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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々8
85/94

第77話:魔王と晴天

TINAMIというサイトにて魔法使いの大家族という作品もやっています!

そっちも見てもらえれば幸いです!



「はっ・・・!」


天候男が目を覚ますとそこはベットの上だった

天井は真っ白

そして布団も白く清潔感にあふれている

いつも天候男が寝ている場所とは全く違った

頭から顎にかけて包帯が巻かれている

天候男が休んでたであろう部屋は窓から光が差し込んでいた


「ここは・・・一体」


戸惑う天候男

ふと右手を置いたベットの真横に携えられた小さな机にあった時計を確認した

時刻は15時43分、天候男は自分が普通科の人間たちと戦ったのを思い出していた

朝早くからよくもあぁ戦ったなと男は恥ずかしそうに少しだけ微笑んでいた


「そうか俺は彼に負けたのか」


首を抑えながら天候男はゆっくりと体を起こした

首から上の激しい痛み

首から下の傷など気にすることができないくらいに

その痛みに耐えられず天候男は再びベットにもたれた


「いい掌底だったな・・・まだ頭がクラクラする」


鋳鶴君にくらわされた掌底を思い出しながら天候男は顎を擦った

恨みの感情は無い

今出せる自分の力を出し切った天候男に悔いはなかった


「男を診るのは俺の好みじゃないが

穂詰がいないのなら仕方ないというか・・・」


天候男の病室に真吾さんが扉にもたれながら天候男に話しかけました

俺が治療してやったぞ?そうなんだぞ?と言わんばかりに腕を組んでいます


「お前、どっから来た人間だ?

そもそも人間なのか?異能検査も勝手にさせてもらったが

人間成人男性の平均魔力何倍も魔力があったぞ?

この学校では当たり前かもしれないが

そんな人間離れしたお前が望月に敗れるなんてちゃんちゃらおかしいと思うが?」


天候男は真吾さんの言葉を聞いて手元のシーツをグッと強く握って噛みしめた


「俺には記憶が無い

すべてでは無く自分の事に関しての記憶が全くない

俺が今掴んでるのは布団のシーツ

俺はベッドの上に寝ていてさっきまで窓から差し込む光を見ていた

今日、普通科の人たちを言えばいいのか?

その人たちと会って戦った

俺はおおかた負けてここに運ばれたのだろう?」


「記憶が無い割には態度がでかい様な気がするが

まともな奴としてお前を見ておこう

お前は顎に大怪我を負ってここに運ばれた

望月って男は知ってるか?そいつに運ばれた顔面血まみれのお前を見てよく死んでないなと思ったよ

戦った男が優しい奴でよかったな

普通だったら死んでるような一撃の入れ方してるが

命に別条はなく今後も支障は全くでない

強いて言うなら血が少しだけ出過ぎたってところだな」


「そうか・・・敵の事も考える男に負けたのなら悔いは無い

貴方が先生なら俺の入学を許可していただきたい」


天候男は鋭いまなざしで真吾さんにそう言い放った

真吾さんはため息をつきながら頭を二、三度掻くと白衣のポケットの中から縦長の紙を取り出した

その紙を天候男は手に取ると記入欄を見た

そこには名前と住所、年齢と生年月日、性別などありとあらゆる個人調査書の様な記述欄が

男は頭に?を浮かべながらじっと紙を見つめている


「そういえば記憶が無いからそういったものは分からないのか・・・」


真吾さんが頭を抱えて悩んでいるとそこに一人の来訪者が


「藤原さんすみません遅れてしまって」


扉から入ってきたのは中央保健室病院の最年少保健医高橋凛たかはしりんさんでした

相変わらずの低身長+金髪ツインテです


「おぉ!これは凛ちゃんどうしたんだい?」


楽しそうに凛さんに近づく真吾さん

天候男と話をしていた時と違って表情が生気に満ち溢れてます


「もうすぐ鋳鶴が来るのでその方の心身に異常がないか調べてください」


ため息をつきながら真吾さんは男の胸に聴診器を当てて異常がないかを確認する

一応額にも手を当てて熱が無いかも確認する


「大丈夫なんともないよ」


そういうと凛さんも真吾さんと同様に検査をする

異常ないと診断され天候男と凛さんはお互いに笑顔を見せあう


「俺にはそんな笑顔見せなかったじゃねぇか!」


「とても可愛いと言えばいいのか?そんな女性だと思って」


「なんか鋳鶴と同じ匂いがする・・・」


凛さんが疑いの目で天候男を見る

その視線に気づいて天候男はニコッとほほ笑む


「なんか笑い方も似てるなぁ・・・」


凛さんの発言を聞いて真吾さんは血相を変えて凛さんに食って掛かった


「ちょっと待って!?

凛ちゃん!?意味深めいた発言が多いけどどうしたんだ!?

望月と君はどんな関係なの!?

あんまり可愛い女の子のプライベートには突っ込みたくないんだけど!」


「うーーーーん

まぁ一応・・・元カノみたいなもんですかね

優しい男だと思いますけどとてもヘタレですね」


凛さんが目を細めながらそう言うと真吾さんは顔を真っ青にしてその場に倒れた

そこにまた新たな来訪者が


「凛ー!!!!」


病室の扉から顔を出す凛さんと天候男


二人を確認すると鋳鶴君はこっちに向かって走ってくる


「凛さん?」


天候男が凛に声をかけたときにはもう遅かった

鋳鶴君が病室に入る直前でどこから取り出したのか釘バットで思いっきり鋳鶴君をぶったたいた

叫び声をあげながら鋳鶴君はふっとばされる


「凛・・・ありがとう」


「歩、あんたも大変だね」


鋳鶴君を追ってついてきた普通科の皆さんと一緒に入ってきた歩さんと凛さんは握手を交わす

女同士の友情とはこういうことかとその場に居て気絶している真吾さん以外は理解しました


「怪我は大丈夫かい?」


一平さんが普通科を代表するような形でベットに腰かけている天候男に挨拶をする

天候男はコクリと首を縦に振る


「普通科に入ってもらえる約束は~・・・?

どうかな・・・?」


「約束通り受けよう

しかしなんで君はそんなに低い姿勢なんだ?

俺が負けたならもっとどっしり偉そうに構えるべきなのに

この中で偉いなら尚更だ」


天候男の発言に一平さん以外の普通科の皆さんが笑い始めます

何がおかしいのかと天候男は首を傾げています


「風間会長はあまり高圧的な態度や偉そうな態度をとらないのです

そこがいいところの様な悪いようなところでもあります

でも彼はこの陽明学園の六科の中でもっとも自分の科の生徒に腰が低く

優しく守ってくれている会長だと思います」


「雛罌粟・・・」


「基本駄目会長ですけどね」


思いっきり滑り込むようにしてずっこける一平さん

それを目の当たりにして天候男も優しくほほ笑む


「そうか・・・戦っている時は全く気付かなかったが

皆いい目をしている

それで望月は・・・」


「こっ・・・ここっ・・・でーす・・・」


ボロボロになった鋳鶴君が扉の向こう側から出てきました

あれでも主人公なんですはい


「三十郎さんに言われた通り

普通科の力になる事を約束する

でも俺には名前が無いお前が望月鋳鶴、お前が俺に名前をつけてくれ」


天候男の発言に驚く一同

鋳鶴君は少しだけ悩むとポンっと手をついてまるで昔の漫画のひらめいたときのリアクションをした


「天候を操る男かぁ・・・

どこぞのニュースキャスターと違って天気は当てられそうだから・・・」


鋳鶴君は電源のついてないテレビを見てほほ笑んだ


「ウェザー・・・ウェザー・フォウ・キャスター!

そうウェザー・フォウ・キャスター!

それが君の名前だよ!

見たところ日本人ではなさそうだしね

まぁ単純に気象予報士って名前かなぁ・・・

これでよければ!」


「いい名前・・・だと思う

じゃあみんなは俺のことをウェザーかキャスターと呼んでくれ」


ウェザーさんはそういうと普通科の皆さんに手を差し出した

最初に手を差し出したのは誠さん


「俺は城屋誠

さっきは敵だったから殴ってちまったけど腹は大丈夫か?」


「誠か良いパンチだったこれからお前が味方だと心強く思えるよ」


熱く握手を交わし誠さんは後ろに下がる次に出てきたのは荒神さん


「俺の名前は荒神麗花

俺のの拳をあの距離で回避できる人間はなかなかいない

魔法だけじゃなくて反射神経も鋭いなんてなかなかすごい奴なんだな」


「貴方は男らしい女の子なんだな

そんな女の子も嫌いじゃないがもう少しおとなしくしていた方が思い人も安心すると思うぞ?」


ウェザーさんの発言に麗花さんが赤面する

赤面した麗花さんを見ウェザーさんは影太君を流し見した


「キャスターさん?ウェザーさん?鈴村詠歌と言います!よろしくお願いします!」


赤面して固まっていた麗花さんをどかして詠歌さんがウェザーさんに話しかけました


「君は・・・防御魔法を使っていたね

俺の魔法を受け止める防御力は凄まじいものだ

尊敬するよ

手は大丈夫か?」


「大丈夫ですよ!それよりもウェザーさん!早く普通科に来てくださいね!」


自分の手を擦りながら詠歌さんは後ろに下がる


「赤神桧人、あんたに最初に火炎魔法をぶつけた奴だ」


「普通科と言われる六科の中で最も弱い場所と聞いていたが


君の様にあれほど膨大な魔法を使える人間もいるんだなと俺は実感させられた」


熱い握手を交わす二人

どちらも引けをとらないほど鋭い目をしています


「土村影太・・・よろしく頼む・・・」


「手品の様な現れ方をしてくれたな

とても面白く斬新な魔法だと思ったよ」


握手を交わし即座に後ろに下がる影太君

いつもの移動速度より早いですね

いわゆるコミュ障というものなのでしょうか・・・


「私の名前は三河歩、この学校の風紀委員をやっている

これからは味方ならよろしく頼む」


「とても生真面目で優しい人なのか見てるだけで君の性格が分かるというか・・・

気分を悪くしたらすまない」


「いや構わないこれからよろしく頼む」


サッと握手を交わす歩さんとウェザーさん

歩さんが後ろに下がると今度はにやにやしながらウェザーさんに近づく駄眼鏡とその隣に雛罌粟さん


「僕の名前は風間一平だよ?

一応、普通科の会長をやらせてもらっている?といえばいいのかな?

ここで一番偉い人かな?」


「それは過言ですね

ウェザーさんとの戦いではほぼ役立たずだったわけですし

それでも前線を維持していてくれたのは称賛に値します

私の名前は雛罌粟涼子

この駄眼鏡の秘書をやらせていただいています」


「どちらが上司かわからないな・・・

だが風間会長が一番偉いのならあなたにも従うべきなのだろう

自分が真に従うのは彼だと思うがな」


瓦礫を押しのけて出てきた鋳鶴君を指さしてウェザーさんは微笑んだ

鋳鶴君もその微笑みを見て思わず微笑む


「僕の名前は望月鋳鶴」


「鋳鶴、君の事は聞かなくても分かる

俺は君の命令で動き

君のために戦おうかと思う

三十郎さんと約束させられたしそれに名前ももらったしな」


「いやいやいやいや!僕は大したことないから!

それよりも早く傷を治してね

僕だけじゃなく皆の言うことも聞いてほしかったりするし

君のその魔法ならたくさんの人を救う事だってできそうだしね」


「そう言ってもらえるとありがたい

それじゃあ生徒登録?というものを済ませてくる」


「それじゃあ学園長室に行くぞ

ついてこい」


真吾さんは起き上がるとウェザーさんの手を取り連れて行った

いろんな意味で男だらけの部屋が耐えられなかったのでしょう

いそいそとウェザーさんを連れて行ってしまいました


「それじゃあ僕たちも生徒会室に行きますか」


そう言って普通科の皆さんはその場から立ち去ろうとしましたが

鋳鶴君だけが凛さんに肩を掴まれました


「りっ凛・・・?」


「あんたも私の攻撃だけじゃなくて少なからず怪我してるでしょうが!

ちょっと残っていきなさい」


「えっでも」


「でもじゃないの!風紀委員さんが心配するでしょうが!」


「なっ!凛!私は鋳鶴など気にしてはいない!」


そう言うと歩さん以外の普通科の皆さんはにやにやしながらその場を去った


「手とか凍傷を起こしてるじゃないの」


ぶつぶつ言いながら凛さんが鋳鶴君の手に包帯を巻いていく

歩さんはそれを隣で見つめる


「全くいっつも怪我するんだから

怪我せずに戦うことはできないわけ?」


「そっ!それは無理だよ!双方必死なわけだし!」


「あんたには帰る場所が今はあるんだから

沙綾や私たちを振り回しといて死んだりしたら殺すわよ?」


「死んだら殺されないんだけど・・・」


涙目になりながら自分の手に包帯を巻いている凛さんを見て

鋳鶴君はすでに巻き終わっている右手で凛さんの小さな頭を撫でた

歩さんはむすっとしながら二人の様子を見ている


「刺青って言えばいいの・・・?広がってる」


鋳鶴君の手を見て凛さんはその手をぎゅっと握る

歩さんのしかめっ面がさらにひどい事になっています

いろんな意味で修羅場ですね


「そうだね・・・

何かが近づいて来てる気がするしさ

でも死なないようには務めるつもりだよ

こんなに立派な医師と大切な人がいるからね」


「そういうキザっぽい事言わないの!」


凛さんは鋳鶴君の左手の包帯を巻き終わると

そう言って鋳鶴君の手を力強く叩いた


「痛いっ!痛いよ!」


「ほら!とっとと行く!」


凛さんが歩と鋳鶴君を病室の外に追いやる


「歩もしっかりしてね!

それじゃあ私は仕事に戻るからまたね!」


そう言い残して凛さんはその場を後にした

歩さんの心の中には何か心残りが残ったものの

鋳鶴君と一緒にいつも通りに帰宅する事に決めた


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