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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々8
88/94

第78話:魔王と五大都市校戦企画

今回から新章?です!



「やはり今年はおやりになるのですか?」


もう昼時なのにも関わらず一人の男装執事が部屋のサッカーコートぐらいはある部屋の四分の一を支配しているベットに話しかけた

執事の声を聞いてベットからゆっくりと起き上がる小柄な少女

ベットの近くの棚の上に置かれていた純白で見る限り高価であろうアンティークのカチューシャをつけて少女はやっと執事を見た


「アンリエッタまだ16時じゃないですか・・・もう少しぐらい寝かせてほしいものですね」


寝起きとは思えないほど的確な指摘にアンリエッタは驚きを隠せていない

そんな彼女を見てジャンヌは優しく微笑んだ


「今季といえどまだ夏にもなってはいませんが

そろそろ、五都校戦を今年こそするのかしないのかを決めていただかないと」


「もう体育大会をしたはずなのに五校戦ですか・・・

でもやってみた方が案外学園も盛り上がるかもしれませんね」


ジャンヌは棚の上に置いてあった紙を取るとそれをしばらく眺めた

その間にアンリエッタはベットの近くの棚からアンティークの装飾の櫛を取り出してジャンヌの髪の毛を解かした


「やっぱり五校もあると戦力の拡散にいろいろとられてしまうのかしら」


「そうでしょうね

でもどこにどこを向けるかは考えるべき事だと思います

魔王科と魔法科は分けた方がいいなど拡散にもいろいろありますし」


五校は札幌、東京、愛知、大阪、福岡に存在している

陽明学園は愛知県に建てられているどこも陽明学園に近い構造をしていて五科までに分かれている

魔王科がある分、この五校戦では陽明学園は有利なのだがその分、条件が伴う

まずは日本という国の中で中部地方に存在する愛知県は東京、大阪からの挟み撃ちを受けることになる

しかし、東京と大阪も互いに札幌と福岡の攻撃を受けながら名古屋を攻めなければならないという弱点がある

それに対し、札幌と福岡はほかの三校と違って生徒数が少ない事と遠征に時間がかかるのが難しい事としてあげられている


「でも今回は普通科には彼らがいますし

優勝も狙えるのでは?」


「確かにそうですね

彼等は意外と侮れないところがありますし

何よりも普通科が動ける事によって戦力が三と三で分ける事が出来ます

それとも普通科を5と5で分けて2.5と2.5にすることも可能ですし

学園長として五都校戦に参加する事を希望しましょう」


ジャンヌの台詞を聞いてアンリエッタは急いでプリントに筆記体でジャンヌの名前を記入した

そして緑色に発行する魔力で構成されたパネルを発動してそのプリントを貼り付け他の四校の学園長に向けて送った

渋々起床したジャンヌは自身の車椅子に自分から床に足をつけて向かった

その様子をアンリエッタは目を丸くして見つめている

ジャンヌはアンリエッタを見てほほ笑むと自分から車椅子に腰をゆっくりと降ろした


「ふふふふ

普通科に影響されてしまったかもしれませんね

彼らは不可能と思われた事をやってのけた人たち

そんな人たちの上に立つ人間ならなおさら彼ら以上の行いをしなくてはなりません

私はただの学園長です

彼らとは違って先生という立場でもあります

そのような人間が床が汚いと言って歩かないなどあってはならないものです

世界中が幸せになるより先に私は彼らの上に立つ人間としてふさわしくなれるぐらいの人間でならねばありません」


上機嫌なジャンヌを見てアンリエッタは胸を撫で下ろした

車椅子に座ったのはいいもののジャンヌは一向に動こうとしない

疑問に思ったアンリエッタはしばらく様子を見ることにした


「・・・・・・」


しかし、一向にジャンヌはその場を動こうとしない

「あのですね?アンリエッタ?


私は我儘なのですよ?」


「いえ・・・そんなことは・・・」


「押してほしいにきまってるじゃない・・・」


「そういう事でしたか!」


少しだけ頬をふくらますジャンヌを見てアンリエッタは安堵していた

実年齢を隠して自分の仕事を全うする人であり人でないような人を常にお世話しているアンリエッタにとって

ジャンヌの無邪気な行動には安堵する部分がある

それはいつもおとなしく、見た目相応ではない大人の態度や行動を見せる彼女を見ているからこそ驚いたことであった


「全く、ずっとあなたを雇っているというのに主人の心も読めないのかしらね?」


脅すようにアンリエッタを窘めるジャンヌ、彼女の瞳は鋭くアンリエッタを見つめていた


「さっ!ジャンヌ様!これからお仕事ですよお仕事!」


「はぁ・・・まぁ今日は許してあげましょう」


渋々、ジャンヌはアンリエッタのこれ以上の言及はお由下さいと言わんばかりの態度での発言はジャンヌをあきれさせた

そのまま車椅子を仕事机まで導くとジャンヌはため息をつきながら万年筆を取った




ーーーー札幌 私立有明ありあけ学園 ーーーー




北海道札幌市に建設された有明学園は普通科を筆頭に機械科、銃器科、近接武器総合統合科がある

普通科としては異例の魔法科と同じ授業を受けさせているのが有明学園のカリキュラムの一つ

この有明学園の普通科は悪魔で普通科であり、魔法科ではない

いわゆる陽明学園では魔法科でも向こうからしたら普通科なのである

ということは普通科は普通科以下として見られるものだ

その為、有明学園学園長、海原海人かいばらうみとにとって古い時代を捨てきれていない学園と揶揄されている


「ついにジャンヌ学園長が動き出したか」


ふくよかな体格に似合う右手人差し指と中指に挟まれた葉巻を吹かしながら海人は陽明学園の参加表明の紙を見た

海人の机の前には少しばかり距離を置いて2人の生徒が海人を見つめいてた

右側には海人の話をニコニコしながら聞いているロングレンジライフルを背中に携えた桃色の頭髪の少女、頭髪以外にも彼女の体にはいろいろと目立つものがある

左側には海人の話を表情も姿勢も微動だにせず真面目に聞いている背丈が高く肩幅の広い手の甲の真ん中に十字のクロスされた白線がある黒の手袋をつけた青髪の青年

どっしりと構えている青年に対して落ち着きがない少女はどことなく年齢が見ためよりも低くも見える


「それで、海人学園長

参加されますか?それとも辞退・・・」


「参加するよね学園長~?

私とヴェールちゃんの初、戦闘記念日?になるかもしれないもんねぇ~」


「そうだな

我々も参加してもいいだろう

そろそろあのお高く留まった女が目障りだったところだ

それでは普通科会長、海原潮人かいばらしおと

銃器科会長、マダラヌル・ゲッテンヘッカー、ほかの生徒会長にも掛け合うように頼む」


海人はそう言うと自分の机の上に置かれていたタブレットを手に取って五都校戦参加許可の欄に自分の指でタッチして自ら参加表明をした




ーーーー東京 国立闡明せんめい学園ーーーー




東京都文京区に建設された闡明学園、普通科を筆頭に魔法科、科学科と比較的平均的な学科が多い

普通科といっても有明や陽明とは違って、三科しかない為、細かく分けるぐらいなら纏めてしまおうと決めてこの三科という体制になった

陽明学園とは親交もあり、ジャンヌもこの闡明学園の事は大いに気に入っている


「あまり私は争い事を好まないのですがね・・・」


五校戦参加表明を断りたいかのような雰囲気を醸し出しながら闡明学園学園長の橘千たちばなせんは憂鬱そうに闡明と裏側に刻印された学園のタブレットを見つめていた

そんな学園長を見て嬉々として微笑んでいる男がいた

身長は2mほどあるだろうか、千を遥か下に見下している様にも見える

その体格差はまるで子供と大人の様であった

背中に鬼と大きく刺繍されたジャケットを羽織っている事からどうも高校生には見えない所がどことなくある

まるで陽明学園にいる普通科最強の不良の様に


「千先生、大丈夫だよ

この学園には俺と天音ちゃんに剛也と右近と左近もいる

それだけじゃないけど陽明なんかには負けないさ」


「はぁ・・・誠君と戦いたいだけでしょう?

瑞希さんに怒られるのは学園長の私なんですからね?

瀬尾せお君はいい人ですがやりすぎるところがあります

それにその私は争い事というものが嫌いなのです」


「本気でやりあうのが怖いからか?先生

あんたは俺の憧れなんだ

あんたが一番凄い学園長と称えられたりするのは俺の幸せであり、誇りなんだ」


しばらく沈黙した後、千は自らのタブレットを操作して画面をタッチした

学園長室のモニターに五都校戦参加表明の一覧に闡明学園が陽明、有明の下に掲示される

その様子を見て、満面の笑みを見せる闡明学園普通科三年生、瀬尾立波

城屋誠の従兄弟で誠のライバル、彼の戦闘スタイルは誠と同じでその体格をいかした喧嘩のようななんでもありの戦い

ただ、立波の場合は彼の彼女である草津天音くさつあまねと一心同体を掲げて戦うというスタイルがある

学園内ではそれが知りわたっているものの五校戦ではそのスタイルを知らない人間を相手にする

その為、彼は外に出て喧嘩などをするときは決して天音と一心同体では戦わないのだ


「ですがあまりやりすぎには注意してくださいね

私は勝利よりも貴方たちの無事を祈っています」


今にも泣きそうな顔で千は立波を見つめた

戦いというものが好きでは無い千にとってはただのと言ってはなんだが無益な争いではない

国もこの五校都戦については理解している為、補助金と賞金も設けられている

しかし、異論を唱える人間も多く、理解されない事も多い為、近年では廃止も検討されていた

だが掌を返す様に政府が今年は五都校戦を行うものとして発表したのだ


「そうだな!見ていてくれよ先生!」


ニコッと笑って学園長室の扉から出ていく立波を見て千は笑みを浮かべた

心配の反面、彼女も自分の教え子たちの奮闘する姿を見たいと心から願っているのだ


「ジャンヌ・・・貴方と戦う事もあるのでしょうか・・・」


沈黙と共にそう呟いて千は椅子に座ったままひっそりと目を閉じた




ーーーー大阪  菱明りょうめい学園ーーーー




大阪府大阪市に健在している公立菱明学園、この学園にはわずか一科の魔法科しか存在しない

全国に点在する五校の学園の中で唯一の一科の菱明学園、学園長は高場亮二たかばりょうじ今日は学園に姿を見せていない

この学園にだけ存在する生徒の機関がある

学園長は中々、この学園の学園長席にとどまらずに旅ばかりしている為、変わりに学園長不在時に活躍するフォーカードという機関がある

全員が身寄りがない児童養護施設出身であり

亮二学園長の養子になった四人の少年少女のみで構成された

この菱明学園にだけ存在する機関

学園長と同じ権限を持ち、学校を動かす力を持つ


「学園長もおらんのにホンマ・・・」


学園長専用のタブレットを弄りながら五校戦の企画書を眺める目元まで隠れる様に頭の後ろで結ばれたバンダナをつけた青年

口元しか見えないがその口元を見れば顔全体を窺わずとも嬉々としているのが目にとれる

彼の背中には三又に分かれた紫色の槍が背負われていてその槍からはまがまがしい気が放たれている

そんな嬉々としている彼を見つめる三人組の青年と女性


「ねぇジョーカー、それに参加するの?学園長なら今日もどこかをほっつき歩いてると思うのだけれど」


金髪ロングヘアのへそを出し、さらしを巻いただけにも見える上半身、布を巻いただけにしか見えない下半身で魅惑的な服装をした女性が

ジョーカーに話しかけた

ジョーカーにとっては見慣れている服装なのか彼女の服装については何も言わない


「そうやなぁ・・・

面白そうな奴は世界中におるかもしれんが今回の五都校戦はもっと面白いと思うでぇ!?

学園長の指示や了承なんて得なくてもあの人は受ける筈や

そもそも・・・こんな面白いイベント、クイーンだけじゃなく

ジャック!キングだって出たいやろ!?」


クイーンの両脇にいたやや小柄だが銀色の甲冑を身にまとい腰に脇差を携えた少年と大柄で金色の甲冑を身にまといその身に余る大斧を背負った青年に向かってジョーカーは話しかけた

甲冑の音と共に二人が縦に首を振ったのを確認するとジョーカーはタブレットを弄りながら菱明学園の五都校戦参加表明の用紙のデータを送信した


「まぁ大丈夫やろ

よっぽどの事が無い限りこの一枚岩の菱明を倒せる事はあらへんからなぁ

もしかしたら四人でも十分かもしれへんけどここは様子見って事で全校生徒に伝えとくわ」

そうジョーカーが言って手を振るとフォーカードの面々はその場から散り散りになり学園の各所へ急ぎ足で通達に向かった




ーーーー福岡 景明けいめい学園ーーーー




北九州に位置する福岡県に建てられた景明学園は普通科、魔法科、メイド科、希少生物科が存在する

普通科は一般的の普通科とほぼ変わらないが科学科や化学科が点在している

この学園の特徴はメイド科の存在であり、次世代の日本が誇る淑女の育成をコンセプトに毎年、日本全国から4000人以上ものメイド候補生を目指す少女が訪れている

ただそれは表向きのことでしかなく実際はメイドを目指す傍らSPとしても同時に機能できる多機能メイドの育成が図られている

丁寧という言葉では物足りないほどのお茶淹れから、戦場を華麗に舞う様な戦い方ができる様にこのメイド科は日々、メイドたちの育成に励んでいる

学園長は不在で大臣の前神臣まえがみじんが務めている

基本的に学園長の臣は顔を出さす本来の国会議員の職務を全うしているのだが本人は自分が学園長の代わりといった自覚は無く、基本的に一人の男子生徒に学校の全権限を任せている

その生徒の名は王土帝おうどみかど自己中心的で頑固な性格の持ち主、思った事をすぐに口走ってしまい

よくよくトラブルに巻き込まれることがある

しかし、彼は本物の王族の血を持つ者なのでそのプライドと態度の大きさは折り紙付きである

学園長室にどっしりと構えて机の上に足を乗せて組んでその斜め後ろに自身のメイドであろう候補生に見える少女が凛として立っていた

彼女の名前は錐咲花きりさきはな、メイド科の生徒会長を務めていて成績優秀、容姿端麗と学園の顔であり、メイド界を脅かすメイド候補生とされている

だが彼女は常に帝の傍に付き、就寝を共にした学園生活を送っている

景明学園の帝専用の居住スペースで二人で暮らしている

その為、花は良い意味でメイド界や学園の生徒たちから一目置かれている

その理由は帝の性格を見れば尚更理解できるだろう


「なぁ・・・錐咲きりさき


「なんでしょうか?帝様」


帝が花に椅子越しの問いかける


人と話すときは本来、人の顔を見るのが筋と言ったものだが帝にその概念は無く、メイドである花でさえも見下しているようであった

言わずとも花はそれを理解している為、それを口にはせず黙々と帝の返事を待った

帝はその時間を悠々と楽しんでいるようであった

それはまるで花の忍耐を窘めるような時間であった


「やはり表情一つ崩さないのだな

メイドという職業も中々にめんどくさいものなのだな」


一礼をすると花は無表情のまま直立不動、無口、無表情を続けた

感嘆とした態度を帝は笑みを浮かべながらわざと受け流した


「何を怒っている?」


「別に私は帝様に怒っているのではありません

帝様が勝利する事は前神大臣もご存知のはずです」


花が帝にそう言うと帝は一気に振り返り、纏っていたマントをここでもかと大きく振り切って花を抱きかかえた

満更でもない顔を浮かべ赤面する花とその花の反応を見て楽しんでいる帝

学校などには互いの交際否定しているものの2人はそうでなくともそうであるものに見えた


「相変わらず・・・お戯れがすぎますね・・・

人に見られたらどうするのでしょうか」


「花、我はお前を愛している

野望や野心がある女でも構わん

我はお前の様な女が大好きなのだ

許せ」


そう言って帝は花を優しく抱きしめた

花もそれに答えかける様に帝を優しく抱きしめる

メイドと主人の域を超えた主従関係


「大臣の為でもこの校の人間の為でもない

お前の為にもう一人の王を俺は倒す」


「帝様にならできますよ

だってあなたはこの世の王に、帝になる方ですものね」


花の微笑みを見て帝もその険しい表情からは滅多に見られないであろう笑顔を見せた


その笑顔を見て、花もほほ笑む

机の上に座り、花を自分に寄り添わせると帝は沈黙した

窓から外を見ると雷鳴をあげながら雨が土砂降りに降り続いている


「王は一人で十分だ

帝も二人とて必要ない

頂点とは常に一番であること

一番が二人いる事はあってはならない

優しい魔王、そんな理屈が通用するのかこの目で見てみたいのもある

しかしやはり帝も王も二つとて必要ない

頂点は・・・一時も一人であり孤独なものなのだからな」


そう言って扉を背にして花を抱き寄せた帝は静かにそのまま花の口元に自分の唇を合わせた

頂点になろうとする男にも伴侶となる女性は不可欠である

帝にとっては花がそれなのだろう

こういう出来事がある場合、女性は決まって悪い表情と呼ばれるものを浮かべることが多いのだが

花はそんな顔を見せず、ただただ頬を染め終始幸せそうな笑みを浮かべていた

テストなどであまり時間がなく更新が空いてしまいました・・・

申し訳ないです

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