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優しい魔王の疲れる日々  作者: n
優しい魔王の疲れる日々8
82/94

第74話:魔王と天候男

雨が降っている

土砂降りで

とても目も開けられないぐらい


「君かな?この天候の原因は?」


一平さんの声を聴いてこの激しい土砂降りの中

男は空を見上げてジャングルジムから渋々立ち上がった

男が見上げていた空は公園すべては覆っていたが

それ以上の場所を支配しようとはしていなかった

公園より外は今日の天気予報通りの晴れであった


「だったらどうしたんだというんだ?

お前は俺に会いに来た

そうだろう?

それ以外には何の用も無い筈だ

近所の人間か軍の人間くらいしか俺には会いに来ない」


皮肉交じりに男は一平さんに向かってそう言った


「そうといえばそうなのかな?

君はきっと魔法科では管理できないだろうし?

それに君は基礎魔法の類が出来ないだろうしね」


一平さんがそう言った時だった

男が手を振りかざし一平さんの頭上から雷を落とした

激しい轟音と衝撃が周囲を威圧し震わせる


「あぁ・・・俺は天候を変えるという事しかできない

人の傷を治すこともできなければ

空気を凍らせたり

火を灯すこともできない

ただこれだけ

生まれ持っているこの

天候を自由自在に変えるという事だけ

ただ・・・それだけで十分だ

俺には守るものもなければ失うものもない

寂しくはないそれが俺という存在であり

俺の個性というものだと思っている

家族がいてもとうに俺のことなど忘れているだろうしな」


「だったらそろそろそういう存在を作ってみたらどうだろう?

とてもいいと思うよ?自分の人生にも」


一平さんは男の落雷をマントで受け切っていた

そしてすかさずこの豪雨の中、男目掛けて一平さんは突っ切っていった


「何の策もないのか?

それで俺を倒そうとは・・・なめられたもんだ」


男が再び手を振りかざす

するとたちまち豪雨は豪雪に変わった

降りしきる雪、男の息も白くなり寒さを表している


「これでいいだろう?

後から探してやるから大丈夫だ

公園より外は今日の天気になってる

だがそうしているだけで

実際ここよりもかなり遠くの場所まで天気を変える事ができる」


豪雪を解いて曇り空から一気に晴天に変わる

公園に日差しが差し込み雪を照らして輝かせる

一平さんはどこに行ったのか男は確認せず

ジャングルジムから雪の山に足を付けた


「さすがにやりすぎたか・・・?

だが三十郎さんの話では彼も相当な手練れのはずだが・・・

まぁいい・・・雪に触れて確認してみるか」


「そうか

これが君の能力というか魔法なんだね?

とても面白くて個性が現れている素敵な魔法だね?

でもこれしか得意じゃないと見た

僕が雪に埋もれている間に風の魔法とかで僕を雪と一緒にどこかにふっとばせたはずじゃないかな?

炎魔法で僕を雪ごと焼き尽くしたり

君のその膨大な魔力があればそれぐらい可能だと思うんだけど?」


一平さんが男の真後ろに立っていた

とてもにこやかな笑みを浮かべて悠然と男の背後に立っていた


「公園は遊具以外はしっかりと雪で埋めたはず・・・!

ただ一つ分かった・・・

お前はとても面白いやつだということが分かった

それも他の連中が普通に使える魔法とは違って

逆に使えないとても面白い魔法が使えるんだな?

そうだろう?」


男の意見を聞くと

一平さんは声を高らかにあげて大笑いした

腹を抱えとても苦しそうにしている

瞳には笑いすぎて涙が浮かんでいる


「いやいや?

僕は普通の人間だよ?

普通で普通の高校生で普通科の普通の生徒会長だよ?」


「そうなのか・・・?

なんかお前が一般人に見えてきたぞ・・・」


そう言うと一平さんが男に手を差し伸べた

男は何かないか一平さんの様子を窺っている


「普通に僕の仲間にならないっっ・・・!?」


一平さんの口から大量の血が吐き出される

魔法の拒絶反応なのか鮮血のみが口から吐き出された


「そんなに仲間になりたく・・・ないんだね・・・?

とても固い決意が表れている・・・

こんなにも拒まれたのは久しぶりかな・・・?

血を吐いたのも久しぶりだよ・・・?」


「俺は今の人生に欠けているものなどない

食べ物は近所の人が分けてくれる

風呂も近くの銭湯で無料に入らせてもらえる

衣食住をこの魔法で働いて補っている

俺は居るだけでいい

他に存在理由などない

俺は俺だ

俺の人生

俺の自由だ

愚か者には協力しないことが俺のポリシーでありモットーだ」


「愚か者・・・?

まぁそういう考えもあるかもしれないね?

でも協力してほしいなぁ?

君がいてくれたほうが面白いんだけどなぁ?

面白い人たちしかいないよ?」


男は立ち上がって一平さんの差し伸べた手を振り払った


「そんなに仲間にしたいのなら・・・

俺を倒してみろ・・・!

話はそれからだ・・・

軍の人間でも俺と戦う時は尻尾を巻いて逃げて行ったがな」


「それはそれで余計に興味が湧いてきたかな?

久しぶりになかなか力を出さなきゃいけないらしい」


一平さんが身構えると男は再び手を振りかざし

こんどは巨大な雹を公園から遥か上空のそれから降らせた


「僕のマントは悪天候による災害から自分自身だけは普通に守れるよ?」


一平さんがそう言うと

マントが一平さんの周囲を包んで雹から一平さんを守った

伸縮自在なのでしょうか・・・とても便利なマントですよねぇ・・・


「君の天候を操る魔法を僕の力で防ぐのは無理みたいだね?

だったら僕の周りの物の存在定義をずらして防ぐとするよ?」


「本当に面白くて骨の折れる相手だ・・・

だがしかし、そこがとてもいところだな」


巨大な雹を上空から一平さん目掛けてぶつける様に指揮する男

彼の目はとても澄んでいて一平さんとの闘いをまるで楽しんでいるようです

雹を大分降らせると今度はとてつもない雷鳴が轟き辺りを轟音と稲光が包む

それでも一平さんはマントを縦の様にし、全身にくまなく纏って雷を防ぐ


「ふぅ・・・近づく事が出来ないかな・・・?

ただ自然現象を操る魔法なんだよね・・・?

だったら息切れも早いはずなんだけどまだかなぁ・・・?」


男は微笑みながら一平さんを見下すようにジャングルジムから見下ろしている

積もった雪の上にいるためあまり高低差はないのですが

彼の魔力と力の差

状況の差で一平さんにはどうしても彼が大きく見えてしまいます


「俺の魔法はこの魔法しか使えない

普通の人が初めて魔法を使う時、すさまじく体中の精神力や魔力はその魔法を使用するがために大量に消費する

だがそれは初めての事だからだ

慣れれば最初はどんな下級魔法を使用しても険しい顔をしていたのにそれが澄まし顔で出来るようになる

俺はこの魔法を使い慣れている

その為、魔力の消費も少なくすんでいるのだと思う

プロ野球選手が鋭く早い変化球を投げるのが最初に比べ練習すれば投げられるように

さっきも言ったろう?俺は一般人が使用できる魔法が全く使えない

要するにストレートが投げられない投手なんだ」


そういって男は自分の足元に転がっていた大粒の雹を拾った

男はその雹を一平さんに向かって振りかぶり全力で投げ込む

しかし、その攻撃も一平さんのマントによって防がれる

無限に降り注ぐ雹と雷の中、一平さんはマントの中で静かに考えを巡らせていた


「どうすればいい・・・?

相手は自然現象なんだよ・・・?

どうやって彼を倒すんだ・・・?

自然現象に逆らう事は人間には不可能なことだよね・・・?」


「手詰まりと言ったところだろうな

どうやら相性が最悪らしい

このままでは時間の問題だぞ?

俺の魔力が尽きるまでにその羽織で攻撃を防ぎ続けるか?」


一平さんはずっと考えていた

男の声など全く聞こえていない

精神を研ぎ澄まして謀を考えていた

この窮地をどう脱するか降りしきる大粒の雹

公園内でのみ落ち続ける雷


「どうすればいい・・・?

珍しく手詰まりだよね・・・?

優秀な将がいなければいい策はできないのか・・・?

こんな時にだれかに助けてもらいたいだなんて・・・

僕もまだまだ甘いのかなぁ・・・?」


「本当に仕方ない人ですね」


この雷鳴の中

一平さんの耳に声が響いた

それと同時にとてつもない銃声音とともに男が倒れる

銃声音とともに現れたのは長距離専用のロングライフルを携えた普通科会長の秘書

雛罌粟涼子さんでした

ゴーグルがあるのに眼鏡があるなんて邪魔じゃないんですかねぇ・・・


「ひっ・・・ひっ・・・雛罌粟ぃぃぃぃぃぃ!

珍しく策が考えられず手詰まりだったんだよぉ!

本当に・・・来てくれてありがとう・・・助かった・・・」


「珍しく疑問形じゃないんですね

本当に気持ち悪いくらい珍しくて素直になってますね

もうすぐほかの皆さんも来ます

ちゃんと会長としてのお仕事をしてください

この駄眼鏡」


「やっぱりいつもの雛罌粟だね?

それでこそ理想の秘書だと思うよ?

本当に・・・優秀な将が沢山いて僕は六科の中で一番幸せ者の会長だと思うよ?」


「しゃべってないで早く戦ってください

彼は起き上がります

殺す気はありませんでしたが

ライフル弾が命中する直前に氷か何かで盾のようなものでガードしていたはずです

さぁ来ますよ」


涼子さんの予想通り、男は何事も無かったように立ち上がった

ライフルの弾丸は男が目の前で作られた氷の盾で守られている

盾に亀裂は入っているもの完全に破壊することはできなかったのだ

男が倒れたのは衝撃のみだろう盾以外に傷や外傷は無かった


「相手は二人か・・・寧ろそれぐらいがちょうどいい

まだ来ると言っていたがその度に戦術を変えるか

面白いコンビだな

俺も少し本気を出さなくてはな」


男は立ち上がって次の攻撃を繰り出そうと再び空に向かって手を伸ばした

稲光から遅れ涼子さんに向かって雷が降り注いだが

一平さんがまるで予想通りと言わんばかりにマントを涼子さんに纏わせしっかりと守っていた


一方その頃

主人公はというと





ーーーー魔王科 厨房ーーーー





「ここから栄養価のバランスをとるには緑黄色野菜を追加するのが大事ですね

お年頃で苦手なものは食べたくない人もいると思いますけど

一人前の女の子になるには食べ物の好き嫌いも極力抑えたほうがいいと思いますよ!」


会議室のような場所で鋳鶴君が魔王科の女子生徒たちの目の前で料理の事について熱弁しています

女の子たちもペンとメモ用紙を持ってちゃんとお話を聞いています

それだけ鋳鶴君の話は興味深いものなのでしょう


「うちの生徒たちはこんなに優秀だったのか・・・」


「結のやり方も悪くないと思うけど

時には優しく教えてあげたほうがいいんじゃないかしら?」


「そうか・・・?十分優しくしているつもりだが・・・」


「きっとそう思っても優しいという評価をしてもらえないのは

彼が弟だからかしら?」


「だったらお互いに裸で交わり合い

一心同体になるしかないようだな・・・

そうすれば私に足りない優しさをきっと補うことができるだろう」


「相変わらず凄い思考してるわ」


明乃さんは呆れながら結の話を聞いていた

再び話しかけようとすると

もうすでに結は鋳鶴に料理の事について質問攻めする女子生徒に紛れて鋳鶴に質問をしていた


久しぶりの投稿で長くなってしまいました!

感想など受け付けております!


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