第61話:魔王と爺
ーーーードイツーーーー
霧谷さんがと赤峰さんが自室から出ていくと同時に
将軍はコーヒーを入れ直し一服していた
一服する将軍の後ろには先ほどいた兵士たちではなく銀髪の右目に眼帯をした少女が立っていた
その眼帯には「独」の文字が刻まれていた銀髪はとても美しく光沢を放つほどである
少女はどことなく人間味を帯びていないまるで妖怪や吸血鬼の類
どこからどう見ても人間には見えない美しさと気品の風格だった
だがそんな彼女には胸部あたりに十字架のアクセサリーが付けられている
これも彼女同様、銀製で美しさと気品がある
「パパ・・・
何かあったの・・・?
すごい魔力を感じたから・・・
パパに何かあったんじゃないかと思って・・・
まだ起きる時間じゃないのに起きちゃった・・・
ごめんなさい・・・」
そう言う少女を見て将軍はニコニコしながら少女の頭を優しい手つきでなで回した
少女もそれに答えるように嬉しそうに会釈をする
少女の頭を一通り撫で終わると将軍はコーヒーがまだ入ったカップを机にそっと置いた
「確かにそうかもしれないな
パパはものすごい魔力を持つ人とお話をしていたよ
とってもパパでも怖いと思ってしまうぐらい怖い人らしい
だけどアリアなら私を守ってくれるかね?
娘がパパを守るのは可笑しい事なのかもしれんが
どうも私は老いている昔のパパとは違うからな」
将軍がそう言うと少女は将軍に寄り将軍の手を優しく握った
「パパは私が守るから大丈夫だよ・・・
私が誰からも守るもん・・・
だってパパは私だけのパパだしパパは独りしかいない・・・
私が何人いてもパパは1人しかいないから私はパパを守りたい・・・
だって私はパパがいなくちゃなにも出来ないから・・・」
「本当にアリアは甘えん坊だな
そろそろ親離れの時期だというのに」
「だってパパが私のお姉ちゃんと遊ばせてくれないから・・・
お姉ちゃんにさえ会えたら私はパパから離れられると思う・・・
だってパパには私だけがいればいい・・・
お姉ちゃんはずるい私よりパパに愛されていたのに・・・
パパを裏切って日本に行くんだから・・・
その為には私は魔術をもっと覚えなくちゃいけないの・・・
パパが術式をもっと私の体に埋め込んでくれれば・・・
私はもっと強くなれるお姉ちゃんよりももっとドイツの誇れる人になる・・・」
「その調子だアリアそれでこそ私の娘だ」
将軍は再び優しくアリアさんの頭を撫でた
アリアさんは嬉しそうに会釈をする
そしてアリアさんを撫で終わると将軍は立ち上がり軍服を着直した
身だしなみをチェックして扉を開く
そこには兵士達が1人1人誰も寸分狂うことなく並んでいる
兵士達を左右に並ばせその間にレッドカーペットをひく
ハリウッドスターが踏むレッドカーペットよりも遥かに上質なレッドカーペット
そして兵士達を並ばせ終わると将軍はそのレッドカーペットをまっすぐ進み
玄関前まで行くと大きな玄関の重い扉を開き兵士に合図を送る
将軍の合図とともに兵士の二人が玄関から真反対の扉を開ける
「望月霧谷日本総理大臣代行のお帰り!」
1人の兵士がそう大声を張り上げて告げると
開かれた扉から霧谷さんと赤峰さんが顔を出す
赤峰さんはいつも通りの凜とした顔つきだが
霧谷さんはいつもの笑顔のまま
こんな緊張の場でもいつも通りの笑顔
正直こういう場所での表情ではありません
「いやぁ~ww
みんな僕等の為にありがとね~ww?
面目ない面目ないww」
霧谷さんが意気揚々としながら上質なレッドカーペットを歩いていく
その視線は笑いながらも向かい側の将軍に向けられていた
その目は鋭くどんな鋭利な刃物よりも鋭いであろう笑顔のままの剣幕
そして霧谷さんが将軍の5m付近まで歩き付く
すると将軍は用意したリムジンの扉を優しく開いた
「今回は遠方まで来てくださり申し訳ありませんでした
次回は吉報の為の此処になるとよろしいでしょうね」
「そうだねww
今度はそうあることを僕も願うよww
そうだそうだww君の娘にこれをあげるよww」
霧谷さんの手には一本の薔薇が握られていた
将軍はその薔薇が庭に生えている薔薇だと気づく
しかしバラには一本の棘すら無い
ちゃんと持つ人間がけがをしないように綺麗に棘だけ
幹も花びらにもどこにも傷はない
「私には娘はいませんよ?
いるとしたら今、日本にいますよ
生き別れですが」
「将軍ww
嘘は言っちゃダメだってww
僕は見たよww?
君には立派な娘が二人もいるじゃないかww
すごいよねww真顔で嘘つけるんだもんww
ちなみにお姉ちゃんが左の魔眼で妹さんが右の魔眼だっけww?
どっちもかわいい娘さんをお持ちでww
でも家の娘たちも可愛いですからww」
将軍が開いたリムジンの扉を潜るまでに霧谷さんはそう言った
将軍は唇を噛みながら霧谷さんが車に乗るのを確認すると
ドアをゆっくり閉めた
「霧谷!!!!!どうなっている!!!!!
さすがにあそこまでされたら弁解の余地は無いと考えてもいいのだぞ!!!!!?
将軍相手に無礼を知れ!!!!!
始末書が酷いことになりそうだ!!!!!
日本の立場が危ういというのに!!!!!
本当に貴様は!!!!!」
リムジンの中で霧谷さんに向かって激昂する赤峰さん
無理もありません霧谷さんのしたことは日本の派遣に関わります
「だってしょうがないじゃないww
僕は本当のことを言っただけでww
嘘はついてないし嘘はいけないしねww
嘘は泥棒の始まりだから僕は泥棒じゃないよww
それに僕が行かなきゃどうせこっちが頭下げなきゃいけないしねww
頭下げるよりも下げさせなきゃだって悪いことしてるのはあっちだよww?
赤峰もわかっているとうり僕らは近々戦争でもしなきゃいけないのかもしれないww
ドイツも本格的に動くと思うだから僕からの諸注意ということで
僕が参戦するわけにもいかないからね
だから諸注意で終わってくれればいいと思うんだけど
僕が参戦するほどの戦争なんて真っ平御免だからね
戦争や憎しみは何も産みはしないよ?
でも強いて産まれるとしたら無と憎しみだけだよ
そんな景色を誰にも見せたくないから
今の子供たちにはそんな景色は見せたくない
醜い景色が似合う美少女もグラフィックもないしね
良作はいい景色やいい音楽いい美少女が多い
だから新しい未来の作品が穢れてしまわないように
僕は諸注意を日本から出てきてまでしたんだ
日本の重臣やらお偉いさんたちは僕に土下座でもしてほしいねww
それに今日のスケジュールがいっけないいからね~ww
今からメイド喫茶行かなきゃいけないいからねww
早くリムジン出してくれるww?
空港に夕方までのメイドさんとの握手券の期限が夕方までなんだww」
いいセリフが台無しです
でもこれが霧谷さんなんです許してあげてください
霧谷さんのさきほどまで赤かった眼は落ち着きを取り戻したのか
眼鏡越しに見える目は黒色をしています
「はぁ・・・私は日本の未来が心配だ・・・」
ーーーースタジアムーーーー
「もうすぐ終わりを告げるのか
お前の楽しかった人生に終止符を告げる日が来たんだ
とっても喜ばしいことだと思わないか?鋳鶴」
笑いながら結さんは倒れた鋳鶴君を見ていた
鋳鶴君の倒れた場所には血だまりができている
かすかにまだ息をしているかのように青い炎が燃えている
全身から力が抜け刀を持つことすらままならない
「なぁ鋳鶴、お姉ちゃんキスをお前としてみたいんだ
だからさせてくれるか?私はする事に躊躇いも恥じらいもないが
お前の意見を取り入れてしようかしまいがそれで決定しよう
鋳鶴にだって人権はある魔王と呼ばれようと実質人間
やはり人権や法律も出てくる」
うんうんと腕を胸の前で組ながら
結さんは頷いた
正直近親相姦てきなのも法律とかに引っかかりますが・・・
「結姉とキスなんてしない・・・・・・
勿論・・・・・・行為もしない・・・・・・」
鋳鶴君は残った体力と力を振り絞って声を出した
「まだそれを言うのか
塞ぎようの無い口だ
お姉ちゃんは悲しみで胸がいっぱいだ
本当に哀しいよ残念でたまらない
本当に鋳鶴の態度には困らされる
ツンがないツンデレなのかデレのないツンデレなのか
まったく皆目検討もつかない」
「それはツンデレでもないし・・・・・・
いちいちそう言う必要も無い・・・・・・
僕はツンデレじゃない・・・・・・
正直男がツンデレなんて気持ち悪いとは思わない・・・・・・?
僕は嫌いだよ・・・・・・男ツンデレ・・・・・・」
鋳鶴君の表情は暗くなり限界、満身創痍
出血量が多く青ざめた表情になるのも無理はありません
もう限界を通り越しています
「そうかだが・・・・・・」
ズブッ!
という音の後鋳鶴君がさらに悶え苦しみ始める
腹部を勢いよく結さんの刀が貫いている
地に倒れた鋳鶴君を結さんは追い打ちを掛けるように刺した
腹部をなんの躊躇いもなく、顕著もなく、慈悲もなく
鋳鶴君を刀で刺した
「はっ・・・・・・!くっ・・・・・・うっ・・・・・・」
鋳鶴君の呻き声が響く
結さんはその呻き声に恍惚の笑みを浮かべた
「そうこれは終わりの始まりだ
私と鋳鶴の恋の物語は望月鋳鶴の死から始まる
それが私の恋物語
これでお前は私のモノだ・・・・・・
これでいいのだ終わりの始まりおもしろい!
私が鋳鶴を書き直すんだ!
もうお前は私のモノだ!ふふふ!
ふははははははははは!」
結さんは声を上げて笑う
その姿を見て杏さんと斬彦さんがスタジアム跡への突入を試みるが
恐子さんの両腕の握力に二人は首の襟を掴まれ引き戻される
「恐子!これは流石にやりすぎだ!
止めるべきだ!私は意地でも止めに入るぞ!」
「そうだ!
俺も行くぞ!このままじゃ腹の虫が収まらん!
ゆり嬢!なにするんですかっ!」
ゆりさんが斬彦さんの右脚を全身で掴む
涙目で自分の足を掴むゆりさんを見て斬彦さんは踏みとどまる
杏さんも六法全書を閉じ構えを止めた
空の曇天からバケツをひっくり返したような雨が降り注ぐ
あまりの唐突の出来事に観覧席では屋根が閉じディスプレイのみ雨水に晒される
ゆりさんの目からは今降っている豪雨の様に流れていた
「兄ちゃん・・・死なないで・・・兄ちゃん・・・」
ーーーー中央保健室ーーーー
「鋳鶴・・・・・・もういい!やめてくれ!
もう充分だ!もう・・・・・・」
歩さんが目に涙を浮かべながら病室に置かれているテレビに縋り付く
普通科の面々と残された魔王科の面々が保健室に集合していた
「三河君?
もう充分とか言っちゃ駄目だよ?
優勝は無理なのかもしれないけれど?
でも望月君は負けちゃったら彼は初期化されちゃうんだよね?
今までの記憶とか色々云々全部真っ白になっちゃうんだ?
死ぬことよりも今の望月君は怖いんじゃないのかな・・・・・・?
記憶を失う事が今までの全部を忘れるのなら死んでやるぐらいの覚悟・・・・・・
僕等はもう口出し出来ない手を出すなんてもってのほかだ?
だからどうであれこうであれもう誰も見事しか出来ないんだよ?
何か特別な事が起こりうる事が無い限りね?」
「鋳鶴・・・・・・」
その場の全員が再びテレビの前に戻る
ある者は願いを込めながら
ある者は約束を叶えてくれると信じて
ある者はその者の生存を信じて
祈ったその者の為にその者を信じて
そしてその祈りの中1人の者が口を開いた
「やっと来たか・・・こっからだな・・・」
ーーーースタジアムーーーー
「はぁ・・・・・・もう駄目か・・・・・・
本当にここまでみたいだな・・・・・・
人生15年生きてこんな事あるのか・・・・・・
365日を12回366日を3回しか経験していないのに・・・・・・
もう死ぬのか・・・・・・」
「死ぬのでは無い
終わりの始まりだよ
鋳鶴
そしてお前は生まれ変わるんだ
私の人形新しい望月鋳鶴として」
結さんが刀を振り上げる
鋳鶴君は立つことすらままならない
全身に力も入らず精神もみじん切りにされてしまっている
しかし結さんが刀を振り上げると何かを見たのか動きが止まる
限りなく離れた鋳鶴に最期の一撃を入れようとして
その鋳鶴君の前に白髪頭の軍服を羽織った白髪の爺が立っていた
あまりにも大きな番傘を右手に携え鋳鶴君の上に傘を翳す
そして倒れた鋳鶴君に白髪の爺は見下げるように座った
白髪頭の爺は雨で若干濡れた地面の上で胡座をかいた
「いささか久し振りじゃのう鋳鶴」
白髪頭の爺は頭を掻きながらそう言った