001 はじまりの街[スパデズ]へ
…基本的な………しますか?……
《サウザンド・ジョブ・オンラインに関する基本的な説明を希望しますか? [yes] / no 》
「………」???、突然よくわからない質問をされた、いや、この質問には覚えはある。サウザンド・ジョブ・オンライン(Thousand Job Online)略してTJO のゲーム開始時の選択肢だ
よくわからないというのは、どうしてあの『突然サービス終了したゲーム』の開始時の質問をされているのかという事だ。
発表された当初は史上初と言っていいほどの多種多彩な職業でプレイできるオンラインゲームとして話題になり、運営開始直後から5年近くやり続けていたが突然の運営会社の倒産によりあっけなくサービス終了となった。
廃人というほどでは無かったがそれでも当時のショックは大きく、それからはもっぱら軽いアクションゲームやパズルゲームばかりでMMOのようなネットRPGゲームには手を出さなくなった
《サウザンド・ジョブ・オンラインに関する基本的な説明を希望しますか? [yes] / no 》
「………」うるさいな、説明どころかやりたくも無いのだが
《サウザンド・ジョブ・オンラインに関する基本的な説明を希望しますか? [yes] / no 》
「しつこい、no だ no!」
《この説明はこの一度きりしか受けられません、本当によろしいですか? yes / [no] 》
「yesだ、yes、yes!」
《それでは サウザンド・ジョブ・オンライン の世界をお楽しみください》
「楽しまねぇよ、ん?おいっ!キャラクターメイキングとか何もしてないんだが」
《それでは はじまりの街[スパデズ]へ》
「おいっ!」
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ここは…はじまりの街[スパデズ]だな、目の前の三角の台座の上で桃みたいな上部分だけがクルクル回る特徴的な黒っぽいクリスタルには見覚えがある。
ただTJOは いわゆる普通の3DタイプのネットアクションRPGだったはずで、こんな現実感たっぷりで昨今小説とかで噂のバーチャルなんとか的なリアルタイプなゲームでは無かった。
周囲を見渡してみる、クリスタルの向こうに冒険者ギルドがある、左を向くと道具屋という名の雑貨屋が、右を向くと武器屋という武器防具屋が見える、後ろを振り返ると宿屋がある、ひじょーにシンプルだ。
ゲーム開始直後のプレイヤーが迷わないように、わかりやすいように、このはじまりの街[スパデズ]はクリスタルを中心に各主要施設が密集している、親切設計だ。
しかし違和感が凄い…、ピーSOをやってたら突然〇ブリビョン風になった感じだ。
…背後からの奇襲とか気をつけないとな、FPSの戦争ゲームみたいに背中からこっそりナイフキルされそうだ。
(FPSと呼ばれる言ってみれば戦争ゲームでは銃とかだとヘッドショット(頭撃ち)でも無い限り意外に即死しにくいのだが、ナイフだとヒット=即死である事が多い、恐らくナイフで斬られる距離に接近されたペナルティなのだろう)
…ナイフキルとか考えてたら mikenyan を思い出した、アイツは大体敵チームに居た。
普段は普通にプレイしているようなのに何故か俺を見つけると正面からでも背後からでもナイフキルを狙いにくる。
別に友人でも知り合いでも無い、よく行くサーバーでちょくちょく見かけるだけのプレイヤーだったが「粘着プレイヤーか?」というくらい俺を狙ってきてナイフキルしてはAED(味方を蘇生する救命道具)で蘇生しようとしてくる。
当然敵プレイヤーの俺が蘇るわけが無いのだが「ソーリー」「ソーリー」と定型チャットを連呼しながら蘇生し続ける(※蘇らない)のでムカつくどころではない。
そのうち俺も同じようにナイフキルして「弾薬を持ってきました」「弾薬を持ってきました」と定型チャット連呼しながらmikenyan の死体の上に補給弾薬をお供えするようになった。
だがナイフバトルの勝率は芳しくなかったのでもっぱらAEDで蘇生されていた(※蘇らない)思い出したらまたちょっとムカついてきた、おのれ mikenyan。
この物語は
R15 残酷な描写あり ノンハーレム ノン無双 ノンチート 爽快感ゼロ
となっております。
美女に囲まれてモテモテになったり、大軍を相手に大暴れしたり、
凄い能力でスカッと爽快・・・な展開にはなりません。
あらかじめご了承ください。
ぼっちな主人公がチマチマ チマチマやる予定です。