覚悟を決めて!!
私は恐る恐る、恐怖心に襲われながらも何とか打ち勝つ事ができ、足を前に確実にゆっくりと、進めた。
吊り橋はギシギシと、耳障りな音を立てて確実に恐怖心を植えつけた。
空は夕焼けから、夜空ではなくどこか空気が濁ったどす黒い漆黒の闇に包まれた雰囲気であった。
途中、街頭はひとつもなく携帯電話の明かりも普段より弱く点灯している気がしたが、気のせいだろうと思い込むことにした。
吊り橋を渡りきったところで、携帯電話の確認をしたが驚くことに、「圏外」になっていた。脳裏では先程の電話の会話が浮かんでくる。
圏外なのにどうやって電波を拾って私の携帯に電話をかけることができたのか考えていると背後から寒気と共に、無意識のうちに身震いをしていた。
これから先、あまりろくな事がなさそうだと脳裏で描きながら歩いていると、小屋の入り口に到着をしていた。
ドアの取手を手で強く握るがいつもの様に素早くドアを開けることができない………。
怖いのだ。昼間の化物と例の探偵事務所の机の顔を、思い出しだ。
その場につったっていて何分くらい経ったのだろうか、時間が経つにつれてどんどん時間の感覚が不思議となくなっていくのが解る。
お腹の音が目覚まし時計のようになった。普段ならば、夕飯はとっくに済ませているころだろう、ここは圏外だし当然、携帯電話からは母親のメールは来るはずがない、となると先ほどの電話は一体何者からの電話なのだろうかと、更に恐怖心を増した。
「心の準備はできましたかな?いつでもおいで下さいまし」
トーンだけは暖かく優しい温もりを感じる中年男性の肉声がドアの向こう側からしたため、やはり大丈夫なのではという、安堵感が芽生え始めた。
乾いた木造がすり減る鈍い音と共にドアが開きその瞬間、暗闇に包まれた感覚であったが、直ぐに室内が照らしだされた。
室内は意外と明るかったが電気らしいものが何一つ見つからなかったので当たりを確認してみると、そこには鬼火が室内を照らしている事が確認をできた。
「おう、お客さんか。久しぶりだな。いらっしゃい」
浮遊している鬼火が莉を明るく迎えてくれたという雰囲気を感じ取れて怖いという気持ちより、先程よりホッとした。
「さ、さ、そこに座って下さいな。
やっぱり、帰れなかったという事は貴女は選ばれた者………か。
妖かし界と、現世を結ぶ架け橋の…実に興味深い」
座る莉を横目に、飲み物を入れてくれて何やらタブレット形式の携帯電話を差し出してくれた。そのデザインは莉が知る通常の物とはやはり何かが違う。
「で、えーとこれは何でしょうか………」
「これは、これから君がこの世界で暮らす為の重要なアイテムだよ。
ここの世界は電子登録で住民票を登録しなければならい、先ずはそこからだ。
更に、この世界は死ぬまできつく苦しい仕事をしなければいけないという、規約はないのだが、私的にはこちらの大学を出てから、きちんと私の探偵事務所で働いてもら…」
癒が今後の目的を莉が納得しないうちに語りだす。
そんな調子なものだから、莉は半ばイラつきはじめた。こっちは何の情報も選択権もなく、強制的に得体の知れないおっさんに、自分の力という奴を認められた―――
ただし、自身の体でももう、ただでは自分の世界に帰れないだろうと普段、だーくらで、アホな生活を送っている莉でも頭は賢いところがあるので理解をしていたのではある。
「ねえ。それって何かの悪徳商法?普通は強制的に自分の未来を決めつけられたら、ムカツクんですけど、私に何の能力があるっていうのかしら」
ずばり、聞きたい事を今、ここで聞いてみた。
「それはこれから、こちらの世界で貴女は特別霊力プログラムというコースのある妖力短期大学に入学して2年間の内に、『単位』を習得して貰って、
様々な妖力を学力と知識を付け卒業後、晴れてこの探偵事務所に籍を置いて、妖かし界と貴女の存在する世界の架け橋になって欲しいという訳です」。
(ただじゃあ、帰れない…
ひょっとしたら、いつかものすんごい、妖力を習得できる一人前になったら
もしかしたら帰れるかも。これはこれで悪くない)
そう思い莉は癒の自宅にしばらく居候をするという形にさせて貰った。
先ずは荷物だがまさかこんな状況に追い込まれるとは思わなかったので自宅からは、何も持たないで手ぶらで来てしまっていた。
仕方がない、こちらの世界で流行の服を貸して貰ったが、必需品はこの物語のご都合主義で何個かこちらの世界に持ってこれるという、決まりがあったらしいので
私のバックと着替えの服や下着などをお願いした。携帯電話は無駄だろうとは思ったので連絡先を紙でメモをして癒の妖力で、私の家に送り返してしまった。
癒が説明するには「こほん。この方法で物は飛ばせるけど、さすがに人を
飛ばすと失敗をした時、完全にその人物の生きていた証拠(足あと)までを
消す事になってしまうから、使えないですよ」
と、莉の怒りの鉄拳ともいおう物なのか首を閉められながら、癒が莉に話した。
「つかえない、おっさんね。まあ、良いわ。ア・タ・シが将来妖かし界一の魔女になってやって、おっさんを驚かせてやるんだから、その時は覚悟をしなさいね」
涙目で癒は咳き込んでいる。
それをジド目?
(果たして、物体的な物がないものにジド目というのだろうか)
で鬼火たちが食いつくように見ていた。
「覚悟って……おっかないな」
「そうだな。
この娘の性格を見ていたら、俺たち鬼火の存在を消しちゃうかもな」
鬼火達もこの数時間で立場が逆転してしまった様子であると察したらしい、
来た時と随分と態度が違う。
「とにかく、これから入学手続があるので明日、私が貴女の保護者替わりになって
妖力大学に、見学へ行きましょう。幾人か人間の子もいるので、捨てたところではありませんよ」。
「へー、私達と似たような境遇の子が
ここにもやっぱり着ているのね。とりあえず会うのが楽しみだわ」
その日は夜、遅くまで歓迎パーティーを癒、鬼火、莉のおおよそ4人?で、行った。
意外とこちらの世界の珍味も、いける味で盛り上がった。
人間のものとは知らずに食べれば文句なしに、美味しかったのだが最悪なことにこちらの世界では材料を聞くのではなかったと、後悔している。