第57話:魔王と孤独な軍人少女
シャル君は降参しライアさんを救うために
2階へ向かった鋳鶴君
鋳鶴君はどうライアさんを救うのでしょうか・・・
注目の57話!
「私は独りぼっちではない
それは思い違いだよ望月鋳鶴
私は独りでは無いし独りでは軍も軍人も成り立たない
だから私は独りじゃないんだ孤独でも無ければ
友人がいない訳でもない
私は比較的に幸せだよ」
ライアは眉間にシワを寄せてそう言う
正直、今も銃弾が僕を襲っているというのに
彼女は顔色一つ変えずに人間の急所を狙ってくる
こんなに嫌われていると思ったのは久し振りだ
正直歩に、木刀で殴られるよりはましだけれど
「独りぼっちだよ
君は10年前のあの日から
ずっとずっと独りぼっちだ」
「お前に私の何が分かる
お前には関係ない私は任務を真っ当するだけだ
任務に私情は持ち込まないそれがドイツ軍人としての心得だ
お前は任務や戦闘に私情を持ち込むまったく恥じるべきだ
戦場で女を口説き騙し自分のものにする
私は嫌いだお前みたいな奴が」
嫌いなら僕を早く殺して見せればいいのに
さっきから一発も僕に弾丸が当たってないじゃないか
殺したいなら的を射抜く技能は最低でももっていないと
僕が全部弾丸を止めているのもあるのかもしれないけれど
それは考えないでおこう
母さんの拳に比べれば止まって見える
だってあの人の拳に比べれば全然遅すぎる
「なんでライアは独りで戦うの?
みんなで戦えばすぐ終わるしチームワークもはぐくめる
友達関係だって良好になるんだよ?」
「戦いは遊びじゃないんだぞ!
チームワークだの友達関係だの言っていたら死ぬそれが戦いだ」
「なんでそんな無理に軍人のふりをするの?
僕は素直な女の子が好きだな
ツンデレ萌え~とか猫耳萌え~とか
スク水ニーソ萌え~とかの属性じゃなく純粋に
そういう女の子が好きだよ」
「ほうなら私を嫌え
私を嫌って剣を取って私と戦え
それが出来ないのなら将軍に二度と顔を見せられぬ様に
此処で死ね!」
ライアが拳銃の次はロケットランチャーを召喚し僕に向けて発射する
僕はそれをひらりというか軽く回避してみせる
しかし追尾機能が付いていたらしくミサイルは壁の前で急カーブし
再び僕の方向へ向かってくる
ライアは今度こそ僕をしとめたともくろんだのかニヤリと笑う
正直こんなので僕を倒せるのかと思ったら大間違い
僕は追尾ミサイルを全てたたき落とし一度息をつく
煙幕や毒霧とか睡眠薬と同じ効果を散布する拡散弾だったら僕でも危ない
それだけかと一息ついていたら口を押さえている僕に煙幕を裂いて
ライアが僕の首目がけてナイフを突き付けてきた
「これがお前の甘さだよ
正直拍子抜けだな
あれほどの包囲から抜け出す事が出来る
本当は出来る奴なんじゃないかと思っていたが・・・
どうやら私の多大な勘違いだった様だ
お前は弱い私よりもシャルアよりもそして普通科の誰よりも!
私は負ける訳にはいかないんだ!
もう一度将軍に見てもらうんだ!
愚弟ではなく!手塩にかけて育てた1人の軍人を!
もう一度見て貰う!あの日の将軍を取り戻す!」
ライアはそう言って僕の首をナイフで突こうとする
でもライアの手は震えたまま動かない
僕の首に若干刺さりながら彼女は僕の首を狩ろうとはしない
「どうしたの?
もしかして此処まで僕を追い込んでおきながら怖じ気づいた
それとも・・・・・・人を殺す事が出来ないとか?」
僕は彼女の核心に迫る
ナイフの先端が少しだけ僕の首を刺していて
そこから鮮血が彼女のナイフを伝って地に落ちる
若干痛いが我慢している僕
虹野瀬のホッチキスの傷に比べればまだ軽い
「人は殺せる・・・お前なんていつでも・・・
でも私は迷っている・・・
お前を殺していいのか・・・本当に殺してしまっていいのか・・・と
将軍の命令は絶対だ
逆らうことなどもっての他、軍規違反や命令違反は銃殺刑だからな・・・
なぜだ・・・もう任務は成功の前にまでたどり着いているのに・・・
お前を刺しては・・・ここで殺してはいけない気がするんだ・・・
なぜだ・・・なぜなんだ・・・」
「それは君が弱いからだ」
「!?」
ライアの髪の毛が怒りを顕わにするかのように逆立つ
ナイフを再び僕の首に突き立て今にも掻き切らん勢いだ
僕の流血も先ほどより量が増している
「軍人の癖に今この戦場という中で
僕みたいな雑兵ぐらい討ち取れないなんて
まったくもって駄目軍人だなライア・ポーカハイド
ドイツ人はそんなものか?
お前の誇りはそんな物なのか?
たった1人の民間人を殺せんとは反吐が出るな全く
魔眼に頼らずとか言っていたな・・・
そんな事言ってると・・・死ぬぞ?」
「兄ちゃんどうしたんだろう・・・
いつもの兄ちゃんじゃない・・・」
怯えるゆりさん
仕方有りませんだって鋳鶴君は怒っているのですから
「鋳鶴・・・珍しく怒ってるな・・・」
「そりゃあそうだろう
だって日々のストレスを発散するチャンスだからな」
そういうことではありませんよ杏奈さん!
「人を殺すって事は・・・
その人の生きたかった人生を奪った事になるんだよ・・・
その人を思った人達が家族が!涙を流すんだよ!
それを考えた事はあるか?そんな事ないよなっ!
良く聞け・・・僕の前では誰ももう殺させない・・・
世界の屑共・・・首を洗っておけよ
大量虐殺なんてしてみろ・・・
お前等全員殺してやる僕が全部ね
覚悟しとけもう一度戦争なんて起こしてみろ
国一つぐらい軽く消してやるこの力で」
「狂っている・・・
世界を敵にまわすような事を言って
お前はどうかしている・・・」
「だってこうでもしなきゃ戦争は無くならない
だかたここまで言う
君みたいな可哀想な女の子を産み出さないように
世間に問いかけなくてはいけない
だからここまで言ったんだ君の為にね
別にいいさ僕は君と違って軍人じゃないし
自分の事とかあんまり好きじゃないから」
「まるで男はいいかの様な言いぐさだなしかし私は騙されんぞ
お前はペテン師で嘘つきでほら吹きだ
すぐに女に歩み寄り手を出し自分の物にする
私はそんなお前に騙されない
国のために!私の威信のために!将軍の為に!
お前を殺して全部リセットしてやる!」
全く最近の女の子はやる事なす事過激だよね
まぁそんな事言ってたらきりがないんだけどね
「全部リセットしてどうする?
それでライアの大好きな将軍は果たして変わるのだろうか
逆に愛弟を失ってその愛弟を殺した人間
つまり君の国の国土を全て血に染めるまで
破壊するだろうね何もかも人間でさえも
愛とは素晴らしく素敵で綺麗なものだよ
けれど愛し方によって綺麗か汚いかが決まる
全部リセットする事が悪いとは言わない
でもリセットを謝ったらその人の人生だけではなく
周りも変わってしまう
それに結姉は僕を殺したらもっと変わってしまう
君の大好きな将軍はもっと弟に執着し熱を入れ
今度は僕の代わりになる人間を捜す
そして君には何の興味も示さなくなる
今よりももっと」
「黙れ!口を塞げ!私の前から消えろ!
ペテンめ!つきめ!死んでしまえ!
死んで気づけ!自分の愚かさと無意味さに!」
ライアが僕に向けて発砲を再開する
でもここで避けたら彼女はさらに結姉への執着が激しくなってしまう
僕がどうにかしないと僕が彼女を救わないと
独りの戦士、独りの少女、独りの魔王科生徒
全部独り、孤独、相手との干渉、同情を嫌い
自分だけでいる事を好む
そしてなんと言っても結姉への執着
彼女は友達が居ないに等しい
百歩譲って彼女の友達はドイツ軍の少女兵士達だけだろう
僕は目立ちたくないしライトノベルの王子様主人公とか
友情努力勝利を掲げる漫画の中の主人公にとか
なりたいとかいう感情は一切無い
ただ彼女を救わなければいけない
心からそう思っている所
イタリア少女との約束、指切りげんまん
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
死ねっ!死ねぇぇぇぇぇっ!」
僕は全くライアの銃弾を避けようとしなかった
というより避けていれば彼女との間にさらに亀裂が入ると思ったからだ
正直に言うと激しく痛い物凄く痛い
激痛、悲鳴をあげたくなる程の痛み
ーーーー東京某所ーーーー
「ははっ!!!!!
見ろ霧谷!!!!!
お前の息子はあれほどのものなのか!!!!!?
正直言って健闘虚しく敵の銃弾をもろにくらっているが!!!!!
これはどう説明するんだ!!!!!!えぇ!!!!!?」
霧谷さんの部下の赤峰さんがブチギレまくっています
正直そんなに怒っていると男が逃げますよ・・・
「そんなことないさww
僕はまだ鋳鶴の優勢は変わらないと思うよww
だって鋳鶴はまだ決定打となるダメージを負ってないww
だから勝てるもうすぐ分かるよww
あとそろそろ行こうかww
結局体育体会は見れないけどww
僕等は今日仕事をしなくちゃいけないしねww
今からは赤峰君も真面目モードになることww
霧谷さんでたのむねww
本当に真面目な話をしに行くんだからww」
説得力全くありません
ここまで説得力の無い人見たことありません
「むぅ・・・
不本意だがしかたない・・・
分かりました霧谷議員」
赤峰さんはそう言うといつもの荒々しい燃えるような赤い髪を纏め
リクルートスーツに着替える
霧谷さんもいつもの駄目人間の様な服装から
何百万もすであろうスーツを着た
「さてww行こうかww」
霧谷さんは勢いよく扉を開いてその場を後にした
ーーーースタジアム2階ーーーー
「はぁ・・・はぁ・・・」
ライアは撃ち疲れたのか
ついに地面に腰から砕け落ちた
さすがにあれだけ撃てば心身も疲れる
彼女は全身から汗が噴き出しもう立つ気力も残っていないだろう
「これで分かったでしょ?
君は僕より弱いんだ
僕よりか弱くて普通の女の子なんだよ
ただ格闘技や射撃が得意なだけで
他は普通の人となんらかわらない普通の人間なんだ
みんな普通科と変わらない
ただ特別な事が出来る人間なんだよ
機械科なら機械を弄ったりロボットを作ったり
銃器科なら射撃が常人より上手かったり
科学科は超能力や科学の基礎がたくさん詰まった人ばかり
魔法科なら人より魔力とか詠唱力があるだけの人
魔王科は可愛い女の子達の花園かな
みんななんら変わらないんだ
だってみんなは生まれた時は何の才能もないただの赤ん坊なんだから
そこまではみんな普通科なんだ
それが努力、挫折、勝利、敗北、
そんな事を味わって数々の科に別れたり
有能、劣等が決まり貧富の差も生まれる
でもそんな事、僕には全くくだらないことさ
だってどんな人間だって僕よりはみんな普通の人間だよ
僕は魔王なんだから
見た目に似合わず人間として重い人や
将軍中毒の眼帯
弟好きでそれが止まらない人
その他諸々
なんら変わらないじゃないか
だってちょっと歪んでたり捻くれていたりするだけなんだから
歪んでいるのならただせばいい捻くれているのなら元に戻してあげればいい
左目が魔女の眼?上等だよ
僕が大好きな漫画やライトノベルではよくある事だよ
だから逆に親近感沸くというか興味が出るよね
僕は君を恐れない汚れを覚えない
だから」
僕は彼女にそっと手を伸ばした
「もういいんだよ
負けても、友達を作っても、軍規違反をしても
君は自由だ戦わなくていい銃を取らなくていいんだ
普通にオシャレしたりお化粧したり買い物したり
普通に過ごして良いんだよ独りじゃない1人の女の子として」
「黙れっ・・・!
ぜぇ・・・お前に・・・私の何が・・・わかるっ・・・!
私は醜い・・・!お前よりも!誰よりも!
この眼を見ろ!私のこの愚かで醜い眼を!
笑いたければ笑うがいいさ!
もう恥ずかしくもなにもないっ!
私には失う物など無いっ!
もう何も要らない!私なんてどうなってもっ!」
シパァン!!!!
彼女の怒声に不覚にも僕の右手が出る
呆気にとられ僕を見る眼帯を外した少女
独りぼっちの少女
琥珀色の魔女の眼で僕を見つめて
眉間に皺をよせ
「どうなってもいいだなんて言うな・・・!
自分を少しは大事にしろ!」
「なぜ・・・
私の眼を見て動いていられるんだ・・・」
「お前は僕が見てやる・・・
大丈夫・・・僕は君の左目を見ても何もないから
それに醜くなんかないさ
綺麗な琥珀色をしていて素敵だと思うよ
それにこの眼がなかったら君とは会えなかったのかもしれないからね
その眼は醜くなんてないライアと一緒にあることで役にたっている
だから僕はそれを拒絶したりしない
だって普通の眼じゃないか涙だって普通に今みたいに出ているし
見えない訳でもなさそうだし
泣いたっていいんだ
だってライアは普通の女の子なんだから」
僕がそう言うとライアは大声を上げて泣き崩れた
僕はそれをいつもの様にではなく宥めるように抱きしめた
説教を受け反省のあまり泣いてしまったときの昔の妹たちの様に
いつもよりもそっと優しく人肌が適度に伝わる温度で
そしてライアを転送すると僕は下の階を見つめず上を見た
空には曇天が広がっていていつもの時間帯よりも明かりが少ない
こんな曇天だけが広がっていると正直、自信なんて現れない
まだ倒すべき人は二人いる
二人も、だ
だけど弱音は吐いてはいられないと思う
だってこんなところで弱音を吐いたらみんなに申し訳ない
気がつくとライアに撃たれた弾痕が消えていて
見事に傷は消えていた
まるでそこに傷などなかったかの様に
「さて・・・
明乃さんと
結姉か本当に弱音を吐きたいよ・・・」
僕は重い足取りで明乃さんの待つスタジアム一階に歩を進めた
ーーーー空港ーーーー
「さぁて!もうすぐかいのぅ!」
サングラスをかけた白髪で長身な老人が勢いよく伸びをして外の空気をすう
老人には見えない程背筋はしっかりとまっすぐで老いを感じさせていない
服は半被のような服を着ていて背中には「望月」と書かれている
「そうですね~
鶴君の頑張っている姿を見られればいいのですが」
こちらは老人よりも背が高くきりっとした目付きをしている
頭には一本だけ不揃いな髪の毛が生えている
属にいうあほ毛というやつなのでしょうか・・・
「さて!観光はこれからじゃ!今日はスカイツリーを見に行くんじゃ!」
「鶴君の活躍を見に行くのでは無かったのですか・・・」
お付きの人は頭を悩ませながらその老人の後についていった