第47話:魔王と結
始まってしまった姉弟喧嘩
鋳鶴君に勝算はあるのか!
今回は私はお休みです~
本当は喧嘩なんてしたくない
と今思ってもしかたないがつくづくそう思った
結姉は激しい突きや確実に相手の痛いところをたたけるように木刀を振り下ろしている
それにしても魔王科は美人しかいないのかとつくづく思う
銀髪ドイツ軍人だったり
デカメロンを二つも下げた超絶グラマラスがいたり
イタリア男の娘とか
もう僕的には限界だ
それに彼女たちも僕の相手なんてしたくないだろう
僕は普通科に帰らねばならない事を考慮して戦っている
今、此処で実の姉と
「なぁ鋳鶴、
考え直してはみないか?
まだ間に合うし私はいつでも歓迎しよう」
卓越した笑みを浮かべ僕の姉はそう言った
「行かないよ
僕がどんなに駄目になってヘタレになろうとも
僕は貴方に挑戦する事をやめないと思う
魔王科にいたら貴方に挑戦する毎日だ
そんな毎日はごめんだそれに此処にはシャルを除いて女の子しかいないし
不衛生な僕にとっては苦手だよ」
そう言うと
結姉は木刀を投げた上に上に
ジャンプしても届かぬ程の高さに
「だったらこうしよう
私は木刀無しで戦ってやる
女の子しかいないのは良いことだろう?
そこから好きなだけお前の好きな人を選べる
お前の好きそうな女を選べるお前の好きに出来るそれがいいんだろう?」
結姉の言葉に少しカチンとくる
正直、誰がいいとか可愛い女の子が好きとか
どうでもいい
この人は僕の意見を聞かない
何も取り入れてくれない
そう思うと僕は姉に右手を向けていた
その右手から炎の光線のような蒼い光が瞬き結姉に直撃する
「その程度か?
お前の15年間とはそれほどにも弱いのか?
私と背負ってきたものが違うから仕方ないか
持つ者と待たざる者の違いか
お前は持っていた何も私は持っていないか
私はお前が好きなんだ
狂おしい程に
毎日夜も眠れぬほどに
姉として家族としてでは無く
1人の女としてお前が好きなんだ
鋳鶴」
光線を何事もなかった様に避ける結姉
その言葉に動揺が隠せなくなる
確かに僕は表面上では家族が嫌いと言っているが
裏的には僕は家族が大好きだ
しかし家族として悪魔でも家族として
これまで育ててくれた敬意
色々な事を教えてくれたり
僕に才能では無いがたくさんの物を与えてくれた家族が僕は大好きだ
ただし今、結姉の発言は僕の今の意見とは全く異なる
1人の女としてお前が好き
返事に困った
僕は確かに弟として姉が好きを通り越しそうになる時期が一時期あった
その一時期をまぁ通り越してなんとか今の姉弟の壁が保たれている
まぁこの人ほど僕を愛してくれる人はいないんだと僕はつくづく思っている
「ちょっ!
何いってんの!?
正気なの!?
こんなたくさんの人の前で言っちゃ駄目でしょ!」
僕はそう叫んでみるが
僕の態度に反感して姉は頬を赤らめた
「本気だぞ・・・
私は本気だ・・・
本気じゃなかったら頬を赤らめないだろう・・・」
どうやら頬を赤らめている事は自分でも気づいているらしい
「いやでも周りにはこんなに結姉の部下がいるんだよ・・・?
それでも言えるって流石としか言いようがないんだけれど
とりあえず話す暇はあんまり無いし僕はその先に行かないとね」
「なんだ
泣き落としは無理か
冷たい男だな鋳鶴は
お姉ちゃんはガッカリだぞ」
「冷たいとか言うなっ!
この状況では誰だって真面目になるわ!
てかいきなり
お姉ちゃんとかいう単語を出すな!
こっちまで恥ずかしくなるだろうがっ!」
「そうなのか?」
どうやら僕の置かれている立ち位置が分からないらしい
弟が好きなのならそれぐらいわかり得よう事だと思うのだけれど
それにしてもこんな事を考えたところで勝機は見えないし勝算は無い
「なぁ鋳鶴、お前はどれほどの物を失ったか分かっているのか・・・?」
「知らないさ
数え切れない程失ってるかもね
例えば人間としての人生とか普通の男子中学生の基本的生活感とか
恋人とか家族の時間とか」
「それほど失ってまだ失いたいか?」
冷たく、重い言葉が僕に重しとなってのし掛かる
あまりにも大きく重く痛く響く
「何が言いたい?」
「確か今のお前には好きな女がいたな
三河歩だったか剣道大会で惜しくも準優勝だったか?
惜しかったあの試合は実に惜しかった」
「何が言いたいっ!」
自然と発言が強くなる
「まぁなんだ
あれがお前の重みなのだろう?
それが生きる理由であって此処に立つ理由だ
それに普通科の事が好きならそれを叩くまで」
「・・・・・・」
「徹底的にな
魔法科のような隠蔽工作でもしてやろうか?
それとも全員正々堂々と殺してやろうか?」
そう結姉が言うと
僕の全身が動いていた
結姉の剣の間合いよりも中へ
懐の中へ
「それでも姉かよっ!」
「あぁ姉だ
まぎれもなく姉だ
私の血はすべて藤谷と望月の血で構成されている
少しの揺さぶりで熱くなるなと昔教えなかったか?」
「うるさいっ!
僕が欲しいから僕の周りの人を殺すのか!
それが姉のすることか!望月結っ!
ふざえるなよ・・・ふざけんなよっ!」
「ふざけてなどいない
私は本気だ
お前が欲しいから側にいてほしいから
お前の為を思って言っているのに
仕方のない弟だ」
僕の拳と結姉の拳がぶつかり合い
周囲に風圧を起こす
蹴りも含めるとかなりの風圧になる
草木は揺れ魔王科の校舎の窓は鳴り響いている
「なにが僕の為だよっ・・・
ふざけんなよ・・・
いい加減にしろよっ!」
右手が熱くなる
僕の怒りに反応しているのか
蒼の炎の大きさは増し僕の右腕を包む
荒々しく猛々しくまるで怒りがそのまま炎に具現化されている様に
「さぁ来い
お前は強い私を倒せる
此処で私を倒さねばどうなる?
皆殺されてしまうぞ?
お前の愛した普通科の者達がな」
「ああああああああああっ!!!!!!」
僕は拳を振り抜いた
結姉の顔面を目がけて一直線に
拳を右手を振り抜いた
しかし結姉は僕の右拳を触れる直前に回避した
炎ごと僕の渾身の一撃を僕の右拳の斜め下に上半身を仰け反らせて
虚しく通り過ぎる僕の腕を見て結姉は無表情になった
「だから言っただろう?
少しの揺さぶりで熱くなるなと
あれほど言ったのに聞いていないとはお姉ちゃんはがっかりだ
お前は弱いだから負けるし何も守れないんだ
しばらく反省でもするんだな此処<魔王科>で」
「黙れ・・・
黙れぇっ!!!!!」
今度は右足に炎を集める
怒りが増幅されさらに炎は激しく燃え大きくなっている
僕は右足を振り上げた結姉の脳天目がけて踵落としを繰り出す
いつもよりも身体能力が怒りという感情に増幅され著しく人間離れしている
しかし先ほど著しく身体能力が上昇した僕の右拳を結姉は避けた
続いて右足を繰り出す蒼の炎に包まれた自分の右脚を実の姉に向かって
人外な速度で相手を蹴ろうと足を振る
それを意気揚々とその場から跳躍し僕の右脚を結姉は避ける
無表情で何も言わずに口を全く開かずに
「そういえば
一つ言うべき事を言ってなかった
木刀無しで戦うとは言ったが
誰も愛刀を使わないとは言ってない」
右脚を避けて結姉はそう言った
すると跳躍の中、魔法で刀を召喚した
目にも見えないぐらいの速さで
「望月壱拾弐ノ剣方 第一式 睦月」
結姉が僕を切った格好をした途端
僕の身体を無数の斬撃が切り裂いた
「知らなかったか?
望月12ノ剣方
我が家に伝わる剣劇の一つの睦月だ
これさえ見切れんようでは私に勝つのはほど遠い
この程度の剣劇も見切れないのかだから私は反対だったんだ
お前が普通科に入学する事が」
「まだ・・・
戦える・・・!」
弱くなった炎を胸に抱き
弱々しくだが僕は立ち上がった
血が服からしたたり落ち斬られた痕が浮き出ていた
「ごめんなさいね
でもこうするしかないのよ
結の言うことを聞いて頂戴」
明乃さんが僕に魔法をかける
暖かい光が怒りの感情を顕わにした僕の心を穏やかにしていく
そこで僕はちから尽き目を閉じた
「体育大会決勝の予定を早めるか」
「そうね
そのほうが彼にもいいのかもしれないわね」
「シャル鋳鶴の面倒を任せる
あいつを決して部屋から出すな分かったな」
「はっ!はいっ!」
シャルはそう返事すると結姉に頭を下げた
結姉は頭を下げたシャルを見てライアと明乃さんとどこかに向かって
虚ろに見える僕の視界から消えた




