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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々8
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第79話:魔王と相談

お久しぶりです!受験生の為、更新が少なくなっています



鋳鶴たちがいつも通りに登校したころには学校中が騒いでいた

校門の前には女子生徒が学校の前に停められていたトラックに群がり、男子生徒はその隣にあるトラックに群がっていた

トラックをよく見ると陽明学園の生徒ではない生徒の写真が飾られていた

きっと影太が撮影をしたと思っていた鋳鶴だったが、そんな影太はトラックを見るや否やトラックに群がる男子生徒の中に入って行った

それにつられて鋳鶴、歩、桧人、麗花も付いていった

窮屈な人混みをかき分けたその奥には他の都市の代表生徒のブロマイド写真、影太が入って行ったのは女子生徒の写真しか陳列されていなかった

だが、女子生徒の写真と言えど、陽明学園の女子生徒もその人混みの中に紛れていた


「これはすごいな・・・」


鋳鶴があまりの人混みに耐えられず脱出する

隣では桧人が服装を乱しながら額に汗を流していた


「なんだありゃあ」


「たぶん、陽明学園の生徒の写真ではないのは分かった」


「またまつりごとかなんかか?」


頭の上で?マークを浮かべて鋳鶴は首を傾げる


「うむ・・・これはいい収穫だ・・・」


影太が満面の笑みを浮かべながら両手いっぱいにブロマイドを抱えながら人混みを自分の能力の影を使用して密かに購入していたのだ

そんな事に自分の能力を使わなくてもと思っていた鋳鶴だったがなんとかそれを飲み込んで言わない事を決めた


「それでそれで?可愛い女の子の写真はあっ・・・」


鋳鶴が影太に声をかけると彼の後ろには鬼の形相を浮かべた麗花が頭を鷲掴みしていた

すでに音を立てながら影太の頭は悲鳴を上げていた

それを見て見ぬふりをする桧人と鋳鶴、二人への無言の合図を無視して鬼になる事を決めた

校門の中に連れていかれて悲鳴と鈍い音を響かせながら二人は姿を消した


「あれがリア充か」


「桧人・・・それは君も言えないと思う」


「俺もお前には言われたくない」



ーーーー普通科 生徒会室ーーーー



鋳鶴たちが学校について間もない時間帯

陽明学園が誇る六科の会長陣が普通科生徒会室のこじんまりとした円卓の机を囲んで座っていた

雛罌粟が六人分のお茶とおしぼりを配って会長席の隣の秘書席で着々と今回の会長たちの会話を聞き取り書き取ろうとペンを手にしていた

一平の正面には凛として席におとなしく着席している魔王科会長の望月結

一平の右には彼女の頭のサイズに合っていない帽子を被った機械科会長の金城沙耶

左にはブレザーではなく白衣を纏い目をこすりながら欠伸をしている科学科会長の朝倉藍子

結の左隣には若干不機嫌そうの顔をしかめている虹野瀬縒佳

そして右隣には拳銃を磨きながら口に弾丸を咥えている銃器科生徒会長の月野蛍


「あの皆・・・?こんどの五大都市校戦企画について話し合いたいのだけれど・・・?」


全員が無視、うわの空で一平の話に耳を貸そうともしない

なぜなら五都校戦は今日の早朝に決められたことであり、生徒会長たちは無理やり招集されたのである

不機嫌であるのは仕方ないが一平の中では仕方ないという意見で心がいっぱいになっていた

それは一平の中では単なる建前に過ぎないのだが生徒会長軍団の態度も正直のところ、心地いいものではない


他の高等学校はすべて、作戦会議を行い、何処から攻め落とすかの段取りをしておおよおそれに使われる武器や魔法の調達も行っているのだろう


「やっぱり会議はやらない方がいいかな?」


「そんな事は無い

各々、一応考えだけは纏めてきたつもりだ」


一平の問いにすかさず結が机に紙を叩き付けて一平に見せつける

その紙には


普通、機械、銃器=東京・北海道

魔王、魔法、科学=大阪・福岡


それだけ記入されていた


「この采配は一体?」


「私の独断で決めたんだがこの方が効率がいいと思ってな

魔王科、魔法科、科学科は特に異能や魔法を使うことに長けている連中が少なからず多い

それに北海道の有明学園には銃器科と機械科が存在し、闡明にも機械科と普通科という戦力が主になっている

近接武器統合科と魔法科が厄介かもしれないが普通科の戦力でそこはカバーしてもらいたい

そして大阪の菱明、福岡の景明は奇妙奇天烈な科が多く、この戦力配分になっている

帝という男子生徒も気になる上に、大阪、福岡方面はこの戦いの遅延を目的としている

普通科、機械科、銃器科にはこちらを落としてもらいこちらの本隊に合流し、残りの学園勢力を叩き潰す事を目指したい

同盟や協定などは禁止されていることからつぶし合いをするしかないというこの計画の素晴らしい利点もある

我々は愛知県で挟撃も多いと思うが東京、大阪も十分に挟撃に合う可能性が高い

その為、陽明は東京と大阪方面で部隊を分け、東京は北海道に大阪は福岡に挟撃されるという戦法だ」


結の弁論い近く長い話はほかの生徒会長を呆気にとらせるほどの長さであった

しかし、誰一人として結の話を聞いていないものは話の途中では居らず、全員が結の話を黙り込んで聞いていた


「うん

それもいいと思うよ?というよりもそれでもういいと思うよ?

確かに大阪方面はどっちも不思議な科が多いからこっちとしては助かるし、こっちの方が楽そうだし?

でもやっぱり気になるのは帝君?って子だよね?」


「自分から帝と名乗るなんて・・・いい度胸してるわね」


縒佳が淡々と声を殺しながらそう答えたのだが残念ながら全員の耳に入ったのか場の空気が凍り付いてしまった


「銃器はできるだけ援護に回る形でいいかな?

それで前線を押し上げられる状況になったら前線を押し上げる形で」


「じゃあ私たち科学科は魔法科と魔王科で遅延を目的とし圧倒的攻撃力で敵を寄せ付けないようにする

そういうことでいいんですね~?」


眠そうな藍子は欠伸を交えながらそう話した

沙耶も納得し、蛍も銃磨きを終えて満面の笑みを浮かべている


「でもお義姉さん?物好き君の視線は私が釘づけにしてしまうかもしれないからその時は嫉妬で背後から切りかかったりしないことね」


「君にお義姉さんと言われる筋合いはないが

私は弟を愛している

他でもない異性として姉と弟という垣根を越えた夫婦の様な存在でありたいと思っている

虹野瀬君に私の弟を譲るつもりはない上に三河歩にも同等の事を言える」


周囲の人間なんてお構いなしと言わんばかりに結は自分の持論を他の生徒会長にぶつける

呆気にとられた顔をするのも理解はできるが結はそれでも凛とした態度をとっていた


「その持論はいいことだと思うわ

でも物好き君が恋をするのは自由よ?姉のあなたにとやかく言われる由縁はないと思うわ

あとこれだけはやめてほしいこと、仲間内での争いだけは止めていただきたいものね

私とあなたが殺しあっても得などない上にご近所様にも迷惑でしょう?

貴方の実力は知っているからこそ忠告しているの

お互い頑張りましょう

彼の為にもそしてこの学園の為にも」


そう言い残して周囲の許可を得ず、縒佳は転移魔法を瞬時に展開してその場を後にした

不敵な笑みを浮かべる結も風間にコクリと一礼すると自らも転移魔法を使ってその場を後にした


「困ったお二人さんだね?」


「それでこそ吾輩はあの二人だと思うであります!」


一平だけでなく沙耶も呆れもせず寧ろすがすがしいぐらいに2人の行動をとがめることは無く無垢な笑みを浮かべていた

藍子も蛍も何の文句も言わずにただただうなずいていた


「やっぱり~作戦を立ててもたてなくても~?私たちならなんとかなると思うけど~

やっぱり作戦は練らせてもらうわね~」


藍子は欠伸をしながら椅子から立ち上がり堅牢な普通科生徒会室の扉を押して生徒会室を後にした

残りは大阪・福岡側の普通科、機械科、銃器科の三科は三人で机を囲みながら大阪・福岡の攻略作戦を練ることを始めた



ーーーー城屋家ーーーー



望月家や三河家には劣るものの一般の家からしたらかなりの大きさを誇る城屋家、

陽明学園近くの小高い丘に和風の由緒正しき、これこそ日本の家と言わんばかりの木造住宅

その家の庭、池の近くで誠が静かに座禅を組んでいた

既に登校時間なのだが誠はその場から全く動こうとしない


「誠?学校には行かないの?」


瑞希が縁側から車椅子に座ったまま誠に問いかけるが誠は瑞希の言葉を無視した

胸中で感じた気持ちを吐き出さないに瑞希は口を紡いだ


「立波の事か?姉ちゃん」


黙り込んでいた誠が瑞希に問いかける

瑞希はなぜ自分の考えが読まれたのか分からず目を丸くしている

誠は人の気持ちを察することのできない性格

長年、誠と共に過ごしてきた瑞希には誠の気持ちや性格は熟知している

しかし、瑞希も誠と一緒に過ごしてきた18年間、一度も誠が自分の考えを理解する事はなかった

それに誠に考えを読まれる事もなかった

それを唐突に目の前でやられて瑞希は驚きを隠せなかった


「驚いてるのも無理はないかな」


「そりゃそうよ・・・

誠の事を悪く言うつもりはないけど私は誠が人の事や人の気持ちを考えられるような出来のいい人とは思っていなかったもの・・・」


さらっと心に突き刺さる言葉を浴びせられても誠は動揺もせず怒りもせずただただ目をつむって座禅を組んでいた

瑞希はそれ以上何も誠に掛ける言葉はなかったがそれ以前に自分の心が読まれている事に恐怖すら感じていた


「鬼面だっけか?」


「何が?」


「言いたくないって思ってるかも知れねぇけど今の俺には姉ちゃんの考えている事お見透しだぜ?」


瑞希は口を何を聞かれても口を割らないと心で決めていたが誠の日頃にない真面目な口調で話を続けるため、ついに瑞希は腹を決めた

沈黙と共に誠が座禅を止めて瑞希に振り返る


「鬼面ね

そう鬼面、望月君の魔王の力みたいで人ならざる力の一つ

魔王と違って鬼面は魔力の暴走や精神力の暴走でなく、鬼面は自身の底に眠る鬼の力というのかしらそれを自ら引きずり出すのが鬼面、ただ魔王の力と違って厄介なのは

慣れていないと暴走してしまうのよ

魔王の力は望月君が慣れていなくても扱えているでしょう?

でも鬼面は自分の鬼に飲まれてしまうと姿かたちも強制的に鬼の様になってしまうのよ

体が鬼面に飲まれれば飲まれるほど強くなれるけれど飲まれすぎると帰ってこれなくなる

魔王と違って心のコントロールも重要になるの

私たち城屋の家系は代々鬼面の力を生かして日本の軍隊や政界に力を貸していたのよ

もちろん、城屋の家系だけじゃなくてほかにも鬼面を使える家系はあるけどね」


瑞希の長々しい話を聞いていた誠は自分の掌を見ていた

既に自分の力は常人よりも遥かに高ければ魔法科の人間にも魔法なしで喧嘩に勝ちうる持久力と耐久力がある

それに瑞希の鬼面の力を加えたらどうなるのだろうと誠は考えていた


「どうしたら扱えるようになる?」


「誠、ごめんなさいね

逆に質問させてもらっていい?

なぜ鬼面にそんなにこだわるのかしら」


しばらくの沈黙

誠は口を開くわけにはいかなかった

瑞希も鋳鶴の姉の結ほどではないが重度のブラコンという欠点がある

自分がいくら精神的に成長していると言われてもきっと瑞希は自分の鬼面取得に反対だろうと心で考えていた


「誠?お姉ちゃんも鬼面を持っているし、貴方の姉だから誠の考えも筒抜けなのよ?

だからあなたの考えてる事が分かって叱ることだってできたんだもの

鬼面の力がどうしてもほしいのは分かる

だって誠は今、みんなの為に戦わないといけない立場だものね」


「おう」


誠がやっと重く噤んでいた口を開いた

瑞希は微笑むと車椅子からゆっくりとひじ掛けをつたって降りた

突然の瑞希の行動に仰天する誠だったが突如突き出された瑞希の左手に近づくことを阻まれる

右手を自分の眼前に翳し、そこから青色に薄く発光する網状の線が徐々に瑞希の全身に広がっていく

首元まで到達すると徐々に瑞希顎から白色の面が現れる

そしてその面に青色の線が刻み付けられ、目の部分だけ横長に小さな穴が二つ開いている


「これが鬼面」


「これが・・・」


仰天して立つことすらままならない誠

誠が驚いているのは確かに実姉が鬼面の能力をつかえたことともう一つ

鬼面をつけている瑞希は両足が健常者の様に自由自在に動くということ

しかし、もとより無い足の部分は青色で半透明に発光している光でのみ形成されていた

瑞希は誠のその表情を誇らしげな顔で見つめていた

面の上からでも誠には表情が分かるぐらいに瑞希は嬉しそうに笑っていた

心が読めているのならそうだろう

誠は口に出さずに、口に出せずに瑞希を心の中で褒めていたからだ


「ありがとね誠」


「礼には・・・及ばないぜ・・・」


鬼面を解除して畳の上に座り込む瑞希、誠の事を気遣ってか腕を使って瑞希は誠に近づいた


「私の鬼面は静の鬼面というものなの

攻撃的ではなく、悪魔で相手の攻撃をいなしたりその力を利用してカウンターを決めるという戦い方をするの」


「俺の鬼面というか姉ちゃんと違って青の線じゃなくて赤の線だから静の鬼面じゃないんだろう?」


誠の問いかけに瑞希は満足げに微笑みながら首を縦に振った


「そう

誠の体に出た模様?線があってそれが赤色だったとしたらそれは動の鬼面と呼ばれる鬼面になるの

動の鬼面は静の鬼面とは違って圧倒的破壊力とスピードを自身の力を増幅させることができるの

でもあまりにも消耗が激しくて私たちのお父さんでさえ3分が限界の鬼面化なの

静の鬼面にも身体強化はあるけれど動の鬼面程じゃないわ」


「じゃあ動の鬼面の方が強いのか?」


瑞希は誠の質問に対して首を横に振った

誠は残念そうに肩を落として俯いた


「やっぱり戦いようなのよ」


「それを言ったらおしまいだろ・・・」


「いかに動で静を制するか、静で動を制するかね」


「でもとりあえず座禅を組んだりして修行、だろ?」


「よくわかってるじゃない」


「何年姉ちゃんの弟やってんだってんだよ」


「それはこっちも言えたことね」


お互いに顔を見合わせ笑う二人、その兄妹の心の読み合いは言わずとも終わっていた

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