第75話:魔王と紳士(自称)に聖職者
更新が遅れてしまいました・・・
次回もだいぶ遅れそうです・・・
「随分楽しそうだな
鋳鶴の笑顔を見れて私はとてもうれしいぞ」
結さんが壇上で笑顔を浮かべながら立っている鋳鶴君に結さんが話しかけた
いつも接する時とは違い作り笑顔でない事が結さんも見て取れる
「魔王科っていい子ばっかりなんだね
教えてるこっちも楽しいし嬉しくなる
結姉の教育かな・・・?
ちゃんと行き届いて安心したよ」
「だろう?
だが私の愛弟であるお前もそうとう上手な指導法だな
正直、嫉妬してしまったぞ
鋳鶴が魔王科に来たら私の立場がなくなってしまうからな
料理に興味が無いと言っていたライアでさえ
お前の話を聞いてちゃんとメモをとっていたぞ?」
「いゃっ・・・将軍それはですね・・・
あまりにも料理に興味が無かったのですが・・・
弟君の話を聞いていてものすごく興味が湧いてしまいまして・・・」
嬉しそうに鼻息が荒くなっているライアさん
メモにはぎっしりと鋳鶴君の話の内容が入っています
戦い以外の物事でライアさんがメモを取るのは珍しいそうです
それほどに鋳鶴君の料理講座はためになる話だったのでしょう
「食事を作ってくれるお姉さん方も来ていたしな
それほどに我が愛弟の話は興味深かっただろう」
結さんは誇らしげに腕を組みながらうなずいていた
その隣では鋳鶴君が制服を脱いで割烹着に着替えてました
「今日の魔王科の生徒さんのご飯は僕に任せて!
結姉の為じゃなくて真面目にお話を聞いてくれた皆さんの為だから
そこは勘違いしちゃ駄目だよ?」
「ふっ・・・素直じゃないな
だが魔王科生徒会長としてお礼を言わねばならんな
ありがとう」
結さんは深々と鋳鶴君に向かって頭を下げた
自分に初めて頭を下げる結さんを見て鋳鶴君は驚愕しているんですが
結さんの礼を見て明乃さんや魔王科生徒のみなさんまで驚愕しています
鋳鶴君が自分の礼を見て何も言わないので気になり結さんは頭をあげました
そこには自分を取り囲む大口を開けた生徒たちと驚いて口に手を当てている親友、そして弟
「なんだ?私が頭を下げる事がそんなにおかしいか?」
首を傾げながら結さんはその場の全員に問いかけました
「いえ・・・?あまりにもこんなこともあるのね・・・?」
「私はただ愛弟にお礼を言っただけだが?」
「将軍が礼をするところを私は初めて見たぞ!?
ですがとても凛々しく堂々としておられました!」
「ふむ・・・そんなにおかしっ・・・」
結さんが皆を眺めているといきなり服の袖を引っ張られて体制を崩されました
そして暖かく胸は無い体が結さんを抱き寄せました
抱きしめてきた相手を見ようともわかる結さんですが間近でその人の顔を見たかっため
体をうねらせ顔を出しました
「鋳鶴・・・?」
そこには涙を流しながらも笑っている鋳鶴君がいました
泣いてはいますがとても嬉しそうにしています
「ううん・・・なんでも・・・ないよ・・・」
「お前に涙は似合わん・・・
人を喜ばせる事ばかりしてきたせいかちゃんと優しく育ってくれたな・・・
私は鋳鶴、お前の姉で誇らしいぞ」
「ありがとね!
さて調理場に行くか!」
「それが終わったら私の部・・・」
「それは無理だから」
きっぱりと鋳鶴君はそう行って厨房に走って行った
結さんは断られたのにも関わらず微笑しています
そんな結さんの顔を見て隣でにやにやしている親友と嫉妬している部下と弟に嫉妬している部下
「世の中、思いどおりにはならないものね結」
「そうだな・・・だがそれがいいんだ」
「そうね
望月君にあなた変えられているわね・・・」
「それもまたいいだろう?
私は愛弟がこの世の何よりも好きだが
愛弟の笑顔がとくに大好きだ
それはこれからもゆるぎない事の一つだろう
さて!明乃!ライア!シャルア!
私たちも厨房に鋳鶴の調理の手伝いに行くぞ!」
ふてくされているシャルアさんと
顔が引きつっているライアさん
「ラッ・・・ライア?ほら?将軍の命令だよ・・・?行こう?」
「そっそうだな・・・
うむいっっ行こう」
足取りが怪しいもののちゃんと厨房にまっすぐ向かっていくシャルアさんとライアさんでした
ーーーー公園ーーーー
「やっと頭が働いてきたよ?
雛罌粟、みんなに連絡はとれるかい?」
一平さんが天候男の攻撃を防ぎながら雛罌粟さんに話しかけた
雛罌粟さんはこのうえなくうるさい周囲にイライラしながら一平さんの話を聞きとろうとしていた
「よく聞こえませんでしたがとりあえず聞こえたところだけ掻い摘んで作戦を組み立てます
それまで私を守っていてください」
一平さんが首を一度だけ縦に振るとマントから抜け出して男に向かって走り出した
「おかしい・・・なぜマントから出てきた?
諦めてはいないようだが・・・」
男は自分の手を胸の前まで持ってくると空気中の一定の水分を凍らせて
先端が鋭利で巨大な氷柱を作り出した
大きさは男の身長の二倍ほどでしょう
空気中の水分を決まった量だけ凍らせる
これほどの魔法を使えるのは大人でも特殊な訓練を受けた魔術師のみでしょう
明乃さんも氷柱を出したことはありますがあれほど巨大なものとなると手練れ相手だとかわされたり
破られてしまうことが多いのです
それでも鋳鶴君ごと冷凍した氷柱を出す明乃さんの魔力も末恐ろしいものです
「それでも突破してこようとするのなら・・・」
男は手を振り上げて氷柱を放とうと一平さんを見た時でした
「赤神君!今です!」
「了解っ!」
涼子さんの号令と共に桧人君が男の後方の公園の柵を飛び越えて男に向かってとびかかる
その手には火炎魔法の火の玉を手に持つようにして構え、近距離で男に一撃お見舞いしてやろうと雄叫びをあげています
「その手もはっきりと読めているぞ!」
男は桧人君の攻撃を予測していたのか後方に氷の壁を瞬時で作り出し後方の守りを固めます
そんなのはお構いなしに桧人君はかわそうとせずそのまま氷の壁に向かって火球を至近距離で放ちます
「くっ・・・蒸気を利用した煙幕の様なものか!」
火球は氷の壁に破壊はできなかったもののその壁にヒビを入れ水蒸気を発生させた
男の周りには煙幕代わりの水蒸気
再び氷の壁を作ろうと集中していた時
男の眼前には目の前の敵を今にも殴らんとする構えをし
気迫を放つスリットの入ったロングスカートに腰まで伸びた茶髪の髪
そしてその拳にはボクシングのグローブ
「なっ!この蒸気に乗じて!」
「決めるぜ・・・!」
荒神さんが男の顔を捉え全力の右ストレートを顔面に放つ
そこからの怒涛のラッシュ、しかし人間に当たった感触はそこには無かった
「蜃気楼!」
男は荒神さんの後ろに現れた
急ぎ氷柱を作り荒神さんを止めようと至近距離で飛ばす
「女子に手を挙げるか・・・上等・・・」
荒神さんの影から突然、影太君が現れ小刀で男を切り付ける
驚きとともに男は氷柱を解除してしまう
氷の壁も視認は出来ないが音を立てて崩れ
降りしきっていた雹と雷はもう止んでいた
「くっ!」
そして更に
男は気配を感じて水蒸気の中、次の影太君に切られた手を抑えながら魔法を練るために集中しようとするが
その水蒸気の中を切り裂いて
黒髪ポニーテールに木刀を持った少女が男の顔面に面を入れる
しかし男は寸前で氷の面を作って歩さんの攻撃から身を守っていました
「危なかった
全員纏めてこられていたら俺は負けていたかもしれない
だがお前らは一人ずつかかってきた
だから被害は最小限に抑えられた
俺は負けん!
もっと集中しなければ・・・」
「全部読まれていたようだね?」
「どうしましょうか大したダメージを与えられず戦力を公開してしまいましたね」
「そんな事言ってる場合じゃないぞ!?」
「確かに・・・かなり・・・マズい・・・」
「もっかいやってみるしかねぇな」
「かといってこの戦力で切り開けるかどうか」
半諦め状態の普通科の皆さん
しかし二人ばかし忘れてはいませんかね?
「これで全員なら打つ手はできた
次はこうっ・・・はぁっ・・・!!!!!」
男が悠長に話していると
一人の左肩に女の子を背負って金髪の髪を靡かせ突如現れた
そしてその巨体から放たれるパンチを男の鳩尾に的確に叩き込んだ
あまりの衝撃に男は吹き飛ばされ公園のベンチの隣にある木に叩き付けられる
「集中しているところ悪かったな
真打二人のお出ましだぜ?」
「おっ下ろしてください!
パンツが見えちゃいますって!」
「あっすまねぇ」
城屋さんが慌てて詠歌さんを肩から下ろす
男は木に打ち付けられたまま動こうとしない
「なんだまだ七割も出してないぜ?
あと詠歌、みんなの回復と防御を任せる」
「私に命令できるのは桧人だけよ・・・?
気安く名前を呼ばないで・・・・!」
とんでもない殺気を放っている詠歌さん
城屋さんもそれを目の当たりにして凍り付いています
「相変わらず・・・惚れられてるな・・・」
「俺はあいつが怖くてたまらねぇよ・・・」
仕方ないですね
詠歌さんですもんね
花嫁修業ではなくヤンデレ修行でもしてそうですはい
「まだいたのか
鎧を作るのが間に合わなかったら骨はやられていたな・・・
それでも痣ができるとは
お前は人間なのか?」
男もさすがにこれには腹を抑えるがそのもたつく足で立ち上がる
「俺は人間だぜ?
ただちょっと他人より運動神経抜群なだけだ」
「お前も面白い奴だ・・・
奇遇だな
俺もだだちょっと他人よりも魔力が膨大なだけだ」
男は笑いながら今度は空中に雲を発生させる
詠歌さんは男の動きに合わせて上空に大きな青緑色の防御魔法を発動した
それを読んでいたのか男は自分の周囲に突風を発生させる
「風の鎧」
まるで風を鎧の様に纏った男は今度は氷ではなく竜巻を発生させた
「氷は砕かれてしまう
しかし風なら絶対に砕かれたりはしない
風は防ぐしかない
受ければダメージをもらうだけだ」
「どうすればいいのかな?」
「自然現象を魔法で引き起こされたら会長の能力なんて赤子当然ですね」
「雛罌粟それは酷くない・・・?」
「私たちで切り開くしかないな」
歩さんがグッと前に出ます
「そうだな
風が相手でもなんとかなるだろ」
歩さんの隣に涼子さん
「俺たちならなんとかなるだろ
それにしても鋳鶴が来ないけども」
「体験学習とかなんとか・・・
魔王科に行っているらしい・・・
羨ま爆発しろ・・・」
「私は桧人がいればいいんだけどねっ!」
「とりあえずあいつを普通科に引きずり込めばいいんだろ?
一平は使えない
鋳鶴がいない
まぁ大丈夫だと思うけどな
細かい動きはあの野郎は苦手そうだしな」
詠歌さんは桧人君の右手に引っ付きながら
影太君は鋳鶴君への嫉妬の炎を燃やしながら
相手を殴る気しかない城屋さん
そして一人取り残された駄眼鏡
「あの・・・僕も~・・・?」
「「「「「「「「お前は黙って援護でもしてろ!!!!!」」」」」」」」
全員が一平さんに振り返ってただそう告げました
一平さんは瞳に涙を浮かべて体操座りで拗ねてしまいました
「軍隊の連中と違って団結力があるな
だが約束は俺を倒す事だ
まだ本命が来ていないのならこれぐらいで根は上げてられないな」
ーーーー魔王科調理場ーーーー
「そうそう酢の物に使う人参は短冊切りだよ」
普通科精鋭の皆さんが天候男と戦っている中
まだ魔王科の生徒さんたちに料理の作り方を指南していました
そんな鋳鶴君を熱い視線で見つめる聖職者が一人
「やぁマルコそんなに彼を見つめてどうしたんだい?」
聖職者に一人の白衣の男性が声をかける
マルコが振り返るとそこには無精ひげを生やした長身で髪を遊ばせちゃってる男性がいました
「真吾でしたか・・・
望月君は素晴らしい生徒ですね
教師としても一人の人間としても尊敬しますね」
「だがこの花園には不必要だろう」
「そうか・・・貴方はジャパニーズ変態でしたか・・・」
くすくすと真吾さんは笑う
「恋愛に男は不必要だと思うんだ
俺はつくづくそう思う
だって男は醜いし汚いだろう?
そこを美しく洗練された美少女たちがきゃっきゃウフフしてたほうがいいだろう?
俺は純愛とかより百合やレズが好きだからな」
マルコさんがものすごく死んだ目で真吾さんを見ています
西洋人特有の青色の瞳が黒く淀んで見えるほど黒く見えます
「真吾は殺したほうが日本の未来が平和になりそうですね」
構えるマルコさん
真吾さんは構えたマルコさんを気にせず
女の子だけで調理をしている場所を見て涎を垂らしていた
「あっマルコさん!」
鋳鶴君がマルコさんに気付いてマルコさんお名前を呼ぶ
「やぁ望月君」
「なんだ知り合いだったのか」
「少し彼にお世話になりましてね」
マルコさんがニコッとほほ笑む
「お世話になったのはこっちのほうですよ!
ところでマルコさんはなぜここに・・・?
そしてどちら様ですか・・・?」
「私はここで聖教を教えています
毎朝祈りをささげたり生徒たちと奉仕活動をしているんですよ」
「俺の名前は藤原真吾
魔王科の保健医でお前のところのねぇちゃんの同級生だ
ここに勤務している理由は一つ
可愛い女の子が可愛い女の子ときゃっきゃっウフフしてるのを見るのが好きだからで
言っておくが俺は変態ではなく美少女限定同性愛鑑賞が好きなだけだ
断じて変態ではない」
「真吾・・・変態回避不能ですね」
マルコさんが頭を抱えながら真吾さんの肩をポンと叩きます
「百合も素敵ですけどやっぱり
女の子がきゃっきゃっうふふしている事よりも
自分に笑顔を見せてくれるのが好きですね!」
「なかなかやるじゃないか・・・」
「望月君の方が真吾より12割増しぐらい紳士ですね
同じ男として誇らしいです
真吾も立場は上にしても見習った方がいいですよ?」
マルコさんがいやらしい笑みを浮かべながら
真吾さんに諭す
しかし真吾さんは頑固一徹自分はただしいと意見を曲げません
「望月
お前を間違っているとは思いはしない
しかしやっぱり可愛い女の子の隣にいるべきは可愛い女の子なんだ
俺を含め男が隣にいるにはあまりに・・・アンバランスすぎる」
真吾さんは上から目線で鋳鶴君にものを言います
「真吾・・・望月君が正しいと思いますよ私は・・・」
マルコさんは真吾さんのお腹に一発、正拳突きを入れて首根っ子を掴むと
真吾さんを自分の肩に背負いました
あまりにも真吾さんに正拳突きを入れるときの目が怖すぎて鋳鶴君も少し萎縮しています
世界でも屈指の力量を持つマルコさん
目の前でその正拳突きを見せつけられた鋳鶴君
「そういえば望月君
普通科の生徒さんたちが集団でどこかに向かいましたよ?
制服だったら気にしないのですが
なにか特別なマントですか?
それを羽織っていました
何かあるかもしれないので連絡があるか確認してみては?」
マルコさんにそう促されて鋳鶴君は自分のズボンのポケットから生徒手帳を取り出す
「あっ電源切ってたんだ」
恐る恐る生徒手帳の携帯昨日を起動するとそこには大量の着信メールと着信履歴が
鋳鶴君の全身からまるで噴水の様に汗が噴き出しています
「まっ!マルコさん!皆さんに片付けやゴミ捨てをしっかりやるように伝えておいてください!
そこまでちゃんと説明しておきました!
指示を出してくれるだけでオッケーです!
それでは行ってきます!」
厨房の窓をいそいそと開いて外に出ようとする鋳鶴君
「望月君、待ってください」
マルコさんが鋳鶴君を呼び止めると自分が着ていた祭服仕様のジャケットを差し出した
「これを使ってください
春なのにも関わらずあちらの天気がおかしいです」
マルコさんが指さす先には一定の場所だけ天気が荒れています
吹雪きが発生して落雷が落ちています
「何かが起こっているのは間違いありません
この祭服は防寒具にもなりますしある程度魔法も防げます
何着もあるので返していただかなくても結構です」
「なんで僕にそこまで・・・?」
「真吾はもう死んでもいいぐらい罪はありますが
望月君はとてもいい人だと学校の皆さんから聞いています
それに今日の生徒に教えている楽しそうな望月君を見ていたら
本来聖職者は魔の者には加担してはならないのです
しかし君が魔王と呼ばれているのにも関わらず君に協力したいと思わされましてね・・・
頑張ってくださいね望月君」
マルコさんはニコッと笑うと真吾さんを再び背負い直し
食堂に向かった
鋳鶴君はマルコさんの背中を見てグッと祭服を握った
「マルコさんありがとう
さてと・・・皆が心配だ・・・」
鋳鶴君は祭服を羽織ると魔王の炎である蒼い炎を足に纏わせる
そしてジェット噴射の要領で自分の足の炎を爆発させ普通科のメンバーがいる公園に目掛けて飛び出した