒れた左に曲がって回ってきて、ドアがあったのが10時の辺りで、この部屋の中は時計の中心みたいな感じだ。


「このまま進んで行くと、最初の分かれ道まで続いてそうですね」

「そうだね~、やっぱどっちから行っても同じだったっぽい?」

「まぁ多分あまり複雑じゃ無いですよね」

「・・・・・・」

 シノブさんは宝箱を諦めたので、少し落ち込んでいる様だ。


「シノちゃん、気にしな~い」

「そうだよ、無理しても良い事無いよ」

「罠LVが高くても、絶対に”良い物”とも限りませんしね」

 罠LVなどは、しょせんはある程度の目安に過ぎない、まぁおそらく”鋼シリーズ”の何か、だったのだろうとは思うが、それとて序盤の”ちょっと良いアイテム”に過ぎないのだ。復活出来るのか?わからない現状で、命を賭けるほどでは無い。

 そうしてシノブさんを励ましつつ、俺達は宝箱を放置して部屋を後にした。



 部屋から出ると、またユウコさんを先頭に右に緩やかに曲がる通路を進んで行く。丁度12時のあたりと、1時と2時の間ぐらいで山ゾック(斧)に1体ずつ遭遇し倒した。かなり慣れてきたため1体ずつだと、もう何の問題も無い感じだ。なお俺は(略


「ん~?あれ、左に通路~?」

 ツカサさんが指差した方を見ると、ぐる~っと円の様にまわって来て、3時の辺りで左に通路が分かれている。MAPを見る限りこのまま進むと、杖を倒した場所につながるだろう。


「とりあえず先の様子を見てくるよ」

 ユウコさんが1人で左の壁沿いに静かに左の通路に近寄っていき、そっと様子をうかがう。するとユウコさんが手招きしたので、俺達も近寄って先を伺う。


「え~、また~?」

「またですね」

「ん~、とりあえずシノちゃんに罠を調べてもらおっか」

「・・・うん」

 俺達は通路の先に、また木製のドアがあるのを見て、うんざりといった声を上げる。先ほど肩すかしを食らったので、一層そういう雰囲気になってしまう。しかし、だからといって警戒をしない訳にもいかないので、先ほどと同様に最善を尽くす。


「あ・・・罠はある」

 スキルを使おうと、静かにドアに近寄ろうとしていたシノブさんが声を発した。どうやらスキルを使用する前に、パッシブ(常時発動)スキルの、警報:罠[トラップアラート]が、半径5m範囲の罠の存在を察知したようだ。ドアの前に近寄ってから、シノブさんはあらためてスキルを使用する。


「・・・探知:罠[トラップディテクション]」

 スキルを使用して調べた後シノブさんが戻ってきた。


「・・・ドアの後ろに爆発物LV16がある、外からは解除できない」

「ね~、やらしすぎない~?」

「そうですよねぇ・・・」

「さっきと同じ事は出来ないねぇ」

 先ほどの様に不用意にドアを蹴り飛ばせば、後ろの爆発物LV16にヒットして大爆発であろう。かと言って罠LVを半減させたシノブさんが開けて、中に山ゾック(斧)LV6が何体か居れば、仮ヘイトを集めてしまって大変な事になる。

 爆発物もLV16とやはり高めで、ゆっくりドアをあけても、戦闘になってしまって誤爆したりすると、それなりの範囲に かなりの威力の爆風での影響がありそうだ。


「ん~、なんか ぱっとしないけど、ここまでにしちゃおっか?」

「そうだね~、そんな無理するほどのダンジョンじゃないし~」

「・・・うん」

「いいと思います」

 ほんと”無理するほどのダンジョンじゃない”この一言に尽きるだろう。”鋼シリーズ”の何百倍も価値があるアイテムなど、今後いくらでも出てくるのだ(入手できるかは置いといて)


「それじゃ、戻って元の通路をそのまま進んで脱出でいい?」

「おっけ~」

「・・・いい」

「了解です」

 方針が決まったのでユウコさんを先頭に、また元の円周ルート?に戻り進んで行った。途中4時と5時の間ぐらいで2体のヒキ蝙蝠に遭遇し、順番に戦ってどちらもシノブさんがトドメをさした。ドロップについては「残念ながら・・・」と言っておこう。


 円周ルートはやはり最初の”杖を倒した地点”に繋がっていた。

 大きく円を描く様な通路で、左上に内側に向かって切り込み(最初のドアと部屋)があり、右に通路が延びている(2番目のドアの先は、開けていないので不明なままだが)様なMAPだったらしい。


 そのまま俺達は、オートマッピングされたMAPにしたがって[山の洞窟]1層から、フィールドへ続く出口へ戻って脱出し、1層一掃作戦(改)も終了となった。

 こうして色々と諦めたりもしたけれど、俺達の”はじめてのダンジョン探索”は、全員無事に終了したのである。

LV:6(非公開)

職業:みならい僧侶(偽装公開)(みならい僧侶)

サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)

所持金:525G

武器:なし

防具:布の服

所持品:9/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×5、バリ好きー(お得用)70%、青銅の長剣、樽(中)95%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧



〔※1〕TJOにおいて、

 ”最初の攻撃”を、ファーストアタック(略されてFAと呼ばれている)という。そして”トドメの一撃”を、フィニッシングブロウ(略されてFBと呼ばれている)という。これらはどちらも討伐時に”経験値ボーナスが加算され”獲得できる。

 戦国時代などにおいての”一番槍”や、”首級をあげる、首を取る、討ち取る”、といった行為に相当する、と考えていただくとイメージしやすいかと思われる。


分析:罠[トラップアナライズ] 宝箱等に仕掛けられた罠の種類と罠LVを識別し、罠LVを半減させる(小数点以下切捨て)

補足:ミミックの場合はそのミミックのLVも識別する、ただしミミックのLVは半減出来ない。


探知:罠[トラップディテクション] 半径15m範囲の罠の存在、形状、名称を探知し、罠LVを半減させる(小数点以下切捨て)



「ご主人さま~、だんじょんたからばこ、どれだけあぶないの~?」

「まずシノブさん以外だと、LV19の”クリティカル攻撃”だから誰でも即死だ」

「しのぶさんいがい~?」

「シノブさんだけは”識別した”ので、”罠LVが半減する”から、LV9のしかも”通常攻撃”になるんだが・・・」

「はんぶん~?」

「あぁ、だがHPの多いユウコさんと俺が、大ダメージを食らった山ゾック(斧)はLV6、防御力もHPも低いシノブさんが、LV9の攻撃を食らうと、やはり即死だろうな」

「だんじょんたからばこ、こわい~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ