究極の人生選択
帰宅中、莉は考えた。
祖母にこの世界のお話は聞いた事があったのだが、私が何故「選ばれた者」になったのかが理解できなかった。
この数日、いや厳密にいえば数時間(妖かし世界に着たのは夕方なのでまだ、丸1日は経過していない筈だ)で理解や状況を把握出来たことは「この世界は妖かし世界」「どうやら何かの弾みで結界を、乗り越えられた私が存在すること」「妖かし世界には人間出身という差別化されるルールがある」。という事が瞬時に解った。
帰り道、周りを見渡すとそこには周りの物と和気あいあいと交流を図る妖怪が存在するが解った。道端で駒遊びをする物も見受けられるが、その駒は人間の頭を使ったものであった為、莉はその場で嘔吐しそうになったが「ぐっ」と堪えた。
私が人間と解れば、皆が寄って集って面倒臭い対応になるとは解っていたからだ。
祖母が恐ろしくてこれ以上、この世界の事を私に語りたくないと重い口を閉ざすのも解る気がした。祖父はここの世界に、連れて行かれたのだと散々、幼い頃の私にお伽話のように聞かせてきたのであったからだ。
死んだ人の魂はここに来るのだろうか、記憶のない祖父のことが頭によぎった。黄ばんだ紙の白黒写真を中学生頃に、一度見たきりである。
私が解らないなら、向こうも当然接点がないに等しいのでお互いにこの世界ですれ違ってもどうせ解らないだろうと、考えながら帰宅を急いだ。
一人では、普通に歩いているだけでも何が飛んでくるか解らないので、早々と癒の自宅に逃げ帰った。
「ただいま。おっさん、いるー?」
私は唯一、気のおける物の自宅に帰ったてきたという事で安堵の表情を浮かべた。
だが、自宅は留守であるようだった。
(その割には鍵が開いているとか、物騒よね…)
「おっさんなら事務所でまだ、仕事だぜ」
鬼火が電気の傘の中で激しく燃えはじめた。
「ああ。そういえば、まだ定時には早い時間だもんね」
「定時?ひゃっ、人間みてーな事を言ってやがるよ。」
「人間だから、当たり前だろー。何を解りきった事、抜かしてるんだよ」
「あっ!そうか。」
「きちんと、説明をしてやるとこの世界に…、妖かし世界には時間何て、気休めで本当はそんなものは存在しないんだ。
大まかに分けるとこうだ、朝・晩、その2つだけ、夕方や昼間はここへ来たばかりの人間を安心させるためのものにすぎないんだ」
鬼火は妖かし世界の本質を語り始める。若干どころかかなり、人間である私をバカにして面白がっているのであろう。
鬼火に対しては免疫力があるので鬼火の生前は何なんだろうと、少しばかり気になったがとくに相手に失礼に値してはいけないので質問をするのにはもっとあとにして、今はこの世界でどれだけ、やっていけるかを考えた。
「そう、説明ありがとう。学校用のタブレットにメモっておかなきゃね。
これで予習したって雨女先生に送信をして早く認めて貰わなきゃ!」
その時、ドアを開ける音がした。
「学校の宿題をやられているんですか、どうですか初日の大学生活は」
「あ!このクソおやじ、連絡忘れてるぞ。」
「いやー。申し訳ございません。
事務所の仕事が長引いてしまって、今日の依頼者が結構しぶとい方でしたので」
莉は癒に目をくれず自宅の鍵を投げ渡した。癒は罰が悪そうに苦笑いで対処をする。
癒は早速、パソコンを取り出し、カバンから取り出した資料をUSBにデータとして入れはじめた。パソコンは稼働中、オーブのような物を発した、あれも死んだ人間のエネルギーというに違いないと、思い莉はワザと無言で宿題をやり続けていた。
しばらく、莉と癒の間には無言のブラックホールの様な空間が出来始める。二人とも作業に集中をしたら、キリがないという性格らしい。
気がついたらもう夜の10時を回っていたが、鬼火から先ほどの話しを聞いたので、これが偽造の時間かとかなしげに、あふれたがその反面、もうあんなに時間に縛られる行動はしなくても良いんだと、変に楽な感覚を覚えた。
すると、パソコンをやっていた癒の手が止まりこう告げた。
「おや、おや。既に時間が偽造だって言うことがお分かり頂けた様子で…」
「ええ。そこの鬼火が教えてくれたのよ」
「と、言うことは俺様はもう必要ねーな!」
今まで時計の形をしていたのは狐であった。
狐に負かされるとはまさにこの事であろう。狐は本来、悪いイメージしかない。
「なるほど、まあ。
黙っていてもいずれはこちらの生活に慣れて脳も目も全て、こちらの世界の本質が見えてきますので、ショックが大きくなる方が時折いらっしゃるのですが、貴女の場合は大丈夫そうで安心をしました。私もいつ言おうかと、迷いが生じていましたから」
「はははー…、そりゃあどうも…」
(私だって結構ショックを受けているんだけどなあ)
内申、莉は怒りの炎がメラメラと燃え始めた。
それを鬼火はいち早く、感じたのかどこかに逃げたくれた。
狐は莉の性格を昨日の今日でじっくり見ていたので、仲裁に入った。
「まあ、まあ。ここの世界に慣れても、捨てたもんじゃあないでゲスよ」
狐はドードーという仕草を莉に、軽くした。癒も冷や汗を欠いているのが一々、確認しないでも直ぐに解った。
莉の性格は本当に強気で妖怪たちもお手上げといったところが見受けられた。
「ただ、時間がないと人間の私は活動しにくいの!
だからたまに人間時間の時間と日付を教えてよ。約束!」
「はい…解ったでゲス」
(おー怖い怖い、そのうち焼き狐にされそうな感じでゲス)
その日は、夜も遅いという事でこの世界の情報の仕入れは学校に行けばそのうち誰かしら聞けるだろうと思い、宿題をやり終えたら早々に寝床に着いた。
この世界に慣れたからか一度も目を覚まさずに朝まで眠りこけた、為目覚ましを鳴らしても翌朝は起きずに走って学校に、通う事となった。
朝は深夜に雨が降ったあとの湿った道を急いで走った。すると後方からものすごいスピードで小さい女の子がぬいぐるみを抱きながら、途中、こちらを向いて『ニッ』と笑った。
よく見ると、足がないのが解った。
「キャー」と心の中で叫んだ私だが、2日目で遅刻をすると印象が悪いだろうと思い、おもらししていると感じ取りながらも我慢をして教室まで走った。その女の子は途中、気がついたら消えていた。
始業5分前
妖怪大学女子トイレ
(何だったんだろう、あの子。
あーあ、ヤッた訳でもないのにパンツがぐちょぐちょ。帰ったら洗濯ね)
チャイムの鳴る教室――――
「席に着いてー。全員、いるわねー」
雨女先生が出席簿をダルそうに抱えながら、教壇に立つ。
莉より、能力があるので莉は盗める技術をできるだけ盗んでやろうと思った。
「おはようございます」
朝のHRが終わった後に、1限目は魔法の授業であった。私は無能同然だったので、先ずは昨日の自分を治す魔法の練習に早速取り掛かった。
「えっと、魔方陣を書いて、ローソクを適所に置く、古風なやり方ね」
「こらあ、魔法をバカにしない!」
偶然にも通路の横を通った雨女先生が莉を注意した。
「おーすげー!」
突然、教室の中心が騒ぎ出した。シスタークミのしわざだった。
彼女は何やら怪しげな呪文を行なっていた。
「それって相手を誘導させる妖術よね?そんなもんどうする気???
まあ、試験とかには確かに有効にはなるけど一歩間違えれば犯罪よ」
「大丈夫ですよ。
私は将来、ブラックウイッチに進学するの。多少の犯罪はすり抜けてやるわよ。
妖怪警察も無能よね、本当に!」
ブラックウイッチとは魔女の中でも最も極道の道を行った組織である。世の中に100万との魔女を生み出して人間の心を、操る事件を起こしていてghastly ghost companysとのつながりも、立証されない事件を含めればかなりあると噂をされる。
(はあ、そういえば私は魔女になるって言う事は決めたけど、魔女の中にも沢山の種類がある様子ね。まだ、憶測だけど危険を冒してまで冒険はしたくないものね。探偵業もあることだし、いっその事、魔女探偵ってのも悪くないわよね。)
これからどうしようか、本気で考えだすはめになった莉の人生はいかに、莉はこの世界で自分探しを始める。