第80話:魔王とメイド
久々の更新です!お待たせしました!
「嫌です」
石英でできた白い壁と反射するほどきれいな大理石の床の部屋の中央で一人のメイド
背は160cm前後だろうか短く切られた黒髪に青色の瞳、そしてきっぱりと淡々とした口調をしたメイドが自分よりも確実に目上の目の前で裁判長の様に巨大なヒノキでできた椅子に腰かけているメイドの服を纏ったメイド長にそう言った
頭を掻きながらやれやれとメイド長木槌があれば打ち鳴らしてやろうとも思ったがそれが手元になくメイド長は渋々メイドの言葉を聞き入れた
「なぜだ?
お前に警護は朝飯前の仕事だろうに」
メイド長の質問に対しやれやれと手を左右に振るメイド、メイド長は怒鳴り声を上げそうになったが寸でのところで堪えた
「その青年がたとえ私の警護を求めていおうとキモオタは勘弁ですし、変なムキムキの男が私みたいな可憐なオトメを怪しげな部屋に連れ込んでビデオカメラで撮影しようと考えんやからもいると思うのです
強いて言えばそれも嘘で実際は剥げ散らかして脂汗でぎっとぎとの金しか持ってないようなキモイ親父や大御所かもしれませんし私は嫌ですね
メイドとは皮肉なものなのですいつ私もそういう男たちに服を引き裂かれ・・・体を貪られるか・・・分かったもんじゃありません」
メイドの返しに怒りをも忘れてしまったメイド長、返す言葉も見つからずただ眼が点になっている
「そのような展開にはだな・・・」
「なるんですよメイド長!
ぐへへ・・・メイドさんだお
とか
ふひひ・・・若い女の体はいいのぅ
とか言われて今日も世界のどこかでまだ若い花の芽が摘まれようとしているのです!
メイド長ほどのババアともなれば構いませんが私はどうでしょう
まだピチピチのメイドですよ!?
どっかの若い執事を食ってばっかの年増と同じにしないでください」
「年増とはなんだ!年増とは!まだ私は30代だぞ!」
「若い執事たちを食ってる事は認めるんですね」
メイドの指摘に即座に魔法陣を展開しそこから銀食器の巨大な皿を取り出してそれでメイドの頭に縦に叩き付けるメイド長
ためらいの無いその一撃は確実にメイドの頭部にダメージしかし、メイドは無表情を決め込んで痛みを必死にこらえている
だが肝心の体の震えが止まっておらず、メイド長は笑いを堪えていた
「今回は写真もあるし、きちんとした履歴書まである」
そう言ってメイド長が机の引き出しから紙を取り出すとそれをメイドに向かって投げつけた
そこには鋳鶴の写真とかれの履歴書、そして履歴の職業のところには魔王兼学生と書かれていた
鋳鶴の写真を見てメイドは鼻息を荒くしてさらにその履歴書を淡々とした先ほどの表情に似合わない血眼で凝視していた
「ヘイ、BIG BOSSこの青年の警護をすればいいのですね?」
「私はいろんなメイドを雇っているがお前ほど依頼主を見て態度を変えるメイドはいないと私は思うよ・・・」
「そうですか褒めてくださりありがとうございます」
「褒めてないんだがなぁ」
「ただ、日本ですかとても興味深いです」
「気を付けろよ?なんせ魔王の警護だからな
ただの警護じゃないのは確かだ
それにかの有名な雅望月からの依頼だからな」
「あの方の息子さんでしたか
さぞかし、写真通りの肉食系美男子なのでしょう・・・」
発言とともに涎が口から見えているメイド
メイド長はため息を吐きながら机の上に突っ伏した
「この性格が無ければお前は名実ともに現メイド界屈指のメイドなんだがなぁ・・・
スティール・D・ノーレッジさん」
「フルネームで呼ぶということは行けと言われているんですね
そもそもこの写真を見てから私は彼の警護をしようと心の中で決めていましたが」
「態度にも表れていたがな」
「御冗談を」
出発を決めたスティールにメイド長が小さな箱を投げつけた
それを受け止め恐る恐る開けてみるとそこには小さく圧縮された魔法陣が入っていた
「これは?」
「圧縮魔法陣で作った倉庫だ
日本の土産等をここに入れて行ってくれ」
「観光に行くんじゃないんですよ?メイド長」
「お前の性格上なら必ず持って帰ると思ってな」
「よくお分かりですね
ですがお若いメイド長好みの日本人男性はお土産としてはお渡ししないのでご注意を」
「えぇい・・・私はショタコンではないわ!」
そう叫ぶメイド長をよそにスティールは身支度を始めるためその場を後にした
ーーーー陽明学園ーーーー
「うっ・・・なんか寒気が」
「大丈夫か?鋳鶴」
昼下がりの午後、鋳鶴と歩は二人で体育館近くの購買を訪れて近くのベンチに2人で腰かけていた
鋳鶴はとくに欲しいものも無く、お腹が空いたわけでもなかったのだが歩に連れられ渋々ついてきたのである
既に歩の頬は赤く染まっていて鋳鶴もおどおどしている様子が見て取れる
「久しぶりだな
2人でこう・・・ゆっくりするのも」
いつになく恥ずかしそうに顔を俯けながら歩は鋳鶴にその恥ずかしさを押し殺しながら勇気をだしてそう呟いた
「そうだね
最近忙しかったからね~・・・
またすぐに忙しくなりそうな予感しかしないけどね~・・・」
「わっ!私はお前と一緒にいれれば忙しくても構わん!
でも・・・こんな日も悪くはないと私は思う・・・」
自慢の黒髪のポニーテールを大きく揺らしながら歩は大きく首を縦に振った
鋳鶴も歩の照れ隠しを見てほほ笑んでいる
その二人を付け狙う人間がそばにいるとも知らずにまずはベンチの後ろの茂み、そこで耳を立てながら録音している二人組、全国の思春期男子学生の味方孤高のエロフェッショナル土村影太とそのエロフェッショナルと最近いい感じに仲の良い荒神麗花がいた
頭には茂みと同化するために黄色のヘルメットに草をつけて待機していた
そして2人の近くにある二つの購買、店員はいつも普通科生徒に笑顔を振りまくおばちゃんたちなのだがそこには赤神桧人と鈴村詠歌がおばちゃんに成りすまして二人を見守っていた
2人は小型カメラを装備しておりそれを左胸につけて二人の事を誰かに分かるように映像を届けていた
生徒会室で待機している二人の秘書と会長に
「いいね?
歩君は絶対に望月君の事が大好きだよね?」
「あまりいい気はしませんが・・・こういうのもたまにはいいですね・・・」
「珍しく同意見なんて面白いね?」
一平の無垢な笑顔に涼子の胸が締め付けられる
それとともに涼子の顔は真っ赤になっていた
一平にばれないようにと普段からかかえているプラスチックの板で顔を隠している
しかし、二人だけとは言えないがこの空間には普通科の生徒がほかに見当たらない
その原因は2人を中心に半径20mより外にあった
「すまないな
今度来た時に生徒会長の財布から今日来てしまった皆の欲しかった食べ物が送られるそれまで我慢してくれ」
ウェザーが二人の空間に邪魔者が入らないように蜃気楼で二人の半径20mで包んでその周囲を風のカッターでほかの生徒が入れないように工夫していた
ただその生徒たちの人混みをかき分けて来たであろう女子生徒二人がウェザーの前に立ちはだかっている
その二人とは
「鋳鶴がそこにいるんでしょ!?鋳鶴を出して!」
「この金髪は入れなくて構いません!私をこの中に入れなさい!」
魔王科生徒のシャルアと魔法科生徒の寿だった
ものすごい剣幕でウェザーを今にも殺さんばかりに怒りを露わにしている
「ん?お前らは一体?」
「鋳鶴様の奴隷ですわ!」
「鋳鶴の友達ですっ!」
2人の発言を聞いて納得しかけたウェザーであったが二人の容姿を見てあることに気付く
「なぜ二人は俺と違う制服を着ているんだ・・・?」
これをチャンスと見込んだ二人はここぞとばかりにウェザーに畳みかけた
「これは来年度の普通科の夏服と冬服のデザインですわ
それを私たち二人が着ることにしましたの」
「とても通気性があって動きやすいんだよ!
それを企画を発案した鋳鶴に教えてあげたくて!」
ウェザーはしばらく熟考すると小さくうなずいて風のカッターを解除した
2人はウェザーに一言お礼を言うとそのカッターの向こう側へ行こうと足を一歩踏み出したときだった
銀食器のナイフが二人を襲う
しかし、二人も手練れの実力者の為見事に交わして見せるがその二人のスカートが捲れ上がるさまをシャッターが狙う
2人の予想は影太と思っていたのだがカメラを握って2人を激写したのは一人のメイドだった
「現役女子高生の淑女たちも素晴らしいものですね
涎が止まりません」
口元まで垂れた涎をぬぐいながらスティールは2人とウェザーを見た
再びだらしなく涎を垂らし影太のカメラで三人を激写する
「いいですねぇ・・・いいです・・・
しなやかな体・・・隠しきれていない豊満なおしりと胸・・・
素晴らしい胸筋と足の筋肉・・・
素晴らしいです」
激写を続けるスティールのカメラをウェザーは取り上げようとする
しかし、華麗に体を回転させてウェザーの手に触れられるのを嫌がるがごとく流れる様にその腕をスティールはかわして見せた
「男性は相手がメイドといえど大切に扱うべきですよ
濡れたと言えばいやらしく聞こえるかもしれませんが完全に水分が浸透した濡れた紙というものは慎重に扱わないと破れてしまうでしょう?
それが安易なものならいいのです
高級和紙ならご自身の心や財布にもダメージが残るでしょう?
女性はすべてがその紙なのです
お分かりいただけまして?」
ウェザーが先ほどのふざけているように見えた態度ではなく
突然、真面目で目つきを変えたスティールを見て驚いている
ただそれは普通の驚きではなく、ドン引きといわれるような驚き方、二人も同様
雰囲気の変わりように驚きを隠せていなかった
「そもそも淑女のお二人もお召し物が見えてしまうような回避をするようではまだまだですね
黄色に黒ですか眼福ですが見えない悦びというものもあるものですよ?
それとも邪魔にならないように・・・そのスカートは切り刻んでしまった方がよろしいでしょうか?」
息を乱しながらそう話すスティールに周囲は騒然として完全に彼女のペースに飲み込まれていた
「女の子の恥ずかしいともいえるところを撮影するのはよくない
いくら同じ女性とはいえ手加減は無用だな」
ウェザーが手を振り上げていつもの様に魔法を使おうとする
そのタイミングと同時にスティールは自分のスカートをたくし上げそこから何かがウェザーに向かって射出される
ウェザーはいそいで手を下ろして攻撃を回避するがすでに時は遅く、彼の頬には彼女が投げた銀食器のナイフがかすめた切り傷が出来ていた
「見えなかった・・・と言えばいいのか」
「私はナイフや剣、拳銃など野蛮な物では戦いません
銀食器、それもおフランス物の逸品です一セット100万は軽いでしょうね
貴方の血と私の銀食器どちらが高いでしょうかね?」
「出来るな・・・だがしかし」
ウェザーがスティールを見るとスティールの背後には氷の壁を立てられ退路が塞がれてしまっている
そこに欠かさず
シャルアが自慢のマシンガンで襲撃し、寿は黒魔法を叩き込む
激しい金属音と共にメイドは笑みを浮かべると三人は自分たちの周囲の現状に気付く
「まずそこの帽子の男性
あなたは魔力の無駄遣いが激しく発動も遅い
そして金髪の淑女、貴方は私を殺すつもりでマシンガンを扱っていません0点です
さらにリアル和風お嬢様、貴方も魔法の展開が遅いうえに比較的に黒魔法に必要な魔力の込め方がなっていません
このような使い捨ての銀食器に守られてしまうあなた方の攻撃なら返し技でそうなるはずです」
長いスティールの注意の後の三人の周りには宙に浮く無数のナイフ、それも一瞬で判別できない数のナイフがそれぞれ三人の周りを別々に包囲していた
あまりの突然の現象に三人は声を出すことすらままならない
時を止める事でもしないかぎり絶対に相手に悟られてしまうような攻撃方法を一瞬でスティールはやってのけたのである
「なっ・・・!」
ウェザーが後ろに跳ぼうとするがそこに至るまでの箇所もナイフで包囲されている為、脱出はほぼ不可能な状況に陥っている
他二人も同様、全方位にまんべんなく空中で固定されているナイフをこの至近距離では回避する事もままならない
三人を別々に包囲するナイフ、その距離は5mにも満たない
「スティールさん!やめてください!その三人は僕の友人です!」
スティールが出てきた風のカッターの隙間から鋳鶴が息を切らしながら現れた
「あら?そうでしたか・・・てっきり坊ちゃんのお命を狙う刺客か何かと勘違いしてしまいました
どうかお許しください」
そう言って鋳鶴の鶴の一声でスティールは三人を包囲していた銀製のナイフを回収した
ナイフの方位から解放された三人は腰を下ろして深く息を吐いた
シャルアと寿に急いで駆け寄る鋳鶴、ウェザーは何事もなかったかの様に自分の制服の埃を払ってその光景を眺めていた
「おっ影太、いいところに」
いつの間にか空間から出ていた影太を発見したウェザーは影太の近くに忍び寄り彼の肩をそっと掴んだ
「ウェザーか・・・どうした・・・」
「鋳鶴には何人彼女がいるんだ?」
「ウェザー・・・その発言は・・・各界に波紋を呼ぶぞ・・・」
「まぁ・・・あいつには一応、一番好きな女は決まってるからなぁ・・・」
「でもやっかいよね~・・・
桧人みたいに女の影が全くいないのならいいんだけど・・・」
「影太、てめぇも少しは危機感持ったらどうだこの野郎」
いつの間にか現れた変装していた二人に麗花
影太の胸ぐらを掴みながら麗花はほかの生徒の目に映らない場所へ行った
ご愁傷様ですとその場の三人は心から影太の冥福を心から祈っていた
ーーーー有明学園ーーーー
有明学園銃器科、屋上にある購買施設で仲睦まじい女子生徒が二人
まるで男女のカップルに見えるな雰囲気でその場を独占していた
周囲にだれもいないのは確かだが二人とも身の丈よりも高い物騒なライフル銃を背中に下げている
2人でパフェを仲良くつつき合っているようだがその食事に邪魔なライフルを下げる様子は無い
「ねーねールーちゃん、私の事好き?」
「私がマダラを嫌いなんて言ったことあったかしら?
それに天下のヴェール・ジョコビッチよ?あなたの事が好きだから一緒にいるのよ?
あんまり恥ずかしんだから言わせないでっ」
あからさまに顔を赤らめるヴェールを見てマダラヌルは熱い抱擁を交わそうとするが見事にヴェールに阻まれてしまう
しかし、内心ヴェールもその行動が嬉しいのか装飾でつけているはずの黒い羽根の様な服が嬉しそうに揺れている
その様子を見てさらに上機嫌になったマダラヌルは彼女の脇を執拗なまでに擽った
「ちょっ・・・!ちょっと!マダラ・・・やめてっ・・・!」
「ほれほれ~・・・ルーちゃんの弱いところは全部知ってるんだぞ~?」
「あっ・・・やめっ・・・」
声と共にヴェールは体を痙攣させはじめ顔をは徐々に先ほどまでの凛とした態度を失っている
艶っぽい彼女の声を聞いて満足したのかマダラヌルは舌を少しだけ出してヴェールに無垢な笑顔を向けた
さらに顔を赤くしてしまったことを自覚したヴェールはマダラヌルの反対側を向いた
それを弄るかの様にマダラヌルはヴェールの顔の前に素早く入る
「マダラの馬鹿・・・知らないんだからっ」
「も~こんなことで怒るなんてルーちゃんは可愛いなぁ~
男の子の前でその態度が出来たらきっとモテモテになると思うんだけどなぁ~
もったいないたらありゃしない」
「マダラは人当たりがいいからモテモテじゃない
そもそもバレンタインでも女の子からチョコもらったり男の子たちにチョコあげてたりしてたじゃない」
「あれ?もしかしてヴェールちゃん怒ってる~?
怒ってるヴェールちゃんもかーわーいーいー!!!」
「かっ!私は可愛くない!」
「それに私が世界で一番好きなのはヴェールちゃんだよ?」
突然の告白に戸惑うヴェール
いつも彼女はマダラの笑顔とちょっとした告白を本気で受け止めて赤面してしまう
「あっあのねぇ!?私は!」
ヴェールが取り乱しながらも反論しようと振り向くとマダラヌルの顔が間近にまで近づいていた
「それにヴェールちゃんは私にチョコくれたじゃん
そういう意味として受け取ったんだけどなぁ~」
「だって・・・マダラにしか・・・その・・・あげてないから・・・」
ヴェールの照れくさそうな表情を間近で見て発狂しながら悶えるマダラヌル
彼女の様子を間近で見たヴェールは悶えているマダラヌルを優しく殴打する
まるで照れ隠しを見てくださいと言わんばかりに
「やっぱりツンデレ!?ルーちゃんやっぱりツンデレなの!?」
ヴェールの照れ隠しに畳みかけるマダラヌル、二人の空間はその後も続いた
ーーーー闡明学園 普通科ーーーー
ただっ広い体育館の中心でジーパンに色黒な上半身を見せつけるかのごとく座禅を組んで迷走している立波、全身から汗が噴き出しているかのように彼の周りには汗だまりが出来ていた
彼の周囲10mには木札に呪符が貼られた仕掛けが八方向に並べられている
体育館の部隊の上にはメイド服の様な衣装をまとった彼と比べると小柄な女性が座って彼の座禅の様子をストップウォッチと交互に眺めていた
ストップウォッチは五分経過した事を表していた
「五分ですね!
新記録目指して頑張りましょう!立波さん!」
小柄な女性は正座で立波を見守っていたのだが足がしびれたのか五分経過した事を知らせると足を組み替えて体操座りに座り方を変えた
その時だった
「天音ちゃん!パンツ!」
立波の視線の先は勿論の事、彼女の足下に向けられていたあまりにもミニスカートなメイド服の為、座りようによっては下着が見えてしまう仕様になっている
これは立波の趣味ではなく、草津天音彼女自身のコスプレの趣味によって着ているものだったのだがその衣装がすでに立波を誘惑していた
「はえっ!?すみません!」
時すでに遅し、立波の集中力は切れてすでに天音の方にむかって来ている
傍に近寄ると立波は汗を気にしながら彼女の隣に腰かけた
「ごめんね
こんな事に付き合わせちゃって」
「いえ!大丈夫です!立波さんの為ですから!
それとお疲れ様です!」
笑顔で背中に手を回して天音が取り出したものは厚手のピンク色のタオルとスポーツドリンクの入った水筒だった
花の香りが漂うふかふかのタオルと立波の事考え薄味にしてあるスポーツドリンクによる癒しは疲労した全身に染み渡り、彼の疲れを取り除いていった
そして何よりもの癒しは天音のお疲れ様の一言、立波にはそれだけで十分な癒しになっている
「本当にありがとね
こうやって自分の腕を磨くことしかできない自分にここまでしてくれて」
「お礼には及びません!なんたって私は立波さんの彼女ですよ!
彼氏が頑張っているのを目の当りにしたら何かしなきゃって思うものです!」
「またイチャイチャしているのか
公衆の面前ではいつも控えろと言っているはずなんだが」
「そうです!私たちはいつも我慢しているのに!ねぇ左近!」
「右近?致し方なしですわ
それに剛也さんは忙しいんですもの」
二人の仲に茶々を入れる様に体育館の入り口から二人組で声色も体格も瓜二つの長身黒髪女性の声とそれを引き連れた一人の男性の声が二人の耳に入った
拘束具に見えない事もない右近と左近の衣装は周囲に危ない空気を醸し出していた
そしてその二人を目の当たりにしても動揺の色すら見せず淡々としている男、工藤剛也
彼も瀬尾立波と同じスタイル、彼の場合は右近と左近、剛也の三人で戦うスタイル
「そこまでしてお前が誠を倒す事に夢中になってるなんてな」
「別に?俺は自分の大好きな人達の前じゃあ倒れたくないだけだ
誠がどうこうは関係ないんだぜ?」
「そういうことにしておくか
お互いに強情なのは変わらない」
「そんなお前も強情だけどな」
「立波さんは誠さんには負けません!」
「それはどうかしらね
ねぇ?右近」
「そうよね左近」
いがみ合う天音と右近、左近三人の間には火花が散っている様に見えた
お互いのパートナーが本来なら仲間なのにも関わらず自分たちの為とはいえ火花を散らすのは無駄な行為だと二人は心の中で思っていた
「俺には天音ちゃんがいるし、剛也には二股だけどお前にも右近と左近がいる」
「二股!?そもそも俺はあの二人をお前の草津みたいに欲望のまま襲ったりはしない!
それに俺があの二人と寝ることは決してない」
「たっ剛也さん!?よよよよっ!欲望のまま!?」
天音だけがその場で突然顔を赤らめて動揺を始めた
それが事実なのか分からないが立波は首をかしげていた
「俺が欲望のまま天音ちゃんを襲うと思うか?
それにそういう事は俺たちみたいにパートナーと戦う場合には仲を深める為にには重要な事なんだぜ?
天音ちゃんから求めてくるのになぁ?」
「いやっ・・・その・・・あぅ~・・・」
恥ずかしさのあまりついにその場で突っ伏す天音
立波は天音の頭を撫でるとより一層、顔だけでなく天音の耳が赤くなっていった
その二人の関係を羨ましそうに見つめる双子の右近と左近
「私たちだって剛也さんと・・・ねぇ左近!」
「それもそうよ・・・右近」
自分達の立場を天音と比べて不服なのか小声でぼやく二人
その小声を剛也の地獄耳はしっかりとらえていたのだがあえて聞こえていないふりをしてそれを流した
さらに二人は不機嫌になったのか今度は二人で剛也の両腕に絡むように左右に一人ずつ抱き着いた
「なっ!」
「剛也さんは鈍感ですから私たちが気付かせてあげないと!ねぇ左近!」
「そうね右近」
「まっ待て!流石に二人はだな・・・」
「毎日変わりばんこなんて飽き飽きしましたねぇ左近」
「そうね右近
私たちも毎日都合がいい日ではないのです
そこを考慮してこそ剛也さんの今後にもつながると思います」
「だっ!だから俺にそんな体力は」
「「今日は駄目です」」
双子特有の息の合ったコンビネーションで訴える二人
ついに剛也も折れたのか二人を連れて手で立波に帰ると合図して体育館を去った
「立波さん・・・その・・・私も・・・?」
「ほんっっっっとに天音ちゃんは可愛いなぁ!
わかりました!それじゃあ部屋に帰ろっか!」
意気揚々とする立波さんの手を取りながら恥ずかしそうにも寄り添って幸せそうな顔をする天音、
そんな中、二組のカップルを監視するカメラが体育館に付けられていた
そこから二組の様子を覗いていたのは勿論、千だった
内心、羨ましがりながら千は淡々と二組のカップルを見て不貞腐れていた
「私だってあと20歳、いや!10歳若ければ・・・」
カップルを見て嫉妬する学園長にはいつもの威厳は無く、周囲の資料に埋もれる千に人肌の暖かさはしばらく味わっていないものであった
今回はとても長くなってしまったような気が・・・感想あどお待ちしております!