第59話:魔王と姉弟喧嘩2ラウンド目
振り下ろされた結さんの刀
大地に傷を付けスタジアムをまっぷったつ
そして謎の二人の人物
グラサンかけた白髪のおじいさんと背の高く気品溢れる美女
「これが東京タワーか!
相変わらずでかい図体しおってからに!
それにんん!?
衣替えか!それに成長したのぅ!」
「あのですね・・・
あれはスカイツリーです・・・」
秘書風の女性が呆れ加減に老人にそう言った
老人は照れくさそうに白髪で真っ白になった頭を掻きながら笑っている
老人と秘書風の女性の前には天高々と大きな銀色の巨塔が建っている
その周辺に数台のタクシーとぞろぞろと中に入っていく人達
「久し振りに日本に帰って来たもんだから
記憶が曖昧すぎて記憶障害じゃわい」
「私もお爺様と同じくらいアメリカにいたのですが・・・」
「お爺様はやめろと何回も言っているじゃろう!
おじいちゃんでいいんじゃわしはその呼ばれ方の方が好きじゃ!」
「そういう問題ではありませんよ
いくら貴方が私たちのおじいちゃんという立場にあったとしても
今は私の公務の途中というか・・・まぁ父に頼まれて来たのですが
それにお爺様も鶴君が折角頑張っているというのに
まだ東京にいるなんて知れたら鶴君に怒られますよ?」
「鋳鶴がねぇ・・・
久し振りに会うという事でアメリカから来たんじゃが・・・
正直会わせる顔がないわい
わしの駆けつけるのが早ければ鋳鶴はああはならんかったのに」
老人は俯いてため息をついた
先ほどまでとのテンションとは違いまったくもって真逆のネガティブ思考になっている
秘書の長身の女性は老人の肩に手を添え宥めようとしている
近くから見たら介護衣している人と
介護されている老人にしか見えないだろう
「そんな顔していたら老体に毒ですよ?
鶴君は優しい子ですから
それに私達よりも強い心も肉体も持っています
きっと許してくれますよ
それでも元と言っていいのでしょうか
それともまだ現役なのでしょうか」
老人はため息をつくのを止め
女性は大きく息を吸った
「四大烈将でしたっけ?
それとも・・・」
「四大皇王じゃよ!
梓!どういう事じゃ!」
老人が元気を取り戻し持っていた荷物を叩きつける
「だって今のおじいさ・・・おじいちゃんを見ていても
その四大なんちゃらには見えませんよ
銀髪のなんとかさんでしたっけ?」
「四大皇王といっておるじゃろう!
銀髪!?違うわい!
圧倒的武剣剣帝<あっとうてきぶけんけんてい>じゃわい!
梓!わしをおちょくっとるじゃろう!」
老人が再び荷物を地面に叩きつける
さきほどまでのネガティブオーラは消えています
「私だって伊達にアメリカの大学に通っていませんからね
それにお爺様よりは頭の良い高校にから出ていますから
でも私にとってはどの高校も代わり映えしませんが」
「相変わらず嫌みないい方じゃのう
孫にそんな事言われるとじーじ死んじゃうぞ?」
「では死んでください
大丈夫ですスカイツリーのてっぺんから急落下すれば
お爺様といえど楽に死ぬことが出来ますよ?」
「梓!わしをみくびっとるのぅ?
そんな事ではまだ死なんわい!
わしはまだまだ若くて健康じゃ!」
白髪のおじいさんは梓という女性に文句を言います
梓ってどこかで聞いたことあるような・・・
そんな事は気にしない!
白髪のおじいさんはスカイツリーに向かって歩を進めました
梓さんはそれを後ろからため息をつきながら付いていきます
「それに大丈夫じゃ
あいつは強い、結を超えるのはまだ無理かも知れんが
最低引き分けぐらいまでには持ち越せるじゃろう
フッフッフッ!スカイツリーよ待っておれい!」
白髪のおじいさんはそう叫ぶと梓さんを置き去りにスカイツリーの中に入っていった
梓さんはおじいさんを見届けるとポケットから携帯電話を取り出した
「もしもし、もうすぐ帰れそうなので
久し振りの全員集合とはいきませんが私が行きますのであしからず」
梓さんがそう言うと電話の相手が応答を返す
「じゃあさっさと帰ってこい
今日は霧谷と真宵は無しでホームパーティーでもするか
結は鋳鶴が意地でも連れて帰るだろう
それにお前が顔を見せたら鋳鶴は嫌でも本気を出すだろうな」
「えぇ、鶴君は優秀ですから」
梓さんは笑顔で会釈をする
「それに爺も来てるんだろ?
だったら尚更鋳鶴はムキになって結にも負けない
そんな力を発揮するさ」
「そうですか
それではお爺様の監視というか無事に送り届けるのが
今の私の勤務ですのでそれではまた後で」
「相変わらず流暢なしゃべり方だな」
「母さんには負けていませんよ」
梓さんはそう言うと電話の通話を切った
そして再びポケットをしまうとおじいさんの後を追った
ーーーースタジアム1階ーーーー
「残念だったな鋳鶴
どうやら私の勝ちみたいらしい
大丈夫だ明乃の再生術や何かでお前の死体は剥製にして
私の部屋に飾ってやる
傷もちゃんと取り繕って塞いでちゃんとしておいてやるから
安心して眠れ私の大好きな鋳鶴」
目を塞ぐ観衆泣き崩れるゆりさん
唇を強く噛んだまま無力な自分を悔やむ斬藤さん
恐子さんの表情は変わらない
「まだ寝る時間じゃないんだ
それに僕は日々の過酷な家事で精神とか色んなものが鍛えられているから
僕は最大で2日は不眠不休で働ける」
「む?斬ったつもりだったんだがな
少々お前を甘く見ていたようだ
まさか幻影をも使いこなしているとは流石私の弟だ
しかし感心しないな
私は嘘や偽りは大っ嫌いだ
だからお前に普通科は駄目なんだと何度も言っただろう」
結さんはそう言って再び剣を取る
観客は目をつぶるのを止めて泣いていたゆりさんの嗚咽は消え
斬藤さんは唇を噛むのをやめた
「結姉、言ったはずだ僕は貴方に負けないって
普通科は優勝して僕は貴方の上に立つ」
鋳鶴君はそう言った
結さんをまっすぐに見つめて
今まで過ごした結さんとの時を思い出しながら
結さんをまっすぐに見つめ深呼吸をした
「だったら手加減は無用、という事と捉えて良いな?」
「あぁ全然構わないよ僕は本気の結姉に勝ちたいんだ
だから僕も今出せる全力を尽くして闘う事にするよ」
鋳鶴君は右手に力を入れる
蒼い炎が燃え上がり鋳鶴君を火が照らす
鋳鶴君の全身を蒼い炎が纏い鋳鶴君を包む
「そういえば結姉の剣筋は昔、誰かに教わったよ
誰だったかな誰かなんか思い出さなくてもいいか
だって僕が勝つんだから結姉に勝つんだから」
鋳鶴君が炎の中から全身を出す
すると炎は消え鋳鶴君に法衣ではない
新たな着物の様な青色の服が鋳鶴君を包んだ
両手には手甲が付けられ蒼い袴の様なズボンをはいている
上半身は蒼い羽織に下はサラシで鋳鶴君のほどよい腹筋が見えています
「鋳鶴・・・
強くなったな今、私は血湧き肉躍っているぞ!
こんなに楽しい事だらけの日はいつぶりだろうか!
長年忘れていたそうだ私の生きる場とはここの様な感じだ
やっぱり私は鋳鶴、お前を愛している!
その輝かしい瞳!素晴らしい肉体!そして優しさ!
そうだ・・・お前は完璧なのだ・・・だから私はお前を欲していた!
やはりお前は生きたまま捕らえないとつまらん
だからもう殺すのは止めだ」
結さんは刀を鋳鶴君に振りかざし
ニヤリと笑みを浮かべた
「お前を抜け殻にしてでも私はお前を
私の物にする死んだ鋳鶴より抜け殻の鋳鶴の方が
そそるじゃないか・・・♪」
結さんは下を舐めずり回すと鋳鶴君を妖しく見つめた
頬を染め耳まで真っ赤に染まっている
吐息を漏らし興奮状態に陥っている
「抜け殻の僕なんてなんの勝ちも無いと思うんだけどね
でも抜け殻になんかなりたくないから僕は・・・」
鋳鶴君は蒼い炎を右手に纏わせる
炎は激しく燃えて鋳鶴君の目の前に炎柱があがる
右手を包んでいた炎柱が消えると鋳鶴君の右手には刀が握られていた
その刀を持って鋳鶴君は見構えた左手を添え
結さんを睨み付ける用にではなく優しい視線で見つめた
結さんは狂ってでもいるのか両頬に手を添えてくるくる回っている
「刀を取る」
「鋳鶴はお姉ちゃんと剣道がしたいのか♪
仕方ないなぁ本気でいっちゃうぞ♪」
「やばい・・・この場状態の結姉には勝てる気がしない・・・」
鋳鶴君は大きなため息をつくと結さんに突撃を敢行した
ーーーードイツ軍令部ーーーー
「やぁ将軍こんにちはww」
そこには眼鏡の男が座っていた
いつも通りに若干笑いながら気分良く相手と接している
どうやら話している相手はドイツの将軍と呼ばれる人で
左胸に大量の勲章をつけている
眼鏡の男の左後ろには深紅に染まった髪を結んだ
赤峰さんが立っていたいつもの様な荒々しい服装ではなく
きちっと整理された服装、風貌をしている
眼鏡の男はというといつもどうり駄目な父親な格好をしている
左胸には勲章、ではなく美少女のプリントされた缶バッチを大量に付けている
他は割と普通の格好なのだがその缶バッチが女魔して異常な人間にしか見えていない
ドイツの将軍らしき男は血相も態度もまったく変わっていない
しかし将軍の両後ろ立っている兵士の二人は目を丸くして驚いている
眼鏡の男はスーツは着ているものの正直にいってラフな服装と言って良い
「やぁMr霧谷こんにちはかな?」
少しぎこちなく日本語が響く
将軍はドイツ語で機械のようなものに話しかけている
霧谷さんの前にもその様な機械が備え付けられている
どうやらその機械に話かけるだけで言語が変換され相手側に繋がる
といったシステムのようだ
「まだ研究は続けてるww?」
「研究とは何のことかな?」
将軍は両手を振り何の事やらとでも言わんばかりの態度をとる
「嘘は駄目だよ将軍ww
僕は知っているんだよね~ww
人工魔法使い生産の研究ww」
「なにをご冗談を
私どもはそんな研究などはしていませんよ」
将軍は再びしらを切る
「だったらこれを見てよww」
そう言って霧谷さんは大量の資料を机に叩きつけた