第71話:魔王とスーパーデート
「きっ今日は!どどっどうしたのだ?
私は母さんに頼まれて魚の切り身を買いに来たところで・・・」
三河さんも色んな意味でドキドキしているのか
顔を耳まで真っ赤にして照れくさそうに買い物篭を持っていた
今日は武器も何も持っておらず鋳鶴君も少しだけ緊張がほぐれた
心の底で殴られずに済むと
「そっか偶然あったのも何かだし・・・
一緒に買い物でもする・・・?」
「なっ!!ふへあっ!?
わわっ!私は全く一向に構わないぞ!?
ついでに切り身も買えればいいのだが・・・」
「あっうん
ここの鮮魚市場のおじさんとはちょっとした知り合いなんだ
歩のことも知ってるから割引してもらえるかもね
じゃあ行こうかほら」
鋳鶴君が三河さんに手を差し出すと三河さんは真っ赤になりながらも鋳鶴君の手を取った
三河さんは鋳鶴君の背中さえも見れないのか顔が真っ赤なまま鋳鶴君の手を取りながら進んだ
近所の人だろうかはたまた違う人だろうかひそひそ声で話ながら鋳鶴君と三河さんを見て
噂話をするおばちゃんたち、せっかく顔を上げた三河さんはそれを目の当たりにしてまた俯いてしまった
「おばちゃんたちどうしたんですか?
何か言いたいことあったら言ってください
相手を見ながらひそひそ話すのは正直見ていてその視線に気づいた人は気分を害します
おばちゃんたちにはいつもお世話になってるからまぁ・・・怒ったりはしませんけど・・・」
「あっ鶴ちゃんごめんなぁ~?
おばちゃんたちピッタリなカップル見てびっくりしてもうてなぁ~?
あゆちゃんと鶴ちゃんはほんまにちっちゃい頃から見てたけど
めんこいカップルやなぁと思うて」
「それはどうも
おばちゃんたちも旦那さんと素敵なカップルじゃないですか」
「あらやだ~!さすが鶴ちゃん
褒め方を良く知っとんねぇ~」
おばちゃんたちが微笑みながら照れくさそうに笑う
三河さんはもう死にそうなぐらい真っ赤になってしまっている
いろんな意味で爆発寸前です
でもたまにはこんな三河さんも可愛いと思いませんか?
「そのっ・・・私はあまり至らないところもあって鋳鶴には似合わないというか・・・
ふさわしくないというか・・・その・・・いや・・・だから・・・」
「歩?大丈夫?もうすぐレタス売り場だから頑張ろうね」
「夫婦みたいやなぁ~
ほんまラブラブで羨ましいわぁ」
そんなことない!と三河さん、照れる姿も可愛いです
にしても謎ですいつもなら強気で強い三河さんがこんなに
デレデレというか弱々しい姿を見せることなんていままでありませんでした
どうしてでしょう私にも謎です
「歩、本当に大丈夫・・・?
なんかいつもと違うというか・・・
なんかかっ・・・可愛いというか・・・」
「んにゃ!?かっ!可愛い!?お前また!
うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
エプロンで真っ赤になった顔を隠す三河さん
本当に可愛らしいです
鋳鶴君はそれを見て笑いを堪えていた
なぜか口元を手でおおってる鋳鶴君
多分何か考えているのかそれとも本当に三河さんが可愛くて仕方ないのでしょうか
「きっ・・・今日は・・・というか今は・・・ぼっ・・・木刀がないんだ・・・
そのっ・・・木刀が無いと落ち着かなくて・・・情けない・・・」
「家に置いてきちゃったのか
でも木刀をスーパーに持っていくなんておかしいもんね
それはそれで仕方ないね
それにいつもの髪型でもないし」
三河さんの髪を手にとって触る三河さん
今までふれていませんでしたが今日の三河さんはポニーテールではありません
優しく丁寧に三河さんの髪の毛を撫でる鋳鶴君、三河さんは鋳鶴君を見つめたまま
動かなくなっています
その様子も鋳鶴君の後ろにある衛星カメラは二人の行動を撮り続けていた
「うがぁーっ!うがぁーっ!」
暴れているのはもちろん結さんそれを虹野瀬さん以外の会長で止めていた
結さんの目にモニターの目の前のイチャイチャ?している鋳鶴君と三河さんが
目に入ったのかそれを見た途端結さんのテンションがおかしくなり今に至ります
「おっ落ち着いて望月君!きっと君の弟君もちゃんとした恋をしていんだよ!
姉離れとかそろそろ君も弟離れとかするべきじゃないかな!?」
「ふしゅー!ふしゅー!」
どうやら結さんに風間さんの声は聞こえない模様
弟の為なら今日も平常運転です
風間さんが能力を使う前に結さんは窓から飛び降り鋳鶴君の所に向かってしまいました
やれやれと会長一同、しかしそのやれやれ雰囲気になってる会長達の中に虹野瀬さんはいませんでした
「この学校って恋愛に関しては~何も言わないのよね~」
と朝倉さんそれもそうですね結さんのことについても学園は何も言いませんでした
それに彼女は全裸で闘ってましたし・・・
そういうことを考えればとんでも無い学校です
体育体会が戦争もどきですもんねぇ・・・
教育委員会なども文句を言わず平常運転ということになります
それに陽明学園には校則があまり厳しいものではありません
各学科の生徒会長がその学科だけの校則も出せる特権もあったりします
「いや?銃器科は恋愛禁止だ
雑賀衆で愛を育むなんて言語道断
新昌がここに遊びに来た時、恋愛禁止が無くなったとか言ったらビックリするだろうし
他に校則は~・・・人には発砲してはいけないそれと銃を外に持ち出してはいけないかな」
新昌さんは今、全国各地を放浪しているとのことです
いつ帰ってくるかなんてわかりませんそんなのは彼の勝手ですし
銃は危ないので銃器科の倉庫に隔離して置いてあるそうな
倉庫の前には体中の静電気を取り除く為の装置のような物が置かれてあります
静電気で火薬に引火したら大変なことになりますからねぇ
「科学科はカップルさえできれば法律に違反しない所までならOkなんだけどねぇ~
たとえばお外でギシギシ~とか、ちっちゃい子を~とか
蛍ちゃんが怖いからこういうのは無しにしておいて~
他には勝手に備品とかは持ち出しちゃいけないとか~
外では作戦や任務、学園長からの御用達が無い限りは外で超能力は使わないぐらいかしら~」
科学科も基本的には銃器科と一緒です
まぁ恋愛は禁止ではなさそうですが・・・そこまで
おおよそ朝倉さんは風間さんの次ぐらいに自由奔放な生徒会長なのでしょう
「機械科も備品等や重要機密は我が輩以外は知らない様にしているであります
恋愛はその学科の中以外でならいいであります」
頬を赤らめながらモジモジする金城さん
学科の中以外の理由ですか?城屋さんが何科か考えればわかると思います
機械科は陽明学園の生徒達の修学旅行などで使うバスなども作っています
特別仕様のバスなどを作るために会長だけにしか設計図は渡らないのです
しかし特別仕様の乗り物を造る時だけは学科の中で選抜し
その選抜に入った人間だけがその設計図などを見ることを許されるのです
「魔王科と魔法科の会長はいないから分からないけれど普通科は普通の校則だよ?
普通かは人それぞれだけれどみんなの納得する様な校則にはしているつもりさ?
でも最低限のことはきちいんとしないとね?校則としても成り立たないだろうし?」
と風間さん
普通科には基本的に校則中の校則しかありません
陽明学園にはいろんな設備が揃っているのであまり不自由はありませんし
全ての生徒が納得できる様な校舎内の施設の充実しているので文句なんてほとんどありません
「歩が木刀を持ってないことはそこまで珍しいことではなさそうだけど・・・」
鋳鶴君の声がモニター越しに響くと会長達は雑談を止めてモニターを見つめた
そこには相変わらず顔が真っ赤な三河さんと鋳鶴君がイチャイチャしていました
「あっ・・・あの鋳鶴・・・離れていてくれないか・・・
そのううっ・・・動けないんだ」
「歩大丈夫!?
ごめんね近づきすぎちゃったね
よし!買い物の続きだねまずは歩の魚の切り身を買いに行こう」
そう言って鋳鶴君は三河さんの手をとって魚売り場に向かった
魚売り場はあまり混雑しておらずすぐに鋳鶴君と三河さんは解体して欲しい魚を
並べられた魚達の中から選び出し魚置き場の向こうにいる解体師のおじさんに手渡した
「おじさん最近あまり噂を聞かないけれど奥さんとは喧嘩してないんだ」
「おいおい鶴ぅ!勘弁してくれや!こんな所でも説教されたら話になんねぇよ!」
鋳鶴君が解体場の入り口で大声で解体師の1人のおじさんに話しかける
解体師のおじさんはその大声に気づき解体中ながら鋳鶴君の声に敏感に反応した
三河さんは鋳鶴君とずっと手を握りながら顔を赤らめて俯いている
「歩ちゃん?どうしたんだ!そうか!鶴の事が好きだから恥ずかしいってか!
いやぁ若いっていいなぁ馬鹿野郎!」
おじさんは解体を終えて解体した魚をビニール袋に詰めて三河さんに手渡した
三河さんはまだ鋳鶴君のとなりにいるのが恥ずかしいのかまだ俯いている
やっと二人は買い物を終えてスーパーから出てくると三河さんはようやく我に返った
ーーーー陽明学園某所ーーーー
「じゃあそろそろ通信終わろうか?」
風間さんが椅子に座ったまま生徒会長達に問いかける
その質問に生徒会長全員はコクリと頷いた
「望月君は良い男の子であります!誠もあんな風になってほしいであります!
我が輩は新しい兵器を作る為の作業工程の・・・」
「準備を手伝わなければならん私からは以上だ」
小さい金城さん沙耶さんから会話の途中で一気に苅愛さんになった金城さん
忙しいお仕事なので早めに戻ってお手伝いだそうです
苅愛さんはそう言って会議室を後にしました
「望月鋳鶴君は~とっても可愛いくて良い男の子だったわ~
帰って研究の続きを~じゃあね~」
朝倉さんは研究の続きといって会議室を後にしました
「でも彼は少し優しすぎると思う
そろそろ弾薬庫の整理があるから失礼させてもらうとするよ」
そう言って月野さんもその場を後にした
風間さんはニコニコしながら自分が片付けをやらされることを悟った
ーーーースーパー出口ーーーー
「はっ!もう買い物は終わったのか!」
三河さんは我に返った途端鋳鶴君の手から自分の手が離れていることに気づく
三河さんから鋳鶴君は何科を感じ取っているのか目をスーパーに入ってからの鋳鶴君とは違った
「歩、ごめん!用事ができちゃった!送る時間がないんだ~・・・
家も近いから先に帰っててくれる・・・?ごめんね・・・」
「なっ!私も手伝う!今から!」
三河さんが鋳鶴君を手伝おうと家に戻ろうとすると鋳鶴君は三河さんを引き留めた
「駄目だ・・・絶対に来ちゃ駄目だ・・・歩を絶対に巻き込みたくない・・・
ごめん・・・」
そう言って鋳鶴君は三河さんを突き放した
そして突き放した途端、鋳鶴君が三河さんの前から消え三河さんが一人きり残されてしまった
三河さんは右腕を強く握り自分が役立たずだと思ったのかその日切りこぶしをスーパーの柱に殴りつけた
「やっぱりわかってたんだあの子可愛いわね貴方の彼女さん?」
鋳鶴君はスーパから離れた人が全く居ない通路に来ていた
そして鋳鶴君が何かを探していると電信柱の上から何者かが鋳鶴君に声をかけた
その声を聞き取る限り女性の高い声でその声で鋳鶴君の目付きが変わり髪が銀色に変わった
それはまさにいつもの鋳鶴君ではなく臨戦態勢、魔王になったときの鋳鶴君の容姿になっていた
「お前の所為で僕の人生は変えられた・・・
この力を僕はもう物にしている・・・
お前でさえも今ならば八つ裂きできそうだ」
鋳鶴君が力を込めて指を曲げる
その音を聞いて鋳鶴君に声をかけた女性が電柱から降りやっと女性の姿が顕わになる
やっとその顔を拝むことができたのか鋳鶴君は眉間にシワを寄せた
引く程美しい顔、煌びやかな金髪のブロンドヘヤーそして深紅と真紅で塗られたドレス
しなやかに伸びた真っ白な肌の足と腕
「魔王にならないんじゃなかったのかしら
けれどその力を使って貴方は闘っていた
私は観ていた一部始終だけではないわ全て
私から受けた力を存分に振り回し自分の目的の為にそれを使っていた
それでも魔王にならなかった私の力を使わなかったと貴方は言えるかしら
否定はできないだって貴方の血には私の血と魔王の血が混ざり合っている
そして人間の血、貴方はいったい何者で何になるのかしら
人か魔族がはたまた何かでも私は・・・」
そこまで話すと女性は鋳鶴君の目の前から消え鋳鶴君の懐に現れた
そして鋳鶴君を押し倒すと鋳鶴君が抵抗する前に鋳鶴君の唇を女性の唇が塞いでいた
ヘビが巣穴に帰る時の様に鋳鶴君の口内に舌を入れて動かす
瑞々しい音と共に鋳鶴君の身体から力が抜けていく
髪は黒色に戻り、眉間は無くなっていき目も虚ろになっていく
そして長く深かったキスが終わると鋳鶴君はもう立てなくなっていた
「ごちそうさまやっぱり若い男は違うわねおいしさと長持ちさが違うわ」
女性は濡れた唇を拭い妖しく微笑んでいた
「これが・・・エナジードレインってヤツか・・・
立つことさえままなら・・・ない・・・
まさか・・・くっつかれるだけでも長ければこうなることは知っていたけれど・・・
ディープキスされるとはっ・・・!」
鋳鶴君の息は途切れ途切れに過呼吸になっている
それでも鋳鶴君は力を振り絞り彼女の前に立った
「まだ立つことができたの私のディープキスにたえるだなんて・・・♪
やはり貴方はト・ク・ベ・ツな体質でもしてるのかしらね
よっぽどキス慣れしてるか性欲が無い限りは骨になってるはずだもの
動けなくなるだけですむなんて幸運なことだとでも思っていたけれど
立たれてしまったら私の商売あがったりじゃない
あとそれとこれもじゃっまっ」
そういって女性は立ちつくしている鋳鶴君に近づき抱きしめようとした時だった
一本の刀が二人の間に入り引き裂くようなかたちで邪魔をした
そしてその刀の持ち主は先ほど彼女が降りてきた電柱で野獣のごとき咆吼をあげていた
「私の鋳鶴に触るなぁっ!」
そこには望月鋳鶴の姉、望月結が某新世紀アニメの弐号機ビーストモードの様に
咆吼を上げ牙を剥いていた
「あなたは確か彼のお姉さんだったわね
そんなに怒ってどうしたのかしら」
「私は貴様に私の弟に触るなと言ったのだ
しかしもうその様子では触った様だなこのビッチ淫魔が
私の弟に触れたこと地獄で後悔させてやるいや後悔しろ」
「だったらこっちももう一回キスして彼を殺してしまおうかしら」
彼女がキスしようと鋳鶴君がいた場所を見ると鋳鶴君は消えていた
どこへいったか彼女は辺りを見回すと鋳鶴君を翼の生えた女性が抱き抱えて保護していた
その女性は彼女から見たら話している様に見える
「明乃さん・・・ごめんなさい・・・」
「結が会議中に外に出てったから何かと思ったらやっぱり望月君だったのね
大丈夫、私達が守ってあげるからゆっくり寝ていてね」
「明乃さっ・・・」
明乃さんが鋳鶴君の顔を優しくさすると鋳鶴君のまぶたは閉じ寝息をたてていた
そんな鋳鶴君を見て明乃さんは心の底からはらわた煮えくりかえった様な
普段見せない怒りの表情を顕わにした
そしてその視線は鋳鶴君を殺そうとした張本人に向いている
「あーやだやだ怖い怖い
ただ私は栄養をもらいに来ただけ
大丈夫、性欲とか体力とかしか盗ってないから心配しないで
それにそんなに眉間にシワ寄せてるとシワ増えちゃうわよ?
あなた達は私と違って人間であってきちんと自然の摂理に従って生きている
太陽の光を浴び、睡眠を取り、勉強、仕事に勤しんでいる
けれど私は違う
太陽の光を嫌い、睡眠はほとんどなくて食事をすればいいだけ
勉強に仕事?そんなものいらないわ人の体力や血を吸うことで私は生きている」
「だから・・・どうした?
それで何だ
私は特別だから見逃してか?それとも攻撃すると危険か?
上等だ弟の為なら私は何だってできる無論、お前を三枚おろしにすることもな」
結さんは地面に突き刺さった刀を持ちそれを彼女に突き付けた
しかし突き付けた刀を彼女は握り、一瞬で刃を潰した
彼女の色白な掌からは血が滴り落ち切り傷がついている
そして結さんはその行動に動揺してしまったのか彼女を宙に取り逃がしてしまった
彼女には悪魔の様な翼が背中から生え空を漂っている
格好の的だがしかし結さんも宙にいる明乃さんも呆気にとられていた
彼女は自分の傷口を音を立てながら舐めている
「ピチュ・・・チュパッ・・・
自分の血も飲んでもいいのよ
でもやっぱり・・・人間の血が一番おいしくてあったかぁい
だから人間はおいしくて素晴らしいのよ
あなた達みたいな人間の血はさぞ・・・美味しいんでしょうね
けれどめんどくさいからやめるわ
最後に良いことを教えてあげる
私の名前はオリエンテ・カルマ・アークランド、吸血鬼
それだけは言っておこうかしら
まだ夕方だけれど私は帰るわそれじゃあさようなら」
「ちょっと待て
世の中には礼儀というものがある
それがいくら貴様が憎かろうとうっとうしかろうとブチ殺したかろうと
私は礼儀を突き通す人間として
私は望月結」
「来栖明乃」
「今度会った時は貴様を三枚におろす」
結さんは刃を叩き潰された刀を宙に漂っているカルマに向けた
カルマは冷たく微笑んで二人を最後に見下ろしてその場をさった
明乃さんと結さんは鋳鶴君を陽明学園に運ぶため
その場を去った