第51話:魔王と姉弟喧嘩そして開戦
始まってしまった結さんvs鋳鶴君
勝算はあるのでしょうか・・・
鋳鶴君は体育体会に参加できるのでしょうか・・・
「鋳鶴
変わってないな昔から」
「昔?だいぶ変わったと思うけど?」
剣撃を避け
相手の技を避け
拳を避け足技を避ける
人が辛うじて見える速さの剣撃を鋳鶴君は魔王の炎でそれを防ぐ
剣撃は上下左右、右往左往まるで剣の軌道の概念を覆しての攻撃が多い
鋳鶴君はそれを辛うじて防ぐのみしか出来なかった
まだ自分の力を使いこなしていない上に経験の差もある
それも7年分、結さんは産まれて3年で竹刀を握ったのに対して
鋳鶴君が初めて喧嘩や竹刀をとった事があるのは10歳
成長するにつれ二人の力量の差は歴然となった
そして7年の差は歴然一方的な戦況になっていました
「弱くなったか?
平和ボケのしすぎで大分弱くなったな鋳鶴
お姉ちゃんはガッカリだお前の没落ぶりは」
「没落?
それは思い違いじゃないのかな
僕はちゃんと強くなっているし握力や筋力も昔とは違う
結姉が思っているよりも僕は強くなっているよ
遥かに結姉よりも強くなってるかもしれない」
「口だけは達者だな
昔からそうだしかし
今のお前には口だけしかない
普通科という環境に慣れ没落し
腐っていった鋳鶴に私が負ける要素は何一つ無い」
結さんはそう言うと鋳鶴君の足元に足払いを掛ける
鋳鶴君はそれに引っかかり転倒しそうになる
しかし鋳鶴君はそれを逆手に取り右手一本で地面を押し
結さんの顔面目がけて蹴りを入れようとするまるでそれを狙っていたかの様に
結さんは鋳鶴君が蹴りを入れをした足を掴み投げ捨てる
そこからまた立ち上がり今度は足で地面を勢い良く蹴り鋳鶴君が右拳を当てようとする
結さんは飛んでくる鋳鶴君の鳩尾に膝打ちを入れる
見事に入り込んだ膝打ちのコンボにと結さんは畳み掛けるように真剣を鋳鶴君に向け振り下ろす
振り下ろされる前に鋳鶴君はその真剣での一撃を魔王の炎で辛うじて威力を弱める
ただ辛うじて弱めた真剣の一撃は鋳鶴君の腕にダメージとして残った
斬撃は弱める事は出来ても金属による剣の振り下ろす一撃の軽減は望めなかった
斬撃を失ったとしても金属としての打撃は鋳鶴君の力ではまだ軽減出来なかった
鋳鶴君の右腕は赤く腫れいかに結さんが強く振り下ろした事がありありと分かる
「ぐうっ・・・!」
「これが戦うということだ
未熟者が戦うとか守るとか抜かすな
この程度の一撃まだまだ序の口だぞ?
私はまだ五分の力も出していないというのに
それでも私の弟か?」
冷徹な眼差し発言で鋳鶴君を冷たく結さんはあしらった
鋳鶴君は何も言い返せないのか鋳鶴君はしばらく動かなくなった
結さんはそんな鋳鶴君を見て突撃を開始する
真剣を低く構え先ほど投げ飛ばした鋳鶴君の元へ地面を思いっきり蹴り飛ぶ
鋳鶴君との間合いを拘束で詰め寄り真剣を再び先ほどと同じ容量で振り下ろそうとした
しかし振り下ろそうとする前に鋳鶴君はその真剣の柄を持ち真剣ごと結さんのお腹に足を入れ
柔道の技の様に結さんを投げ飛ばした
と思ったのも束の間、結さんは投げられている間に空中で体勢を立て直しダメージを軽減した
「柔道技とはな
それもお前の甘いという証拠だ
だから勝てないのだ及ばないのだ私に
15年間生き続けた命で私に一度も勝てなかった
そんなお前に私が倒せると思っているのか?」
真剣を振り回しながら結さんは鋳鶴君にそう問いかけた
鋳鶴君は激痛の走る右手を抑えながら脂汗をかいている
「今まではっ・・・!
って事にしようよ・・・!
これからの人生僕は絶対、結姉を倒す自信はある・・・
今はこんなに結姉に対して弱かったとしても・・・
勝つ、誓う!勝利すると!貴方にだけは!絶対に勝ってやる・・・!
完膚無き迄に叩きのめしてやるっ!結姉っ!」
「お前を此処まで叩きのめして・・・
鋳鶴、まだ私を姉と呼ぶか・・・
良いことを教えてやろう
望月壱拾弐ノ剣方には数の通り12分の型がある
これは私たちの母望月雅の父親、つまり祖父の望月三十朗が編み出した剣撃
第壱式 睦月、第弐式 如月、第参式 弥生、
第肆式 卯月、第伍式 五月、第陸式 水無月、
第漆式 文月、第捌式 葉月、第玖式 長月
第拾式 神無月、第壱拾壱式 霜月、第壱拾弐式 師走
これが望月壱拾弐ノ剣方だ
様々な剣方に合わせ様々な斬撃を作り出す
私が一昨日披露したのは睦月
第壱式自分の刀を腰に当て相手に近付き一気に振り抜き相手を一刀両断する
一昨日は刃の手入れを忘れていたからお前は分断されずに済んだんだ
今日は本気で切ろう・・・」
そういうと結さんは真剣を腰に当てた
鋳鶴君は当てられまいと結さんが構えを作る前に結さんの間合いに入った
結さんは鋳鶴君が間合いに入って来たとき僅かに微笑した
まるで獲物が罠にかかったのを見る猟師の様に
鋳鶴君が間合いに入って結さんが剣を振り抜く前に右拳を振り抜き結さんの顔面を狙い
スクリューのかかった右拳を振り抜く
しかし無惨にも鋳鶴君の右拳は届くことは無く鋳鶴君の胸から血が噴水の様に溢れ出した
「なんでっ・・・!
睦月はっ・・・この間合いでは使えないはずっ・・・!」
「学習能力が無いな鋳鶴、
何度も同じ技を使う訳が無いだろう
今のは如月、構えは睦月と全く同じだが技の内容が違う
振り抜く動作が全く違うんだ
相手が私の間合いに詰め寄ったときに使う技だよ
腰に当てた剣を垂直にではなく相手の胸目がけて一気に振り抜く刀を縦にして
それでお前の胸が切れると言うことだ惜しかったな
お前の負けだ鋳鶴、今日はもう遅いもう寝た方が明日も快適に努める事が出来るぞ」
鋳鶴君に背を向け結さんは去ろうとする
鋳鶴君はその去ろうとする結さんの足を掴んだ
血みどろになった手でしっかりと力強く結さんの右脚を掴んだ
「まだ・・・負けてない・・・
僕はまだ・・・戦える・・・!
僕は普通科に帰るんだ・・・!
戻るんだ!僕はみんなの所に帰らないといけないんだよっ!」
鋳鶴君の掴んで手を足で一蹴しふり解く結さん
左胸の炎が全く弱まらないのを結さんは見た
まだ鋳鶴君の胸の蒼い炎は燃え尽きようとしない
それどころか最初よりも激しく強く燃えたぎっていた
「もうお前の負けだ
諦めるという事も大切だぞ?
此処で命を散らせたいか?
お前の大切な者達なんかの為に
自分の命を此処で散らすのか?」
「構わないさ・・・
僕は・・・死なないから・・・
絶対にこんな所で・・・みんなの所に帰るんだよっ!
だから・・・僕は・・・!ここで!お前を倒すッ!」
鋳鶴君の胸の炎が激しさを増す
鋳鶴君は胸から血を流しながら
結さんは怒声混じりの鋳鶴君のセリフに反感を抱いた
ーーーー誰だ・・・私の鋳鶴をこんなにしたのは・・・ーーーー
ーーーー腐らせ・・・没落され・・・魔王にして・・・ーーーー
ーーーー昔の素直になった鋳鶴を返して貰おう・・・ーーーー
ーーーーここで鋳鶴を切り捨てて・・・ーーーー
鋳鶴君が右手に蒼い炎を纏わせ結さんに特攻をしかける
そして鋳鶴君が一定の間合いに入ると結さんは型を作った
先ほどの睦月、如月とは違い刀を頭より上に持ち振り下ろす様な型を取った
そしてそこからさらに刀を手前に持った鋳鶴君が間髪入れずに特攻を継続する中
結さんは剣を構えた鋳鶴君が自分の間合いギリギリに入るまで
叫びながら特攻を仕掛ける鋳鶴君を見据えて
結さんは剣を真横にして思いっきり振り抜いた
実の弟を斬る事になんの躊躇いを持たず容赦なく真横に振り抜いた
ザシュ!という音が周囲に響く無惨にも鋳鶴君の胸にはもう一つ切り傷が作られていた
そこからまだ新しい鮮血が流れている
倒れた鋳鶴君を見て結さんは剣を強く握った
そして剣を振り上げる冷酷に冷淡な目で鋳鶴君を見据えて
結さんが鋳鶴君に向かって剣を振り下ろしたその時
一筋の影が鋳鶴君を結さんの目の前から連れ去った
結さんは連れ去った人間を見る前に剣を振った
布地が破れる音がする
結さんは連れ去った者を視認すると深く息を吐いた
「結・・・もう良いでしょう・・・?
もう止めて・・・これじゃあ鋳鶴君が可哀想よ・・・」
鋳鶴君を連れ去ったのは明乃さんだった
寝間着の着物を着ていたのだが結さんに斬り裂かれ下着姿になってしまっている
鋳鶴君は血の流しすぎか先ほどまで灯っていた蒼い炎は完璧に消されていた
明乃さんの瞳には若干潤んでいる
「明乃・・・鋳鶴を寄越せ
血が付くぞ?早く私に渡せ」
「結・・・
明日どうせ手に入るわ・・・
望月君はどの道私たちのものになるのよ・・・
だから今日はゆっくりさせてあげましょ・・・?」
鋳鶴君の血が全身に付き明乃さんの体は赤く染まっている
結さんは再び深く息を吐いた
「そうだな・・・
明乃、お前も用意しておけ
明日は奴等を完膚無きまでに・・・
叩きのめす二度と立ち直れないように
鋳鶴に声もかけれない状態にしてくれる」
「結っ!」
明乃さんの呼びかけ虚しく結さんはその場を後にした
鋳鶴君は胸から血を流し続けたまま動くことは無く明乃さんはそんな鋳鶴君の姿を見て涙を流した
「結・・・どうして・・・
どうしてそうも変わってしまったの・・・?」
明乃さんは血まみれの鋳鶴君を抱いたまま固まってしまった
ーーーー望月家ーーーー
「お姉ちゃん達~明日普通科の決勝戦なんだって~!
見に行かなきゃね!」
「そうだな
明日は結対鋳鶴みたいなものか」
「明日は・・・仕事を休むか・・・」
八女の神奈さんが家に居るお姉さん達に大きな声で話しかける
その大声に家いた次女の杏奈さんと恐子さんが返事を返す
恐子さんはチップスをかぶりつきながらテレビを見ている
杏奈さんは鋳鶴君が居ない為皿洗いをしています
ゆりさんは部活の軽音部かなんかで帰りが遅くまだ家には帰ってきていません
「それにしてもお兄ちゃん、
いつまで魔王科の中でお勉強してるのかな~」
「まぁいいんじゃないか?
鋳鶴には勉学が必要だ
家庭科と体育だけが取り得の人間は中々いないが
それだけでは生きていけないからな」
「まぁ・・・勉強できなくても・・・
飯を作れりゃあ生きていけるだろ・・・」
「でも結お姉ちゃんが敵だなんてお兄ちゃん可哀想、
だってお兄ちゃん優しいし・・・
私たちでも女だから手を上げられないだろうし・・・」
ゆりさんが心配そうに考える
それを見て杏奈さんは何を言ってフォローしようか迷っている
恐子さんは無作為にチップスの袋をあさりずっとテレビの方を向いて
こちらに振り返る様子はありません
しかし恐子さんはチップスを食べるのを止めるとゆりさんの方向に
体を横たわらせた
「あいつはやる時はやる馬鹿だよ・・・
私と拳を合わせた事もある・・・
まぁその時は右腕をへし折ってやったがな・・・
鋳鶴は本気になれば私たちみたいなか弱い女にも暴力をふるう
しかしそれは多分、私たちのような強い女にだろう
あいつはいつでも最善を尽くすつもりでいる・・・
今までの体育体会でのあいつを見てみろ・・・
三河の危機に騒然と駆けつけ、神宮寺と虹野瀬を抱いた男だぞ?
抱いたかは知らんがだがあいつは絶対に良いところで来たり何かを起こしたりする
あいつは今までの人生、後悔の塊だった
だから正直に言おう明日、応援しに行って鋳鶴の大切な人を応援席に立たせる
私は見たい今まで覆らなかった力関係が覆る所を・・・
あいつが15年も結に敵わなかったんだ・・・
そろそろあいつに勝たせてあげないとな・・・」
「大切な人って・・・
お兄ちゃんの大切な人たちは・・・
もう・・・」
「恐子・・・それはできんぞ・・・
死者を生き返らせる事は・・・現代医学の最先端の母さんでも無理なんだ
そんな事を恐子・・・お前が出来るはずが・・・」
大切な人はまだ確かにいるがそれはいつも鋳鶴君の近くにいる
普通科の人、家族、高橋さん、そして無くなった沙綾さんともう1人の女性
鋳鶴君にはたくさんの大切な人がいる
しかし恐子さんの考えの中の鋳鶴君の大切な人一覧にはある1人の人物が入っていた
もしかしたら雅さんをも超える強さの持ち主にして中学生の鋳鶴君に喧嘩を教えた人
「はっ・・・
誰が死んでいる奴と言った・・・
私はそいつを呼ぶ私たちに・・・細かく言えば
ゆりと神奈以外の私たち姉弟に喧嘩とか能力とかを植え付けたというか
個人の特製を生かしたその人間の私達の能力を見いだした人を
連れてくる鋳鶴は多分、その人を見れば奮起するだろう
恩人には負ける所は見せられないからな・・・
私も杏奈も柚希も真宵も梓も結も鋳鶴もその人の前では負けたくない
欠点をあまり見られたくないんだ・・・
まぁ・・・鋳鶴より上の姉妹でその人の事をまだそう見ているのは
私しかいないと思うがな
そして+あいつも帰ってくるからなアメリカから」
「梓が帰ってくるのか!?」
梓さんの名前を聞いて驚く杏奈さんでも
誰だその人は?ってな感じで考え込んでいます
いくら頭が良くても分からない事があるそうです
梓さんの事は神奈さんも理解しましたが喧嘩を教えた人なんて分かるはずがありません
だって神奈さんは教えられてませんしそれにあまり家に来ない人なのでしょう
それにしてもこんなとんでも家族の姉君達と鋳鶴君に喧嘩や個人的に秀でている能力を
見つけた人とは一体、私も気になりますねぇ・・・
「誰?梓お姉ちゃんが帰って来るのは嬉しいけど
お姉ちゃん達に色々教えてくれた人って誰?」
不思議に思う神奈さん
杏奈さんはまだ考え込んでいます
そんな二人を見てか恐子さんは再びチップスをあさり口に放り
テレビの方向へ寝ころんでしまいました
ーーーー望月家付近ーーーー
その頃ゆりさんはというと・・・
「お腹減った~・・・
でももうすぐ家だから我慢~・・・」
軽音部を終えてやっと帰省していました
ちなみにゆりさんはなぜ軽音部に入ったのかというと
アニメの影響です某軽音楽部のアニメを観て触発されたそうです
まぁ軽い子です基本的にアニメ見ますし深夜も起きてますからねぇ
正直彼女は鋳鶴君とうり二つというか人間的に駄目では無いんですが鋳鶴君と趣味が若干かぶります
ゆりさんは望月家で一番の元気者で活発さんです
それに困った人や弱い者いじめを見逃せない正義の味方的な人なのです
「あれ?傷だらけの人がいる・・・
助けてあげないと」
ゆりさんは裏路地に目をやるとそこには
黒いスーツを着た金髪の男性が体に傷を負い裏路地の壁にもたれていた
ゆりさんはその人の近くによるとその人を優しく叩いて意識がある事を確認する
「うっ・・・なんだ・・・あんたは・・・・」
黒いスーツの男はゆりさんを睨みました
しかしそんな睨んだ視線に負けずゆりさんはその人にパンを差し出しました
「あげる!
私、家近いからこれ食べて元気出してよ
あと住所と名前教えて救急車呼ぶから」
ゆりさんが差し出したパンを男は手ではじき飛ばした
「いらねぇ・・・
俺はどうせここで死ぬんだよ・・・
あんたの助けなんていらねぇよ・・・
だからそのパンはあんたが食べな・・・
俺なんかにゃもったいねぇよ・・・」
ゆりさんははじき飛ばされたパンを掴み
黒いスーツの男性の口に押し込んだ
押し込まれたパンをはき出すスーツの男
ゆりさんは吐き出したパンを男に食べさせようと奮闘します
しかし男性も粘りますゆりさんの手を必死にふりほどき
パンを押し込まれるのを阻止しています
ケガしている人とは思えないです
「パン食べてよ!
死んじゃうんだよ!?」
「うっせぇ・・・
どの道もう死ぬんだよ・・・
もうおせぇ・・・」
「もう!仕方ないなぁっ!
病院に運ぶから!
もう体力とか無いんでしょ!?
それじゃあ早く行くっ!」
ゆりさんはそう言うとスーツの男性を担ぎました
男性はいきなり担がれてビックリしています
しかし先ほどのゆりさんとの色んな意味の激闘で体力を消耗し
反撃、反抗させる体力を余していませんでした
「なんでだ・・・
なんであんたは見ず知らずの俺を救う・・・
あんたの好意を俺は無情にもはじき飛ばしたんだぞ?
あんたはパンを食べれなくなって余計に腹が減る
そして今俺を担ぐ事で余計に体力が落ち挙げ句の果てに
俺を担いで病院に運んでやがる・・・馬鹿かあんた・・・」
「あのね
私には兄ちゃんがいる
情けなくて優しくて女の人に頭が上がらない
超ヘッポコーで超弱弱なんだ
でもね私は兄ちゃんが大好きなんだ
そんな兄ちゃんはさ誰よりも救われない人を大事にするんだ
それで私に言うんだ
誰かに救われるんじゃなくて誰かを救う人間になれってさ
だから私もその兄ちゃんの教え的なのを守って
色々してるんだよね~
お兄さんは見た目は厳つい人かもしれないけど
私のお母さんよりは全然怖くないから全然大丈夫!
だから心配せず私に担がれてればいいんだよ
安心して絶対にお兄さんを救ってみせる!
だって御礼とか欲しいし!」
「あんたって・・・おかしい人だな・・・」
スーツの男はそんなゆりさんの発言を聞いて微笑した
ゆりさんもその表情を見てゆりさんもニコッと笑う
「俺は・・・斬藤斬彦<きりふじきりひこ>だ
ちなみに住んでる家はねぇよ・・・」
「私は望月ゆり!よろしくね斬彦さんっ!」
「斬彦でいいよ・・・」
「それじゃあ斬彦ねっ!
私の事はゆりでいいから」
「それじゃあ俺の気持ちが収まらねぇ・・・
ゆり嬢ってのはどうだ・・・?
あんたみたいな強気な女性にはピッタリだよ
なぁゆり嬢
俺は命をあんたに救われるだろう
なんか欲しい物とかあるのか?
俺は御礼はちゃんとするぜ・・・
金を寄越せとか何々が欲しいとか
そんなんでもいいぞ?俺はそれを実行する」
ゆりさんは走ったまま考えた
御礼が欲しいという気持ちが過ぎる
そしてその欲望は自然と口から出ていた
「じゃあ私の部下みたいな人になってよ!」
「部下?」
斬彦さんはハッとした
「そう!
昔から欲しかったんだ~♪
正義の味方には部下とかいないけどいいでしょ?
う~んこれでいいよぉ~♪」
自分を担ぎ病院への遠い距離を走るゆりさんを垣間見て
斬彦さんは少しだけ笑った
そして心に決めた自分の仁義を押し通す性格の自分の事を理解し
斬彦さんは決めた
「んじぁああんたの部下でいいよ
これからよろしくなゆり嬢」
「嬢はいらないよ
此処が病院だから多分先生が来てくれる筈!
だから大人しくしててね約束だよ!」
「はいはい
分かりましたよゆり嬢」
「だから嬢はいらないってば!」
「それより飯はいいのか?
ゆり嬢の分だけ喰われてるかもしれねぇぞ?」
「あっ!そうだ!じゃあね斬彦!
お医者さんをはじき飛ばしちゃ駄目だよー!」
ゆりさんは猛ダッシュでその場から消えると
斬彦さんは1人孤独に笑みを浮かべた
しかしその笑みには本人の表情に似合わない程の笑顔をしている
そして地面に何か落ちているのを斬彦さんは目をこらして確認する
「陽明学園・・・望月ゆり・・・
陽明学園か明日届けに行くか・・・」
落ちていたのはゆりさんの生徒手帳
その生徒手帳をスーツの右ポケットに入れると
病院の自動扉をくぐり中に入った
ーーーー陽明学園ーーーー
朝になり陽明学園には日光が降り注いでいた
そして今日は陽明学園体育体会決勝戦
普通科対魔王科そしてその控え室いつもの鋳鶴君を除く普通科のメンバーがいた
「やっぱり望月君は戻ってこれなかったようだね?
でも焦る事はないよ?
彼がいなくても多分僕等は彼女たちに勝利する事が出来るさ多分ね?
でもやっぱり魔王科の生徒会長さんは簡単に勝たせてはくれないね?
そこで総大将は三河さんにしていいかな?
これはただの予感、くだらない予感だけどさ?
僕は彼が絶対に来てくれると思ってるよ?
だから三河さんを総大将にしよう
そしたらなんか望月君は帰ってきてくれると思うから
でも帰ってこなかったとしても彼を笑顔で迎えてあげよう
その為には勝たなきゃね?
みんなには感謝しているよ?
僕はそれを伝えたいこの戦いでね?
いっつもサボったりするし手を抜いたりもする
だから今日だけはみんなの為に手を抜かない事とするよ?
1人1人努力して魔法科にさえ勝利したその為には・・・」
「珍しく長く喋りますね・・・
駄眼鏡のくせにまぁ会長なのでいつもそれぐらい話してくれるといいのですが」
雛罌粟さんが前に出てきて風間さんに指を突き付ける
「・・・激しく同意・・・」
影太君が激しく同意し
「ここまで来たら勝つだけなんだろ?
だったらみんなでかとうぜ!」
赤神君が声をあげ
「私もっ!みんなをサポートするから!」
鈴村さんが医術書をギュッと胸の前で抱きしめる
「雅さんの娘で望月の姉なんて楽しい喧嘩が出来そうじゃねぇか!」
荒神さんが両拳を激しくぶつけ合う
「んまぁさっさと行こうぜ
今日は沙耶が見にきてんだ
それに大観衆こんな大舞台で戦える姉ちゃんの恨みも晴らしたし
もう俺は俺を此処に誘ってくれた大馬鹿野郎に恩返ししねぇとなぁ!」
城屋さんが一番大きな声で皆さんを奮い立たせる
「鋳鶴を・・・絶対に救おう・・・
その為に私たちは勝つ!」
「「「「「「「おうっ!」」」」」」」
歩さんの号令で会場に向かう階段に向かって8人で歩きだした
そしてそこに出ると大観衆、今までの体育大会とは比べものにもならない観客数
そして全国ネットで放送するカメラ
そして8人は目の前の敵を見据える
普通科
風間一平
雛罌粟涼子
城屋誠
望月鋳鶴
三河歩
赤神桧人
土村影太
荒神麗花
鈴村詠歌
魔王科
望月結
来栖明乃
ライア・ポーカハイド
ミン・ランチェ
シャルア・アットレイ
「私にとって体育体会の優勝などどうでもいいんだ・・・
さっさと鋳鶴を渡して貰おうか・・・
圧倒的普通者」
剣を風間さんに突き付ける結さん
そんな結さんを見て風間さんは微笑んだ
「正直、人間は負けると分かっていても
戦わなくちゃいけない時がある
だから今日は僕も本気かな?
今出せる全力を尽くして君の相手になるよ?
だから覚悟しておいてほしいな」
二人がそう言うと普通科の陣地に落雷が発生した
その落雷を避ける術は普通科のメンバーには無かった
三人を除いて
この事により普通科は開始1秒もたたず5人を失った
これによって残り
城屋誠 風間一平 三河歩
観衆は騒然その中で
魔王科の来栖明乃だけは妖艶は笑みを浮かべていた
相手を普通科の面々を見下す様に上空から




