第52話:魔王と普通科の攻勢
普通科の面々が明乃さんの試合開始の準備と共に
落雷で倒れれるしかしそこには風間さんの秘策が・・・
落雷が鳴り終わり
明乃さんが妖艶な笑みを見せた後、
生き残ったというかまだ倒れていない3人で敵陣に突入を始めた
その様子を見て明乃さんは疑問を抱いた
「なんで・・・味方を置き去りにするのかしら
そういう科の人たちじゃないって聞いたんだけれど・・・」
「気にする事じゃない
雑魚が減ったところで何も変わらん
後、3人だ後がないから闇雲に突撃してくるんだろう」
「しょ!将軍!
敵は侮れません!
油断していてはこちらが負けるという可能性も!」
ライアさんが結さんの裏から現れ
結さんに普通科を侮ってはいけないと諭します
しかし結さんは聞く耳を持たず全くと言って良いほど微動だにしません
ライアさんは冷静になると腰に巻き付けたホルスターから
漆黒の両拳銃を取り出しました
そして一度拳銃に手を添え上下にガシャゴッ!と銃をリロードしました
彼女はリロードを終えると歩を進め普通科の面々の進行を食い止めに向かいました
「良いご身分だね?
実に此処は見晴らしがいい
僕もこういう所に座りたかったかな?
明乃君と君だけになるのを想定して今、僕は此処に来た
そして君と戦いに来たんだ会長としてね?
始めに言った通り僕等は負ける気は無いさ
そして今、前言を撤回しよう
彼女が来てしまった限り僕は必要ない
それに君の相手は彼女がちょうど良いはずだ
だからお願いするね?」
風間さんが流暢に話すと風間さんの後ろから
人影が現れた
髪型はいつも通りのポニーテール
しかし制服では無く侍の袴の様な服を着付けた
三河さんがそこには居た
「僕は彼女を送り届けたまで
だから此処からおさらばしようね?
僕も明乃君も此処に居ない事が普通なのだから?」
風間さんは自分の能力を明乃さんと自分に使った
そして光が二人を包み下半身から消えていく
明乃さんにも風間さんにも動揺はこれ一つと無かった
三河さんはまっすぐに玉座の様な椅子に座る結さんを見つめた
鋭い眼差しでまるで剣を相手に突き立てる時の剣士の様に
視線が合った瞬間、結さんが玉座から腰を上げた
三河さんは結さんに刀の切っ先を向ける
それに答えるかのように結さんは無言で腰に降ろした刀を鞘からゆっくり抜いた
歩さんの叫び声ですさまじい衝撃と共に剣士対剣士の戦いが始まった
ーーーースタジアム二階フロアーーーー
「なんで私を転送したのかしら?
それもこんな所に」
明乃さんが鋭い視線を風間さんに向ける
風間さんはまぁまぁと言いながら明乃さんを宥める
明乃さんの鋭い視線は変わらずずっと風間さんに鋭い視線を向け続けている
風間さんはやれやれと言った形で手を振ると明乃さんの居る方向に視線を向けた
「なぜそんなボロボロの体になるまで
あなた達も結も彼に執着するのかしら
まるで宝物を追う海賊達の様に・・・」
明乃さんは鋭い視線のまま風間さんを睨む
いつもの妖艶な笑み抜きの本気の睨みを
「そんな野蛮な人たちと同じにしないでほしいね?
実に不愉快ではないけれど彼らが聞いたら僕は凄く怒ると思うよ?
僕等は彼抜きではもう戦えないのかもしれないね
彼がいなかったらこんな華々しい舞台に来る事も出来なかった
彼が居て彼と居て僕等は変われたのかなぁ?
彼が居れば周りの人間が励まされて笑顔が生まれて元気になる
君は知れないと思うけれど彼は表彰状をたくさん貰っているんだよね?
僕や雛罌粟、会長クラスなら誰でも持っているような
検定の賞状でも無ければくだらない事の書かれた文脈でも無い
感謝状の表彰状だよ
たしかにこれを言ったところで内申とか成績とかにはあまり関わらないだろう
彼は愚かでお馬鹿で間抜けで女性に頭が上がらない所がある
でも彼は誰にも負けない一番のものを持ってる
僕や雛罌粟なんかじゃ勿論、会長クラスでも取れない持たざる事の出来ない
一番の異能と言えば異能」
明乃さんは風間さんの話に聞き入った
先ほどまでの鋭い目付きでは無く人の話を聞く時の目で
「君も知っているはずだよ?
彼の才能ではないけれど自然とにじみ出てるもの
勿論、彼自身が魔王と言う事でもなく膨大な魔力でも無く
彼の周囲の人間、家族が凄いとかじゃなくてね?」
風間さんは一度大きく息を吐いた
まるで言いたい事を先延ばしにする様に
「優しさだよ」
その一言を耳にすると明乃さんは彼と魔王と過ごした少ない時間を思い出した
少しだけいつもの自分を忘れて過ごせた日々を
「本当に彼にはビックリしたよ?
規格外だし?魔王だし?家族の人たちはみんな凄いし?
でもそんなのどうでも良かったんだよね?
だってそんなの普通科にはいらないからね?
でも優しさだけじゃこの厳しい世の中を生きていけないんだよね?
でも彼はそれを考慮して優しさを振りまくのさ
そうマザーテレサみたいな?聖女みたいな?
多分、彼自体は気づいてないと思うけどね?
彼の事を良く知っている僕たち<普通科>は彼が何よりも一番凄い人間だと思っているよ?
一番の有名人だしね?それに彼は魔王とかいう全く不名誉なあだ名がついているけれど
みんなは望月君を恐れてつけているんじゃないんだよね?
優しくてと~っても強かっただから優しい魔王?だっけ?
まぁ強いといえば魔王っていうのもおかしいけどね?
いやぁ・・・正直に言うとさ?僕は普通科のみんなの為に彼を取り戻さなきゃいけないんだよね?
だって彼がいないと普通科が暗い感じがしてさ、
高等部でも彼は評価されているよ優しい魔王まさにそのままだねってね?
こんだけ望月君を欲しがっていても僕は全力を出し切れていない
でも今日は残された体力で全力を尽くすよ?
僕は壊れろとか負けろとか死ねとか殺すとかそういう暴力的な事は嫌いだよ?
だから今、君の前で体力を失ってでも僕はある一つの言葉を言ってみせるよ?」
風間さんの発言にハッとし
明乃さんは杖を早急に天に振りかざし落雷を落とす
風間さんはそれをまるで普通の事の様に避ける
これが圧倒的普通者
ーーーースタジアム1階大部屋ーーーー
「こんなガキが俺の相手かよ・・・
拍子抜けだな・・・」
城屋さんの見つめる先には両拳銃を携え
城屋さんに今にも射撃しそうな形相で城屋さんを見ていた
頭を三回掻くともう完璧に会得したかの様に赤く猛々しい気が城屋さんを包んだ
両手にはお経の様な難しい字が連なって刺青の様になっている
しかしそんな形相も雰囲気も変わった城屋さんを見てライアさんは
一向に驚きも見向きもしない城屋さんなど眼中に無いかのように
「私は将軍の命令を遂行し将軍に仕えたいだけだ
しかし将軍は私を見てくれない
あんなゴミの様な弟なんかよりも有能な私がいるというのに・・・
なぜだ・・・あの人は変わってしまった・・・
お前達が今救う者のせいで望月鋳鶴のせいで!
優しかったあの頃の将軍は消えてしまった!
全部!貴様等のせいで!将軍は笑うのを辞めてしまった!
誰よりも何よりも笑顔が似合う将軍を貴様等が変えてくれたんだ・・・
覚悟は出来ているな・・・・?」
ライアさんは銃を構えると城屋さんは拳を構えた
「んな事しらねぇよ俺は何もしらねぇ
ただ友人というか腐れ縁で結ばれてる奴を普通に助けに来ただけだ
てめぇの将軍とか鋳鶴の恨みとかは関係ねぇ
それに聞いたぜ?何処ぞのお偉い軍人さんは私情を戦場に持ち込まないんだってな
ということは、だお前はまだ兵士としても人間としても未熟のあるガキって事さ」
「貴様ぁっ!」
ライアさんが両拳銃で城屋さんに発砲をする
それを城屋さんは飛んでくる銃弾に対し銃弾を横から掠め取るといった感じで直撃を防ぐ
ライアさんが拳銃を連射して距離をとっているうちに城屋さんとの距離を離しているようだったがしかし
城屋さんは着々にライアさんに迫っていたライアさんの発砲し続ける銃弾を全て落としながら
一歩ずつ着々と
「だからガキんちょじゃあ
俺を倒せないって学習しな」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!」
ライアさんが先ほどよりもさらに両拳銃での連射攻撃を早くしています
でも城屋さんは余裕の表情を見せライアさんの怒りが詰まった弾丸は
無惨な程に城屋さんの足元に転がり落ちています
ライアさんの激昂は止まらずなおも城屋さんを撃ち続けます
「自分の事を大事に出来ねぇ奴は自分からやられていくんだよ
そんな奴に俺は倒すことも!地に這わせる事も出来ねぇっ!」
城屋さんはライアさんの胸ぐらを掴んで地面に叩きつけようと放り投げる
しかしライアさんは先ほどのまでの激昂はなんだったのかと思わされるほど
冷静にそれを対処し城屋さんに柔道技をかけ城屋さんを投げ飛ばす
それに対応できず城屋さんは激しく地面に叩きつけられた
再び立ち上がると城屋さんはライアさんに一撃お見舞いしようと右拳を思いっきり突き出す
それをライアさんはしなやかな腕と素早さで体重の差をカバーし城屋さんを再び投げ飛ばす
「やっぱり演技か・・・
一筋縄でいかねぇ事は分かってる
俺は魔王科の奴と喧嘩したことねぇし勝った事もねぇしな
まぁ戦ってないんだから当たり前だなでもこっからは手加減無しだ
あんた等は強い演技も上手ぇうえにべっぴんばかりときた」
城屋さんは指と指を重ね合わせ指を動かす
関節のこすれ合う音が鳴る
ライアさんは首を回しコキコキと音を響かせる
「まさか一見でばれるとはな
私もまだまだ未熟者の様だ
約束しよう私は貴方を一分で地に這わせてみせよう
この大観衆の前で全国ネットの放送でな」
ライアさんはニコッと笑うと城屋さんの頭に怒りマークが浮かんだ
「ああっ!?
んだとやれるもんならやってみやがれっ!」
城屋さんが再び右腕を振り抜きライアさんに一発を浴びせようとする
今度はライアさんが城屋さんの足元を一蹴、鋭く早い蹴りに城屋さんは
バランスを崩され転ぶ形で地面に倒されてしまう
ライアさんは倒れた城屋さんに向かって拳銃で銃撃を開始する
城屋さんはそれを転がって回避すると今度はライアさんにその剛脚で回し蹴りを繰り出す
それをライアさんはジャンプして回避し銃を脚に撃ち込む
剛脚から血が流れる城屋さんは脚から起きる激痛を堪えて
右脚を引きずりながら左足で回し蹴りを決めようとする
ライアさんは再びそれをジャンプで避ける再び拳銃を構え城屋さんの両足を潰そうと
リロードをし城屋さんの左足の太腿に銃口を向ける
しかしライアさんが銃口を向けた途端、城屋さんが右腕を振りライアさんの右手から銃を弾く
左手の銃でライアさんは城屋さんの右腕、二の腕当たりを打ち抜く
「うぐっっ・・・!」
今度はさすがの城屋さんも悲鳴を上げる
悲痛な激痛を催したときの叫びと呻き声が観覧席、テレビ越しに伝えられる
城屋さんは右脚と左足からの激痛に耐えなおも立っている
補助無しで血が流れ落ちている部位を抑えずに
1人の男を救うために男は立っている
すでに傷でのダメージで脂汗が滲んで体が照っている
汗が傷に染みこんでさらに激痛を増す
しかし男は立ち続けた敵も分かっている男は既に限界なのだろうと
右脚の太腿と右腕の二の腕を撃たれて顔色一つ変えない人間はいない
鬼でも銃弾を撃ち込まれたら痛いと感じるだろう
鬼といっても外見は人間なのだから
魔王も鬼も普通者も将軍も重みを得た少女も元を辿ればただの人間なのだから
心に痛みを感じる事もある
体に痛みを感じる事もある
しかしその二つの痛み、本当は絶叫したいほどの激痛を抱えながら
鬼は眼帯の少女を見つめその場で立ちつくしていた
「あんた相当のやり手だな・・・
ガキと思って油断してたぜ・・・」
鬼は立ちつくしたままそう言った
いつもの様な野太く、強く、猛々しい声ではなく
掠れた弱り切った老人のような声色で
「でもよ・・・
やっぱり渡す訳にはいかねぇんだよ・・・
あんた等の・・・てめぇらのわがまま将軍の物になんかよ・・・
したくねぇんだよ・・・あいつを・・・鋳鶴を・・・
だからっ・・・!」
鬼は瞬時にしてその場から消えた
眼帯少女は目を疑う、赤い闘気と鬼の視線が一気に気配を消した
眼帯少女が眼帯をゆっくりと外す
そした動き出そうとしたその時!
「・・・・・・・・・!」
男が現れ右手を振り抜いた
しかしその拳は少女の眼前で虚しく止まった
少女の髪の毛が鬼の最後に振り抜いた右拳の拳圧と風圧で逆立ち
整えられていた髪型を滅茶苦茶にした
ほんの数ミリ届いていないだけでこれほどまでの威力
だが眼帯を取った少女の敵では無かった
「残念だったな
私の左目は相手を硬直させる事が出来るんだ
私の左目の視界に入った物はどんな物であれと硬直させられる
だから私の左目の視界に入らず倒すか私が眼帯を外す前に
私を倒すしか無いのだ仕方のない事だ
鬼の力を私もなめていた
良い勝負だった城屋誠」
ライアさんは眼帯を再び装着すると
その場を後にした
城屋誠脱落
ーーーースタジアム1階ーーーー
「つまらんですなぁ
普通科の人間はもう後3人楽な勝負」
ミン・ランチェさんが休息をとっていた
日々の鍛錬で外出している為彼女の肌はほどよく茶褐色になっている
青色に染まった髪を短く牛の尻尾の様に結んだ髪を揺らし
お茶菓子を食べて誰かが来ないかを待っている
勿論、普通科の人間をその両拳の関節を鳴らしながら
彼女の胸には何かのバッチがつけられていて二本線に星が一つ付けられている
「やっと来たかな?」
彼女がスタジアムの入り口に視線をやるとそこには
普通科の明乃さんの落雷をもろに喰らい、
開始1秒で倒れていたはず黒こげになっていたはずの5人がいた
1人1人、変わり身でも無ければ普通な黒こげになり脱落する筈
しかし彼らに黒くなった所は全くといっていいほど無かった
「あんたら意外と馬鹿なんだな
俺たちに騙されるなんて馬鹿馬鹿しいぜまったくよ」
「ここは私と影太に任せてお前等は
ライアって奴とシャルアって奴を頼む」
荒神さんが満足気にそう言った
「任せろ・・・」
エロフェッショナルが珍しく真剣味にあふれた表情をしています
その真剣味溢れる表情を見て雛罌粟さんと赤神君と鈴村さんは無言で頷きました
そして三人が走り出すと二人は共闘の構えをみせミンさんの前に立ちはだかった
「いいの・・・かな?
5対1ならまだ勝機があったと思うのにな
でも2人といっても私は手加減しないよ
それに二人とも弱そうだし」
ミンさんが余裕そうに拳を振ってスカートの丈を気にせず脚を上げて構える
それを見てエロフェッショナルは鼻を押さえている美脚と色んな意味でチラリズムを目撃して
「ムエタイか」
「そちらはボクシングですか
全くそんな弱々しい武道をやっているなんて・・・」
荒神さんは美脚ですが足技は使いません
まさにこれは美脚対決でしょう!
しかし荒神さんはブチギレ寸前です
ボクシングを馬鹿にされて正直腹がたったのでしょう
既に拳と拳をぶつけすぎて若干赤くなっています
「おいてめぇ・・・
ボクシングなめんなよ・・・
てめぇのムエタイこそクソスポーツにもはいらねぇよ!」
荒神さんはそこまで言って大きく息を吸った
「普通科もボクシングも馬鹿にすんじゃねぇよ
窮鼠猫を噛むって知ってるか?
たまには弱い奴も本気でやれば強いのもやれるんだよ!」
まったく意味が違います
意味を知りたいかたはネット検索へゴー!
荒神さんがそう言うとミンさんも額に怒りマークを浮かべました
表情はニコニコしたまま屈託の無い笑みを浮かべています
「そうですか
でもボクシングには脚という欠点があります
それをどう生かして捨てて私のムエタイと戦いますかね?
異種格闘技というのはどう相手の武道の技をよみ知り戦うかです」
「んな事ぁガキでも分かる
私は全力を尽くして最低でもあんたと引き分けてやる
いくぞ影太!」
「・・・おっ・・・おう・・・!」
少し気合いを入れる必要がありそうなエロフェッショナル
そしてお互いの一撃目、ミンさん荒神さんの頬に
ミンさんの右手と荒神さんの拳がぶつかり両者とも勢い良く吹っ飛び
両側の壁に打ち付けられた