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絶望少年

とりあえず、最後まで読んでみましょう♪

 俺の名前は美川美男。見ての通り全くもって冴えない不細工な高校2年生だ。

 成績は常に学年2位。そう、何をどうあがこうが1番を取れず、得意科目は体育と美術と音楽という俺の将来には役に立たないであろうものばかりだ。

 

 今回は、そんなダメ人間な俺の物語を僭越ながら書かせてもらおうと思う。

 

 午前8時15分、つまりは登校時間。読書をしているにもかかわらず、俺の肩を叩いてくる迷惑極まりない女がいた。

 「おはよう、美川くん♪」

 彼女の名前は美川歩美。同じクラスで確か陸上部の次期エース候補だったはずだ。いつもみんなに分け隔てなく、屈託のない笑を振りまいている所謂ムードメーカー的な存在だ。

 しかし、その顔面に貼り付けた俗に言う「笑顔」と呼ばれる表情筋の運動の裏には一体どんな邪悪な企みを潜ませているかは知る由もない。


 「今日はどんな本を読んでいるの?」

 歩美が顔を覗かせてくる。


 ほら来た、ニコニコしながら相手に近寄り個人情報を探ろうとするこの技お前の母ちゃん何人?(ギブアンドギブ)!!

 これの所為で過去に自宅の住所とメールアドレスを奪取された。

 だがそれも若き頃の話。今日の俺は一味違うぜ!!

 「ああ、人間失格だよ。太宰の・・・」

 まあ、これくらいの情報はくれてやろう。しかし、本番はここからだ!

 「お、なかなか渋いやつを読んでいらっしゃるねえ。結構暗いやつでしょそれ?映画にもなったよね!よかったら今度貸してよ♪」

 この女、見かけによらずなんと図々しい!やはりその仮面は偽物か。だが喰らえ、この1週間考えに考え抜いた必殺技を!

 「ごめん、これは近所のおじさんに借りたものなんだ。君に貸すことはできない」

 「そっかー、それならしょうがないね。じゃあ、今度自分で買ってみるよ♪」

 決まったああああああああああああ!!!!!オレサマかっけええええええええええ!!!!まさに俺様の美技に酔なだわ。まあ、多少の情けはかけてやろう。敗者にあえて手を差し伸べるのが勝者の義務だ。

 「あ、じゃあ安く売ってくれる古本屋を紹介してや・・・る・・・」

 「え、いいの?ありがとう!じゃあ、遠慮なく甘えさせてもらうね♪」

 ダラダラと滝の様に汗を流す俺。

 「やっぱり美川くんは優しいね!」


 ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!墓穴掘ったああああああ?!?!?!

 しまった、せっかく主導権を握ったと思ったのに手綱を奪われた!このままだと行きつけの店で「あ、美川くん、バッタリだねぇ♪」ルートに行きかねない。なんとかして進行方向を曲げなければ!


 「あ、ごめん。今思い出したんだけど、先週その店つぶれちゃ―――」

 「いやー、でも助かったよ。私こういうキャラだから読書のこととか好きそうに思われてないんだよね。話し相手が出来て嬉しいな♪」

 ちょ、強引に打ち切られ―――

 「でも、そういう美川くんの優しいところ、私スキだよ♪」

 そう言って頬を赤らめる歩美。

 「ひでぶっ!!」

 「ちょ、急に鼻血出して大丈夫?」

 不覚!一生の不覚!!俺としたことがときめいてしまった。

 そして周りの視線が痛い・・・。

 ここは緊急回避だ。


 「だ、大丈夫だから。さ、先に言ってて」

 「でも・・・」

 「大丈夫、大丈夫だから・・・」

 「本当に?」

 「本当の本当に。」

 「そう、でも無理はしないでね?」

 「ああ、わかった・・・」

 そんな心配そうな顔をしないでくれ!俺の純粋な心を汚さないでくれえええええええええええぇぇぇ!!!

 「じゃあ、先に行くね。また後でね♪」

 「ああ、またあとで」

 タッタッタという足音をたてて駆けていく歩美。

 

 ふうぅ、やっと解放された。

 だが、今のやり取りで俺の心境が少し変わった。

 そう―――。










 「ラブコメ展開キタああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」








 













 そして数日後、「アナタのことは友達としてしか見てないの」とやんわり断られ絶望したことは、今の俺は知る由もない。

短編って思ったよりも書いてて楽しいですww

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