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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々8
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第76話:魔王と四皇と英雄



「ふん!ふん!」


木々が生い茂る森の中

三十郎さんが泉の前で一人であまりにも大きな大剣を素振りしています

その身の丈にはあまりにも合わない大木の様な大剣を

年齢と風貌には似合わないほど隆々とした筋肉

ボディビルダー顔負けの筋肉です


「まだ戦うんですか?お義父さん」


霧谷さんが三十郎さんの背後にあった大木からひょっこり顔を出す

自分のお義父さんの前ともなると霧谷さんも笑いながら話したりはしません


「わしはまだやらねばならん事があるんでな

鋳鶴を・・・孫を斬りたくはない・・・

その為でもある」


「お義父さん・・・」


「わしは・・・生き残りすぎた

そして周りの人間も・・・わしの為に死に過ぎた

もうすぐきゃつが帰ってくるかもしれん

それを阻止するのもわしの役目

一人でなんとかなるとは思わんがこれはけじめじゃ

娘や君、鋳鶴たちの為にもな」


その言葉を三十郎さんの背中が物語る

傷だらけの背中、そして大剣の刃こぼれの数

これまでの人生を物語るような武器と背中

霧谷さんは身震いしていた

雅さんと戦う時でさえしない身震いをその背中と大剣から感じ取っていた


「お義父さん・・・!」


「んん?どうしたんだね?霧谷君」


今までに感じた事のない身震い

誰よりも強いとしか言われたことのない男の身震い

かつて戦った者と同じ様なオーラ

絶対的かつ圧倒的な対峙しただけで勝つことは不可能と思わせることができる

人でないものなら一人と数えるならおかしいが霧谷さんはそれを知っている

それを今、目の前の人間がそれを放っている


「折り入ってお願いがあるんです」


「なんじゃね?君の言うことなら耳をかすぞ?」


「僕との手合せを願いたい」


それは心からの願い

笑いも冗談も一切無い

ただの一人の男としての挑戦


「そうか・・・

別にいいじゃろう

わしも君と一度だけでも手合せしたいと思っていたよ」


そう言って三十郎さんは大剣を両手で持ち霧谷さんに向かってそのの切っ先を向けた

霧谷さんは一度だけ礼をするとそのまま三十郎さんに向けて右手をかざし光の光線を放った




ーーーー公園ーーーー




公園では普通科の皆さんと天候男が戦っていました

しかし有利なのはどうやら天候男の模様


「風の鎧が強すぎる・・・

私の回復と盾が間に合わない・・・」


詠歌さんが両手から血を流しながらもまだ戦う皆の為に防御魔法を必死に展開しています

それも虚しく天候男の風はその盾を切り裂き、目の前の仲間も切り裂く

詠歌さんの盾は攻撃から身を守る魔法の盾

確かにあらゆる攻撃に耐えられるように日々、詠歌さんも鍛錬されているんですが

天候男のは生み出された風でなく魔力で自然の力をさらに強くした形の魔法

魔法で生み出す類の風はまだ防ぐのは簡単です

ですが自然の風は魔法の盾では防ぎにくいのです

それほどまでに自然の力と天候男の魔法は強力なのです


「手詰まりだな」


全身傷だらけの城屋さんが涼子さんに問いかけます

涼子さんも傷だらけですか女性陣の体は風間さんのマントが少なからず守っています

だから男性陣よりは軽傷です


「城やん?

やっぱり難しいよね?

土村君も赤神君も男性陣はもうそろそろきつくないかい?」


「そんな事はないっすよ・・・

影太は分からないですけど」


桧人君の声を聞いて大の字で倒れていた影太君がゆっくりと立ち上がる

それを見て桧人君がやれやれと頭を掻く


「魔王科に行った馬鹿に助けてもらうわけにはいかない・・・

それに・・・この男を倒さないと・・・爆発する所が見られない・・・」


「まだ最後の一人は来ないのか

いい加減終わらせようかと思っている

もしかしたらいないのかもしれないからな」


天候男が風力をさらに上げる

公園に落ちていたゴミやチリが一気に巻き上げられる

そして男を中心に公園を覆う竜巻が完成された


「防御魔法も意味を成さないレベルの魔法なんて・・・」


詠歌さんがあまりの竜巻の規模に戦意を完全に喪失しています

そんな詠歌さんを桧人君がそっと手をつないで引き寄せます

全員が息を飲んで竜巻を見る中


「これをキュッと締めれば・・・

纏めて倒せるな」


天候男が右手を広げゆっくりと閉じてそれと同時に竜巻の規模も狭まっていく

竜巻の中では普通科の皆さんが竜巻を正面に見て円陣を組んでいます

残りの一人が駆けつけてくれるのを信じながら


「さて・・・あっ三十郎さんに言われた通り加減をしないと

俺が怒られてっ・・・!」


男は空から何かが降ってくるのを感じ取ってその場から一気にバックステップで距離をとる

それから数秒後、紅色の目、銀髪の髪そして借り物の聖職者が纏うはずの祭服

そして足には魔王の証である蒼い炎が出ている


「お前が最後の一人

そして三十郎さんのお孫さんか」


「じいちゃんのことを知ってるんですか!?

うちの祖父がいつも迷惑をかけていませんか!?」


登場時とは一変

急に腰が低くなる鋳鶴君を見て天候男も構えを解いてしまいます

そして竜巻も元の範囲に戻っていきます


「三十郎さんは本当にすごい人だよ

俺は心から尊敬しているし

一人の祖父としても素晴らしい方だと思う

そのお孫さんを見たが拍子抜けしちまったよ」


「そうですか・・・じゃあちょっとだけがんばります!」


その言葉とは裏腹に鋳鶴君は足の炎を爆発させ

男が反応する前に

魔法陣を形成される前に右頬に右手で拳をお見舞いする

反応すらできずに天候男は吹き飛ばされ公園のジャングルジムに叩き付けられる


「かっ・・・!」


次の手を考え付く前に鋳鶴君はさらに足の炎を爆発させて再び瞬時に今度は天候男の腹に蹴りを入れる

うめき声をあげる間もなく鋳鶴君はさらに炎を浴びせる

しかし天候男は炎を浴びせられる前に風の鎧を纏っていた


「これが・・・ちょっとだけ頑張る・・・かよ・・・!」


口から血を流しながらフラフラな足で天候男は立ち上がる

頭からも血が出ていて相当な出血量が目に見えます

たった鋳鶴君の三回の攻撃で天候男は窮地に立たされています

八人を赤子同然に扱っていた彼がこうも鋳鶴君に子供扱い


「これが・・・魔王ってやつか・・・!」


「違いますよ!

ただ僕は男性相手には本気で戦えるんですけど女性が相手なことばかりで・・・

でも見たところあなたの魔法は発動に時間がかかっていますよね

それを考えて攻撃すればなんら問題は無い筈です

たまたま僕以外の八人はあなたの魔法への耐性や対処の仕方をとれなかっただけ

でも虹野瀬や寿の魔法を見ていたらそんな対処を思いつくもんですよ!」




ーーーー魔法科 虹野瀬の部屋ーーーー




「くちゅん!」


「あら寿

風でもひいたの?」


「違いますわ!

きっと誰かがわたくしの噂話をしているんですわ!

鋳鶴様がきっと・・・」


それはないでしょうと言いたい気持ちよりも虹野瀬さんは自分の喉の渇きを潤すことを優先して

目の前に置いてあったいれたての紅茶を唯一の窓から見える景色を見ながらゆっくりとすすった




ーーーー公園ーーーー




「凄い観察眼なんだな・・・

三十郎さんもだが・・・お前はもっと凄いと思うぞ・・・

だが・・・観察眼だけだがなっ!!!!」


鋳鶴君がふっとばしていた天候男は蜃気楼で作った偽物

ですがそれでも焦らず慌てず鋳鶴君は鼻をきかせて天候男の場所を瞬時に読んだ

そしてすかさず天候男がいるであろう場所に向かって炎を放つ


「風で炎が消えない!?」


「特別な炎だからね

この炎は試した事はないけど水中でも燃えると思うんだ」


炎を放った先には天候男が

そう言って鋳鶴は炎の火力を上げる

天候男は衣服に燃え移らせないためにも炎を風で寄せ付けない風に切り替えた

それが鋳鶴君が仕掛けた罠だとも知らずに

天候男はその場から動くのを止めた

なぜならそれが一番の良策だと思ったからだ

だがその良策は望月鋳鶴には読まれていた


「一つに固定するのはまだ難しいみたいだね

本当に君は素晴らしい魔法を使う人だ!

今すぐ普通科に欲しい人材だよ!」


自分を取り巻く風の外から鋳鶴君の声が響く

天候男はその声に耳をかそうともしない

ただ集中、ただただ集中

まだ鋳鶴君以外の普通科のメンバーは竜巻の中に閉じ込めてある

それを解除してしまっては敵を増やすだけ


「だからここで君を倒して普通科に入ってもらうよ!」


鋳鶴君のその言葉が集中していた天候男に火をつけた

ギュッと拳を握りしめてニヤッと不敵な笑みを浮かべる天候男

その目を風の外から見た鋳鶴君もニヤッと笑う


「三十郎さんに言われたよ・・・

君の仲間も君も殺すなって

そして俺が負けたら名無しの俺に君が名前をつけるんだ

俺には名前がない

記憶は確かに存在している

花の名前、車の種類、魔法の使い方

ただ俺は俺に関するすべての物事を覚えていない

家族がいるのかいないのか

友達がいたのかいないのか

でもそんな俺にも強い人間と戦うとウキウキするこの感情は忘れていなかった」


天候男はそう言うと

再び風の鎧を纏った

先ほどよりも今までよりも厳重で堅牢な鎧を瞬時に身にまとった

鋳鶴君は天候男の集中力と底知れぬ魔力にただただ驚いていた


「君なら・・・

軍隊の人間とは違う

俺の今の本気をぶつけても倒れない気がする

仲間にしたいのならやっぱり俺より強い人間じゃないとな」


「そうだね!

じゃあ僕に本気の魔法をぶつけてほしい

君の魔力を受け切れるかわからないけど」


そう言って鋳鶴君は右手を掲げ魔法陣を展開した

すると手甲を取り出してそれを自分の両腕にしっかりと紐を結んで装備した

手甲は相変わらず妖しく艶めかしく光沢を帯びている


「立派な手甲だな・・・」


「褒めてくれてありがとう」


天候男は風の鎧を纏ったまま鋳鶴君に向かって走る

それを待ちわびるかのようにその場で手甲を合わせ鋳鶴君は防御の構えをとる

天候男は鋳鶴君の目の前まで来ると思いっきりジャンプした

頭の上を飛んで鋳鶴君の背後を取る

しかし鋳鶴君はそれに冷静に対処して天候男に向かって炎を放った


「蜃気楼っ!!!!!」


天候男が作りだしていたのは蜃気楼による錯視だった

次に現れたのは鋳鶴君の胸元、風の鎧は解除している

そして手にはとてつもなく鋭利な氷の剣

鋳鶴君はその剣を避けようとせず空いていた左手で天候男の攻撃をいなそうとするが

それすらも蜃気楼触れることはできず実体は無い


「くらえ!ゼロ距離!アイスWランスっ!!!!!」


天候男が振り返った鋳鶴君の後ろから両手に鋭利な氷柱を抱えて現れた

もうかわすような距離はない

天候男はそう思った

だが鋳鶴君の方が一枚も二枚も近接戦闘では上手なのを天候男は実感する

素手で触っては火傷を負いかねないほど温度の低い氷柱の腹を手甲を使い滑らせ受け流し

瞬時にもう片方の氷柱で鋳鶴君を斬ろうとする天候男だったが

それもまた鋳鶴君のもう片方の手甲がはじき返す

この時、天候男は集中力が完全に切れていたのを自身で実感していた

急いで至近距離で氷の盾を作ろうとしたが時すでに遅し

両手に抱えた氷柱を受け流した鋳鶴君が自分の胸元につかさず入ってくる

体を後ろにそらすも鋳鶴君は落ち着いてその動きに合わせて半歩前進する

右手を曲げて構え、天候男の反撃を待たず

鋳鶴君の掌底が文句の付け様のないぐらい完璧に天候男の顎を打ち抜いた

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