帰れなくなっちゃった!???
「はあ。探偵事務所?ですか」
癒の気が遠くなるような長いような10分弱くらいの説明を受けた莉が、拍子抜けの声で質問をするがどうやら、探偵事務所というのはあの求人雑誌の言う通りらしい。
「そもそも貴女が何故こちら側の世界に来れたのか、私にも解りませんが、きっと何かそれには理由があるからです。」
「り、ゆう…ですか」
「ええ。理由です。私たちのこの世界と貴方の世界には、大きな見えない結界が貼ってあり、普通の人間は、来れないことになっているのです。
現に今もここは存在しない場所となっているので、普通の手段では貴女は現世に戻れません」
「なっ!なんですって!!」
莉は現実離れをしている会話に、疑問を抱いたということより、このおじさんも他の者の様に普通の人間ではない気がしてきて、恐怖心を抱いた。
「ま。心配なさんな、貴女は表世界の法律では既に『死亡』していることになっています。」
「いや、いや、「心配なさんな」っていう文脈、絶対に、おかしいしょっ。」
「ハッハッハ。面白い冗談を、生きて帰りたければ、ここの事務所で働いて貰い現世への手助けをして頂きたいのです。」
「現世への手助け???」
莉はこの男の言っている意味が理解できなかったがこの男の顔を遠い昔に、見覚えがあると思った。しかし何故、見覚えがあるのかが解らない…。
「はい。私達のいる妖かしの世界では、度々、現世へ多大なる影響を与える悪徳妖怪がいますが、その組織の『ghastly ghost companys 』が存在して表向きは
現世へばれないように、大手医薬品会社ということにして活動を続けています」
「はあ、その、ゴ、ゴース、パニーズ…が現世に影響を与えるとどうなるんですか」
(一々、言い難い名前ね…!)
「ええ、人々の生活に僅かながらも影響を与えます。例えば幸福な人が不幸になったり、誰にでも慕われている人が急にお亡くなりになったり…と、地味ですが妖かしのいたずらは時には人間に死を与えてしまう、結果となります。
その他にもまだ、未解決事件や発見出来ていないケースの事件があるそうですが………」
癒というおじさんはまるでこの罪が、過去の私達の悪い事全てに、当てはまる重大であるようなことだと説明をするが莉はバカバカしいのでその場を適当にやり過ごし、時間も時間だろうと思ったので、自宅へ帰ろうと席を立ち上がった。
「まあ、無駄だと思いますがそれでもやってみて下さい。
また、ここへ戻る事になると思います。ごきげんよう」
癒はさらっとだが滑らかに、寒気が走る口調で莉に言い放った。その言葉が諸刃の剣のように冷たく突き刺さった。
「失礼します」
そう言ってお辞儀をして、ドアを開けた。
突風が吹いていたがもと来た道を急ぐ、周りには変な化物がいるが何故か今回は、慣れたのか、ここへ来た時よりは抵抗を感じなかった。
来た方向へと自然と早足になり、進む…そして更に進むも景色が変わるような気がしない、家宝の宝石も反応をしなくなってきた。
すると川を挟むように、いつ壊れてもおかしくないような桟橋が見つかった。
その渡りきった反対側に古びた小屋があり、そこに一晩止めてもらおうと思い携帯電話を取り出した瞬間、携帯電話のメールが受信されないことに気がついた。
すると、非通知で何者からか、電話が掛かってきた。
恐る、恐るゆっくりとコールのボタンを押す。
ピッと、安い機械音のような音は普段と変わりがなかった。
「あー。私の家の前にいる様子だね。そう、昼間は君が通ってきた道には実は私の家があった場所なのだよ。
ここは現世と妖かし界の魔方陣でいわば、結界の中心地点だからね。
この世界には他にも結界はあるんだけど、『ghastly ghost companys 』の奴らが結界を壊し始める様になったんだよ。
ま、こんなところで立ち話をしていては何だから、今日から家で住みなさい。
君のチカラが是非、必要なんだ」
莉は始めての脱力感を味わった現世に戻れないところまで来てしまったのだと、そしてあの情報誌は私を罠にはめるそんな物であったのだろうと、怒りといよりかは絶望感が莉を襲った。