夢見るお姫様と謎の夢。
『姫よ。どうか、王子たちを助けてくだされ』
背の高い、長髪の眉目秀麗な男が姫と呼ぶ女の右手をそっと掴み、ひざまずき、そっと口づけた。
『・・・けれど、あの者たちは・・・』
姫と呼ばれた女は少し、いぶかしげな表情をして答えを出すのをためらった。
『ですが、あの者たちがいなければこの国は滅亡の一途を辿ってしまうのですよ?』
『・・・しかし、あの者たちの行いは目に余る。下々の者から報告が上がってきているのだ。彼の者たちをどうにかしてくだされと』
『ですが・・・っっ』
『この国の主である我々王族のために、この国に住まう者達の意見を無視してはやがてあの者達が戻らぬとも、滅亡するだろう』
女は聡明で、賢く気高くあった。
その瞳に映る景色は、少し先の未来。これは、必ずしも起こることではないのだが、八割は当たる。
それゆえに、彼女の言葉には重みがある。
『・・・そう、悲しむな。私とて、王族の身。王族が滅びるのは喜ばしくはない』
『ではっっ』
『一つ手段が・・・・あ・・・・』
そこで、坂崎美鈴は夢から覚める。
この夢を、最近、頻繁にみるようになった。しかも、毎回、同じ所で目が覚める。
「また・・・・」
登場するのは、姫と呼ばれる女とそして家臣だろうか、男が一人。そして、王族の未来を危惧しているのだ。
残念なことにいつも手段を言う前に夢から覚めてしまう。
この中途半端な夢をいつも苦々しく思っている。
途中で目が覚めるのが、夢というものだろうが、しかし、この夢はどうも中途半端すぎる。
「眠い・・・」
そのせいで、いつも寝不足なのだ。
あいにく、今日は休日なので二度寝しても誰にも怒られない。
ということで、美鈴は二度寝に入る。
『・・・・手段とは!?』
『今、あの者達は魔法をかけられて猫の姿になっている』
『猫・・・』
『ああ。その猫を異世界の者、特に少女に拾ってもらいそこで、人間の厳しさや本当の愛情を身をもって知ってもらう。ただし、十二匹一緒でなければならない。さらに、あと二日以内に人間に拾ってもらわなければ、その魔法は永遠にかかったまま』
『・・・分かりました。急いで、十二匹を異世界に送ります』
男は、そう言って立ち上がった。
『しかし、王子たちがどこにいるかは私にも分からない。ある魔法使いが順番に王子たちに魔法をかけて回ったからな』
女は立ち去ろうとする男をひきとめて、困った顔でそう言った。
『何と!!それは、一大事ではありませんか!!急いで捜さねば』
そうして、男は十二匹の猫を捜しに女の元を立ち去った。
「夢見た・・・かも?」
二度寝から起きた美鈴は、うっすらと覚えている夢に首をかしげた。
どうやら、いつもの夢の続きらしいかった。しかし、いつもの夢とは違い、内容は全然覚えていない。夢とはそういうものなのだが、いつもの夢ははっきりと覚えているので不思議に思えて仕方がない。
ちなみに、いつもの夢も一日たてば忘れる。しかし、同じ感じというのは頭にあるので同じ夢だとは判断はつくのだが。今回は、違った。
しかし、感じ的には同じだったので続きだろうということは分かる。
「何なのかしら・・・?」
頻繁に見る夢は、何か予言めいたことがあるらしいと聞いたことがある。
しかし、別に今までなにも変わったことは起きていない。
ということで、いつものように夢の事を思案するのは短時間でやめ、日常生活へ戻っていく。
恋愛ものを初めて書いてみます。
初めてですのでどうか、お手柔らかに。