第68話:魔王と普段の様子
「うっ・・・また僕は保健室に運ばれたのか・・・」
窓から入ってきた眩しい日差しと共に鋳鶴は眼を覚ました
自分の身体のほとんどの部分に包帯が巻かれていて動くことが苦になっていた
鋳鶴君は自分の包帯が巻かれている部分を手でなぞる
そんな鋳鶴君をしかめっ面で見ている高橋さんが鋳鶴君の視界に入った
「りっ・・・凜えぇっと・・・お世話になってま~す
あははは~・・・」
「あははは~・・・じゃないわよ馬鹿!
鋳鶴!?あんたね!何回ここ(保健室)に来れば気が済むのよ!
治療費とかいい加減収めて欲しいんだけど!こっちも色々大変なのにっ!
こんな時にこんな大けがしてバッッッカじゃないの!
ちょっとは周りの事とかも考えなさいよ!
ったく・・・学園長がたまたま鋳鶴を見つけてくれたら良かったものの!
屋上から転落するって馬鹿じゃないの!?まったく・・・どうせまた女の子と遊んでたんでしょ!」
「おっ!?女の子とは遊んでないよっ!?
これは本当だよ!僕は昔の僕とは違うからナンパとかしないって!
だって今の僕には度胸もそんな大胆に過ごす暇もないんだからね!?」
凜さんの超絶饒舌文句&注意鋳鶴君の言い訳対決が始まりました!
まぁ勝敗は見え見えなんですけどねぇ・・・
「あんたには歩がいるんでしょ!?
それ加え色んな女の人が周りにいるのにそれでも懲りないの!?
ここまで馬鹿だとは私も思わなかったわ!」
「だっかっらっ!ナンパなんてしてないし女の子に見とれた事なんてないから!
まぁ・・・見とれた事はやっぱり何回か~・・・
ないっ!ないったらないっ!やっぱりないよ!そんな事ないってば!
とりあえず僕は責任はとる男だからっ!そんな不埒で最低人間みたいな眼で見ないでください!」
そう言う鋳鶴君に対しての凜さんの目付きはまったく変わっていません
何も信じていなさそうな眼をしています常に鋳鶴君を軽蔑している感じですはい
「凜はツンデレなの・・・?」
鋳鶴君が弱々しい声で凜さんにそう問いかけると凜さんの前蹴りが鋳鶴君の顔面目掛けて飛んできました
鋳鶴君は凜さんの激しい蹴りを顔面にくらいベットから落ちて悶え苦しんでいます
「この期に及んでまだそんな余裕があるの!?
とりあえず私はツンデレじゃないからそれに鋳鶴のデレてないし
ていうかあんた今週お墓参り行ったの~?沙綾が悲しむわよ~?」
「その名前は反則だよ!わかったよ!行きますよ!」
鋳鶴君は凛さんにそう言って沙綾さんのお墓に向かった
ーーーー墓ーーーー
鋳鶴君は能力を使用して沙綾さんのお墓の前に転移していた
まだ全身に包帯が残ったままでその包帯からは少しだけ血が滲んでいた
しばらくお墓の前に立ってお墓を見つめると桶と柄杓を取りに水汲み場に向かった
ふと自分のポケットに入れていたペンダントを鋳鶴君は確認する
そこにはまだ幼く赤色に髪を染めていた中学生の頃の自分と沙綾さんの二人で撮った写真
それの入ったペンダントそれを見つめていると桶から水が溢れているのに気づいて
急いで蛇口の閉めると再びお墓に向かった
毎週見に来るこのお墓、有町沙綾と記されていて墓の側面には命日と誕生日が記されている
まず桶に入った水を少しずつ掬って鋳鶴君は沙綾さんのお墓に水をかけた
そして水がほどよくなくなって墓の下に流れると鋳鶴君は綺麗な雑巾を持ってきたビニール袋から取り出した
まんべんなくまるで体を洗うように沙綾さんのお墓を拭いていく
「望月君、毎週ご苦労さまです」
鋳鶴君の背後から声がした
背後に振り向くとそこには中肉中是のお坊さんが立っていました
「立海さん、毎日ありがとうございます
沙綾もこんなに綺麗にしてもらって喜んでます」
いつもの明るく元気な鋳鶴君ではなく真面目な眼差しの鋳鶴君がそこにはいた
「もう引きずっていませんか?
未練は油断と緊張を産みます望月君は不安定な時期があったので心配はしています
未だに不安定な時があるようですね望月君」
立海さんは心配そうに鋳鶴君の真面目な眼差しを見てそう言った
立海さんはこの沙綾さんのお墓がある平和公園に住み込みで働いてるお坊さんです
「だったら立海さん、どうすれば引きずらずに生きていけるんでしょうか
自分は何回も考えていますずっとあのときの僕は一体なにをしてれば
なにをすれば沙綾を救えたんですか?」
鋳鶴君の目には大粒の涙が浮かんでいました
それを見て立海さんは髪のない頭を掻いた
「あの頃は君はまだ未熟だった
それに雅さんや三十郎さんも頑張ってくれていた
それは彼女の死は、とても君には辛く、苦しいものだ
だが人はそれを乗り越えて強くも弱くもなれる
それを昔に私は君に教えたまだ赤髪でヤンチャだった頃の君にね
まだ邪念も多数あるようだまだまだ精進が足りないなやはりまた修行するかね?」
立海さんは屈託の無い笑顔で鋳鶴君を見ながら鋳鶴君の肩を叩いた
鋳鶴君は涙をこらえて立海さんの手を払い除けました
すると沙綾さんのお墓に線香をたててお経を始めた
「私にも邪念が無いとは言えない
人間は誰だって邪念や欲望を持っているものだ
それはもしかしたら抑えることは決して出来ないそういうものなのかもしれん
だがしかしそれが今近くにいるというよりも望月君に着々と近づいている
それから守るのが今の私の役目であり最後の時、なのかもしれんな」
立海さんは悲しそうに俯いた
しかしすぐに顔を上げて青空の広がっている空を見た
鋳鶴君はそれを見て何かを悟ったように立海さんと同じように空を見た
そこには沙綾さんが好きだった青色の空が広がっている
雲一つない快晴、さきほどまで落ち込みきっていた鋳鶴君の態度が変わった
「空はいい
いつでも人の心を身を清めてくれる」
「いつか立海さんの望んだ世界になるといいですね
その前にこの霊園が終わらないかしんぱいですけど」
「む?ここは貴方の様な人間が来るところではありませんが?」
立海さんが見た方角を鋳鶴君も見た
そこにはこの平和公園の殺風景な光景に似合わぬ神父の男が立っていた
神父は何も見えていないのかそれとも修行の一貫なのか眼を瞑っていた
「いえ、僧も神父も似たようなことはするものです
ここがジャンヌ理事長の休息場の一つなのですね
そして姿は私には確認できませんが君が望月鋳鶴君そしてあなたはこの平和公園の僧のお方ですか
大変恐縮ですが、教会でもないこの場でお祈りしてもよろしいでしょうか?」
立海さんはいいぞと言うと神父さんはその場でお祈りを捧げました
お祈りをし終わったのか神父さんはくるりと180度回って立海さんと鋳鶴君にお辞儀をした
「自己紹介が遅れました
マルコ・カリアメンヌ・ジャスティスと言います
イギリス大聖堂聖十字教会で神父をやらせていただいています
今日はジャンヌ・アヌメッサ名誉女史に日本に来るよう言われ日本に来ました
陽明学園近くにあるはずの教会を探しているのですがそこを探している内にここに着いてしまいまして」
流暢に日本語を話すマルコさん鋳鶴君はマルコさんの話を聴いていると
ライアさんとシャルさんを思い出しました二人ともヨーロッパ出身で外国人
確かに二人も日本語はペラペラですがマルコさんの方が上手いと感じる鋳鶴君
それほどにマルコさんは日本語が上手で難しい日本語も話しています
「陽明学園なら平和公園の北入口から行った先にある
だが着くのは裏門だからぐるっと一週したい所だがそんな時間もないだろう
裏門から入れる様に学園長に問いかけてみよう」
そう言って立海さんは平和公園の中央に建てられた本堂に向かった
マルコさんと鋳鶴君は近くにあったベンチに座った
しばらく気まずい雰囲気が続き鋳鶴君とマルコさんは言葉に詰まる
そんな気まずい空気を切り開かんと鋳鶴君は口を開いた
「あのマルコさんって・・・こんなこと聞くのも失礼だと思いますけど・・・」
「はい?私が答えられる限りのことであれば極力お答えしますよ?」
まってましたと言わんがばかりに即座に返答するマルコさん
鋳鶴君は少し驚きながらも質問をした
「マルコさんみたいに神父様やシスターさんは
こういう日本のお墓とかには来ても大丈夫なんですか?」
「特に規制などというものはありません
やはり日本の神父は僧であったりヨーロッパ圏の僧は神父やシスターだったりします
いや・・・・・・シスターは日本で言う尼でしょうか」
「あとマルコさんってお強いんですよね・・・
親父が言っていましたけど・・・」
「私は強くありません
ただジャンヌ理事長と同じ理想を持ちただそれを武力を使って行使しているだけです
だから私はまだまだ甘いですし世界が平和になるまで戦わねばなりません
その休暇のつもりかジャンヌ理事長は私に陽明学園にくるよう大聖堂上層部に言ったんだと思います
その為に日本語をたくさん練習してここまで話せる様になったんです
しかしなぜいきなりその様なことを?望月君は本当に興味深い子ですね」
神父さんはまるで眼が見えているかの様に鋳鶴君に微笑みかける
よく見るとマルコさんの胸元には十字架のネックレスが下げられている
そして右手に本を抱えて大事そうに持っている
本には日本の教会と書かれていた
「いや!ただ本当に気になっただけでマルコさんって本当に凄い人だなと思います
立海さんとは大違いで実績もありますし本当に神父さんなんだなと思います」
「いえ私はたいしたことはありません
ただ大聖堂上層部に言い伝えられた任務を遂行しているだけ
私に比べれば立海さんと僧のお方の方が凄いですよ
それに神父も僧もそう簡単になれるものじゃないし長続きさせようとも難しい
僧も神父も皆頑張っていますだから立海さんのこともたまには労ってあげて下さい
それと今日は学園長に教わったこのお墓にも行けと言われたのです」
そう言うとマルコさんは鋳鶴君が綺麗にした沙綾さんのお墓の前まで歩いた
そして跪くようにしてお墓の前に立て膝になるとお祈りを始めた
右手に胸元にかけられていたアクセサリーの十字架を右手に持ち
日本の教会の本を左脇で抱えている
鋳鶴君が神父さんを見ているとまるでそこに一筋の光明が差し込んだかのように
マルコさんの周囲が輝き出した
眼をつぶるほど強くなく暖かい光、それがマルコさんを包み込んでいた
だがしかし鋳鶴君の魔王紋はその光に反応を示した
若干の痛みを右腕に感じて鋳鶴君は右腕を見た
そこにはありありと現れた魔王紋があった蒼色に発光し不気味なオーラを放っている
右手を押さえつけて鋳鶴君は魔王紋の輝きを止めようとする
マルコさんはその様子に気づいたのか急いで祈祷をやめ地面に倒れ込んだ鋳鶴君を抱き抱える
「望月君!?大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
「ん?望月君!いかん大丈夫か!?」
「すぐに裏門まで輸送か転送魔法陣で転送してください!
ジャンヌ理事長なら何か分かるかもしれません!」
「うっうむ!それでは魔法陣を張る!望月君は任せるぞ!」
そう言って立海さんは地面に掌を押しつけ魔法陣を展開した
その魔法陣の上にマルコさんが乗ると光が包み込み
鋳鶴君とマルコさんを早急に転送した
「あのマルコという男怪しいな・・・
疑うのは本来は嫌なのだが」
立海さんは頭の中に不安と疑惑を残して
陽明学園に連絡する為に本堂へ向かった
投稿感覚開けすぎて申し訳ありませんっ・・!