魔女への試練!
妖怪大学の建物は4階建ての大規模な大学である。窓はピカピカのガラス張りで、人間界の大学にも匹敵する程の建物であり、校庭では霊力を思う存分競い合うカリキュラムの授業を行なっている。
担当の先生もやはり妖怪の様だがその視線は莉に送られているものだとはっきり、解った。
「おい、人間がいるぞ」
「人間だとあの距離からでも臭うねえ」
「今度こそ、入学してきた奴らを食いたいなあ」
「ここ何年か、失敗しれるもんねえ」
「くひひひ、奴が慣れるか食われるのか、どちらが先か楽しみだな」
そんな会話を横耳で聞いて素通りするがこういった会話にも、免疫が出来てしまった様子で恐怖感といった事は感じなくなってきた。
むしろ、強い奴らと闘えると思うとワクワクしてくる興奮を覚えた感じで莉はたまらない。
早速、職員室へと向かった。その足で担任の先生を紹介された。
「私が担任の雨女、よろしく。雨を操れる妖怪の一種って訳、私は人間だろうが生徒さんになって私の教程評価を1でも上げて下さる方なら、毛嫌いはしないつもりよ。
1年間よろしく。
まあ。とは言っても実質残り10ヶ月か、お友達の仲には人間だけって事で、嫌う妖怪もいるけど我慢してね。立派な成績を修めれば認められる筈よ、その前に食べられないようにね!ハハハ」。
「えっと…
やっぱり食べられるんですか、私って」
冗談交じりで莉が、乾いた笑いでそう問いを投げかける。
「いやあ、大丈夫だよ。
俺はここの法律科で教師をやっている、栗橋大樹だ。
訳あって俺もこっち世界に呼ばれたんだ。君も直ぐにこっちの世界に、慣れると思うぞ」
「それじゃあ、私はそろそろ授業がありますので、この子を教室まで連れて行くことにします」(つまらないわね、もっといじり倒そうと思ってたのに………)
「おっと、俺も授業だ」
職員室は先生らしき個体?が次々と、移動をして各教室に向かって行った。
中には、向かうというか、消えるというか…そんなようなものも存在した。
(へー、消える妖怪もいるんだ。
まあ、ワープ見たいなもの?私にもできるのかしら)
廊下は意外と建物の外観より、暖かく感じた。見ると鬼火を使った火を灯しているからであるが、人間界で使う電気電気より全く、自然的で肌に馴染みやすい感じはあったがここの鬼火は性格がかくかくしているのか、時折激しい度合で輝きだしてペナルティを与えられている鬼火もいた。
内容からしたら鬼火にはあまりにもきついものだったが、それだけの重要な仕事らしい。
「あーあ。彼奴また、お仕置きされたのね」
雨女先生は免疫がある様子なので全く怯まないでいるが私は悲鳴が聞こえたので、そちら側を確認する事が出来なかった。
「大丈夫よ。
そのうち慣れるから、そのうち♪楽しくやりましょう」
まだ、どこかこの世界に馴染めずにいる莉は恐怖を感じていた為かこんなに長く、感じた廊下は人生でそうもなかった。
今までの人生で長く感じた廊下何か、高校・大学の入試試験の会場くらいなものであった。
しかしここの世界は違った意味で緊張した、いつ周りに襲われるかという背筋が凍りつくような恐怖感は和らいたりはするものの、絶対に消える事は未だになかった。
「貴女はここで待っていて頂戴。
私がいいわよっていうまで、待っているのよ」
そう言い残すと、雨女先生は教室へ入って行ったというかドアが波を打ち、ドアの開く音もなく、静かに教室へ入っていった。
(様々な魔法があるのね………)
恐怖は少し和らいできたので何か自分の為になりそうな妖力を見につけ様と技術を盗もうと、努力をしはじめている。
しかし、まだ実際に妖力を教えて貰っていないので、人間出身の自分がそんなものを本当に使いこなせるようになるのかが、まずは疑問であった。
(そういえば、人間だった子もこの世界にはいるのよね)
ふと、昨日の癒の説明が頭をよぎる。なるほど、という事はその子もこの世界から出して貰えずに、苦しんでいるかもしれない。
何としてでも、情報を手に入れて元の世界に戻ろうと考えていた。
「そろそろ、入って良いわよ」
教室の中がざわついているのが解るが、そのざわつきは楽しい雰囲気は雰囲気だがどこか、歓迎されているような雰囲気とは若干違ったのが肌で解った。
完全にアウェーの世界と感じた…。
覚悟をして教壇があるのでそこへ、向かって行ったが誰一人として姿が見えなかった。
「みんな!悪ふざけをしないで、きちんと人間の子にも姿を
見せてちょうだい!そんな子供みたいな事をやっていると抜き打ちテストをするわよー」
「えー、そりゃひでーよ」
「マジかよ。こないだ酷い出来でいやだったんだよ」
「そうそう、このクラスで優秀っていえば、シスターしかいねーよ」
「ボンクラな傘は黙ってろよ!」
「何だと、この石頭のクソ地蔵が」
口喧嘩に夢中のためか全員、姿を見せ始めてきた。
私は思わず声にならない声を「ひゃっ…」と発した。生まれてこの方、こんな声を出したことがないそういうような声であった。ゴキブリや小蠅くらいでこんなに悲鳴を上げないというか第1話でも紹介したように、徹底して攻めにいく姿勢だ。
「貴女も自己紹介してあげなさい」
雨女が莉の頭を小突くと何かぬるっとした感じがし、背筋に悪寒が走ったが頑張って自己紹介をさせて貰った。
「えっと、竜火莉です。見たら解ると思いますが人間です。
目標は、一流の魔女になる事です…。よろしくお願いします。」
「一流の魔女!!」
「おいおい、ライバル登場だな。シスタークミ」
「ライバル?笑わせないで、おままごとに付き合っている暇はないのよ。
人間?はっ?私も元人間だけど、そんな感情はとっくにないのよ」
微かに、血が通っていそうな人間の肌を持ったシスタークミと呼ばれる人間の女性だが、半分青白い肌になっていく途中でもあった。人間の心は半分失い掛けているが、人間の莉にとっては、味方ではないが敵とも言い難い中途半端な存在であった。
クラスの雰囲気は冷やかし半分、歓迎半分の注目の的になっていた。
挨拶も終わり、自分の席に座りに行く
莉の隣の席にいるのは学校や公共施設のトイレに良く出現する花子さん――――
「はじめまして、お名前は???」
「花子!クスクス…」
お伽話に出てきそうな架空のものだと思われた妖怪が今まさに、目の間にいることに、驚きというか、後ろめたさを覚えた。
これからどうなるんだろうと、不安だらけで過ごしてきたが、ここの席が唯一ここの世界での自分の居場所そんな感じだったように一瞬だが、思えた。
一旦、安堵の表情を見せたが、直ぐに次の授業が始まった。最初は教科書の説明を聞いていれば良いとそんな授業だった。
「妖怪民法」
妖怪の世界にも民法があるらしいので楽しみね、刑事処罰もあったりするのかしらね…。
そんな事を考えながら、昼間は遠くが見えなくなるような燦々と輝く太陽を背に授業を受ける事となる。
(ここの世界の太陽は一体どうなっているのかしら、まさかよくSFでよくある太陽が2つ出ている何てことはないのかしらね。まさか、……)
その時、ドアから杖を持った老人が現れた、まるで中国人のような妖怪が登場してきた。
「えーと、既に話は聞いておる、人間が来たらしいな。
ワシはテイ・ファオ・ファオだ、よろしく」
目が一瞬、あった凄い威圧感だ。これが妖力というやつかというより、何かでしばられているそんな感じだった。
「ひょっいと、な」
テイ先生が杖を振りかざした途端に教科書が、お目当てのページまで開く。
ちょっとこれは便利なシステムだ。
「まずは教科書の55ページ、前回やったところの復習からいたしましょう。」
(へー。こんな普通の授業もあるんだ…ちょっと安心)
授業は、雑学もあれば応用もあり、実技もある。そういった感じだ。
莉は初日という事なので実技は、隅で見学をしていたが一番凄いのは、シスタークミの黒魔術で人間を呪い殺す魔法であったが、他のものは枕をひっくり返すような物語に出てくる定番の妖力を使っていたのが、びっくりした。
まずは、人間によくも悪くも現実で運命を密かに変えることを目標としている妖怪達が暮らしている事が、よく理解を出きた一日であった。
私はというと、人間出身であるので、当然といえば当然であり魔法は不発で終わり、自宅に帰っての練習となったが先生からのお薦めはまずは、自分の怪我をケアできる単純妖力を、勧められた。
何か妖力にも段階というのがあり、1段―初段―聖妖怪など決められて全妖怪統律模試という、試験を毎年9月に受けなければ段が上がらないらしいのだ。
ここの世界では段が、その妖怪の階級を決めるらしい…いわゆる私たちの世界でいう「偏差値」という訳であった。
今回さすがに、莉はこの世界に紛れ込んだばかりなので、パスをさせたがパスというのは階級が上がったりする特別処置でもなかった。
莉は放課後にはすっかりと、不安は消え凛々しい表情さえ浮かべていた。
これが魔女、竜火莉誕生への第一歩にすぎない日であることは、間違いなかった。
「いつまで不安がっていても、仕方がないし…」